都庁に戻ってきた刀子、ピンクハーレー、力男の13班とキリノ。ガトウとアオイの10班。ダイゴと行方をくらませていた都民たち。
全員くたくたで、すぐさま都民たちは、それぞれの部屋に戻り、熟睡。
ムラクモ機関の面々も正直な気持ち、このまま就寝したいが、そうもいかない。やるべきことがある。
まずアメリカにナツメの裏切りを報告した後、会いに行った人物は初音ミク。
刀子たちの表情を見ただけで、何があり、何を目的に来たのか初音ミクは察した。
「リュウが使ったんだ。あの《力》を」
刀子もピンクハーレーも力男もキリノもガトウもアオイも真っすぐ初音ミクを見る。
もう1人、アイテルも来ている。タケハヤのことは心配だが、SKYとして、さらにヒュノプノスとしてリュウのことを聞かなくてはならない。
「解った話す」
ぽちゃん、水滴が湯船に落ちる。
話し合いの場所に選ばれたのは都庁の13階にある大浴場。
ここで裸と裸で話し合おうという心づもり。
またナツメの件でショックを受けているキリノに、対するショック療法の意味合いもあり。
「これは眼福だな」
親父モードのガトウ。
刀子、ピンクハーレー、アオイ、アイテル、初音ミク。あらゆるタイプが揃って、選り取り見取り。
ガトウとは対照的に、真っ赤なキリノは端っこで縮こまり、ドが付くほどの緊張状態。
「……」
力男の顔が赤いのは、お湯の温度の所為だけではないだろう。
「そろそろ、話を聞かせてもらえるか」
話を切り出す刀子。何もみんな仲良く、湯浴みするために、ここへ来たわけではない。
「リュウはドラゴンなのか?」
核心から聞く。
初音ミクは頷いた。リュウは正真正銘のドラゴン。
「ドラゴンだけど、他のドラゴンと違って、人間とドラゴンの2つの姿を持っている。人に化けているわけではない」
先にリュウが人間に化けているのではないことを伝えておく。
「地球とは違う、遠い星でリュウは生まれた。幼いころ、人間の姿で森の中で倒れているところをレイという青年に拾われ、同じような境遇のディーポという少年と3人で暮らした。自身をドラゴンと知らず、人の世界で」
ここで一旦、小休憩に入り、話を続ける。
「リュウは他のドラゴン同じように人間を獲物と見ていし、見下してもいない。それは人の世界で育っただけではない。自分がドラゴンと解った後も、自身のことを知るために、世界を旅をした、心許せる仲間と共に。そこでいろんなものを見た。人の悪いとこも良いところも。いろんなことを知り学んだ、人としてドラゴンとして」
レイ、ガーランド、ペコロス、モモ、そしてニーナ。悠久の時が過ぎた今でも、リュウはみんなのことを忘れたことなど、一度もない。かけがえのない仲間で親友で、そして………。
「リュウが地球に来たのは、ここを守るため。一番最初に出会ったのが私。地球のことを教えたのも私」
逆にリュウは自分のことを初音ミクに教えた。
初音ミクの話に嘘はないことは『山手線天球儀』や『トウキョウタワー』のことで解る。
「どうして……」
急にアイテルが声を出した。
「なら、どうして、どうして私たちの時には来てくれなかったの。来てくれたのなら、私の故郷は滅ぼされることはなかった!」
珍しく感情をあらわにする。太古、アイテルたち、ヒュノプノスの星はドラゴンによって滅ぼされた。
「リュウも万能じゃない。今回は間に合った、運よく。宇宙は無限に広がっている。それに星の外に他のドラゴンがいることも、他のドラゴンが星の文明を喰っていると知ったのも、それ程の過去じゃない」
ドラゴンが絶大の力を持っていても、なんでも出来るわけではない。
突然、アオイが立ち上がる。慌ててキリノが目を覆い、力男も顔を背ける。
アオイはアイテルに親しげに微笑みかける。
「まっ、リュウくんが味方だっていうのは間違いないんだから、それがはっきりしただけでも良し。細かいことを気にしてたら、損しちゃうよ」
「おとなしくしていろ、ちゃんと、洗えないじゃないか」
抑えつけたキリノを刀子は洗う。
今、行われているのはキリノに対するショック療法。すなわち、女性陣で洗ってやること。
「や、やめてくれ」
泡まみれでのキリノの抗議も受け付けず、無言で初音ミクはタオルでごしごし。
「あらあら、恥ずかしがって、初心ね~」
「キリノさん、隅々まで綺麗にしてあげるからね」
「早く元気になって、タケハヤに協力してあげて」
女性たちは容赦など、する気はない。
自分の背中を洗いながら力男は気の毒に思いながら、助けようとはしなかった。デストロイヤーの彼でも巻き添えはごめん。あの組み合わせは、ある意味、ドラゴンよりも怖い。
風呂に浸かったまま、ガトウは笑っていた。
自室のベットの上でぐったりしているキリノ。
「やりすぎたか?」
少々、刀子は自己反省。
「キリノさん、大丈夫ですか―」
アオイが呼びかけても、答え無し。
「返事がない、ただのしかばねのようだ~」
「縁起でもないことは言っちゃダメ」
ボケるピンクハーレーに突っ込む初音ミク。
「本当に大丈夫なのか?」
少し離れたところで力男は心配そう。
「大丈夫さ、このぐらいで参ってしまうような奴じゃねぇよ」
希望的観測な意見ではない、ガトウの経験による、深い大人の観測。
「ナツメがああなっちまった以上、ムラクモ機関を背負うのはキリノなんだからな」
ベットに腰かけているタケハヤ。『国分寺・灼熱砂房』の時より、随分、顔色は良くなっている。
ネコ、ダイゴともにアイテルから、初音ミクから聞いたリュウのことを聞く。
「なるほど、育った環境が違えば考え方や感性も変わるか……」
納得したように、ダイゴは頷く。
「ドラゴンでも、リュウは良い子ちゃんだよ。私たちのこと助けてくれたし、それにかっこかわいい」
ペロペロキャンディーを嘗めるネコ。
「お前は良いのか?」
タケハヤ自身はリュウを敵とは考えていない。戦士だからこそ、認める相手。
しかし、アイテルの生まれ故郷はドラゴンによって滅ぼされた。簡単に割り切れるものなか心配。
「全く憎しみがないと言えば嘘になる。でもリュウは味方だということも理解している。それにこれを教えてくれた」
トプリフを唱える。首都高1号線でリュウにアジトまで来てもらった時に、教えてもらった。おかげで何度もタケハヤを治療することが出来た。
アイテルだけでなく、ネコは毒や麻痺などの状態異常を治癒するヤクリフ、ダイゴは味方の防御力を上げるミカテクトを教えてもらった。どれも役に立つ。
タケハヤは敵の攻撃をキャンセルさせる、ガンとばしを教えてもらった。
窓の措置を見るタケハヤ。今、リュウはどこにいるのだろうか。
「人間の中にも、あのババァ(ナツメ)がいたように、ドラゴンの中にもリュウのような奴がいたんだな」
リュウくんも、他のドラゴンと同じように星の外から来ました。
師匠システムで教えたスキルはタケハヤ、アイテル、ネコ、ダイゴにぴったりだと思ったものを覚えさせました。
特にタケハヤのガンとばしは効果がありそうだったので。
質問があります。タケハヤは人間のままがいいでしょうか、それても半竜になる方が良いでしょうか。