プロローグ
ーーチュンチュンーー
朝の目覚まし代わりの小鳥の鳴き声が響く。
「ぐむぅ…もう朝かぁ…」
ベッドから起き上がったのは銀髪が特徴的な美少女。
ベッドから這い出し、洗面所へ向かう。
こじんまりした洗面所の鏡にその顔を写す。
「…この顔にも慣れちゃったなあ…」
そう言って彼女はあの日を思い出す。
「おめでとう、貴方はしっかり安らかに死ねたわ」
唐突に『俺』の前で偉そうに腕を組んでいる女はそう言った。
『俺』は困惑していた。
何故ならば、彼は先程長年の治療にも関わらず治らなかった病によって病院のベッドの上で息を引き取ったはずだったからだ。
「貴方は…何者なんですか?」
「フッフッフ……よくぞ聞いてくれました!私の名前はゲルダ!
地球とは違う異世界、『ハイランド』の神なんです!」
普通、初対面の相手が神様をなのって信じるやつは少ないだろう。しかし、この男は残念なことに重度のオタクだった。
「oh…死後の神様、異世界ときたらまさかの異世界転生モノですか!?」
「案外ノリいいわね……まぁ、端的に言えばそういう事よ。ハイランドにおける私の信仰が減ってきてるから、あなたに行って活躍してきてもらいたいのよ」
「行く行く!行きます!……身体はなんとかしてくれるんですよね?」
「モチのロンよ、身体スペックのヤバイ奴にしてあげるわ」
「キタコレ!病気なんてもう怖くない!」
「それから、お決まりなんだけどチート能力をプレゼントするわ、あくまでも世界の枠に収まる能力って条件つきだけど3つまで選んでいいわよー」
「チートキタコレ、しかも3つとは大盤振る舞いですね!」
「う、うん活躍してきてくれればいいのよ、こっちは。」
そういう訳で転生した『俺』はーーーーーーーーー
ホムンクルスだった。
詳しく言えば、Fateシリーズに登場する
『イリヤスフィール·フォン·アインツベルン』
の姿になって、森の中に突っ立っていた。
「ちょっとおおおお!身体スペック高い体にしてくれるとは言ったけど、性別変わるとか聞いてないぞぉぉぉぉ!」
森に叫びが響いた。
で。落ち着いた後。
なんやかんやあって街にたどり着き、テンプレ通りに『アインツベルン』から取った『アイン』の名前で冒険者になりーー
紆余曲折があって10年の月日がたった。
アインは洗面所でため息をついた。ホムンクルスの体のせいで、アインは不老不死。外的要因でしか死ぬことはない。そのおかげでアインの姿は10年前と全く変わっていない。
現在アインが住んでいるのは、とある森の奥深く。
アインがこんなところに住んでいるのには訳があった。
理由は簡単、有名になり過ぎたのである。
「魔王…何体倒したっけ…」
そう、アインはゲルダとの約束通り活躍し、魔王を倒した。
何度も。
この世界において、魔王は絶対的な恐怖の象徴。そんな存在を駆逐して回っている、美少女。有名にならない訳がない。
そんな訳で各国から縁談、暗殺、囲い込みなどの続く生活に嫌気が差したアインは2年ほど前から森に篭っているのだった。
ジャムを塗ったパンに齧り付き、今日の予定を考える。
「ああ、今日も暇だ…」
そう、暇なのである。
1年程前にアインの前に現れたゲルダは、『信仰はしっかり集まったよ、お仕事ご苦労様でした』と言って去っていった、
つまりもう有名になる必要はなくなったという事だ。
街にもいけないので、娯楽もない。
だからアインは
「あ〜暇だ、また別の世界でも行きたいな…」
と、そう呟いた。
その時。
窓から風とともに一枚の封書がアインの手元に運ばれてきた。
「ここを見つけてきたのかな?そうだとしたら魔王クラスがここまで来てるってことだけど、そんなやつの気配は感じないな…」
アインは警戒しつつも封書を開け、文章を読んだ。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能を試すことを望むならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを投げ捨て、我ら“箱庭”に来られたし』
瞬間、アインはハイランドから消失した。
Q|なんでイリヤの身体に転生させたの?
A|作者の趣味です。
Q|なんでわざわざ別の世界に転生させたの?
A|神様チートだけじゃ箱庭じゃ勝てない