拙作ではありますが、今後も読んでいただけると嬉しいです。
ランサー陣営と同盟関係になって二日が経った日の朝。
士郎が目を覚ますと横には何故かイリヤが眠っており、おまけに普段であればまだ日も登って居ない時刻だと言うのに、部屋は既に日の光に照らされていた。
「え…あれ、イリヤ?って言うか、明るい!?今何時だ!?」
慌てて時計を手に取れば、針は普段鳴るはずの時刻の一分前で止まっている。そして、時計の上部には一発の銃痕が残されていた。
寝惚けた頭を無理矢理覚醒させると、イリヤを起こさない様静かに布団から出て居間へと向かう。
すると其処にはバゼット、ランサー、セイバーの三人が大量に積まれたパンケーキを黙々と食す光景が広がっていた。
「士郎、おはようございます。今日の朝ごはんはバーサーカーが用意してくれましたので、士郎はゆっくり休んでいて大丈夫ですよ」
「おはようございます、士郎君。顔に似合わずバーサーカーは料理がお上手なんですね」
セイバーとバゼットは事も無げに挨拶し、またパンケーキを頬張っては幸福そうに瞳を閉じている。ランサーは食事の手を止めると、傍らに置かれていた紙を士郎へと手渡してきた。
「バーサーカーからの言伝だ、何やら勝手に動いてスマンと言っていたな」
受け取った紙を開くと、そこにはこう書いてあった。
『士郎へ。お前がこの手紙を読んでいる頃には俺ちゃんは士郎の家には居ないでしょう、師匠に頼んでルーン魔術で寝かしつけてあるからな。
さて、本題に入るんだが…最近俺ちゃんてばセイバーと口喧嘩ばっかしてて色々迷惑掛けてっからちょいと詫びも兼ねて学校に情報収集しに行って来ます。その代わりと言っちゃなんだが、
もしかしたら乳揺れとかラッキースケベがあるかも知れないだろ?役得役得!っつーわけで死なない程度に頑張れよ、アヴァロン有るから余程死なないだろうけどな。
P.S美綴ちゃんのケツがあまりにも魅力的で俺ちゃんを誘惑してきたら触っちゃうかも知れないけど、代わりに謝っといてくれ』
読み終えた士郎の心中にある物は、何故バーサーカーは情報収集の為に学校へ行ったのかという事と、何故遠坂はバーサーカーを止めなかったのかという事だ。
思考したまま固まる士郎であったが、暫くした後に何か自分には思いつかない考えがあるのだろうという結論に至る。
そして、大人しくパンケーキを食べ始めるのであった。
「学校行くって話題後書きに出してから五話位挟まってますけど?って言うか、手紙に対する士郎の反応予定と違うじゃねーか!どうなってんだ作者!」
「ちょっと、バーサーカー。衛宮君の顔でそういった独り言は言わない約束でしょ?」
通学路に凛と士郎に化けたバーサーカーが居た、互いに普段通りを装いながら学校へと向かっている最中らしい。
「おっと、悪いな。でもやっぱりアイデンティティの欠如は不味いと思うわけよ、漫画ならともかくこれ小説じゃん?つまり台詞だけでキャラらしさを出していかねーとイカンのよ。おまけに俺ちゃん口が悪いだけのキャラになってたから少しでもイメージ回復を兼ねてだな…」
「はいはい、私が悪かったわ。お願いだから衛宮君の顔で流暢に喋らないでくれないかしら、中身がバーサーカーだって分かってても流石に気味が悪いわ」
ベラベラと言葉を並べ立てる士郎の喋りを遮る様に言葉を返す凛、会話の内容さえ聞かなければカップルの様にも見える光景だ。
「おいおい、中身が違うとは言え彼氏の顔見ながら気味が悪いはねぇだろ?士郎が聞いたら泣いちまうぜ」
「ハァッ!?だ、誰が衛宮君なんか彼氏にするって言うのよ!魔術師としては凡才以下、確かに顔は良いかも知れないけど…そんな関係じゃないわよ!」
そう言いつつも顔を真っ赤に染める凛、それに対して士郎はニヤニヤと笑みを浮かべながら言葉を返す。
「ハッ、よく言うぜ。こないだの街探索してる時…手ぇ繋いでたんだろ?バゼットから聞いたからな、言い逃れは出来ねぇぞ」
「ッ──!」
トドメの言葉を浴びせられた凛の左腕が振るわれる、しかしその拳は士郎の顔を打ち抜くこと無く虚しく空を切る。
士郎は僅かに身体を反らしてそれを回避、そのまま身を翻して駆け出していた。
「待ちなさーい!その記憶消せー!と言うより一発殴らせなさい!」
「おーおー、今の内に腕力だけでも鍛えときな!いずれペガサスキッド顔負けのスープレックスガールと戦う事になるだろうからな!何なら赤繋がりでチョークスラムか悪魔繋がりで地獄の断頭台でも習得したらどうだ!?」
ぎゃいぎゃいと騒ぎながら追う凛とそれから逃げるニセ士郎。
そんなカップル然とした光景をあろう事か通学路で見せた所為で、後に本物の士郎は同級生からさんざ揶揄われる羽目になるのだった。
後、凛に対する周りの評価も眉目秀麗なお嬢様から恋するお嬢様へとシフトしていくのであった。
◇◇◇◇◇
「キング・クリムゾン!学校内ドタバタイベントなんて無かったんだyo」
「だから止めなさいってば!」
時は経って放課後、帰路についているニセ士郎と凛の二人は朝のやり取りの延長の如く騒ぎながら歩いていた。
「それで?どうだったの」
頭痛を堪えるかのように額に手を当てながら凛が問いかける、それに対して士郎は一呼吸置いてゆっくりと口を開いた。
「美綴ちゃんの尻はヤバイ、女子特有の柔らかさと鍛えられた引き締まり方のバランス…俺ちゃんはあの尻に真理を見たぜ」
「そうじゃないでしょ!アンタが一成にキャスターが居るか聞くって言うから連れて来たのに何してるのよ?」
「美綴ちゃんが弓道部に戻って来いってしつこいから追っ払う為に仕方無くケツ叩いただけだぜ?俺ちゃん弓矢はブルズアイの所為でアレルギーが出ちゃうからダメだって言ったのに聞く耳持たずなんだもんよ」
「はぁ…呆れた。所詮はバーサーカーなのよね、期待した私が馬鹿だったわ」
溜息混じりに呟くと凛は昨日バーサーカーから提案された話を思い返していた。
曰く、キャスターは柳洞寺にいる可能性が高いから一成に話を聞きに行きたいので協力して欲しいという事だった。
だが実際は連れて来たというのに碌に情報収集すらせず尻を触って帰ってきただけ、とんだ骨折り損である。
「おいおい、本当なら士郎が一成に話聞きに行って死んでたかも知れない所を救ってやったっつーのにその言い草はあんまりじゃねぇの?後な、一成には話を聞けなかったけど葛木先生からちゃんと聞いてきたぜ」
その言葉を聞いた途端頭を跳ねあげる凛、その表情はまるで信じられない物を見るような顔だ。
「何だよその顔、俺ちゃんだってやる時はやるんだぜ?まぁ、詳しい話は帰ってからだ。他の連中にも纏めて説明した方が手っ取り早いからな」
そんなやり取りを繰り返している内に衛宮邸へと帰り着いた二人が初めに目撃したものは、庭に突き立った無数の槍とその中で疲弊し倒れ込む士郎の姿。
そして、その光景を作り出した元凶であるランサーは士郎へ向けて叱咤を飛ばしているのであった。
「とまぁ、葛木先生から聞いた話を纏めるとそんなトコだ」
散々扱かれ萎れた士郎の介抱も終わりセイバー、アーチャー、ランサー、バーサーカーの各陣営が囲む食卓の席でバーサーカーによる情報の伝達が行われていた。
バーサーカーの話によると間違い無く柳洞寺にサーヴァントは居るが、恐らくキャスターでは無い可能性があると言うのだ。
「待って下さい、バーサーカー。本来であればそのクラスは呼ばれない筈だと貴方自身が先程言っていたではありませんか」
「普通ならな、だけど俺ちゃんみたいなイレギュラーが居るんだから呼ばれてもおかしくは無いぜ?」
セイバーからの質問に対してバーサーカーは自身を親指で指しながら答える、それに対して周りの面子も静かに頷いている。
「ま、行きゃあ分かるだろうよ。それに…葛木先生の話通りならあっさり終わるかもしんねーからな」
言いつつバーサーカーはパンケーキを頬張り咀嚼する。
決行は翌日の深夜、場所は柳洞寺。相対するはジャンヌ・ダルク…救国の乙女の異名を持つ聖女である。