Fate/CrazyRed   作:仲人

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よくよく考えたら姐さん黄金律あったんですよね、慎二の働く意味とは…うごご


それぞれの──

 

「え、兄さん…今なんて?」

 

「だから、僕は近い内にアルバイトをするって言ったんだよ」

 

思いもよらない兄の言葉に桜は驚愕のあまり固まってしまう。帰宅してから今のいままで普段と変わらずぶすっとしたままだった兄が、突然働くと言い出せば誰だって固まるだろう。

 

「兄さん、もしかして熱でもあるんですか…?も、もしかして頭をぶつけたとか…毒を盛られたとか!?」

 

「どんだけ僕の頭がおかしいと決めつけたいんだ!…お爺様が亡くなられたのなら、兄である僕が間桐家を継ぐのは当たり前だろう。なら、それなりに社会の事を学ぶべきだと思ったんだよ」

 

兄である慎二の言葉に桜は素直に納得していた。

臓硯が存命中は二人共が臓硯の傀儡であり贄であった。だが今は忌まわしき臓硯は居らず、魔術師としては才が無いものの頭脳であれば優秀な慎二である。表だって動きやすいのはもちろんの事、多少性格に難はあれど人付き合いも多様な為家督を継いで当然と言えた。

逆に桜は魔術師として優秀な能力も頭脳をも持つが、如何せん人付き合いは未だ苦手な部分もあった故に、慎二の考えは妥当であった。

 

「ありがとうございます、兄さん…」

 

「…ふん、出来の悪い妹に変わって働くのは兄の務めだからな」

 

互いに胸の内の蟠りは未だ残ったままではあるが、少しずつでも歩み寄る事が出来ている。その事に嬉しさを覚えながら桜は微笑む。ともあれ、今はまだ聖杯戦争の最中である。今はまだ気を抜かず生き残るべく頑張ろうと心に誓う桜だった。

 

「なんだいなんだい、随分と男らしくなったじゃないか!」

 

そんな穏やかな雰囲気の中へ酒瓶片手に颯爽と現れたライダーは、照れ臭そうに視線を逸らす慎二の背中に張り手を食らわす。

 

「いッ…!!」

 

不意打ちとサーヴァントの膂力で打ち込まれた平手打ちは慎二の背中に甚大なダメージを負わす。痛みのあまり声すら出す事が出来ずに呻いている。

 

「にしても急にどうしたんだい、あの黒田とかいう男に何か言われたのかい?」

 

「ライダー…さん。その黒田って人、お知り合いなんですか?」

 

「んん?マスターも知ってるのかい?」

 

桜は以前出会った男の名が出てきた事で思わず身を乗り出す。先日は思わぬ質問に上手い返しが見つからず、逃げ帰ってしまった為に謝りたいと常々考えていたのだ。

しかしライダーの返答は今日知り合ったばかりで詳しい事は知らない、との事だった。ならばと慎二に視線を向けるも、相変わらず痛みに苦しみ悶えているために話を聞けそうにない。

その場は仕方無く諦め、また後で聞こうと決めた桜は食事を済ませた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

───双子館

 

「998…999…1000」

 

「良くもまぁ、飽きもせずに続けなんだな」

 

蝋燭の揺らめく明かりに照らされながら、バゼットは腕立てを繰り返す。そんな姿を眺めながらランサーとして呼ばれたスカサハは、呆れとも取れる口調で話しかけた。

聖杯戦争が始まってから二日、碌に戦いもせず日がな一日体を鍛えてばかりいる自分のマスター。仮にも戦争と名が付いているのだから、もしかすれば自身を殺せるやもしれない英雄達と相見えるのはランサーにとって期待できるものであった。

だがしかし、実情は初日に他陣営にちょっかいを掛けた程度で、まともな戦いはまだ出来ていないため不完全燃焼真っ只中である。

 

「貴女は本来呼ばれる筈の無い特異物(イレギュラー)、そんな事が他陣営に知れれば瞬く間に私は包囲されるでしょう」

 

それなら他陣営が潰しあってからでも遅くはない──後出しは私の専売特許ですから。

そう言って再度筋トレに没頭するバゼット、流石の脳筋である。

 

(全く、セタンタといいこやつといい…ワシの元には戦いと己が肉体にしか興味が無い者しか集まらんのか)

 

嘗ての弟子の事を思いだしながら、ランサーは窓から見える夜空を眺める。ひっそりと以前逃がした小僧にでも会いに行くかと考えながら。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

───言峰教会

 

礼拝堂のステンドグラスから差し込む光に照らされる黒衣を纏った男。言峰教会の神父であり、聖杯戦争の監督役である言峰綺礼である。

 

「ギルガメッシュよ、此度の聖杯戦争…どう思う?」

 

感情の読めない表情のまま独白すると、礼拝堂に並べられた椅子に突如として金髪の青年が現れた。

 

「何処ぞの道化が何やら甲斐甲斐しくも踊っているようだぞ。だが所詮道化は道化…王を愉しませる為の児戯に等しい戯れであろうよ」

 

不遜極まりない物言いの青年は、数年前の聖杯戦争にて弓兵(アーチャー)のクラスで呼び出されたサーヴァント。名をギルガメッシュ、英霊の中でもずば抜けた実力の持ち主であり、自らを英雄王と名乗る程には傲慢である。

 

「ふむ、貴様は動くのか?」

 

「何故王たる我がわざわざ出向く必要がある?然るべき時に、然るべき場所で、然るべき褒美をくれてやるのみよ」

 

そう言い残し高笑いと共に礼拝堂を後にするギルガメッシュ。その後ろ姿を見届けた言峰は一人考える。

 

(バゼットとの同盟は反故になり、あれ程息巻いていた凛も未だ動きは無し…おまけにマキリの翁の死亡とは)

 

言峰をしても臓硯の死とは驚愕に値する物だった。生に執着し永久の命を得るためならあらゆる手段も厭わない、自分と同じく人としての生き方を捨て外道に堕ちた間桐臓硯が死んだ。

その事に些かの愉悦を感じつつも、未だ満たされぬ心に新たな刺激を求め、言峰は聖杯戦争を見届ける。

互いの憎悪と怒りをぶつけ合い、殺し合う聖杯戦争を願って。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「はー…なるほどなるほど」

 

士郎は目の前の簀巻きにされたまま転がるバーサーカーを見つめていた。二つ折りにされた後衛宮邸の屋根の上に放り投げられた為、様子を見に来たのだ。

だが、当の本人はさして気にした様子も無く虚空を見つめたまま金メッキングぶちのめすだの師匠来んの!?だのと意味不明な叫びを上げていた。

 

「バーサーカー、大丈夫…か?」

 

「んぁ?お前この姿が大丈夫に見えるなら今すぐ眼科に行く事をオススメするぜ、多分手遅れだろうがな!」

 

暴れ回るバーサーカーの縄を解き二人で屋根に腰掛ける。今までこうして二人になる事など無かったため、どう切り出したものかと考えていた、バーサーカーの方から話しかけてきた。

 

「そういや女連中はどうしたんだよ、乳繰りあってんのか?」

 

「いや、アーチャーが慰安酒だとか言ってお酒飲み始めたんだ。今頃は皆酔い潰れてるんじゃないか?」

 

バーサーカーは知らない事だが、士郎がバーサーカーの様子を見に来る前から出来上がったサーヴァント二人の聖杯問答ならぬちっぱい問答が繰り広げられており、そこから逃げる様にして士郎は屋根へと上がって来ていたのだ。

因みに、セコンドはイリヤと凛が務め審判はいつの間にか現れた我らが藤ねぇが取り仕切っていた。

 

「じゃからわしの様に平らである方が美しいに決まっておろう!挟めはせぬが少女らしさ全開であるぞ!」

 

「何を言うのですか、少しばかり膨らみがある方が男性受けが良いのです!揉めるか揉めないかの瀬戸際こそ正義!」

 

「うんうん、青春だねぇ!良いねぇ!」

 

最早ツッコミ不在の衛宮邸の居間は、某猫型真祖っぽいナマモノもびっくりな酔いどれ空間(カオスディメンション)へと成り果てていた。

 

そんな事とはつゆ知らず、バーサーカーはふと思い出したかのように問いかける。

 

「なあ士郎、お前…本来起きた筈の聖杯戦争について知りたいか?」

 

「本来起きた筈の…?」

 

「あぁ、俺ちゃんが知る俺ちゃんの居ない聖杯戦争さ。気になるか?」

 

そう漏らすバーサーカーの視線──マスク越しな為視線と言うかは分からないが──は士郎をじっと見つめる。その視線に一瞬気圧されるも、ゆっくりと力強く頷いて見せればゆっくりとバーサーカーは語り出した。

 

本来呼び出された筈のサーヴァント達、そしてそれらの英雄達との戦い、三つの結末、未来の自分との決着。

その全てを聞いた士郎は、暫し押し黙ったまま下を見つめる。このまま自分が他者の為に自分を抑え込んで正義の味方と言う理想を貫けば、何れ自分は自分を殺す羽目になる。だけれども、今更正義の味方になることを辞める等死んだ親父に面目が立たない。

その二つが士郎の胸中で渦巻き、綯い交ぜになっていく。

そんな時に、バーサーカーから声が掛かった。

 

「自分を犠牲にしてる様じゃ、英雄(正義の味方)とは呼べねぇよ」

 

その言葉に士郎はハッとなり顔をあげる。そのままバーサーカーを見やれば、そのまま続けざまに告げられる。

 

「ヒーローってのはな、何かしら自分の為に戦ってんのさ。自分の愛する国の為、自分の愛する金の為、自分の愛する女の為。」

 

「自分の為…」

 

「惚れた女一人でも守れりゃ、ソイツは立派な英雄(ヒーロー)さ」

 

そう言いながら士郎の頭を撫でるバーサーカーは、優しい声音でそう言った。

 

「英雄ってのはな、いつだって自分のワガママを通すもんだぜ!だからな士郎、オメェも多少なりともワガママになりやがれ!」

 

そう締めくくるとバーサーカーは士郎に下の片付けを促す。気が付けば随分と時間が経っていたらしく、下からの喧騒はすっかり鳴りを潜めていた。

 

「そうだな、ありがとう…バーサーカー」

 

そう言って士郎は梯子を使って下に降りて行った。バーサーカーはソレを見届けると背後に向け体を捻る。

 

「んでぇ、師匠…俺ちゃんとしっぽりしに来たわけかい?」

 

「貴様に師匠呼ばわりされる筋合いは無いぞ?」

 

バーサーカーの視線の先から現われたのは、二槍を携えたランサー。戦闘態勢であるらしい構えから、バーサーカーも背中の二刀を抜き構える。

 

不死対不死、第五次聖杯戦争における特異物(イレギュラー)同士の決闘が始まろうとしていた。




どうもデッドプールのキャラが安定しません…皆さんから見てどうですかね?
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