ガールズ&パンツァー 隻腕の操縦士 《本編》   作:砂岩改(やや復活)

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次回十四.五両 過去編 教え子との出会い

 

 

 まほが黒森峰に入学し西住流ここにありと示した翌年。つまりまほと優衣が二年生になった年。厳しい課題をクリアした猛者たちが名乗りを上げて入学してきた。その中には当然、エリカの姿もあった。

 

(ついにやって来たわ)

 

 大講堂に集められた戦車道希望者たちは目の前に姿を表した西住まほに息を飲む。一年にして実力のみで黒森峰をまとめ上げた女傑、そんな彼女の放つオーラに圧されていたのだ。

 そんな中、まほと供に壇上に上がってきた紺色の髪を持つ女性が彼女の横で話始めた。

 

「皆、ごくろう。諸君らは厳しい試験を突破し晴れて我々の仲間になる。我々は先代たちが積み上げてきた実績を受け継がなければならない。各員、それを心に刻み付けておくように」

 

 立ち位置からはおそらく副隊長。その時はその彼女のことを3年生だと皆が思っていた。

 

「自己紹介がまだだったな。皆が知る通り、現隊長の西住まほ二年生だ。そして私は副隊長を勤めさせて貰っている八雲優衣、私も彼女と同じ二年だ。これからはよく顔を出すと思うがよろしく頼む」

 

「え、二年?」

 

 優衣の言葉に驚いたエリカ。それは皆も同じようで少し会場がざわつく。当然だろう、二人とも二年生だと言うことはこの二人が一年生でありながら黒森峰の先輩方を抑え込んだということになる。

 

(相変わらずだなぁ優衣さんは)

 

 周囲がざわつく中、みほは黙って壇上を見つめる。こうなることを分かっていながらあえて学年という情報を自己紹介に付け加えたのだろう。

 

「では各員の実力を我々に見せてもらう。各員に配布したプリント参照の元、一年生同士で紅白戦をしてもらう。では総員、行動開始!」

 

 有無を言わさない優衣の言葉に一斉に動き出す新入生たち。

 

「どっちが勝つと思う?」

 

「赤だろうな…みほは強い。客観的に見てもな」

 

「そうだろうな。だからこそ、私は白に期待している」

 

 圧倒的な成績で新入生首席を獲得したみほ率いる赤チーム。そしてギリギリ二位を勝ち取ったエリカ率いるチーム。

 方や西住流の一角、方や無名の新星。実力の差は歴然だが人間、追い詰められた方がいい味を出すものだ。

 

「また腕を上げたなみほは」

 

「あぁ」

 

 結果はみほ側の勝利だった。だがエリカのチームもみほ側の車両をかなりの数、撃破している。

 

「あの二人が私たちの後を継ぐだろうな」

 

「そうだろうな」

 

 優衣が見つめていた先には悔し涙を浮かべているエリカの姿があった。対してみほは勝ったことに対してあまり嬉しくしそうだった。

 

(あぁ言うところは変わってないか…。なんとかしなきゃまずいかもな)

 

 みほは実力に気持ちが付いていっていない。エリカは気持ちが実力を補っている節がある。今すぐどうこうという話ではないがみほの方は少し考えなければならないだろう。

 

ーー

 

「ご苦労様でした。演習の風景は見させていただきました。中々、期待できる逸材がいますね。流石は西住流」

 

「いえ」

 

 黒森峰生徒会室。重々しい雰囲気と無駄に巨大な部屋と机に座るのは黒森峰を管理運営している生徒たち。そんな彼女らと対峙しているのはまほと優衣。

 

「全国大会まえに1つ、提案があります」

 

「戦車道に関する全ての事項は我々に一任されているのでは?」

 

「西住流の腰巾着は黙っていなさい」

 

「っ!」

 

 副会長の言葉に対し、とっさに反論しようとしたまほだったが優衣が手を静かに握るとそれを腹の中に抑える。

 優衣と生徒会の折り合いはかなり悪い、無名の選手でありながらまほの信頼の厚い彼女は元々、よい関係ではなかった副隊長にまほから推薦で着任した優衣は戦車道と生徒会を完全に切り離した独自の指揮系統を作り上げたせいで関係はさらに悪化している。

 

「これは…」

 

「我々も西住流の真の力を見たいものですから。それに学校としてもこちらの方がありがたいのですがね」

 

「……」

 

 渡された提案の資料を見たまほは横目で優衣を見るが彼女はなにも言わなかった。

 

ーー

 

「みほを副隊長にか…」

 

「私は賛成だ。指揮運用の能力は私よりみほの方が高い」

 

 日も暮れた頃。まほと優衣はまほの大きな私室でノンアルコールビールを片手に提案書を見つめていた。

 

「しかしまだアイツは入ったばかりだ」

 

「それをお前が言うか?黒森峰は絶対実力主義、弱気者は何者であれ淘汰されるのが当然だ」

 

「何を考えている?」

 

 わざとらしく。随分と客観的な優衣の言葉にまほは睨みを効かせながら彼女を見つめる。優衣はその目を真っ正面から受け止め笑みを浮かべる。

 

「荒治療にはなるが、みほには自信が必要だ。自分はそれに足りうる力があるのだと周囲に、そして彼女自身に教えなければならない」

 

「そうだな…」

 

 上に立つものはそれ相応の態度が求められる。特に上下関係の激しい黒森峰ではそれが強い。後から思えば、みほは黒森峰と馬が会わなかったと言うことだったのだろう。

 

ーー

 

「きっつぅ」

 

「こりゃやばいわ」

 

 黒森峰入学から一週間。エリカは友人の直下と供にベンチに突っ伏していた。練習がとにかくキツイ、それは上級生も同じようで疲労を顔に表している。

 

「八雲先輩やばいわ。あれでけろっとしてるんだもん」

 

 直下の視線の先にはまほと打ち合わせをしている優衣の姿があった。まほは基本的に黙して語らずのスタイルを貫いているが対して優衣は細かい指示を出して練習を牽引している。

 実質、練習は優衣が受け待っているようなものだ。彼女も自分達と同じ練習をしているはずなのになぜあれだけ元気なのか。

 

「ほんと、凄いわよね」

 

 エリカは先程、買ったジュースを飲みながら一息着く。話に会わせる彼女だが彼女が見ていたのは優衣とまほと供にいるみほの姿。普段の態度は引っ込み思案でどうしようもない子だが腕は超がつくほどの一級品。時期隊長と呼び声の高い人物だった。

 

「あぁ、みほさんか。彼女も凄いわよね、流石は隊長の妹。憧れの隊長を取られて悔しいのかな?」

 

「違うわよ。馬鹿じゃない!」

 

「はいはい」

 

 直下のからかいに噛みつくように返答するエリカ。そんな下らない話をしていたらあっという間に時間が過ぎてしまい夕食の時間になってしまった。

 

「お前たち。そんな所で油を売ってないで食堂に行けよ」

 

「「え?」」

 

 突然、後ろから話しかけられた二人は声の主へと顔を向けるとそこには笑っている優衣の姿があった。

 

「「ふ、副隊長!!」」

 

 周りをよく見れば人は居なくなり、自分達だけになっていた。どうやらまほとみほは先に去ったようで優衣以外の人物は見当たらない。

 

「練習をキツくしているのは悪いがな」

 

「いえ!」

 

「副隊長。お、お食事を一緒にしても?」

 

「あぁ、いいぞ」

 

 エリカの突然の言葉に優衣は驚きながらも頷く。突然の誘いに一緒にいた直下も驚いていたが了承され一安心したようだった。

 

ーー

 

「そうか、みほは友達がいないのか…」

 

「私の主観ですが」

 

「そういえば私も見てないなぁ。同級生といるの」

 

 食堂にて優衣が聞いたのはみほの事。幼い頃から面倒を見ている身としてはやはり気になる案件だったからだ。

 

「あの、副隊長」

 

「優衣でいいよ。今後のためにもそう呼んだ方がいい」

 

「では優衣先輩。西住隊長とは付き合いが長いのですか?」

 

 エリカの質問に優衣は静かに頷く。

 

「私はあいつとは幼馴染みでな。家が近かったし、まさか高校まで一緒だとは思わなかったが」

 

「へぇ、まさに隊長の右腕ってことですね」

 

「そんなことはない。私はコバンザメみたいなものさ」

 

 優衣は直下の言葉に少し照れくさそうに笑うと食事を続ける。そんな様子をエリカは静かに見つめる。

 功績を上げたい、勝ち上りたい、上昇思考の強い彼女には出来ないであろうやり方。

 

(私も本当に仕えたいと思える隊長がいるのかしら)

 

 まほは違う。あれはアイドルだとかそう言った類いの憧れ。身近な、例えば同級生でそのような人物がいれば違っていたのだろうかと思えてくる。

 そう思うと頭に浮かぶのは西住みほ。だが正直、戦車に乗っている時はともかくあのようなヘラヘラしたような奴に従うぐらいなら自分が実力をつけてのしあがりたい。そう思えてならない。

 

(優衣さんは何を思って隊長に仕えているんだろう)

 

 権力とか肩書きになびくような人物には見えない。彼女をこうさせているのは一体なにか、それがすごく気になってしまった。

 

 些細な先輩と後輩の交流、そこで生まれた疑問が後に彼女を突き動かすこととなるのだった。

 

 

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