月明かりに照らされる柳洞寺へと続く階段を昇って行く人影が二つ。一人は少しばかり小柄で黒いマントを羽織った軍人風の服を纏った少女、もう一人は赤と黒を基調とした全身タイツ姿の長身の男。
そんな二人が参拝と言うには些か不釣り合いな時間帯にも関わらず黙々と石段を踏みしめていた。
「のう、バーサーカーよ。策があるとはいえワシらだけで大丈夫なのか?お主正直不死身以外今の所手柄無いじゃろ…」
「おいおい、天下の第六天魔王様が何を弱気になってんだよ…って俺ちゃんへのさりげないディスりいれてくるんじゃねーよ。色々あっただろーが、おっぱいタイツ師匠の参戦とかそもそも俺ちゃん自身の存在そのものとか」
敵陣の最中と言うにも関わらずバーサーカーとアーチャーは緊張という二文字は微塵も感じさせない程に軽口を叩き合っていた。
因みに、なぜこの二人なのかと言えばバーサーカーは言わずもがな『不死身だし俺ちゃんが行くのは最適解だろ』という理由で。アーチャーは『寺と言えばワシじゃろう?是非もないじゃろう!』と半ば強引について来たのであった。
その言い分に凛や士郎らマスター陣も納得とはいかずとも、単独行動スキル持ちならばと渋々了承したのであった。
「それにしてもこの階段長すぎじゃねぇの?もう何段登ったか数えるのも飽きてきたってーの!」
不満げにバーサーカーは言葉を漏らすと石段の合間に設けられた踊り場へと腰を据えた。歩を進めていたアーチャーもそれに倣い足を止める。
未だ終わりの見えない石段を見上げては、ふぅと一息ついてバーサーカーへと言葉を返す。
「随分と今更じゃが一々喧しい奴じゃのう、立候補したのならば登らぬか。後二陣営さえ引き込めばほぼ勝ち戦なのであろうが?ランサーを引き入れた手腕を振るって見せよ!」
大大名の名に恥じぬ叱咤を浴びせたアーチャーは直ぐ様歩み始める。それに釣られるようにしてバーサーカーも立ち上がれば溜息交じりに再度登り始めるのであった。
◇◇◇◇◇
柳洞寺へと続く階段にある最後の踊り場へとたどり着いた二人は、じっと眼前に佇む山門へ視線を向けていた。
バーサーカーの知識によればあの山門にはアサシンのサーヴァントが居る、との情報が齎されていたのだがその様な姿は微塵も見受けられない。
「居らぬようじゃな、飛んだ拍子抜けじゃの?セイバーに対し得意げに『お前なんざアサシンにコテンパンにされるから留守番してろ』とか抜かしたわりに誰も居らぬとはのう!」
静寂に包まれた山門を見据えつつ大笑いするアーチャー、それに対しバーサーカーは中指を突き立てて文句を垂れた。
「ウッセーんだよロリババァ、原作じゃあの控えめ胸な騎士王様は佐々木小次郎っつーアサシンにやられかけてんだ。保険を掛けて何が悪いってんだよ、後護衛役には最適だろ?直感はピカイチなんだからよ」
「正史ならば、じゃろうに。お主のせいで改変された歴史である現在においてその佐々木小次郎とやらが居る可能性は低かったであろう?」
「一々癪に障る物言いしやがって。オメーもあの腹ペコ騎士王と同じで俺ちゃんに突っかからねぇと気が済まねぇのかよ!」
踊り場で口喧嘩を始めた二人、そんな二人の耳に聞こえたのは飛来する何かの風切り音であった。
それが直撃する寸前で互いにその場から離れる様に地を蹴れば、先程まで立っていた場所には剣が刺さっていた。その剣は蒼の柄に金色の鍔の両刃剣…二人には馴染のある物であった。
「む、外してしまいましたか…
「あんたはんが殺気駄々漏れにしてるからとちゃいます?そないに力むと可愛らし顔が台無しになってまうさかい気ぃつけなはれや」
声のする方へとバーサーカーとアーチャーが振り向けば、山門の上に立つ影が二つ。背後から照らす月明かりにより顔までは確認できないが、片やマフラーを靡かせる帽子を被った女性、片や身の丈はありそうな剣を担いだ前部分をはだけさせた着物を羽織る少女である。
その人影を視認したバーサーカーはただ一言叫んだのであった。
「F**k!」
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