IS~インフィニット・ストラトス 失われし青い翼の騎士と平和の歌姫 作:ダークエイジ
クラス対抗戦当日。一夏と鈴はアリーナの中央で向かいあっていた。注目の二人が戦うという事でアリーナの席は超満員だった。
「一夏!今、ここで許してくれって言うなら手加減してもいいわよ。
「雀の涙くらいだろ?言わねぇよ。」
「ふ〜ん、後悔しても知らないんだから。」
鈴のISは『甲龍』。セシリアのブルー・ティアーズと同じ特殊装備搭載型近接戦闘IS。しかし、その実力は未知数である。
「行くわよっ!」
「来いっ!」
その瞬間、甲龍の両肩の非固定浮遊部位のスパイクが着いた丸いアーマーが縦に割れる。それを見ていた一夏は何かを感じて急いで緊急回避行動を取る。すると、何かが一夏を掠めて地面を抉った。
「なっ、何ですの!?あれは?」
ピット内のオペレーター室では謎の攻撃にセシリアが驚きの声を挙げていた。そのセシリアに真耶が淡々と説明する。
「衝撃砲ですね。空間自体に圧力を掛けてそれ自体を砲弾として撃ち出す。」
「セシリアと同じ第3世代の兵器だよ。」
「特に厄介なのは砲弾も砲身も見えないと言う事だ。回避するには感じるしかないな。」
「一夏・・・。」
心配そうに見つめる箒をラクスが優しい眼差しで見つめていた。
「初撃を回避するなんてやるじゃない。龍砲は砲身も砲弾も見えないの特徴なのに。」
「おかげさんで。」
確かに最初の攻撃は危なかった。だが、一夏にはキラとユウイチの特訓がある。あの二人に比べれば全然大丈夫だ。
「今度はこっちから行くぞ!!」
一夏はそ
その手に白式唯一の武装である雪片弍型を呼び出し、レーザー刃を放出しながら突っ込んで行った。すると、鈴もその両手に青龍刀の様な近接兵器を召喚して向かってきた。
「はぁぁぁっ!!!」
「うおおおっっ!!」
実刃とレーザー刃がぶつかり合い、火花を散らす。しかし、鈴は二つの青龍刀を巧みに使い、一夏を確実に追い詰めて行く。
「どう!?こいつの斬れ味は?」
「クソっ!!」
一夏は一旦離れて、間合いを探し始める。しかし、その間にも龍砲の連射によってその時間も潰されていった。龍砲は本当に厄介でどうやら射角がほぼ無制限で撃てるらしく、様々な方向から一夏を苦しめて行った。しかし、その時には既に一夏にはある秘策があった。それを見抜いてか、キラとユウイチが笑みを浮かべる。
「あいつ、あれを狙ってるな。」
「そうだね。」
「あれ?」
「俺とキラと織斑先生で覚えさせた切り札。『瞬時加速』だ。」
モニターを見てみると、今まで追い詰められていた一夏がもの凄いスピードで鈴に迫って行く所が映し出された。どうやら、あれが瞬時加速らしい。
「そして、もう一つ。白式の特徴的とも言える攻撃。『バリアー無効化攻撃』。」
「??? ?」
「この二つはとてもハイリスクですが、成功すれば一夏さんでも代表候補生と渡り合う事ができます。」
その時、鈴は正直焦っていた。今まで押されっぱなしだった一夏がいきなり凄いスピードで此方に接近してきたのだ。今、回避しなければやられる。
「何なのよ!?」
鈴は両手に持つ青龍刀を構えて迎撃に出た。そして、二機がぶつかろうと言う瞬間にそれは起きた。
ドゴォォォォォォンッ
「きゃああっ!!」
「なっ!!何だ?」
どうやら、何者かがアリーナのシールドを突き破ってきたらしい。そして、それはそのままアリーナの地面に大穴を開ける。
「おい、マジかよ!?」
「キラ、あれは・・・。」
「うん、あの機体は・・・。」
侵入して来た機体はコズミック・イラにいて、尚且つ企業連と戦った三人はよく知っている機体であった。
「なっ、なんだったの?」
「さぁ?」
けたたましくなるサイレンを聞きながらハイパーセンサーが捉えた情報を確認する二人。どうやら、こちらをロックしているらしい。
「所属不明のIS?」
「何者だお前?」
黒煙から出てきたのはISからかけ離れた姿のISであった。全身装甲で女性の様なシルエットと特徴的なバイザーカメラ、黒と薄い紫のカラーリングと背中にある六角形のパーツを合わせて出来たシールドの様なパーツ。右手に握られた大型ライフルと腰部に装備された本体と同じカラーリングの大型の刀。余りにも異形な敵機に身震いをしてしまう。そんな二人にキラから通信が入った。
『二人とも大丈夫?侵入して来た敵の情報を送るよ。一夏、鈴。しばらくしたら僕達が行くからそれまで頑張って。』
「ちょっと!あんた、あいつの事知ってんの!?ねぇ?」
しかし、通信は切られてしまった。どうやら敵機による通信妨害らしい。
「鈴!俺はこれから奴と戦う。お前は逃げろ。」
「逃げろですって!?誰に言ってんのよ?」
「じゃあ、やるか・・・。」
「上等!!」
二機は敵機に突っ込んで行く。キラが二人に送った情報によると敵は、型式番号ZERUSー356『ライジング』特徴的なのは肩に装備された反応爆発装甲と言われる装甲で作られた二つのシールドである。これに攻撃を加えると装甲に塗られたアルファ粒子が激しく反応し、爆発するという厄介な代物だである。ということは、あの機体は企業連の機体なのである。
「貴様ら、織斑一夏と凰鈴音だな?」
ライジングから発せられた声は一夏達よりも年上の女性の声。一夏は堪らず反論する。
「お前は誰だ!?なぜ、俺達の事を知っている?」
「私のコードネームはスカーレット。君達には死んでもらう。」
「上等じゃない!!」
逆上した鈴がライジングに龍砲を連射しながら突撃して行く。しかし、スカーレットは綺麗に身を捩りながら衝撃砲を回避して行く。しかし、鈴とてそんなことは分かっている。龍砲で隙を作り出し、そこを狙う算段なのだ。そして、それは順調に進んだ。
「そこぉぉっ!!」
限界まで接近して一気に青龍刀で決める気なのだ。しかし、ライジングの両肩のシールドを全面に展開。鈴の斬撃をシールドで受け止める。するとその瞬間、シールドの表面が爆発して炎と衝撃波が鈴と甲龍を包み込んでしまった。
「きゃああっ!!」
「鈴っ!!」
落下する鈴を受け止めて敵機との距離を伸ばす。その間にもスカーレットはビームライフルを連射して相手に隙を与えないでいた。
「ほらほら!逃げないと死んじゃうよ?」
「クソっ!!」
鈴を抱えながらジグザクに移動しながら攻撃を回避して行く。その逃げてる間にも二人はどう反撃するか考えていた。
「どうするの?」
「どうするって、射撃も回避されて接近戦もあのシールドで防がれる。どうしようもないな。」
「じゃあ、逃げる?」
「逃げねぇよ。」
二人は二手に別れて、左右から斬り込む。当然スカーレットは左右のシールドを展開して二人の攻撃を防いだ。
「クソ!やっぱりダメか!」
離れる一夏に急速接近して刀型にブレードで斬りつける。眩い火花が辺りを照らす。
「あのISは一体何なんですか!?」
真耶が必死にISのデータ覧と照合したが、一致はなかった。それは当然である。あの機体はこの世界には存在しないのだから。
「落ち着け。まずはコーヒーでも飲め。」
そう言って千冬は砂糖ではなく塩をコーヒーに入れてしまった。
「あの・・・それ、塩じゃ・・?」
「・・・・」
顔を赤らめる千冬、明らかに心配しているのがわかる。そんな光景を唖然として見ていたセシリアがある事に気付いた。
「あら?キラさん達は?」
キラ、箒、ユウイチ、ラクスの四人がいつの間にか消えていたのだ。
「ちょっ!どうすんのよ一夏!!」
「わからねぇっ!」
スカーレットが侵入して来てから長期戦になってしまった一夏と鈴。そろそろ二機のエネルギーも危険域だ。
「そうだ。なぁ、鈴。俺が合図したらあいつに向けて衝撃砲を全力で撃ってくれ。」
「良いけど、当たるか分からないわよ。」
「大丈夫だ。」
「じゃあ・。」
合図を行おうとした瞬間、一夏の耳にとんでもないものが聞こえてきた。
「一夏ぁっ!!!」
ハウリングを起こす程の大声。見ると中継室に箒がいた。ハイパーセンサーで箒を見るとハァハァと肩で息をし、表情も怒っているような焦っているような不思議な様相をしていた。
「男なら・・・男なら、そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!」
「うるさいわねぇ。子供は寝てなさい。」
箒の介入に気分を害したらしいスカーレットは目標を箒に変えて、ビームライフルを向ける。その銃口に光が集まっていくのが見えた。
「鈴っ!!やれ!」
「わ、分かったわよ!!」
両腕を下げて、肩を押し出すような格好で衝撃砲を構える鈴。最大出力砲撃を行うため、補佐用の力場展開翼が後部に広がった。そして、なんと一夏はその射線上に躍り出たのだ。
「ちょっ!ちょっと馬鹿!何してんのよ!?どきなさいよ!」
「いいから撃てっ!」
「ああもうっ!どうなっても知らないわよ!」
鈴は叫びながら衝撃砲を放つ。その弾丸は真っ直ぐ一夏の背中に当たる。そしてその瞬間、一夏は瞬時加速を発動させた。瞬時加速は後部スラスター翼からエネルギーを放出、それを内部に一度取り込み、圧縮して放出する。その際に得られる。慣性エネルギーを利用して爆発的に加速する。考え方を変えれば、それは外部のエネルギーは外部のモノでもいいと言うことだ。
「オオッ!」
ワンオフアビリティー、『零落白夜』が発動して白式が黄金に輝いてライジングに物凄いスピードで突っ込んで行く。
「なに?あのスピードは!?」
「俺はっ、千冬姉を、箒を、鈴をっ!関わる人全てを守るっ!!」
振り下ろされた一撃はライジングに直撃する。しかし、スカーレットの驚異的な反射神経で一撃はビームライフルを斬り落としただけだった。
「なにっ!?」
「私のビームライフルを斬るとは褒めてあげるわ。」
ライジングは微笑みながら回し蹴りを一夏に当てる。吹っ飛ばされた一夏はビームの爆発によって出来たクレーターに直撃して止まった。
「最後のは驚いたわ。凄いじゃない。」
そう言って、彼女は両腰からブレードを抜いて一夏の首に刃を押し当てた。
「さぁ、死になさい。」
「そんな事はさせないよ。」
ドゴォォォォォン
いきなりアリーナの壁が爆発し、爆炎の中から現れた者がいた。キラ達のストライク・フリーダム、アイズ・フリーダム、エターナル・ウィンドである。
「貴方はキラ・ヤマトっ!?」
「キラっ!」
直ぐにエターナル・ウィンドを身に纏ったラクスが一夏に駆け寄り、エターナルと似た白い翼から光の膜を放出。一夏を包み込む。包み込まれた一夏の体は急速に傷の回復が行われて、白式も凄い速さで修理されていった。
「さて、スカーレットだな。開戦の時は世話になったな。」
「ええそうね。」
「退く事はできないのか?」
「無理よ。」
そう言って彼女はブレードを持ちながら二人に突撃して行く。ユウイチがビームライフルで弾幕を張り、キラが驚異的なスピードで接近する。
「くっ!!」
ユウイチが放ったビームをビームシールドで防ぐがキラの接近を許してしまった。
「これで終わりだよ。」
「くっ!」
瞬く間にブレード、爆発反応装甲シールドの接続部分をビームサーベルで斬ってしまった。
「そんなっ!?」
「さぁっ!次はどうする。」
「っ!!」
すると、スカーレットはライジングから緊急脱出。ライジングから出てきたのはちょっと背の高い黒髪ショートヘアの女性。パイロットを失ったライジングは自爆。跡形もなく爆発した。
「なるほど、ヴァイスが言ってた通りだわ。貴方達、強いわね。」
「ヴァイスだとっ!?」
「そうよ。私をここに送りこんだのも彼。」
「なら、あんたを捕まえねぇとな。」
「嫌よ。じゃあね。」
彼女がそう言うと彼女の背後に光の塊が現れて、彼女はその中に姿を消す。
「くっ!逃げられたか。」
「そうみたいですわね。」
後に残ったのは不安に支配された顔をしたキラ達と破壊されたアリーナだった。因みに、当然クラス対抗戦は中止。生徒達は嘆いたのだった。そして、その日の夜。学園をビルの屋上から眺めている人物がいた。ヴァイスである。
「ふぅ〜。スカーレットが機体を失うとはな。」
当然かと思いながらヴァイスのお気に入りの煙草。銘柄は『MEBIUS』に火を付ける。濃厚な煙を肺一杯に入れて、吐き出す。
「ふっ、キラ・ヤマト、ラクス・クライン。貴様達が必要なんだ。俺達の居場所を創るには。」
白い煙の向こう側の瞳は真っ直ぐIS学園を見つめていた。
次回はまだ未定です。