ブレス オブ セブンスドラゴン   作:マチカネ

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 『山手線天球儀』での『帝竜』ジゴワットとの対決。


第三章 天の超電磁砲

 都庁の会議室。この席には13班も呼ばれていた。

「威力は、TNT換算で80ギガトン。この爆発で、高田馬場付近は消滅──、巨大なクレーターとなりました」

 痛々し気にキリノが報告。高田馬場付近には、まだ生存者がいた可能性が高い。あの様子だと、絶望的。

「これは電磁砲を用いた『帝竜』のレーザー攻撃によるもので、その発射元は池袋上空500m」

 恐るべきは、その破壊力。『帝竜』とは『真竜』の率いるドラゴンの大幹部的な存在で、並みドラゴンとは桁違いの力を持っている。

 かといって、このまま放置はしておけない。犠牲者が増えるばかりである。

「作戦は私が考えるわ」

 と、言ってから、ナツメは13班に向き直る。

「ところで例の人物は?」

 リュウの事。この席に13班が呼ばれたのも、この報告をするため。

「超電磁砲の騒ぎの間に姿を消していました」

 正直に刀子は報告。衝撃の余波が収まった時には、リュウは初音ミクと共に姿を消していた。

「で、実力は?」

 それがナツメの一番知りたいこと。

「かなりの手練れだと思われます、詳しくは報告書に」

 直接試したリュウの実力。間違いなく達人である。決闘を目の当たりにしたピンクハーレーと力男も同じ見解。

「あなたたちが、そういうんだったら、間違いなく《S級》の実力者ね。なんとしても、こちらで確保したいわ」

 まるで超電磁砲より、こちらの方に興味かあるよう。

 突然、刀子が窓の方を向く。

「どうした?」

 何かあったのかと力男。

「いや、今、視線を感じて……」

 力男も窓のほうを向くが、窓には外の景色しか映してはいない。それもそのはず。

「ここ、何階だと持っているのよ。羽根でもないと、こんな高いところまで来れないわよ~」

 確かに、ピンクハーレーの言うように羽根で飛んでこなければ、ここを窓の外から覗くことなんて不可能。

「気のせいか……」

 

 

 

 パタパタと都庁の窓から離れていく、可愛らしい羽音。

「いきなり、こっちを見るんだもん、とても怖かったよう」

 

 

 

 高田馬場を消滅させた『帝竜』は池袋の山手線にいることが判明。

 山手線とは言っても『帝竜』ジゴワットによって歪められ、天に伸びるダンジョン『天球儀』と化してしまっている。

 しかも超電磁砲は一つだけでなく、『山手線天球儀』随所に設置されていた。何も対策を講じずに乗り込むのは自殺行為以外の何物でもない。

 

 

 

「ただ、お互いに足りないものを補った方が、成果は出やすい。解るわよね?」

 ナツメは陸上自衛隊の三佐の女性、リン、堂島凛に、自らの立てた作戦を話す。

 それは非常な作戦。自衛隊員が決死の覚悟で、設置された電磁砲を一つ一つ取り除いていくというもの。

 無論、向こうだって黙って取り除かれたりしない、近づくだけで電磁砲を撃って来る。直撃どころか、掠っただでも命はなし。

 一応、強化セラミックの盾を用意しているが、焼け石に水で対して防ぎきれない。

 はっきり言ってしまえば、仲間を犠牲にする作戦。

 本来、多大の犠牲を出す、この作戦は受け入られるようなものではない。しかし『帝竜』ジゴワットを野放しにしていたら、再び超電磁砲を撃たれてしまう。

 そうなれば、さらに多大なる犠牲が出ることになる。

 自衛隊は市民を守るのが役目、皆、その覚悟を決めて自衛隊員になったのだ。

 ナツメの立てた作戦以外に、いい作戦を思いつかないがぎり、リンには、この作戦を受けざる他にない。

 

 

 

「ダンジョン内の電磁砲は、アタシたちがやる。お前たちはドラゴンと『帝竜』を倒す。役割分担てやつさ」

 『帝竜』ジゴワットとの戦いは自衛隊との共同戦線となる。ナツメから、その指示を13班、刀子、ピンクハーレーと力男も受けている。話すリンの顔には暗さは感じられない。

 まず自衛隊が電磁砲を排除。13班は『山手線天球儀』へ赴き、『帝竜』ジゴワットと倒すという、聞く限りではシンプルな作戦。

「日本を―、いや、世界を頼むぞ」

 そう言い、一礼して、退室したリン。

「……」

 その背中を刀子は見ている。

「どうかしたの? 難しい顔しちゃって~」

「うん、リンの表情が気になって」

 リンは本作戦が自衛隊を犠牲にする作戦だとは話していない。言えば止められるのは解っていたから。

「リンが最後に言った言葉も気になるな」

 力男も気になっていた。

 

 

 

 夜の闇の中に、ぼっと浮かび明かる焚火。適量の塩を掛けた川魚を串に刺して焼いている。パチッと油が弾け飛ぶ。

「~というわけなんだよう」

 パタパタと羽根で宙に浮かびながら、妖精のクゥインは都庁で盗み聞きしてきた内容をリュウと初音ミクに話す。

「そうか、ご苦労だったね」

 いい具合に焼けた魚を一匹取り、ご褒美に妖精クゥインにあげると、

「リュウ、ありがとうだよう」

 と飛び回って、大喜び。

「なるほど、捨て駒作戦か……」

 タケハヤの言った『だがあのババァは違う、あのババァを信用するな』の言葉を否が応でも連想させる。

 

 

 

 『山手線天球儀』から、少し離れた場所に来た13班。

 歪められ、天高く伸びる山手線がここからでも見え、その形は何かの巣のよう。

 一度、『帝竜』ウォークライとの戦いは経験しているとはいえ、相手は巨体な体と力を持つ怪物、油断は禁物。

 『帝竜』ジゴワットとの戦いは近い。

 自然に緊張感が増し、刀子は刀の柄を強く握りしめる。

 ピンクハーレーと力男も同じく、緊張と同時に闘志も高まって行く。

 その時、巨大な何かが頭上を通り過ぎて行った。

 

 

 

 『山手線天球儀』の前に集まった自衛隊員たち。

「みんな、すまない。本当にすまない」

 頭を下げるリンは泣いていた。その内心には悔しさがあった。もし自分に《狩る者》ような力があればと。

「頭を下げないで下さいよ、隊長」

「そうですよ、美人がもったいない」

「隊長は笑顔が一番、可愛いんだから」

 自衛隊たちは、皆、笑顔である。ここにいる自衛隊員たちはリンも含め、作戦の内容を知ってなお、覚悟を決めて、志願して、ここに来た。それぞれの大切なもの大事なものを守るために。

 その時だった、巨大な何かが飛来した。

 リンたち自衛隊員は、一斉に上空を見上げる。

 天空に羽ばたいていたのはドラゴン。

 ドラゴンと言っても並みのドラゴンではない。巨大な体躯に、宝石のように蒼く輝く鱗、全身から放たれるオーラ。

 間違いない『帝竜』クラスのドラゴン。

「嘘……」

 無意識にリンは言葉を漏らす。

 決死の覚悟を持って、この場に集まってきた自衛隊員たちは絶望に包まれる。まさか『帝竜』がもう1体現れるなんて……。

 蒼いドラゴンが大きく口を開けた。何をやろうとしているのかは考えるまでもない。ブレス。それも『帝竜』クラスとなれば、その威力は絶大。

「みんな、散らばって退避しろ!」

 リンの命令が響き渡る。しかし、いくら散開して逃げたところで『帝竜』クラスのブレスの直撃を受けたら、《狩る者》なら、いざ知らず、ただの人間なら一たまりもない。

 周囲の気温が一気に下がる。

 寒い、凍えるほどに。リンがこれで死ぬのかと、思っていたが、寒いだけで別条はない。

 恐る恐る周囲を見回してみれば、他の自衛隊員たちも同じ。誰一人として死んではおらず。

「綺麗……」

 ついついリンは呟いてしまう。

 辺りにはキラキラと輝く結晶が待っていた。ダイヤモンドダスト。

 何が起こったのか。

 蒼いドラゴンは自衛隊ではなく、『山手線天球儀』に向かって、強烈な冷気のブレスを吐きかけていた。

「!」

 驚きのあまり、リンは言葉が出て来ない。よもやドラゴンが『帝竜』の生み出したダンジョンに攻撃するなんて、あり得ない状況。

「リン! 大丈夫か」

 刀子たち、13班が駆けつけてくる。本来の作戦では自衛隊員が電磁砲を排除してから『山手線天球儀』に突入する予定だったが、飛んでいく蒼いドラゴンを見て、急いで駆けつけてきた。

 駆けつけて来たのは13班だけてはない。

「こりゃ、一体、どうゆうことだ?」

 ガトウのこと、元傭兵の臥藤玄司(ガトウ ゲンジ)率いるムラクモ機関の戦闘班10班。メンバーはガトウと雨瀬アオイ(うのせ アオイ)たち。

 一度、こちらを見た後、蒼いドラゴンは飛び去って行く。

 刀子には、一瞬、蒼いドラゴンが微笑んだように見えた。

 

 

 

 刀子が息を吐くと、白く染まる。

 霜が降りるほど、周囲の気温は低く、寒い。

「寒いわね~」

 と言いつつ、ヒョウ柄のガウンを着ているからまし。

 力男は無言、寒いのか平気なのか、表情からは読み取れない。レンズの曇ったゴーグルを外して拭いている。

 蒼いドラゴンが飛び去って、随分経つのに、その影響が残留している。それだけ、ブレスの勢いが凄まじかった証拠。

「寒い寒い寒い」

 ガタガタ震えているアオイ。薄着だから、この寒さは堪らない。

 見かねた自衛隊員の1人、イコマが自分の来ていた上着を脱ぎ、

「少し汗臭いかもしれませんが、どうぞ」

 差し出す。

「えっ、いいの」

 見ればイコマはランニング姿、見るからに寒そう。

「かまいません、鍛え上げていますから」

 そう言って走り去っていく。

 

 パリンと、歩いてくるガトウに踏まれた凍った水溜まりが割れる。

「これから、どうする?」

 今後の作戦のことをリンに尋ねる。蒼いドラゴンが作戦に与えた影響はいかほどか。

「どうもしない、当初の予定通り、私たちは先行し、電磁砲を排除。13班がドラゴンと『帝竜』を倒す。作戦に変更はない」

 一度、姿勢を正してから、一礼して、他の自衛隊員たちと合流『山手線天球儀』へ向かう。

「やれやれ、勇ましい、ネェちゃんだな」

 バリバリと頭を掻く。

 

 

 『山手線天球儀』は氷の世界になっていた。あちらこちらが凍りついている。

「そういえば、ドラゴンのブレスで出来た氷は、中々、溶けないと聞いたな……」

 氷に覆われた『山手線天球儀』をリンは見回す。

 モンスターもドラゴンも凍り、息絶えている。中には息のあるドラゴンもいたが、弱っていて、放っておいても、すぐに息絶えるだろう。

 各所に電磁砲が配置されているが、どれもこれも、凍って機能停止し、たまに動くものもあるが、真面に作動することなく、簡単に排除することが出来た。

 電磁砲を排除しながら、どんどんと、先へ進んでいく。

 すでに10班と13班は一緒に『山手線天球儀』に突入している。時期に追いついてくる。

 

 簡単に排除できるとはいえ、電磁砲の数は多い。もし凍って機能停止していなかったら、どれだけの犠牲が出ただろう。

 嫌でもリンは考えさせられる。あの蒼いドラゴンが助けてくれてたのではないかと。

 しかし、その考えを否定する。ドラゴンは世界の敵、人類の敵。多くの命が奪われた。自衛隊員の中にも命を落としたものは少なくない。

「きっと、縄張り争いか覇権争いが原因の仲間割れだろう」

 そう結論付けて、自身を納得させた。

「危ねぇ!」

 追いついてきていたガトウの警告で、ハッと我に返る。考え事をしていたため。目の前にあったデカブツ、超電磁砲の存在に気が付かなかった。

 こいつは他のとは違い、まだ生きていた。

 リン目がけて発射される超電磁砲。それでもリンは身を挺して、超電磁砲の破壊を試みる。

 そんなリンを突き飛ばすガトウ。身代わりに直撃を受けながらも超電磁砲を攻撃。

「じ、13班……、ぼさっとすんな……」

 そう言い残し、倒れる。

「ちくしょう!」

 刀子は日本刀を抜き放ち、ガトウの攻撃で完全に機能障害を引き起こした超電磁砲に向かう。

 ピンクハーレーと力男も続く。

 13班にとって、超電磁砲とはいえ、機能障害を起こした状態では敵ではない。数分で完全に破壊してしまう。

 

 

 

「ガトウ!」

 倒れているガトウに駆けつけるアオイ。

「さんざ戦争なんだ、かっこつけといて……、一時の感情に流されて、死ぬなんてよ……」

 刀子、ピンクハーレー、力男も見守っている。みな、辛辣な表情。班は違えども、ガトウは大切な仲間。

「ガトウさん……」

 泣いているアオイは縋りつこうとした。

「触らないでください。まだ応急処置がてきません」

 女性自衛官のクリバヤシに怒られる。

「応急処置?」

「はい、重傷ですが命には別状はありません。蒼いドラゴンのブレスで超電磁砲が、かなりの機能低下を起こし、十分な威力を発揮しなかったこともありますが、何より、当人が頑丈で。流石は元傭兵です」

 倒れたまま応急処置を受けているガトウ。

「チィ、あと、少しでアオイの抱擁を受けられたものを」

 沈黙の後、

「なんで死にそうなことセリフを言っているのよ」

 泣きながら怒って、どつこうといるのを、

「落ち着いてください、命に別状はないと言っても、一応、重傷なんですよ」

 女自衛隊員に止められる。

 その光景を見て、思わず笑てしまう刀子、ピンクハーレー、力男。13班もガトウのことを心配して、その反動が出てしまった。

 リンが来たことで、笑いを止める。

「ガトウ殿ことは私たちに任せてくれ、君たちは『帝竜』を」

 自衛隊員は一斉に、敬礼。

 静かに頷く刀子たち。

 この場はリンたち自衛隊員に任せ『帝竜』ジゴワットの待つ頂上を目指す。

 

 

 

 『山手線天球儀』の頂上。上空500mの高度のため、強風が吹き、刀子の長い黒髪が靡く。

 頂に立つ『帝竜』ジゴワット。巨大な体躯、機械と肉体が融合したような異質な姿。両肩には一門づつのレーザー砲、背中には巨大な超電磁砲。こいつが高田馬場を消滅させた。

 巨体のいたる箇所が凍り付き、『帝竜』ジゴワットもフラフラの状態。あの蒼いドラゴンのブレスの引き起こしたこと。

「油断するなよ」

 日本刀を構える刀子。手負いと言っても、油断できる相手ではない『帝竜』は。

 最初に討伐に成功した『帝竜』ウォークライは手負いで手強い相手だった。

「あら、そんなことは解っているわよ~」

 サイキック能力を発動。冷凍攻撃のフリーズを叩きこむ。

 フリーズの直撃を受けた巨体を揺らし、苦悶に唸る。

 ビンゴ、『帝竜』ジゴワットの弱点は冷気。

 力男はデストロイ深度を高めてからのダブルフックを叩き込む。

 反撃がくるが、躱し、カウンターを喰らわせる。

 『帝竜』ジゴワットはチャージを試みて、超電磁砲を撃とうとするも砲台自体が凍り付いていて、碌に作動しない。

 辛うじてレーザー砲は撃てるが、《狩る者》13班の前では大した効果なし。

 力にものを言わせ、攻撃を仕掛けて来る『帝竜』ジゴワットに、再度、フリーズを浴びせる。

「喰らえぇぇぇぇ!!」

 赤火の呼吸で攻撃力を高めてから、刀子はフブキ討ちを決める。

 弱点である冷気の攻撃を続けて受けた上、蒼いドラゴンのブレスのダメージも重なり、『帝竜』ジゴワットは巨体を揺らして、倒れ、息絶える。

 

 敵とはいえ、死者に鞭打つのは忍びないが、13班は研究のために『帝竜』ジゴワットの細胞を回収。

 刀子は蒼いドラゴンの飛び去った方角を見る。

 今回、あの蒼いドラゴンのおかげで、誰も失わずに済んだ。『帝竜』ジゴワットも労せず討伐に成功した。

 しかし、何故、ドラゴンがドラコンを攻撃したのか、それが不明。

 

 

 




 妖精さん、登場。
 最初は炎にする予定だったのですが、『帝竜』ジゴワットの弱点は冷気だったので、このような展開に。
 本編では殉職なされたガトウさん。少しオヤジが入ってしまいました。
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