ペルソナ Blood-Soul   作:龍牙

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第六十九夜

「スゲッ」

「うわぁー……」

「なんだか、凄いですね」

「此処がキバの秘密基地か」

 その日、ビルに擬態したキャッスルドランの中に先にキャッスルドランに来ている風花と、幾月の一件での父親の死の為に不在の美鶴と、同じく幾月に操られキバに変身した奏夜に倒された結果機能を停止しているアイギスの二人を除いたS.E.E.Sのメンバー達は始めて足を踏み入れていた。

「ってか、あいつってマジでキバだったんだよな」

「目の前で変身する所を見せられてちゃ否定できないな」

「でも、紅さん、何処に居るんでしょうね」

「流石にこれだけ広いと、ちょっとね」

 珍しそうに周囲を見ているS.E.E.Sの面々。だが、奏夜に会うと言う目的の為に来たのだが肝心の奏夜が何処に居るのかが分からないと言うのが現状だった。

「心配すんなよ、ゆかりッチ。こう言う時は適当に部屋を開けてけば何とかなるっしょ」

 そう言って適当なドアを開ける順平だが、次の瞬間視界に飛び込んできたのは……

「「「ん?」」」

 何故か怪人態で七並べをやっているガルル、バッシャー、ドッガの四魔騎士(アームズモンスター)達(シルフィー除く)だった。

「…………。失礼しました」

 三対の視線を浴びる中辛うじて搾り出した言葉でそう言って順平はドアを閉める。

『…………』

 一同の中に沈黙が流れる。イヤーな沈黙だった。

「んじゃ、奏夜の奴を探しにレッツゴー」

「コロマル、紅の匂いが分かるのか?」

「ワン!」

「流石、コロマル。頼りになるわね」

「それじゃ、コロマルに案内して貰いましょう」

 仲間達は順平を華麗にスルーして奏夜の匂いを追えるコロマルに期待していたのだった。

「って、みんな、オレっちの事スルー!?」

 スルーされている順平がそう叫んでいると先程開けた扉が開き、順平の首根っこを捕まえる。

「って、オワァ!?」

「丁度、良い」

「三人だけで遊ぶのにも飽きちゃったんだよね」

「丁度良い、お前も混ざれ」

「オ、オワァー!!!」

 部屋の中に引きずり込まれて、何故か次狼達が遊んでいるトランプに参加させられた順平だった。

順平、トランプに混ざった為リタイア。

なお、

「テレッテー! オレッチ、完全勝利♪」

「「「ま、負けた」」」

 何気に“第一回キバチームVS特別課外活動部対抗トランプ大会”の勝者は順平だったりする。しかも、その結果は順平の圧勝。次狼達は一矢報いる事も無く完全に敗北したのだった。

 なお、優勝した順平に渡されたトランプ大会の商品は、何故かキャッスルドランの中に有った大剣【妙法村正】(レアドロップアイテム、P3の順平の武器の中では二番目に強い)だった。

「あれ、順平は?」

「そう言えば何時の間にか姿が見えないな。仕方ない奴だな、後で紅に言って探してもらうか」

 ゆかりの疑問に呆れたように呟く明彦。何気に順平は次狼達三人を相手にトランプで圧倒しているのだが、彼等はそんな事は知る由も無い。

「でも、紅さんって何処に居るんでしょう?」

 結構歩き回って小学生の乾は疲れた様子を見せている。

「そうだね」

 そう言って誤ってゆかりがドアに触れてしまうとしっかりと閉まってなかったのか、触れたドアが勝手に開く。

「あっ」

「ウフフフ……奏夜さま~、奏夜さま~♪」

 どうやら其処が台所だったらしくメイド服のシルフィーさんが楽しげにお茶の準備をしていた。

 割と奏夜絡みで微暴走気味の彼女の姿を見てると、流石に話しかける気は起きない。見なかった事にして無言のままドアを閉めて、

「あまり紅を待たせるのも悪いな」

「そうですね」

「先を急いだ方がいいですよね」

「ワン!」

 三人と一匹はその場から離れていく。

十数分後……

「えっと、みんな……大丈夫?」

「えっと、お茶でも飲む?」

「「「はー……はー……飲む」」」

 結局あの後二十分近く迷った一同は肩で息をしながら奏夜から渡された程々の温度に冷めたお茶を一気に飲み干す。

「紅、なんだこの城は!? 広すぎるぞ!?」

「えーと、真田先輩……入って直ぐの所で待っていてくれれば迎えに行ったんですけど。いや、次狼さんから連絡が有って、次狼さん達が順平とトランプしてるって言うから迎えに行ったんですけど、居なくて……ぼくも探したんですよ」

「すみません、召喚器がなくて私もペルソナも使えませんでしたから」

 奏夜と風花のその言葉を聞いて改めてこう思う三人だった。『先に言ってくれ』と。まあ、着いたという連絡入れなかったのも悪いといえば悪いが。

「ってか、順平……あいつ、何一人で遊んでんのよ」

「うん、なんか最近三人で遊ぶのにも飽きてた人達が、新しい仲間を見つけたみたいだったね、あれは」

 其処から順平を含めて四人による第一回トランプ大会の開催へと至ったのだが、それは此処では関係ないので割愛しておく。

「紅……今まですまなかった。そして、ありがとう」

 そう言って全員を代表して明彦が頭を下げる。キバとして影ながら力を貸してくれた事への感謝と謝罪の言葉だった。

「えーと、すまなかったって言うのは……」

「決まっているだろう、今までキバの事を敵として扱っていた事だ。あれも意図的に理事長がオレ達への情報を制限していたらしい」

「なるほど……父さんの代のキバの事を全面的に、って所だね」

 キバが正真正銘の人類の敵として存在していた時期は確かに存在している。それ以前に、ファンガイア族と人間が戦っていた頃から、ファンガイア族のキングの纏う鎧として闇のキバが存在していたのだから。

 祖父の代に存在していたプロトタイプのイクサでは足元にも及ばないほどのスペック……黄金のキバと同等のそれを持った闇のキバ。

 映像こそ近年の物だが、幾月はキバについての情報を意図的に捻じ曲げて……正しくは敵であった頃の情報のみをS.E.E.Sのメンバーには伝えていた。全ては不確定要素であったキバを潰すために、だ。

 だが、そんな幾月の計画も全ては当代のキバで有る奏夜がS.E.E.Sの内部に居た事で破綻するのだった。

 恐らく、幾月が見たという素晴らしき青空の会の記録にも黄金のキバのデータは残っていなかったのだろう。だからこそ、幾月にはキバの正体についての情報が伝わらずに済んだと言う訳だ。

「真田先輩、ぼくはそんな事気にしてません。それに、これからはぼくは一人で滅びと戦うつもりでした」

「ああ。幾月さんの持ち物だけじゃない、一緒にイクサナックルも回収されてしまった以上、足手纏いにはならないとは思うが……それでも、オレ達は以前ほど戦えるとは思えないな」

 イクサナックルの回収については奏夜も納得できる点ではある。限られたものしか使えない召喚器よりも、イクサシステムの中核となるイクサナックルは純然なる“兵器”であり、聞いた話では簡易化したとは言え量産試作品。何時までも一高校生に持たせている訳には行かないのだろう。

「それにしても……」

 桐条の研究者とは言え幾月の持ち物が全部持ち去られたのは痛い。少なくとも、“滅び”に付いての手掛かりが有るのは、幾月の持ち物だけだったのだ。

 寧ろ、そうなる前に寮の司令室の奥にある幾月の部屋にでも踏み込んで、あの部屋の資料などを調べておくべきだったと後悔してしまう。

「状況はかなり拙いね」

「拙い? 何がだ?」

「うん。少なくとも、既に“デス”や“滅び”と言った正体不明の敵は何時現れても可笑しくない。多分、何か有るのは満月の日だとは思うけど……」

 そう言って奏夜はテーブルの上に置かれていた紅茶を一口飲み込む。程よい温度に冷めた紅茶が喉を潤す。

「残念ながら、ぼく達にはその敵についての情報を何も持っていない。そして、それについての情報は理事長の所にしか無かったと考えた方が良い」

 奏夜の言葉にその場に居た全員が黙り込む。

「グループは桐条先輩が受け継ぐんだろうけど、ぼく達S.E.E.Sが以前の様に動けるとも限らない。いや、下手をしたらシャドウの事を軽く考えている人達に解散させられるかもしれない」

 少なくともグループのトップで有った武治が命を落とした以上、美鶴が受け継いだとしても以前の様に自分達が動けるとは限らない。

 悪い事に幾月の企み通り12体全ての大型シャドウは倒してしまっている。それが解決ではない事を知っているのがあの場に居た者達だけとすれば、解決したと誤認した結果何も知らない連中に解散させられる危険も有る。最悪の事態程度は考えておいた方が良いだろう。

「どっちにしても、今のぼく達に出来る事はこれまで通りタルタロスで鍛える事位しかないんだよね」

「ああ、実戦でのトレーニングだな!」

「そうなりますね……」

 相変らずの明彦に苦笑する奏夜と風花。要するにS.E.E.S内での明彦の言葉も満更間違っていなかったりするのだ。

「それに、タルタロスを登るって言うのはトレーニング以外にも目的は有るしね」

「目的?」

 奏夜の言葉にゆかりがそう聞き返す。

「うん。理事長の言葉が正しいなら“滅び”が降臨するのは間違いなくタルタロス……それも、考えられる場所は最上階……頂上」

「そうですよね。一番怪しい場所は其処ですけど……」

 奏夜の言葉に同意を示す乾。

 今まで行く手を阻んでいた番人級のシャドウ達は、正真正銘本物の番人だったと言う訳だ。

「うん。タルタロスは上の階に行くほど強力な個体が生息している」

 上の階に登れば登るほど、下手をすれば下の階の番人級レベルのシャドウがぞろぞろと出てくる。

「同時にぼく達が強くなる為には弱いシャドウを相手に戦っているだけじゃ、ゲームじゃ無いんだから強くはなれない。だからこそ、強力なシャドウが居る上階に行く必要が有る。それは同時に“滅び”が現れるであろう場所に近づくための手段でも有る。そう言う事だよ」

 強くなるためにも、“滅び”と言う存在にも対抗する為にもタルタロスには登る必要も有る。何より、それほど時間が有るとも思えず、同時に余計な邪魔が入る可能性の薄い今の内に行動するしかない。

「所で、紅くん。さっきから戻る事を前提に話を進めてるけど?」

「岳羽さん。皆でキャッスルドランまで来たのには、ぼくにS.E.E.Sに戻って来て欲しいって事でしょ?」

 ゆかりの言葉に奏夜は微笑を浮べながら答える。

「今度はただのペルソナ使いの高校生ってだけじゃないて……キバの後継者としても、協力させてもらいます」

「ああ、頼りにしてるぞ、紅」

 そう言葉を交わし奏夜と明彦は拳を重ね合う。キバで有る事を打明けた上でのそれは……隠し事も無く、本当の意味で彼らと仲間になれた思いだった。

おまけ……

「真田センパーイ、ゆかりッチ、ここかー?」

 そう言って奏夜達の居る部屋に入ってくる順平。先程のトランプ大会の商品の刀まで持って。

「伊織、お前は今まで何をしていた!?」

「何って……トランプしてましたー。いやー、オレッチの完全勝利でこんなの貰っちゃいました」

 そう言って商品の武器を見せる順平。そして、奏夜はそんな順平へと視線を向け、

「まさか、次狼さん達に勝つとは……」

 何時の間にか現れたシルフィーを従えて奏夜は順平と対峙する。三人の中央に力がテーブルを、ラモンがトランプのデッキを置き、次狼が念入りにシャッフルする。

「ならば、次はキャッスルドラン内のトランプチャンプのこのぼくが相手だ!」

「お供します、奏夜さま」

 何気に二位はシルフィーだったりする。

「えっと……私も?」

 風花ちゃんも同率二位に輝いていたりする。

「さあ、頂上決戦と行こうか!」

 此処にトランプ最強決定戦が開催されたりした。

「何この状況?」

「さ、さあ」

「よく分からんが……伊織、戦うからには勝て!」

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