レーティングゲーム当日、リアス眷属、ライザー眷属ともに舞台である駒王学園を模して造られた異空間に集まり激突の準備をしているのにかかわらず、久遠兄妹はというと…
「かぁ…くぅ…すぅ……」
「うふふふふふ」
「何をやってるのですかあなた方は」
「あははは…」
校舎の屋上で須臾は永久の膝を枕にして寝こけており、永久は恍惚とした表情を浮かべながら髪をなでている。
そしてそれを眺めて得体のしれないモノを見る顔をする焼き鳥が妹、レイヴェル・フェニックスになんとも言えないアーシアがいた。
体育館ではバトルがついに始まったというのにこの兄妹、なんともマイペースである。
「あのぉ、永久さん。起こさなくていいんでしょうか?」
「兄さんの眠りを妨げるなんて…この感触を味わうのをやめろというのですか!
それに、兄さんは自分が必要だと思えばすぐ起きますよ」
「そうなのですか?」
「そうなんですよ、レイヴェルさん。なんたって私の、わ・た・し・の・兄ですから。焼き鳥兄とは違うんですよ」
「一応兄は兄なんでディすらないでいただけたら有り難いんですけど…」
「あら、あんな燃えカスに優しいんですね」
「あのだから…。まぁ血のつながった兄妹ですから」
健気な妹の発言に、
「上がだめだと下がしっかりするっていうのは本当だったんだな」
須臾が起きた。
それに残念そうな顔をし、少しだけレイヴェルに殺気を向けたのち、何でもないですよ~といいたげな顔をする永久。
兄のこととなると表情のバリエーションが一気に増える永久である。
「それで兄さん、もう動くんですか?」
思ったより早く須臾が起きたので疑問の声を永久がかけると、答える須臾の声は落雷の音に誤魔化された。
朱乃が体育館を敵ごと吹き飛ばしたのである。
なんとも大胆な攻撃である。
まぁそんなこときにした様子もなく須臾は
「あぁ、初戦だからな。誰か倒して気が抜けたところをぶっぱされるとかありそうだし…ほらな」
そう言って指さした先には体育館から少し外れたところで一息ついているイッセーと小猫、そしてそれを上空から狙うライザーの女王・ユーベルーナがいた。
「フフフ!これでそちらの戦車は終わりですわ!」
そうレイヴェルが勝ち誇ったと同時に小猫のいる場所で爆発が起きた。
「ユーベルーナは兄様の眷属最強の女王ですもの!」
「だってよ、小猫」
「…油断しました」
「油断する方が悪い。ほれあーたん。治療治療」
「は、はい!」
年の割には大きめの胸を張るレイヴェルに対してその後ろでさっき撃破されたはずの小猫の治療をしているアーシアたち。
「え、なんで無事ですのぉ!?」
下ではイッセーが小猫を撃破されたことに激怒してユーベルーナに突っかかっているというのに本人手厚い治療を受けて今ここでぴんぴんしている。
猫耳にしっぽはえてるけど。
そして飛べないイッセーの代わりにユーベルーナと朱乃が女王対決に入る。
小猫の敵をとる宣言とともに。
なんか下のやり取りがなんとも寒く感じてしまう。
「なんで無事って…ダメージで退場させられる前にこっちに転移させてダメージ抜いただけなんだけどなぁ」
「…爆破される前に助けてくれてもよかったじゃないですか」
「甘えるな。これはお前のミスなんだから、これから同じことをしないように身体で覚えとけ」
「…わかりました」
「それにしても、倒されたらアナウンスされるのによく思い当たらないな」
「戦いと目の前で殺った、殺られたって昂揚でとんでるんじゃないでしょうか」
「あぁ、そういうことね。あーたん」
「はい。それであーたんって何ですか?」
「あだ名」
「仲よさそうでいいですね!」
そんな会話を繰り広げるリアスサイドのさぼり人たちに対してボーぜんとしたままのレイヴェル。なまじ常識人であるためダメージが大きいのだろう。
そうこうしてるうちに下では木場とイッセーVSライザー眷属の生き残りが校庭に集結しバトッており、女王対決も朱乃優勢で進んでいた。
それを見て
「須臾先輩、私もイッセー先輩たちに混ざってきます」
なんて小猫が言い出したのを須臾は、
「だめ。さっきの攻撃で実質リタイアなんだから混ざるの禁止」
そう言ってマタタビ酒を小猫の口にぶち込んだ。
「ふにゃぁうぅ…」
なんて声を漏らしながらぶっ倒れる小猫。
やることが容赦ない須臾である。
「お酒なんて飲ませてよろしいのですか?」
「大丈夫、今から証拠隠滅するから」
疑問の声をあげたレイヴェルに対して証拠隠滅を称して持ち込んだ酒を飲みだす須臾と永久。おい未成年。よい子は成人してからが基本だというのに。
「須臾様でしたわよね?この後兄様と闘うのによろしいんですか?」
「ざるだから問題ない、ちなみに永久も」
「うふふ、ジュースと変わりません!」
そう言って乾杯して飲む兄妹。
馬鹿なのだろうか?
「あ!須臾さん、永久さん!朱乃さんが負けそうです!」
「あ、マジだ」
朱乃とユーベルーナの戦いはあけのが圧倒的優勢であったのにかかわらず、今はユーベルーナが押していた。
「ふふふ…こんなこともあろうと、ユーベルーナにはフェニックスの涙を持たせてあるんですわ!」
「「「何(ですか)それ」」」
胸を張るレイヴェルに対して誰一人理解していない三人。
思わずずっこけるレイヴェル。意外に芸人根性があるのかもしれない。
「フェニックスの涙というのは、フェニックス家が生産している、使えばたちまちに傷をいやすことができるマジックアイテムですわ!」
「便利なもんがあるんだなぁ」
「お高そうねぇ」
「すごいですね!」
バーンと背後に炎を出してまでかっこよく告げたのに期待していた「そ、そんなものが!」とか「卑怯な!」と言ったセリフが出てこず落ち込むレイヴェルであった。
「そんじゃ、リーアたん眷属に女王を任すのはきついみたいだし、ちょっと狩ってくるわ。永久、よろしく」
「はい、兄さん」
そういうと須臾は立ち上がりレイヴェルの首根っこを摑まえる。
「え…え!何ですの!なんですの!?」
「行ってらっしゃい、兄さん」
「あいよ、行ってきます」
戸惑うレイヴェルを他所に、まとめて転移させる永久。
戦ってる方向から悲鳴が聞こえてくるが永久は一切気にしない。
さっきまでは追い込んでいたのに、今は全く逆の状況に追い込まれたことに朱乃は歯噛みしていた。
「んふふ、残念ね。これでおしまいよ」
そうして止めが朱乃に刺されようとしたその時、
「きゃあぁぁぁぁぁぁあぁぁ!」
上空から悲鳴が響いた。
何事かと顔をあげるとそこには、フェニックスのように炎の翼を広げた須臾と、その須臾に小脇に抱えられたレイヴェルがいた。
「レイヴェル様!?」
驚き、動きが止まったユーベルーナに対し須臾は炎の翼で加速させた蹴りを打ち込むのだが、当然真正面の攻撃なんて簡単に魔力の障壁で防がれてしまった。だがそこで須臾の動きは止まらず、レイヴェルを抱えていない方の腕で障壁をからめとり、剣の形にし、ユーベルーナに投げつけた。突然障壁を抜かれたことに反応が遅れてしまったユーベルーナはもろにその攻撃を食らい、地に叩き落された。
そこに須臾は容赦なく背の炎の翼を叩きつけた。
そうして流れるリタイアのアナウンス。
「んで、実力発揮せずに負けた気分はどう?あけのん」
「…最悪ですわ。あとあけのん言わないで」
「んじゃ、実質敗者コーナーに向かうか」
「何ですか、その不名誉なコーナー」
「俺のさぼりスポット」
「そうですか。それよりもその抱えてる子は大丈夫なんですか?」
抱えられていたレイヴェルは目を回し、ノックアウトされていた。
急転移、急加速、急ブレーキ、急旋回だけでこんなことになるとは情けない奴だとか思っている須臾はなかなか鬼である。
「大丈夫だろ、うんじゃ戻るぞ。痴女」
「あけのんよりひどいのでやめてください」
戦った影響できわどい巫女服になってるのだから言われてもしょうがない。
「永久、よろしく」
そう、そこまで大きくない声で須臾が言うと景色が変わり、屋上からの景色になる。
「ただいま、永久」
「お帰りなさい、兄さん」
どうやら永久が転移させたらしい。そこそこに距離があったのに須臾の声が聞こえるあたり愛のなせる業であろうか。
そしてその頃、イッセーと木場は残りのライザー眷属をホモホモしく協力技で打ち倒し、リアスと合流してライザーと対面していた。
そしてその戦いは三対一に関わらずライザーの圧倒的なものとなっていた。
フェニックス家の特徴であるその不死を存分に発揮して、一方的に削っていく。
まずは木場が、そしてイッセーも立ち上がれないくらい叩かれた。そして対抗できていたリアスの魔力も切れた。
それでもあきらめず執念だけで立ち上がるイッセー。
そしてライザーに向かっていくたび、嬲るように執拗に打撃されまた転がされる。
それを見ていられず涙を流し、目を閉じるリアス。
ボロボロになってもまだ立ち上がるイッセー。
そしてついに、ライザーはとどめを刺そうと特大の火球を作り出す。
にもかかわらず前に進むイッセー。
もう傷を負っていない場所を探す方が難しいほどの姿である。なのにその歩みを止めない。なぜなら、
「…部長の夢を守りたいから。部長の笑った顔を守りたいから」
だけどイッセーにはそんな実力がない。
でも、それでも…
「お前をぶん殴んなきゃ死んでも死にきれねぇんだよぉ!」
体中が叫んだだけで痛い。血反吐ぶちまけながらの無様な叫びだ。
それでも一歩を踏み出す。そしてイッセーは走る。ライザーの方に。
そしてイッセーは神器を持ている。持ち主の強い願いにこたえ、どこまでも進化するそんなものを。
《Welsh Dragon Over booster ‼‼‼‼》
音が鳴り響くとともにライザーの炎に飲み込まれていくイッセー。
そして、赤い鎧を纏ったイッセーは火球を突き抜けライザーのもとにたどり着き、
《BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!》
「ぶっ飛べえぇぇぇ‼」
ついにその拳がライザーの顔に突き刺さり、ぶっ飛んだ。
そして鎧が解除され倒れこみそうになったイッセー。
「無茶苦茶だけど、頑張ったじゃねぇかイッセー。よくやったな。
あとは、俺たちに任せとけ」
力強く須臾が支えた。
「そんじゃあアーたん、イッセーの治療よろしく」
「はい!」
そのままリアスのところまでイッセーを運び、転移の時一緒に連れてきていたアーシアにイッセーの治療を任せる。
「…イッセー」
そう言いながら、涙を流しながらイッセーを抱きしめるリアスを横目で確認した後須臾は
「そんじゃあ永久。初めは俺だけでやるから、こいつら守ってやってくれ」
「はい、一欠けの火の粉さへ通しません」
「頼んだぞ」
そう言って永久の頭をなで、こちらに向かてくるやつに顔を向ける。
「このクソ野郎がぁ!今すぐ消し炭にしてやる!!」
「残念だけど、こっからは俺が相手だ」
「お前は須臾っていったな。お前もよくも俺の顔を殴りとばしてくれたよなぁ!お前を燃やし尽くしてさっさとさっきの赤龍帝を燃やし尽くしてやるよぉ!」
怒りに呼応するように激しさを増す背中の炎。
だがそんなことも気にせず、須臾は一気に踏み込みその顔面を殴りとばした。
ライザーは吹っ飛ばされながらも体勢を立て直し、火を放とうとするが出した炎はすぐさま間合いを詰めた須臾に奪われ今度は蹴飛ばされる。
「こんのクソがぁ‼」
そう叫びながら上空に逃げるライザー。ヒトだと思っている須臾には飛行能力がないと読んでのその行動である。
事実単体では須臾は空を飛べない。だが上空にいるライザーの攻撃手段は魔力による火炎である。つまり、
「燃え尽きろぉ!」
「ご馳走様」
ライザーの放った火球は受け止めた須臾の右手に凝縮され、細長く形を変えていく。そうして出来上がったのは熱により光を放つ鞭である。
「痛みに震えろ」
そう言いながら上空のライザーに対して鞭を繰り出す須臾。
鞭の先端は容易に音速を超え空気を貫く音を立てたのち、ライザーの肉をたたく音が響き渡る。
「ぎゃぁあああぁあぁぁ!」
ライザーの悲鳴とともに。
鞭という武器は、もともと殺傷能力はそこまで高くないのである。だがその代わり、痛みを与えるという点においては、極めて優れた性能を見せる武器である。
フェニックスは確かに傷などを負ってもすぐに回復する。たとえ鞭で叩かれたよりよっぽど痛いと思うような体の部位欠損などを負ってもである。だがそのような大怪我をすると、脳というのは便利で痛みを無意識に一時的にシャットアウトするのである。その間に再生できるからフェニックスは痛みでのたうつことがない。だが、鞭は相手に損傷を与えずに瞬間的に痛みを与えられる。
つまり痛みになれてないボンボンの心を折るにはもってこいってことである。
「ほらほら!威勢がよかったのは最初だけか!」
須臾は鞭の動きを止めることなくライザーに叩き込み、どさくさにまぎれ炎の翼を奪いとり地に落とし、鞭打ちを行い続ける。
「ちょ、調子に乗んなぁあ人間ふぜいがぁ!」
そう声をあげながら全身から炎を出し鞭を防ごうとするライザー。
「残念、俺たちは純粋な人間じゃないよ」
そう言いながら、防御の炎なんて関係なく駆け出し顔面を蹴り、踏みつぶす須臾。
「目がああぁぁ!」
的確に目を狙いながら。
須臾の戦闘服は変わらず鉄板が仕込んである丈夫な編み込みのブーツであるが、裏に鋲が打ってあるらしく、それが目に立っているらしい。
炎でどかそうとしてくるがその炎はすべて須臾に食らわれ、須臾を焼くことは一切ない。そして須臾はライザー喉に膝を落とした。
とたん悲鳴がやむ。
そして今まで使っていた長い鞭を変形させ乗馬用の鞭にすると、ライザーの股間を激しくたたいた。
フェニックスの性質があるのでケガは残らないだろうが瞬間的に生じた痛みは相当のものだったのか、両手で股間を押さえ、口をパクパクと餌を求める金魚のように滑稽に動かしている。
おそらく悲鳴を上げたかったのだろうが、須臾が膝でライザーののどを潰しているため出なかったというとこであろう。
須臾は目を踏んだ足で踏みにじるようにして跳び、ライザーの脇に着地する。
ライザーは目をえぐられたことで顔を両手にやりもがいているので、須臾は乗馬用の鞭の形にしていたものを今度は剣に変え、ライザーの両足を根元から切断し、再生する前にゴルフのドライバーに変形させ、股間をフルスイングした。
勢い余って消し飛ばしたことを反省しつつもがき苦しむライザーを置き、手のドライバーを霧散させながら永久の方に歩いていく。
「だいぶすっきりしたぁ」
この男満面の笑みである。
「はい、すっきりしますよねぇ」
この妹も満面の笑みである。その他全員ドン引きだっていうのに。
「イッセーその腕」
「あー無茶しっちゃたから少しドラゴンに食われました」
アーシアの癒しとリアスの抱きしめられた感触で回復していたイッセーに目を向けるとその左腕は龍のものに変わっていた。自分のレベルに見合わない力を無理やり使った反動であろう。
「ちょいもらってくわ」
そう言いながら須臾がその鱗に包まれた龍の腕を撫でると撫でたところから人のものへ腕が帰っていく。
「え、どうして!?」
「龍の力喰っただけ。そんじゃ、永久。やるぞ」
「はい、兄さん。行きましょうか」
驚愕するリアスを放置し、須臾は永久と手をつなぎながらライザーの方へ歩く。
「貴様ぁ…貴様だけは許さん!!」
そこには顔面と股間を押さえながら爆炎をあげているライザー。
そんな迫力があるんだかないんだかよくわからない男を無視して2人は
「永久」
「はい」
「「自戒の檻」」
2人が揃って足を一歩踏み出すと、ライザーは下から延びた氷の柱による鳥かごに閉じ込められてしまう。
「こんなものぉ!」
所詮氷、自分の炎で溶かせない訳がないと思い、炎を出したのがライザーの最後のミスであった。
噴き出した豪炎は氷に喰われ、その分鋭いツララとなって鳥かごの一本一本の氷柱から延び、ライザーの体を貫く。
「ぐぞがぁぁ…」
貫かれながらもへし折り逃れようとするが、ツララの強度が高く砕けない。
再生しようにもそこにツララがあるためできない。
炎を出せば喰われ、その分自分を貫くツララに変わる。
もうこの時点でライザーは詰んだ。
「えっと、永久に触ろうとしたのは右手だったよな」
「はい、あの薄汚い右手です」
「消し飛ばすか」
「はい、消し飛ばしましょう」
永久から檻にさらに力が供給され、須臾がコントロールし、その右腕に刺さっているツララから氷の茨を発生させる。
茨は瞬く間にライザーの右腕を覆い、
「「Vanishment」」
その言葉とともに圧縮、大きな一輪の氷のバラの花と咲き、砕けて消えた。
ライザーの右腕ごと。
「それじゃ、満足したし」
「終わらせましょうか、戒めの棺」
「Punish」
そう2人がの言うと、氷の鳥かごは氷の棺となり、静かにレーティングゲームは幕を引いた。
ボコり切ったぜ
お疲れさんだな