現在…関東地方には大型の台風が接近していた。静岡県沼津市の近海も影響を受けてかなりの荒れようであった。まだ雨は降ってはいないが風が強く高波が海岸へと何度も押し寄せていた。海岸に沿ってある道路を挟んで旅館があり、一人の少女が走って出て来て道路を横断して海岸へと降り立ち…風に流される真っ黒な雲を見据えた。少女は短いショートボブで右側の髪の毛を一房小さな三つ編みにしており強風が三つ編みを揺らし、少女は挑む様に仁王立ちをして唐突に海に向けて叫んだ。
「オオオオ、台風よ…。
台風よ…、コッチに…来うううるうううぅなああああっ!!!!!」
そのとても通る叫び声は何処まで届いたのか、風が少し弱まり…波も穏やかになり…、なんて都合の良い事など起こらず“ダバアアアアッ”といきなり豪雨が降り出して少女を打ち付けた。
「何で~~、“μ’sの高坂穂乃果”さんは一喝一つで雨を止ませたって雑誌にあったのにいい!?」
旅館より出て来た少女…高海千歌は現在人気であるスクールアイドルにハマッて自身もスクールアイドルをやっており、今や伝説となったスクールアイドルグループのμ’sの大ファンである。只今関東地方に大型の台風が近付いており、嘗てμ’sのリーダーである高坂穂乃果と云う女子高生が雨降りの空をそれこそ一喝して晴れ空にしたと云う逸話があり、彼女…千歌はそれを信じて実践しようと家である旅館から嵐の前の外に飛び出したのである。…そして自然を相手に先ず当たり前に玉砕したのであった。
「コラーッ、馬鹿千歌あっ!
くだらない事やってないで旅館の雨戸締め手伝ええ!!」
同じく旅館より出て来た雨具(カッパ)を着た女性…高海三姉妹の次女である高海美渡が末娘の千歌を呼び、“馬鹿”と言われた千歌は頬を膨らませて不機嫌を露にした。
「キイイイッ、誰が馬鹿よ、誰があっ!?」
「お前じゃ、馬鹿ならぬ“デパ”千歌め。台風を追い返すとか貴様はモーゼか何かのつもりか、愚妹よ。」
千歌は姉の上から暴言に肩を怒らせた。因みに美渡の言うデパ千歌のデパは勝手に“出ていくパーな…”千歌の意である。
「ムカーッ、馬鹿馬鹿ゆーな、何がデパ千歌よ。だいたいモーゼって誰よ!?」
美渡は妹の物知らずに対して少々呆れてしまい、質問に対し失笑で返す。因みにモーゼは聖書…“十戒”と云う映画にて海を割った御仁である。
「家ん中で教えてあげるからサッサと来なさい。風邪引くし、ずぶ濡れでブラ丸見えよ。道路側からもマル分かりだから。」
流石にからかうのが面倒くさくなり、美渡は心配な気持ちを少しだけ見せて言った。千歌も自分の胸元を見てちょっとだけ頬を赤らめ苦笑いをし、心配して来てくれた姉に感謝した。
「分かったよ、すぐ行くからねーっ!」
それを聞いた美渡は小さく笑って旅館に戻った。そして千歌はまた荒れ出していた海を睨んで胸一杯に息を吸い込み、一気に吐き出して叫んだ。
「次は絶っ対に負けないからねええええええええええええっ!!!!!!」
叫び声は波と強風…強い雨に書き消されてしまったが、千歌は何気に満足して踵を返そうとしたその時、海より上がって来た“黒い影”が目に入った。千歌は口を半開きにし、その影に見入ってしまう。そのフォルムはまるで恐竜の様で地肌は黒く岩の様に見え、更に太く長い尾っぽを左右に振り、荒れた波打ち際を叩いていた。そして“ソイツ”の小さく丸い目が驚きを隠せずにいる千歌を見つけた。千歌はソイツの頭が真っ直ぐ此方に向いたので向こうも自分に気付いたと判断し、思考を巡らせようとした瞬間、身体が脳を裏切った。…と云うか脳も身体に賛同した。千歌は大股で波打ち際に向かって駆け出し、黒い影のソイツを標的に定めた。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」
物凄い形相で迫る千歌にソイツはビクリと身体を弾ませて海へ逃げようとしたが後ろを向く間もなく千歌の両腕がクワガタの如くソイツの胴体を挟み込み、自分の頭の上まで抱き上げてまたも大きく叫んだ。
「小型不明生物…、否!
“ゴジラ”ッッ、ゲットしたよおおっ!!
……何じゃコレエエ!?!?」
何と、千歌が捕まえたソイツは二ヶ月前に東京を火の海に変え、破壊の限りを尽くした巨大不明生物…“ゴジラ”をそれこそデフォルメ化し三頭身にしたかの様な小型不明生物であった。千歌は捕まえてから動揺が始まり膝がガクガクと震え出すが…、抱き上げられたままで暴れずに自分を見おろすソイツの円らな瞳に気付いて…何か…胸の奥で言葉に出来ない温かさを感じた。
「そうだ…、そうだよ。コレはきっと運命的な何かだよ!
私とキミが嵐の中で出会ってしまったのはきっと神様が作ってくれた“奇跡”…プレゼントなんだ!
だったら、私とキミは今日から友達だあっ!!」
正に自己完結も都合の良い言動でゴジラに似た小さなソイツはやはり理解していない様で首を傾げるが突然千歌に胸に抱き締められてビックリして暴れた。…しかし、千歌のハグの圧力からは逃れる事は敵わなかったのであった。
初めましてこんにちわ、濁酒三十六です。
シン・ゴジラを映画で観に行った時からシン・ゴジラの二次小説を書きたいと思っていたのですが思い付いたのが正に邪道を行くコメディ、シンゴジを小さくしてラブAqoursの千歌ちゃんに預けてしまいました。
基本的にはドタバタコメディですが時次はシン・ゴジラの後日的なものにもなりますので話が進むに連れてシリアスも入ります。