東京…立川にある巨大生物特設災害対策本部…通称“巨災対”の局長室で本部局長である矢口蘭堂はパソコンの画面を見つめながら怪訝な表情で眉間を寄せていた。其処には海沿いにあるダイビングショップの傍で戯れる少女達の動画が映っておりその中に
「何だい、尾頭君?」
「動画に映っている少女達の身元が割れました。」
蘭堂はもう少し時間が掛かると思っていたので驚き、尾藤から彼女達の身元証明を九枚預かる。
「早いな、どんな裏技を使ったんだ?」
「偶々安田君の趣味が講じまして彼女達の事が分かりました。」
安田君とはフルネームを安田龍彦と言って尾頭と同じ創設メンバーである。彼の趣味とは所謂オタク趣味でアニメは勿論アイドルに関してもかなりの無駄な知識を揃えていた。
「彼女達は一部で人気の出てきたスクールアイドルでして最近知名度を上げているグループ…“Aqours”と言うそうです。そして彼女達の在住地が静岡県沼津市の内浦である事も分かりました。」
蘭堂は彼女達の在住地に思わず強く反応してしまう。
「成る程“Aqours”…か、やはり行ってみる必要があるな…沼津市に。」
「局長、実はもう一つ…私から報告があります。」
神妙な顔での尾頭ヒロミからの報告と聞いて蘭堂は彼女の話に耳を傾ける。
「実は最近知り合いになった“高海さん”と言う女性の方がいるのですがその方からある相談を受けました。」
「どの様な相談かな?」
蘭堂に尋ねられた尾頭は返事を返す代わりにスマホを出して“ある画像”を彼に見せた。すると矢口蘭堂は彼女のスマホを乱暴に取り上げて食い入る様に画像を凝視した。…其処には三人の女性と内一人に抱き抱えられたゴジラをそのまま小さくした様な生物が写し出されていた。更に蘭堂は九枚ある身元証明から一枚を引き出して小さなゴジラを抱えた少女と身元証明の顔写真を照らし合わせる。
「
蘭堂はその日の内に尾頭ヒロミの知り合いである高海なる女性と会う事にし、巨災対メンバーに召集をかけた。
静岡県沼津市内浦にある旅館“十千万”。高海志満は居間にある卓袱台の前で正座をしながらスマートフォンで東京にいる母親とゴジオに関する話をしていた。
《貴女の言う通り、貰った画像を見せてゴジオちゃんの事を巨災対のヒロミちゃんに話しちゃったわよ。…此れで良かったの、志満ちゃん?》
「うん、今の生活がずっと何事もなく続くなんて思えない。早かろうが遅かろうが政府が関わって来るのは先ず間違いない、なら此方から勝負に出る方が流れは此方に向く気がするの。
彼等と張り合ったって私達は何も出来ないから…。」
母親との会話を終えて志満はスマホをしまい、物思いに老ける。彼女の妹…高海千歌が嵐の夜にゴジオを連れて来てからすっかり彼女達三姉妹はゴジオの虜になってしまった。強面ながらもコミカルで人懐っこく、とても優しい異形の仔…。しかし姿は破壊神とまで呼ばれているゴジラと変わらず東京で被害に遭った人達には理不尽な憎しみを向けられるであろう。
(出会ってしまったんだもの、守ってあげなきゃね。)
志満は卓袱台にあるお茶を啜り、改めて決意を固め静かに微笑んだ。
浦の星女学院の理事長室では小原鞠莉が普段あまり見せない真剣な表情で向かいにいる険悪な雰囲気を滲ませるセーラー服のショートヘアの少女を見つめ、理事長の机に置かれたノートパソコンの動画に目を移した。セーラー服の少女は意地悪な笑みを浮かべて動画を見る鞠莉の様子を伺う。ノートパソコンに流された動画はあの日果南のお店に集まったAqoursの映像でその中にはハッキリとではないが確かにゴジオの姿が映っていたのである。
「この動画は巨災対に送らせて頂きました。…もう直ぐ政府が動いてこの“化け物”は排除される筈です。」
少女は敵意を露わに睨み、鞠莉は彼女の意志を受ける形で言葉を返した。
「此はゴジラに対しての復讐のつもりなのかしら、諸星さん?」
「其れもありますが、私は貴女達Aqoursも許せません。
あの化け物を隠して飼っていた貴女達が…。
だからAqoursもゴジラと一緒に失くなってしまえばいい!!」
セーラー服の少女…諸星妙伊子は鞠莉に憎悪の言葉を吐き捨てて理事長室をドアを乱暴に開け放ち出ていった。
巨災対、矢口蘭堂と尾頭ヒロミとオリキャラの諸星