目の前のバーサーカーと言われた男の言葉を頭の中で反芻する。
明らかに実力で言えばあちらが上、であるにも関わらず手を組みたいとはどういう事か。
おまけにバーサーカーとはその理性を代償に、ステータスの強化を図るクラスである。意思の疎通が可能なバーサーカーとは何者なのか。
次々に疑問が湧き出ては新たな疑問に塗り替えられ、結果として問いに対する答えは口に出来ずにいた。そんな二人に対してバーサーカーは再度言葉を投げかける。
「おいおい、口縫いつけられたみたいに黙りこくっちまってどうしたよ?次は目からビームか?手から鋼鉄の爪でもはえるってか?」
ケタケタと笑いながらバーサーカーは身を翻す。
するとその姿は今までの士郎やセイバーの知るキリツグでは無く、赤と黒の全身タイツに変わってしまっていた。
一見すると日曜の朝などにやっているヒーロー番組に出てきそうな姿ではあるが、しかしながらこの年でそんな物を見る筈の無い士郎と凛は未だ黙ったままだ。
そんな二人を見かねてか、セイバーが口を開く。
「バーサーカー、貴方は何故我々と手を組もうと思い至ったのですか?こちらとしても、明確な目的の見えない罠かも知れぬ同盟は結びたくありません」
「なるほどなるほど、確かに騎士王様の言う事も一理あるな。んじゃまぁ…信じる信じないは別にしてお前らに話をしてやるよ」
そこから語られた話は俄には信じ難い物だった。
今回執り行われる聖杯戦争の結末、セイバーとバーサーカー、アーチャーを除く召喚されるサーヴァントの真名、大聖杯の内部に潜む
そして、バーサーカーは大聖杯の破壊を目的とし、全サーヴァントと手を組むつもりだとも告げる。
それら全ての情報を開示したバーサーカーは、首を傾げながら改めて問いかける。
「さぁ、どうする?こっちは攻略本片手にゲームスタート、おまけに倒す必要はないと来てる…説得するだけの簡単なお仕事だぜ」
「…その、イマイチ信じきれないんだけど」
「だーもう、煮えきらねぇ奴らだな!もうこうなりゃ最終手段だ!」
士郎の言葉を聞き両手を上げて叫ぶバーサーカー。よもや戦闘かとセイバーが立ち塞がるも、その心配は稀有に終わる。
バーサーカーはその膝を曲げ地面につけると、そのまま両手と共に頭を下げる。その姿は正しく土下座であった。
その姿に仕方無く折れた士郎と凛の二人はバーサーカーを立たせ、一旦士郎の屋敷へと戻りはじめた。
道すがら互いに自己紹介を済ませ、帰宅すると衛宮邸はランサーに襲われたとは思えない程傷一つ無かった。
「あーん?あの青タイツ野郎士郎のトコに来てないのか?」
バーサーカーの呟きに対して士郎が首を傾げながら聞き返す。
「青タイツ…?」
「さっき言ってたランサーのサーヴァントだよ、青いタイツ着てたろ?赤い槍持ってさ」
「あ、あぁ…確かに赤い槍を持った奴には学校で襲われた。ただ、青じゃなくてえんじ色だったぞ?」
「…はいぃ?」
「えんじ色の服に、赤い槍を持った女の人だったな」
バーサーカーは記憶の中を辿る。
赤い槍を持った女のランサー、えんじ色の服──即ち。
「馬ッ鹿じゃねぇのか!あの脳筋女ァ!」
バーサーカーの魂の叫びが木霊した。
◇◇◇◇◇
所変わって寂れた洋館。
此処は嘗て行われた聖杯戦争の折に建てられた双子館なる建物、その屋内に佇む人影が一つあった。
月明かりに照らされた姿は美麗な男の様にも見えたが、しかしその胸元がその答えを否定する。
その直後、新たな気配と共にもう一つの槍を携えた人影が現れた。こちらは絶世と謳われても何ら遜色ない程の美女である。
二人は月明かりが射し込む室内に並び立つと、静かに言葉を交わす。
「首尾は?」
「お主の言う通り、他陣営に対して少しばかり手出ししてきたぞ。途中見知らぬ小僧に要らぬ世話もかけさせられたがな」
「殺したのですか?」
「運が悪ければ死ぬだろう、急いていたので確認はしておらん」
淡々と交わされる会話の中に、殺されたかも知れない少年へと謝辞など込められていない。あくまでこの二人は聖杯戦争を勝ち残る為に、己が願いの為に戦っているのだ。
故に他者に対する感情など無い。槍を携えた女が真実を語っていればの話であるが。
◇◇◇◇◇
時間は少しばかり遡り、数分程前に戻る。
今更ながら凛のサーヴァントであるアーチャーの姿を見ていなかった為、凛にアーチャーについての話題を振ってみた。
「そういや凛ちゃんよ、お前んトコの弓兵は何処いんだ?」
「あ、私も気になるー!」
今までさしてセイバー等に興味を示さなかったイリヤも声をあげる。お兄ちゃんと言うだけでこの違い、実情を知らぬセイバーは以前会っているにも関わらず無関心なイリヤの態度に少しばかりしょげた。
「あー。アーチャーは…その、偵察に出てるのよ!だから今は居ないの!」
明らかに怪しい態度にバーサーカーとイリヤは不敵な笑みを浮かべる。先程のランサーの件もあるのだ、もしかすれば正史とは違うサーヴァントなのかも知れない。
つまりそれは、恥ずかしいサーヴァントである可能性も秘めている。
気になったバーサーカーは凛へと詰め寄り、マスク越しにも関わらず満面の笑みを浮かべる。
「なんだよー隠さねぇで出せよー、ほれそこでジャンプしてみ?」
「な、何で跳ねなきゃいけないのよ!」
「良いからほら、士郎とか俺ちゃんとかめっちゃ気にしてるから!」
「訳わかんない…」
その場で跳ねる凛であったが、小銭は愚か何とは言わないが揺れる音すらしない。バーサーカーはすぐ様手を差し出し、それを止めさせる。
「凛…俺ちゃんが悪かった。謝るから止めてくれ」
「はぁ?結局何だったのよ…」
凛が跳ねるのを止めた時、衛宮邸の屋根に何者かが突如として現れた。バーサーカーが振り返るとその眉間を銃弾が撃ち抜く!
だがしかし、そんな物日常茶飯事であるバーサーカーからすればどこ吹く風。口元を押さえて見つめる凛を放って弾丸の来た方へと向き直る。
「おいおい、随分とご挨拶じゃねぇの。俺ちゃんのプリチーフェイスに顔射ぶちかます様な阿呆はどこのドイツだ?」
「確かにワシのこの服はナチスドイツの物を参考にしたものであるが、ワシはれっきとした日の本の国の武士よ!」
「あーん…て、テメェは!」
「ワシは第六天魔王にして、此度アーチャーのクラスとして召喚されしサーヴァント。織田信長である!」
黒一色の軍服に深紅のマントを羽織り、その背後には火縄銃を展開したアーチャーが月光を背に立っていた。
その光景に凛は頭を抱え、士郎は空いた口が塞がらず、イリヤとセイバーはただただ困惑していた。
そして、バーサーカーは本日二度目の魂の叫びを夜空へと放つ。
「めっちゃカラーリング被ってんじゃねーかぁ!」
裏設定:
今回呼び出されたサーヴァントが違う理由は、世界の抑止力による歴史の改竄。本来のサーヴァントを知っているバーサーカーを消そうとしたものの、そもそもこの世界の存在では無く尚且つ編集部にすらかち込む様な奴だった為、泣く泣く消去は断念し最大限の嫌がらせに走った故の召喚。
本当は子ギルを呼ぼうとしましたが、シリアルになりそうだったので急遽変更になりました。