IS~インフィニット・ストラトス 失われし青い翼の騎士と平和の歌姫 作:ダークエイジ
キラ達がIS学園に入学して初日、早速騒ぎが起きた。それは二時間目の休み時間での事。
「ちょっとよろしくて?」
「んっ?」
「ああ・・・?」
「まぁ、なんですの?その気の抜けたお返事は?」
現れたのはブロンドの少女。喋り方と一部をロールにした髪型は明らかにお嬢様と言った感じ。それに彼女の態度はいかにもこの世界の今時の女子というあれもある。そう、女性優遇社会で男子を奴隷か何かと思っているあの態度。しかし、それを一夏は気に入ってない様子だった。
「悪いな。俺、君が誰か知らないし。」
確か、自己紹介で色々言ってたらしいが、一夏はそれどころでは無かったらしい。そもそも自分の姉が担任だったことの方がショッキングだったろう。しかし、その返答が悪かったのか彼女は目を細めて男を見下した態度で続ける。
「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」
「あ!質問いいか?」
「なんですの?」
「代表候補生ってなんだ?」
聞き耳を立てていたクラスメイトが何人か冗談抜きでコケた。
「あ・あ・あ」
「あ?」
「あなた、本気で言っていますの?」
代表候補生。それはISの操縦において国家の代表の候補生に選ばれた者達の事を指す。まぁ、簡単に言えばエリートだ。
「信じられない。信じられませんわ!極東の島国というのは、こうまで未開の地なのかしら常識ですわよ、常識。テレビがないのかしら・・・・」
「それは流石に言い過ぎなんじゃない?」
今までずっと黙っていたキラが突然に口を開いたので、セシリアは気分を害したのかターゲットをキラに変更した。
「あら?貴方みたいなモヤシみたいな男がわたくしに意見するんですの?」
その瞬間、ラクスがムッとした表情になる。やはり、恋人がバカにされて気分が良い人間なんて誰もいない。
「まぁ、貴方達男子三人が束になってわたくしに挑んでも勝てっこありませんものねぇ〜!」
まだ戦ってもいない相手を馬鹿にするなど彼女もよくやる。
「しょうがありませんものねぇ。なにせ、私は生徒の中で唯一、教官を倒したエリート中のエリートなのですからっ!!!」
それを聞いた瞬間、キラ達四人が不思議そうな顔つきになった。
「んっ?教官だったら倒したぞ?」
「おれも!」
「わたくしも。」
それを聞いた瞬間、セシリアが鬼の形相でユウイチに迫った。
「そっ、そっ、それは本当ですの!?」
「おっおちつけっ!!!」
キーンコーカーコン。
「「「あっ」」」
休み時間終了の金が鳴り、千冬と真耶が入ってくる。セシリアは渋々自分の席に戻った。
「それでは、この時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する。」
一、二時間目と違って千冬が教壇に立っていた。それと、各種装備なのだから大事な為に真耶もノートをとっていた。
「ああ、その前に再来週に行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないとな。」
クラス代表という事はクラス委員長ということだろう。
「クラス代表者とはそのまま意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席・・・クラス長だな。因みにクラス対抗戦は入学時点での各クラス実力推移を測るものだ。今の時点で大した差はないが、競争心は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからな。」
ざわざわとクラス中がどよめき立つ。恐らく、挙げられる名前は既に決まっているだろう。
「はい!織斑君を推薦します。」
「ヤマト君がいいと思いますぅ」
「レイヴン君に一票!」
案の定だ。クラスの女子達は次々と三人に票を入れていく。因みにラクスはキラに一票入れた。そして、キラとユウイチと一夏の選択で全てが決まろうとしていた。
「「一夏でっ!!」」
「ちょっ!!!」
ユウイチとキラの言葉でクラス代表は一夏に決定された。一夏は慌てて反論しようとした時、声を張り上げた者がいた。セシリアだ。
「待ってください!納得いきませんわ!!」
バンっと机を叩いて勢いよく立ち上がる。それほどまでに憤慨しているのだろう。
「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
確かに、プライドが高い彼女からしてはあり得ないほどの屈辱なのだろう。女尊男卑の世の中で生まれた彼女にとっては。しかし、これは流石に言い過ぎである。ところが、セシリアは構わず続ける。
「実力から行けば、わたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!!わたくしはこの様な島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございません。」
とうとう、人間まで否定された一夏。セシリアは熱が更に入ったのか、怒涛の勢いで叫んで行く。
「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては堪え難い苦痛でー。」
その瞬間、一夏の頭の中で何かの音が鳴った。
「イギリスだって大してお国自慢じゃないだろ?世界一マズイ料理で何年覇者だよ?」
「なっ!?」
それを聞いたセシリアは怒髪天をつくと言わんばかりのセシリアが顔真っ赤にして怒りを示していた。
「あっ、貴方ねぇ。わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
「・・・ああ。」
「決闘ですわ!!」
彼女がそう叫んだ時、間に入った人間がいた。その人物は意外や意外、キラだった。
「ちょっと待って。その決闘、僕が相手をするよ。」
「「キラ!!?」」
「あらあら?」
クラスがいきなりの発言にどよめきたつ。キラ自身何か理由があるのだろうが、この発言は驚きであった。
「キラ、悪いけど申し込まれたのは俺だ。」
「一夏、悪いけど今回は譲って。」
キラの目を見ると、どうやら本気の様だ。ユウイチはキラをなだめようと近くによって、小さな声で話し掛ける。
「キラ、相手を見ろ。まだ、子供じゃないか?そんな彼女がお前と戦ったら、瞬殺されるのがオチだ。だから、落ち着け。」
そのヒソヒソ話が聞こえてしまったらしく、彼女は更に逆上しながら突っかかって来た。
「わたくしが子供?瞬殺?良いでしょ!!!キラ・ヤマト!!貴方と戦ってあげますわ!ところで、貴方は専用機をお持ち?」
「うん!」
そう言って、胸で輝く剣と翼が一体化した青いペンダントを見せる。それを見たセシリアはフンと鼻で笑う。
「良かったですわ!男でモヤシみたいな貴方が訓練機で専用機持ちである、このわたくしと戦おうなどとは流石に酷と言うものですわ。」
高らかに勝利宣言の如く告げるセシリア。溜息を吐いた千冬が口を開く。
「話は纏まったな?それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。ヤマトとオルコットはそれぞれ用意しておくように。それでは授業を再開する。」
その後の授業はなんの騒ぎも無く終了した。そして、その日の夜。学生寮では真耶によって部屋割りがされた。一夏が1025室、キラとユウイチが1026室、ラクスは1027室であった。
「それにしても貴様等がな。」
件の1026室では千冬、キラ、ラクス、ユウイチの四人で秘密会議が行われていた。
「最初、束から聞いた時はあいつの正気を疑ったぞ。しかし、実際会ってみて納得がいった。」
気配でなと、千冬は続ける。やはり、彼女ぐらい迄になると相手の眼差しと気配で分かる様になるらしい。歴戦の人間だという事が。
「今日はお騒がせしてすいませんでした。」
「まぁ、いいさ。そうだ。わたしの事はプライベートの時は名前でいいぞ。」
「じゃあ、僕達も名前で良いです。」
「それで、何故お前達はここにいる?」
そう聞かれてキラはこれまでの経緯を話した。
「なるほど、ヴァイスと言う男が。」
「はい。」
千冬は少しの沈黙の後にこう切り出して来た。
「分かった。その男の事を調べてみよう。もしかしたら、この世界にいるかもしれない。」
「いいんですか?」
すると、千冬は再び溜息を吐きながら続けた。
「ああ、束に言われてあれを護りに来たんだろう?その報酬だよ。」
礼とは決して言わない彼女であった。
「それと、もう少しであいつの専用機が来る。その世話もしてやってくれないか?」
一夏の専用機と言う事は束が自慢してたあの機体であろう。
「とにかく、これからよろしく頼む。」
そう言って、千冬は三人と握手した後部屋を出て行った。入れ違いで一夏が入って来た。
「あれ千冬姉ぇ?まぁ、いいや。それにしても今日は悪かったな。」
「??」
どうやら、セシリアとの一件を言ってるらしい。
「大丈夫だよ。友達の一夏をああまで言われて、僕自身もムカッて来たから。」
「キラ・・・」
それから一夏とたわいない話をして一夏とユウイチが自販機で飲み物を買う為に部屋から出て行き、キラとラクスは二人っきりになった。
「ユウイチと一夏が帰ってくるまで二人っきりだね。」
「そうですわね。」
キラは彼女の右手の薬指に存在する銀を基調としたピンクの指輪を眺めた。それは束が新しく作ったラクスの専用機、『エターナル・ウィンド』である。殆どエターナルを参考にしているが、装甲は新しい技術である『展開装甲』を使ってるらしい。
「本当は君を戦わせるなんてしたくないんだ。」
「大丈夫ですわ。わたくしは貴方が護ってくたさるもの。」
「そうだね。絶対、君は僕が護る。」
ユウイチと一夏が帰ってくるまで、二人の世界は続いたのだった。
次回はセシリアVSキラ