AqoursとS·Gの物語   作:濁酒三十六

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迫る不安は容赦なく!?

 放課後、高海千歌達Aqoursのメンバーは理事長室に突然現れた諸星妙伊子と云う少女が置いて行った動画を部室にて確認していた。其処にはあの日の自分達とゴジオが映っていた。画質は余り良くはなく…ゴジオに関しては小さな黒い怪獣の様なものとして取れた。千歌は表情を曇らせ、黒澤ダイヤは眉をひそめて険しくさせる。

 

「…本当に映っちゃってる…。」

「此は由々しき事態ですわ、この動画が“巨災対”に送られたのであれば政府は既にゴジオ捕獲の為に動いていると見るべきですわ!」

「でもこの画質ならゴジオだって分からないかも知れないよ?」

 

 渡辺曜がそう言うと津島善子が即反論した。

 

「甘いわ、政府の調査力ならこのくらいの画質確実に数倍は鮮明にしてしてしまうわ。私だってこの程度なら手直し可能だもん。」

「本当ズラ、嘘くさいズラ~?」

 

 ププッと含み笑いをする国木田花丸のちょっとした意地悪に善子はぷ~っと頬を膨らませた。

 

「言ったわねズラ丸、ならばこの堕天使ヨハネの()()()()を見せてやろうじゃないの!!」

 

 目付きを鋭くさせた堕天使ヨハネはノートパソコンのキーを手慣れた動きでタタタタ…と打ち始めた。千歌と桜内梨子はオオーッと声を漏らし感嘆する。しかし手直しで鮮明に映し出されたゴジオの静止画像を見た途端に二人の顔が眉間に皺を作り嫌そうに歪んだ。作業をした善子まで二人と同じ顔になる。…理由は画質を良くした場面がゴジオの口から飛び出たウツボが善子を強襲した場面であったからだ。同じ目に合っていた千歌と梨子はあの時の惨劇を思い返し“う~ん”と唸った。

 

「善子ちゃんがウツボに叩かれてるのが凄いクッキリしてる…。」

「何でわざわざこの場面を選んだの…?」

「たっ…、偶々、偶々…過ぎたのよ……。」

 

 善子はノートパソコンのディスプレイからプルプルと肩を震わせ如何わしい物かの様に顔を背けた。そんな彼女に黒澤ルビィはクッキリした画像をまじまじと見ながら感心し、感嘆の声を洩らす。

 

「善子ちゃんスゴい、ルビィはこんな事出来ないビィ。」

 

 技術を認められた善子はぱあっと明るい顔となりルビィの手をガシリと両手で握り締めた。

 

「やはり貴女は見る目があるわ、我が使い魔リトルデーモン!」

 

 瞳を爛々と輝かせて見つめる善子にルビィは首を傾げて苦笑いをした。そんなにこやかムードを余所に難しい顔で画面を睨む松浦果南。そしていつもなら一番悪ふざけする小原鞠莉が険しい表情で何やら思い悩んでいる様であった。果南は軽い溜め息を吐き、重たげに口を開いた。

 

「こんな形になっちゃったけど…、此は予想された展開だわ…。

此から東京よりこの学校に転入生が来て…、来年からは共学になる。その殆どの生徒がゴジラに住まいと大切な人を奪われた子達だわ。その憎しみが姿が似ているゴジオに向いてしまうのは避けられない。其れがちょっと早く起きてしまった。巨災対が動いてしまえば、もう私達にはどうする事も出来ない…。」

 

 悔しげにそう語る果南に千歌はムッとして両拳を握り声を張り上げた。

 

「そんな事ないよ、何か出来る筈だよ!!

それに東京のゴジラとゴジオは関係ないもん、東京を壊したのもゴジラでゴジオじゃない!

ゴジオはあの嵐の日に出会った大切な友達…、ううん、家族だもん!…ゴジオは何も悪くはない、だからゴジオは絶対に渡さない!!」

「千歌……。」

 

 千歌のゴジオを守ると云う決意は固かったが…、鞠莉は首を横に振り、意外にも千歌を真っ向から否定した。

 

「千歌…、ゴジオは守れないわ…。」

 

 千歌は落胆と失望を顔に滲ませ、鞠莉に聞き返す。

 

「鞠莉さん…、どうしてそういう事言うの…?」

「私ね…、諸星妙伊子って娘が理事長室に訪れてAqoursに敵意を剥き出しにされた時…とても怖かったのよ。

巨災対も問題だけど…、果南の言う通り今年の文化祭には先立って参加する東京からの転入生は皆ゴジラの被災者達よ。

その全員の憎しみがゴジオだけでなく私達にも向けられるのだけは…、メンバーとして…理事長としても絶対に避けたい。必ず起こる争いを招いてまでゴジオを守る事は…私には出来ないわ…。」

 

 部室内の空気が重くなっていく。小原鞠莉は浦の星女学院の理事長である以上、学校を守る立場にある。学校のスクールアイドルであるAqoursと此から東京から転入して来る生徒達を対立させる訳にはいかないのである。鞠莉は唇を噛み、俯いたまま…千歌に謝る。

 

「…ごめん…ね。」

 

 千歌は茫然としてその場に立ち尽くした。ゴジオと出会ってまだ一ヵ月も経ってはいない。…なのにこんな形で離れ離れの危機が来るなど予想もしていなかった。…いや、千歌は考えようとしなかったのである。彼女の心にゴジオとの騒がしくも楽しい日々が過り胸が苦しくなっていく。彼女は考える。ゴジオと此からもずっと一緒に居られる方法を…。

 考える…考える…考える……考える…。

 

「思い…浮かばない。」

 

 千歌は虚を見つめながらポツリと呟いた。梨子と曜が彼女を心配して寄り添うが二人を見ようとはしない。

 

「ゴジオとずっとずっと一緒にいたいのに…、その為に私は何をすればいいの!?」

「千歌ちゃん…。」

 

 梨子は千歌が普段は絶対に見せない不安を露わにした表情を見て自身も不安を脹らませてしまい口を噤み、曜も今までの様に励ます事が出来ず、梨子と同じく千歌に応えてあげられなかった。

 そして数日が経ち、巨災対本部局長…矢口蘭堂と部下である尾頭ヒロミの姿は旅館十千万の前にあった。




少しシリアス回が続く予定でいます。
そう言えばラブライブサンシャインのWikipediaを見たら千歌の実家である旅館十千万の読みが“とちまん”とありました。何かうまそうな読み名だ。
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