ガールズ&パンツァー 隻腕の操縦士 《本編》 作:砂岩改(やや復活)
けっこう無茶な設定もあるかと思いますが大目に見てくれると嬉しいです。
そして相変わらずグダグダです。
「思ったより集まりませんでしたね」
「私たちを入れて25人です」
生徒会の面子が前で話しているのに対し戦車道を選んだ面子は思い思いに話している。
「いや~、始まるね」
「賽は投げられた」
「久しぶりの戦車です!」
優依を中心としたメンバーも戦車道の開始を今か今かと待ち遠しいようで楽しく談笑している。
「ついに始まるか…」
優依は左肩を優しく撫でながら静かに呟いた、海風が左腕の袖を揺らす。
「これより戦車道の授業を始める」
「あ、あの。戦車はティーガーですか?それとも…」
「ええっと、なんだったけな」
桃の言葉に対し誰かが放った言葉に答えるように後ろにあった倉庫の扉が開かれる。
各自が期待に胸を躍らせる中、目の前に映ったのはサビだらけの戦車だった。
「なにー」
「ありえなぁい…」
「わびさびでよろしいんじゃ」
「これはただの鉄サビ」
予想に対しあまりの落差に不満の声が上がる。
そんな中サビた戦車に近づく二つの影、優依とみほだった。
2人は大まかにだが戦車を見やり実際に触れてみる。
「Ⅳ号戦車か、性能面のバランスが取れた良い車両だ。使えないわけじゃなさそうだが」
「そうですね、装甲も転輪も大丈夫そうですし。これなら行けます」
経験者二人の言葉にそれを見ていた者達から歓喜の声が上がるのだった。
ーーーー
戦車道の参加人数は25人、大体6両ほどの戦車を発掘しなければならないが幸いな事に優依たちのとこには熊本から送られてくる戦車がある。
目の前にあるⅣ号戦車を除く4両の発掘作業を開始するのだった。
「やぁ、姉貴って優依だったんだ。イオから聞いてたよ」
「中嶋か。よろしく頼む」
優依たちは戦車を回収する自動車部と合流、車両運搬中の事故を防ぐために戦車の知識を持つものが自動車部には必要だったのだ。
「まさか優依が戦車道をやってたんてね」
「言ってなかったからな」
優依と中嶋の間柄は端的に言えばクラスメイトだ。
特に親しいわけでもなくお互いに無関心でもない、顔を合わせば軽く談笑する程度の仲だ。
「そう言えばイオは何処に行ったんだ?」
「イッチーなら運搬用のトレーラーを持ってきてるよ」
「持ってきましたよ先輩!」
中嶋の言葉と共にけたましいエンジン音が聞こえてくる。
戦車を運ぶだけあってかなり大きなトレーラーだ。
「ていうかお前、自動車部だったんだな」
「知らなかったんですか?」
「知らなかったな」
再会して半年ほどだが自動車部にいるなんて始めて聞いた。
そう言えば、そう言った話をあまりしなかった様な気がする。
「お、姉貴だ」
「姉貴って優依だったんだぁ」
「姉貴さ~ん」
「お、おう…」
スズキ、ホシノ、ツチヤは作業中だというのに優依を見かけると姉貴と呼び手を振る。
姉貴の嵐に若干たじろぐ優依だがしっかりと手を振り応じる。
「姉貴人気ですね」
「よく分からんが原因はお前だろ」
「その名は響き渡る…」
「優依ってこんなに有名人だったんだぁ」
「どうしてそうなる!」
案外名を知られていることに驚く美優と香奈恵はそれぞれの感想を述べる。
何故か盛大に勘違いしていそうな二人に対し優依はとりあえずツッコミを入れるが心配で仕方がない。
「はい、もしもし。了解でぇす」
「見つかった?」
「うん、林の方で1両見つかったそうだよ38Tだって」
仲良く談笑をしていると中嶋の携帯が鳴り響き早速依頼がやってくる。
「38Tか…」
「どんなのなの?」
「38Tは防御力と機動力のバランスが良い車両ですね。大戦初期ではⅢ号戦車の代わりに主力として扱われていた奴です。」
美優の質問に答えたのはイオ、彼女の得意げな説明に皆が感心する。
「そんなピーキーな車両じゃないから、扱うにはそう難しくないだろう。」
「まぁ、色々と忙しくはなるでしょうけど…」
「まぁな」
流石は戦車道経験者だけあって戦車のことには詳しい。
この調子では次々と戦車が出てくるだろう、早速直行した自動車部と優依たち。
優依の指示の元、38Tを自動車部の保有する戦車運搬車《スキャンメル タンク トランスポーター》に載せられ最初の集合地点に運ばれる。
「て言うか良くこんなの持ってたな」
「もちろん買ったんだよ。予算でね」
「自動車部は金持ちだな」
「そんな事ないよ」
スキャンメルの荷台で揺られながら中嶋と話す優依、背後では38Tがギシギシ言っていて恐いがこればかりは仕方がない。
「優依ぃ。イオちゃんがなんか言ってるよぉ…」
荷台にへばりついて震える美優は運転席から叫んでいるイオに気づき声を張り上げる。
「これ無線ね」
「ありがとう、どうしたイオ?」
「学園艦に来ていたサークルKサンクスの船から姉貴への荷物があったそうです!」
無線越しに話すイオの言葉に優依は驚く。連絡してからそんなに経っていないというのに届くとは、いったいどんな手を使ったのか聞いてみたいものだ。
「イオ、途中で降ろしてくれ。」
「分かりました!
「ワンマンアーミーか?」
「1人で行くの?」
「あぁ、私用に仕立ててあるらしいからな。一通り見ておきたい」
「分かったわ、気をつけてね!」
「あぁ」
林を抜け舗装された道に出るとそのまま優依は降り学園艦の搬入口へと向かうのだった。
その後、崖の洞窟・池の中・古びた倉庫で八九式中戦車甲型・Ⅲ号突撃砲F型・M3中戦車リー、が発見されたのだった。
ーーーー
「八九式中戦車甲型、38T軽戦車、Ⅲ号突撃砲F型、M3中戦車リー、Ⅳ号中戦車D型…。どう振り分けますか?」
「見つけたもんが見つけた戦車に乗れば良いんじゃない」
「そんな決め方で良いんですか?」
見つかった戦車は全て国籍もバラバラで他の一流校に比べれば装甲も火力も見劣りする物ばかりだった。
「分かりましたが…。やはり期待の物は出てきませんでしたか」
「仕方ないよ。優依ちゃんのやつに期待するしかないんじゃない?」
「はい…」
見つかった戦車を見て桃はあまり良い表情を見せなかった。
しかし杏の言う事も一理ある、元黒森峰の優依と優依の家が保有する戦車を用いればなんとかなるのでは無いかと。
「姉貴が来た!」
そんな時だ、イオが嬉しそうに言葉を発したのは。
ダークグリーンに塗装された戦車が轟音を鳴らしながら停車し中から優依が姿を表す。
「これは…ヘルキャット…。」
「おぉ!これはM18!路上最大速度80km/hという、第二次世界大戦の装軌式装甲戦闘車両としては世界最速を誇った傑作選車です!」
停車した戦車を見ていち早く識別したみほはその名を呟くが優花里の歓喜の声に塗りつぶされてしまう。
「おぉ!凄いじゃないか!?」
優花里の言葉を聞いていた桃も歓喜の声を上げる、だが戦車を知っている杏は良いんだか悪いんだか微妙な面持ちでM18を見つめていた。
「でも装甲が一番厚い砲塔前面部で1インチ(25.4mm)、他の部分でも0.5インチ(12.7mm)でやろうと思えば機銃でも貫通する薄い装甲しか待ってないんですよ」
「つまり当たったら終わりって事なんだよねぇ、これが」
「ダメじゃないか!」
「そんな事はないぞ」
優花里と杏の話を聞いて嘆いていた桃の会話に割り込むように話したのは優依だった。
「私は黒森峰で操縦長をしていたんだぞ。装甲が薄ければ当てられないように立ち回ってみせる」
「「おぉ…」」
自信満々の優依の姿に他の桃以外の面子は思わず関心の声を上げる。決して蔑ろに出来ない根拠を彼女は持っていたそれにこの安心感は優依自身の人間性から出てくるものだろう。
「M18は優依ちゃんに任すね。頼りにしてるよ」
「あぁ…任せてくれ」
ーーーー
「って言うか操縦席ってどうなってるんですか?」
「中々おもしろい感じになってるぞ」
他のチームが戦車を洗車する中、綺麗にされていたM18にあてられた優依チームことEチームは戦車の内装を確認していた。
「はぁ、改造してありますねぇ」
特に目を見張るのはメインの操縦席、M18はメインの操縦席以外に副操縦席があるためその違いがよく分かる。
まず片手で扱えるようにハンドル式に変更され変速レバーも右に移植されている。その分、席が左に移動しているため広さ的には変わりない。
ハンドルの傍には指で操作できる小さなレバーがあるのだがこれはギアチェンジの際にハンドルを固定するためのものだ。
「おもしろいだろう?」
「実際どうでした?」
「訓練は必要だがこれなら以前のレベルまで持って行けそうだ」
「それは楽しみですね!」
眼をキラキラとさせて喜ぶイオの顔が眩しすぎる、彼女も優依が黒森峰に所属していた時代を見てきているため期待も一層、膨らむと言うものだ。
「優依ぃ…。誰がどうするの?」
「何がやりたい?」
「そんなのでいいの?」
「そんなもんだろ、最初は」
「刃を穿つ狩人を所望する」
「砲手な…。」
それぞれの希望と適性を優依が判断した結果決めたチーム内の役割分担の結果がこれだ。
操縦士兼車長:蒼流優依
車長兼操縦士:香月イオ
装填手兼通信士:天道美優
砲手:神崎香奈恵
優依は基本的に操縦士だが場合によっては車長へと変わりイオも基本的に車長だが場合によっては交代すると言う感じだ。
車長の経験としては優依の方が豊富であり、イオが全く経験がないと言う事を考慮しての配置だ。
副操縦席があるM18ならではの配置とも言えるだろう。
「まさかM18だとは思いませんでした」
「そうだな、ティーガーとは違ってコイツは中々の機動性だ上手く扱えるかどうか…」
美優と香奈恵がイオから各装置の扱い方の説明を受けているのを眺めていた優依に話しかけたのは顔に汚れをつけたみほだった。
「それで、あれは誰だ?」
二人で仲良く話しているたのだが後ろからの視線を感じ目線だけを後方に移動させる。そして見つけたのはジッとこちらを見つめる少女の姿が…。
「秋山優花里さん、戦車を探すときに仲良くなりまして」
「そうなのか、友だちが増えて良かったな」
「はい!」
優依の言葉に元気良く答えるみほ、その姿を見て彼女は安堵する。
黒森峰時代でもあまり満面の笑みを見せていなかったみほが笑っていられるこの環境、最初はあまり乗り気ではなかったが。
「こう言うのも悪くないな」
「え?」
「こっちの話だ」
そう言うと優依は真底楽しそうに笑うのだった。