ライダーからの問いかけにバーサーカーは言い淀む。
恐らくではあるが、原作の流れであればマスターは間桐桜ないし間桐慎二のはず。
どちらにしろ桜との関係性があるならば、以前名乗った名前で統一しておいた方が色々と問題は少ないと判断し、ライダーには黒田という名前で通しておく。
そのままライダーの跨るバイクの事についての話になると、息もつかせぬ勢いで自慢話が繰り広げられた。バーサーカーとしては乗り物には頓着せず、もっぱら他者のバイクや車にタダ乗り──ハイジャックとも言う──であった為に詳しい話はさっぱりであった。
しかし、ライダーの自慢話の語口は大人の様な嫌味たらしい物ではなく、子供の如く身振り手振りを交えつつ純粋にコレが凄いアレが凄いと褒め称える自慢だった。
その姿に若干の愛くるしさすら感じたバーサーカーはただただ話を聞き続けた。そうこうしている内に次第に日は傾き、昼前に出掛けたにも関わらず既に夕刻。ライダーはふと我に帰ると何か思い出したのか慌ててバイクに跨り直すと、エンジンを蒸し爆音を轟かせる。
「っと…悪い、知り合いを学校まで迎えに行かないといけないんだ!」
バーサーカーはチャンスとばかりにライダーに提案する。
「すみません、僕も少しばかり学校に用があるんですよ。もしご迷惑でなければご一緒させてもらえませんか?」
「あぁ、構わないけど…アンタその年で知り合いが居るのかい?」
「えぇ、まぁ…」
痛い所を突いてくるライダーに誤魔化す事も出来ず曖昧に答える。とにかく桜か慎二と接触するにはこの機を逃すと手間である為必死なバーサーカーは、上手くいくよう願いながらバイクの後部座席に跨る。
「んじゃあ、ちょいと飛ばすからしっかり掴まってなよ!」
言うや否やウイリー走行で駆けだすバイク、不可抗力で胸でも触れたら良いな等と楽観視していたバーサーカーは振り落とされそうになりつつも、しっかりとライダーの胴体に腕を回して耐えていた。
数十分もしない内に穂群原学園に着くと校門前で下校する生徒達を眺める二人。
相も変わらずライダーがスーツの前面を開けている所為で男子生徒の視線は胸元に釘付けである。しかしライダーはと言うとそんな物気にせず出てくるであろう人物を待ったまま微動だにしない。
バーサーカーは男子生徒達の気持ちに共感しながらも、手を出す事は即ち
暫くすると向こうの方から女子の集団、その中心に居るのはバーサーカーのお目当ての人物──間桐慎二である。
「やぁ、慎二君。久しぶりだね…僕を覚えているかな?」
女子を侍らせ得意げな慎二の前に立つと、にこやかな笑みを浮かべつつ背中に手を回す。訝しげな表情の慎二に声をかければ更にその顔には困惑の色。
「悪いけど、貴方の様なみすぼらしい格好のおじさんは知らな…」
慎二の背中に硬い物が当たる、意識を向ければソレは小型の拳銃であった。バーサーカーは銃を体で隠しつつ耳打ちする。
「良いから口裏合わせな、でなきゃテメェのクソの出が良くなるお
ドスの効いた声に慎二は怖気を感じ、ゆっくりと頷いた。
「…あ、あぁ!フランスに留学していた時に会ったおじさんじゃないですか!お久しぶりです!」
「思い出してくれたかい。久しぶりだね、少しばかり話がしたいんだが…良いかな?」
「え、えぇ。そういう事だから…皆また今度遊びに行こう!」
取り巻きの女子は不満気な声をあげるも、仕方が無いと諦め散り散りに帰って行く。ライダーはバーサーカーに連れられた慎二を見送りながら、未だ現れない待ち人を待つ。
我が
◇◇◇◇◇
慎二とバーサーカーは以前桜と共に訪れた喫茶店へと来ていた。なるべく人気が少ない場所が好ましいと言ったら、此処を案内されたからだ。
「さて、単刀直入に言うぞ。お前はライダーのマスターか?」
バーサーカーの問いに慎二は首を振る。
「んじゃ次の質問だ。あのハゲ爺はサーヴァントを召喚してたか?」
慎二は一瞬反応に困ったように固まるものの、静かに頷いた。
「なるほど、んじゃジジイは聖杯戦争に参加してるのか…」
「いえ、お爺様はもう居ませんよ」
その言葉にバーサーカーは首を傾げる。居ないとはどういう事か、仮に姿を消しているだけなら居ないとは言わず行方が知れないとでも言う筈である。
「居ない?どういう事だよ」
「ライダーが殺しました、それもたった一発の銃弾で」
今度はバーサーカーが固まった。
あの化物然としたジジイが死んだ?
サーヴァントを呼んだ状態で?
たった一発の銃弾で?
詳しく話を聞こうとする前に、慎二は自ら事の真相を語り出した。
曰く今回の聖杯戦争において、臓硯自ら呼び出したアサシンのクラスのサーヴァントは異例であったらしく、一先ず能力を試す名目で外部に出向かせていた。
更にアサシンのマスターの権限を桜に譲渡、その上で桜をマスターとしてライダーを召喚するという変則召喚を行ったらしい。
「へぇ、流石は召喚システムのご本家はやる事がスゲェな。狡賢さもバケモノだな」
「そして、召喚されたライダーが聖杯に託す願いについてお爺様に聞きました」
臓硯の願いは永遠の命、その答えにライダーは『人の命ってのは散ってこそ美しいんだ、いつまでも続く命なんざ炉端の石ころにすら劣るよ』と吐き捨てたらしい。
その言葉に怒りを覚えた臓硯が喚き散らせば、ライダーは取り出した銃で臓硯を殺害。桜の体内に埋め込まれた刻印蟲すらも死滅したとの事だった。
臓硯が死んだ理由は恐らくライダーのスキルにある、星の開拓者によるものだろうと当たりをつける。
"不可能を不可能のまま可能にする"
つまりは、バーサーカーの存在すら殺しうる力でもある。いよいよをもって対立は不味いとバーサーカーは判断し、改めて同盟を組むべく思考を巡らせる。
暫し思考に耽っていると、慎二はバツが悪そうにバーサーカーを覗き見ていた。
「あん?どうしたワカメ。腹減ったのか?」
「いえ、そろそろ解放して欲しいなと…」
「あぁ、そうだったな。とりあえず帰って良いぞ」
その言葉に対して、待ってましたと言わんばかりに勢い良く立ち上がる慎二。しかしバーサーカーはその腕を掴んで再度座らせる。
「二つ程言い忘れてたぜ、一つ目は桜に今後手ぇ出すなよ?出したら何処に居ようが何してようが俺ちゃんがお前をぶち殺しに行くからな」
気を抜いていた所に不意打ちの如く浴びせられた殺気に慎二は縮こまる。
「それともう一つ、ライダーの奴割と散財する
二言目は遠回しに慎二に真面目に働けと促す。バーサーカーの心中では、真面目になったらワカメでは無く昆布と呼ぼうと決まっていた。
漸く解放された慎二は暗くなった商店街を走って帰る。家で待つ妹と最近出来た姐に対する遅くなった言い訳を考えながら。
◇◇◇◇◇
バーサーカーも衛宮邸に帰り着くと満面の笑みのイリヤと凛に出迎えられた。理由も分からず促されるままに室内に入れば、背中を押されて床へと突っ伏す。
「おい、何しやがんだよ!」
そのままイリヤと凛が背中に跨がれば、瞬く間にキャメルクラッチと逆海老反り固めを決められた。
「「
バーサーカーは思い出した、家を飛び出した際に言い放った言葉を。
そして、障子の裏から覗く
感想で頂いた通りの展開が構想初期からあった為、その感想の内容に割と驚きました。
次回は少しばかり日常話と言う名のバーサーカー学校侵入イベントでもやりたいですね…