触るな危険兄妹は普段からずっと一緒と思われるが、実際はそんなことは無かったりする。
ちゃんとプライベートの時間、空間を持っているし、同性の友達と遊んだりもする。
「ってことだ。わかったか、イッセー」
「いえ、全然わかりませんけど」
「モノローグくらい読んで見せろ」
「先輩ほんとめちゃくちゃですね!」
男2人の会話を少し引いた位置から笑ってみているシスターが1人。
この女性はアーシア・アルジェントといってイッセーにただいまナンパされたところである。
「ナンパじゃねぇ!いや!可愛いとは思ったけど!」
「なんだ、やればちゃんと読めるじゃないか」
「イッセーさん…可愛いだなんて///」
モノローグを読むという突込み属性としては押さえておきたいスキルを習得したイッセーとその言葉で赤くなるアーシア。
そしてちょっと照れくさくなったのかイッセーが話を戻す。
「で、なんで須臾先輩がここにいるんですか?」
「さっきモノローグしただろ?」
「わかるわけないでしょうが!」
「しょうがないな、暇だったから。はい、説明終了」
「ひらがなでも十文字以内に終わるじゃないですか!」
「それでアルジェントさんはこんなところでどうしたんだ?」
「あ、アーシアで結構ですよ」
「そうか、それじゃあアーシアで。俺は久遠須臾。須臾でいい」
「はい、スユさん!」
「あの、ムシらないで下さい先輩」
「お前の話が長かったからな」
「長かった?そんな長かったですかぁ先輩、そりゃすみませんね!」
Going my wayな須臾の態度にキレ気味になるイッセー。
そんなイッセーを置いてまた勝手に話を進める須臾。
「それでアーシアはこんなところでどうしたんだ?」
「はい、教会を探していたのですが迷ってしまって…困っていたらイッセーさんが声をかけてくれたんです!」
「教会か…イッセーわかるか?」
「住宅のはずれたところにありませんでしたっけ?」
「残念でした、それはもう潰れてもぬけの殻だ。ということでこの街には生きた教会はない」
「先輩、知ってるんならはじめっからそう言ってください」
「様式美だ」
「どんな様式美ですか」
なんてどうでもいい言い合いをしていると、
「イッセーさん…教会ないんですか?」
と、アーシアが不安げに訪ねてくる。
「うん、潰れちゃったらしい」
「そうですか…ですが、ここの教会を任されたんです。ですから帰るわけにはいきません」
「う~ん、それじゃあ行ってみる?」
「はい!」
「ずいぶん責任感が強いんだな、アーシアは」
「いえ、ただ主の教えに従っただけです」
「イッセー道はわかるのか?」
「はい、わかりますけど」
「なら案内よろしく」
「はいはい、言われなくてもやりますよ。というか先輩もついてくるんですか?」
「あぁ、暇だからな」
「はいはいわかりましたよ」
こうして一行は潰れた教会に向かうことになったとさ。
んでまぁ道中でアーシアが子供のけがを治す姿を見たりとあったが、そんなことは置いといて教会に到着。
「潰れたって言ってましたけど案外綺麗ですね」
そう感想を漏らしながらも嫌な空気を感じ、自然と背筋に汗が伝う。
イッセーは先日のとある事件から悪魔になったのだ。そんな存在ががこんな悪魔祓いの地に訪れたらこうなるのは自然なことであろう。
これ以上近づくことを悪魔の本能が拒絶しているのである。
「これが教会ねぇ…」
対し、さもどうでもよさげな態度をとる須臾。
ただ、臭そうに鼻を押さえているのが印象的である。
「イッセーさんにスユさん、案内していただきありがとうございます」
一歩前に出て頭を下げるアーシア。そうして教会の方に足を向けたアーシアを呼び止める声が一つ。
「アーシア、本当にいいんだな?」
イッセーにはこの問いの意味が分からない。いったい何のことを指しているのか全く分からない。
アーシアは少し心当たりがあるのか、少し驚きながらもすぐに笑って返す。
「はい。これも主のお導きですから」
「…そっか」
「はい」
「ではさよならです。イッセーさん、スユさん」
そう言って今度こそ歩いていくアーシア。
それを目いっぱい手を振りながらイッセーは送り出す。一つの訂正とともに。
「またな!アーシア!」
別れではなく再会の言葉。それにアーシアも笑って
「はい!また、です!イッセーさん!」
そう答えた。
アーシアを送ってから公園のベンチに男2人腰掛、イッセーはさっきのことを問う。
「いいんだなって何についていたんですか、先輩?」
そのイッセーの疑問に須臾は少し呆れたようにため息をつき、
「あのな、イッセー。今回のアーシアの移動がただの移動だと思うか?普通潰れた教会に配属になるわけないだろうが」
その言葉は容易に納得できるが、先方がこの教会の再興をしろと言うことで送った線もあるのでは、とも思う。
「まず、再興が目的ならあんな若い女の子1人だけなわけない。人数が必要な行為だからな。そうなると他に考えるのは左遷、要するに追放だ」
「なんであんないい子が追放なんかにならなきゃならあないんだ!」
須臾の言葉に思わず憤るイッセー。
「あんなに信仰が厚くて、優しくて、あんなステキな力を持ってるアーシアが何で!」
「俺が知るか」
ばっさりとイッセーの言葉を切り捨てる須臾。
「ま、また会う約束したんだから支えてやれや」
そう言いながらイッセーに肩を組んでくる須臾。
「ま、ちったぁこれでましになるだろ。夜道に来おつけろよ」
「え?は、ちょ、なんなんすか先輩!」
「血の匂いと烏に気をつけろよ」
「は?先輩それって…」
いうことだけ言って去っていく須臾。
物騒な、イッセーとしては最近触れた世界の一端を須臾が知っていることに疑問を抱きながらも見送るしかなかった。
「それで兄さん。この嗅ぎ覚えのない女性の匂いはどなたのですか?」
「今日知り合ったシスターのものだ」
「へぇ…兄さんはシスターがよろしいのですが?」
「いや、お前が一番いい」
「もう兄さんったらぁ!」
今夜も夜は更けていく。
バトらせるかバトらせないか悩む