『トウキョウタワー』頂上。
【何故、零のドラゴン 竜の御子たる、あなた様が家畜を助けるですか……】
13班の前にリュウは立つ。これでは真竜ニアラは手を出せない。すでに回復のトプリフと防御力を上げるミカテクトを掛けている。
【故郷で『神』たる我らを恐れ、根絶やしにしようとした家畜どもへの恨みは忘れたのですか! 竜の御子よ】
刀子たちの時とは違い、上から目線の喋り方ではない。
「『神』たる我らか……」
睨み合うリュウと真竜ニアラ。
「お前たち真竜は同胞たちの前で戦うこともできず、かといって死ぬこともできず、竜の力も捨てることも出来なかった。だから宇宙へと逃げた」
事実なので真竜ニアラは反論できない。
長い旅路の果てに恨みが変質し、真竜は人類を獲物みなすようになった。より良く味わうため、文明の種を蒔くようにもなった。
「人類は家畜ではない、強い意志を持った星の子だ!」
一歩、リュウは前に出ると、真竜ニアラは一歩、下がる。
「現にニアラ、お前は人間との戦いに敗れ、ボロボロじゃないか」
真竜ニアラの体はボロボロ。幸い不意打ちが成功したから、形成が逆転で来ただけ。
「俺が現れなくとも、俺以外の誰かが現れても、お前は負けていた」
体格差は圧倒的に真竜ニアラの方が大きいのに、リュウに追い込まれている。
「せめて同胞として、俺が眠らせてやる」
リュウの姿が変わった、金色の、それも真竜ニアラとは違い、美しく神々しい姿のドラゴンに変わった。
開いた口から放たれる強力無比なブレス。真竜ニアラは逃げるどころか動くことさえ、叶わず。
都庁ではパーティが開かれていた。主人公はもちろん、13班。
「まーまー、皆さんたら~」
ワイングラス片手に、ほんのり桜色のピンクハーレー。イケメンにちやほやされてウキウキ状態。
子供たちに取り囲まれ、力男はサインをねだられ、慣れていないので狼狽えながらも、断ることなく、全員にサインしてあげる。
一応、パーティの主催者はキリノ。
表情に乏しいはずのミロクとミイナも、今日は楽しそう。
都庁の一階を丸々使った会場には13班の他、8班のミヤ、4班のワジ、レイミ、ケイマに10班のガトウとアオイ。リンと自衛隊も来ている。
SKYのタケハヤ、ネコ、ダイゴ。タケハヤの顔色は、随分、良くなっている。そのおかげでネコもダイゴもハイテンション。
沢山の都民たち。都庁に避難してしてきた人は、ほぼ参加している。
みんなみんな、ドラゴンの脅威から解放され、大喜びで大はしゃぎ。
ちやほやされるのが苦手な刀子は、みんなと離れて、1人でリンゴジュースを飲んでいた。
正直な気持ち、ドラゴン襲撃時には、あんまり役に立たなかった政治家がどや顔しているのは呆れる。
「先輩、どうしたんですか、元気がないですね」
アオイが近寄ってきた。
「もしかして、リュウくんが来てないのが気になります?」
図星。髪の色と瞳の色が変わっていたが『トウキョウタワー』の頂上で助けてくれたのは間違いなく、リュウだと刀子は確信している。
ならばリュウも、このパーティの主役の一人のはず。
「キリノさんも招待状用意していたんですよ。結構、あっちこっち探したんですけど、見つからなくて……」
リュウが来なくて、アオイも残念がっていた。
「でも招待状を出しても、あいつは来ないだろうな……」
パーティの参加者の中には、リュウがドラゴンに変身するのを目撃した人もいる。その数は少なくなし。
「リュウくんに助けてもらっておいて」
ぷんぷんと頬を膨らませる。
リュウが助けてくれたことは頭では解っているが、感情が付いてこない。
人々がドラゴンの恐怖から解放されるには、まだまだ時間がかかる。
「それを含めて、人間なんだ」
そんな人たちを守るのが自分たち《狩る者》である、これからも。
旅支度の準備を整えているリュウ、初音ミクも旅支度。
ドラゴンの脅威が去った今、いつまでも東京に留まってはいけない。「お客さんだよ」
パタパタと妖精のクゥインが飛んでくる。
こっちへ向かって、歩いてくるのはアイテルとエメル。
エメルのドラゴンに対する思いを知っている初音ミクはリュウを庇うように、身構える。
「今日は争いに来たんではない」
そうエメルが言ったので、身構えを解く。
「刀子に頼まれて、見送りに来た」
刀子はリュウが黙って、東京を去ることを悟っていた。見送りたいが、パーティの主賓である自分はパーティを抜け出すことはできない。そこでアイテルとエメルに頼んだ。
代わりに握手をしてきてくれ、その頼みに応じてアイテルは手を出し、何の気兼ねもなく、リュウは握手。
エメルは手を出さない。
「聞きたいことがある」
表情を変えず、リュウの顔、特に目をしっかりと見据える。
「多くのドラゴンは戦うよりも死を受け入れた。ドラゴンの力を捨てて、生き延びたものもいた。死ぬことも力を捨てることも出来なかったドラゴンは宇宙へ逃げた。それが『真竜』」
アイテルとエメルは、リュウと真竜ニアラの会話を聞いていた。テレパシーで。
「死んでもいないし、ドラゴンの力も捨てていない。『真竜』とも行動を共にしていない。あなたは何なんだ?」
少々、挑発的なエメルの問いかけを真っ正面から受け止める。
「ドラゴンが滅んで幾世紀もたってから、卵の化石から生まれたんだ、俺は」
嘘ではない、本当に鉱山にあったドラゴンの卵の化石からリュウは生まれた。
エメルもリュウの目を見て、真実だと理解する。
「力を捨てたものの子孫の中には、俺に復讐を期待している人もいたが、俺には復讐に意味があるとは思えなかったし、何より、生まれる前のことだからね」
復讐に意味の見いだせないリュウと、未だドラゴンへの憎しみを捨てきれないエメル。
「俺は自分の足で、前を歩くことを選んだんだ。例え、それ選択が間違っていたとしても、俺自身で選んだ道だ、後悔はしない」
どんなに時間が過ぎても、あの時の選択を後悔していない。この言葉はアイテルとエメルに贈る言葉でもある。
リュウは自分から手を差し出した。
最初は戸惑っていたが、エメルも意を決して握手した。感触で解る。リュウが強くて、優しいと。
「リュウ、早く出発しないと日が暮れる前に、東京を出れなくなるよ。早く早く」
クゥインがリュウの頭の上を飛び回り、急かす。
そうだねと、リュウは荷物を持ち上げる。日が暮れる前に東京を出たい、リュウのことを知っている人に出会ったら、ややこしいことになる。だからこそ、パーティを行われている、この日を旅立ちの日にした。
「またいつか」
笑顔で、それだけを言い残し、歩き出す。飛んでついていくクゥイン。
「またね」
見送るアイテル。
一時、戸惑いを見せたが、エメルも、
「……またな」
見送る。
アイテルとエメルに一礼してから、初音ミクも荷物を背負って、リュウについていく。
今日は天気がいい、とっても気持ちが良くなった初音ミクは、歌姫としての性分を抑えられなくなってしまう。
「忘れかけたなにかを さがしながら
汚れのないつばさを 抱きしめたい
波打ち際に埋もれてた かなしみの貝がら
ひろって歩いた日々はもう すててしまおう
砂のねむりがさめるころ しあわせの花束
風が運んできてくれた もう 振り返らない
この地球(ほし)のどこかで 笑顔がうまれてる
さあ 君と行こう 手をつないで
忘れかけたなにかを さがしながら
汚れのないつばさを 抱きしめたい
空色にそまるひとみ キラキラかがやいて
過ぎ去ってゆくあの日々は もう 遠いまぼろし
想い出の河わたるたび 臆病になってた
けど 君がいてくれたから
もう 勇気を出せる
この地球はいつでも 夢があふれている
さあ 君と行こう どんなときも
こわれそうなこころを まもりながら
君の熱いまなざしを みていたい
忘れかけたなにかを さがしながら
汚れのないつばさを 抱きしめたい」
最初から、ラストに初音ミクに『PURE AGAIN』を歌わせることは決めていました。
『PURE AGAIN』は名曲です。