ね。
葉のない、枯れた木ばかりが立ち並び、生命の輝きを感じさせない場所。曇天の空とぬかるんだ足下がその雰囲気を増長する。音は、一人の足音を除いて他にはなく、一層孤独感を煽る。
「くっそ、どこがどう繋がってこんな場所に。」
そうぼやく彼こそが、足音の主。名はヒカルという。ハンターである彼は、討伐依頼のあった大型モンスターを倒したのちベースキャンプへ戻ろうとした、ただそれだけだった。しかし歩いて行くうちに段々と周りの景色がおかしくなり始めた。先ずは空が紫に染まり、次いで霧が濃さをました。そんな場所を気の遠くなるほど歩いた先に、先程の、おどろおどろしい景色に辿り着いた。
…何処からか、羽ばたく音がする。ハンターとしてそれなりに鍛えられた感覚は、遠くにある気配すら察することが可能。しかし、今のヒカルはそれをありがたがることもなく、むしろいたずらに恐怖が増しただけだった。彼の居る、足下がぬかるんだ、開けた場所の周りを旋回している羽音の主はゆっくりと、だが確実にその旋回半径を狭めていき、最後は垂直に
「あれは…」
ヒカルはその銀灰色の竜の姿に圧倒され、その先の言葉を紡ぐことができない。肉食に向いた形状の頭部、人が何人入れるかというレベルの大きさの胴、その巨体を浮かすために巨大化した皮膜状の翼、その巨体をたった二つだけで支えられるほどがっちりした後肢、長く延び、先は膨らみ棘をもつ、丸太の如く太い尻尾。それらすべてが彼を威圧する。そしてその竜の眼は、ヒカルの方に…
…向かなかった。
不思議に思い、彼も竜の視線の先を向いた。そこには蒼い人影があった。
蒼い人影は、その身の丈程もある刀を抜き放つ。彼もヒカルと同じく
ここで起こっている戦いを見届けねばならない。
不思議とそんな感覚に捉えられ、この場所を離れられない。彼は仕方なくそれに従うことにした。
戦いは苛烈さを増していた。竜は火球を幾つも放って、それでいてその反動などなかったと言わんばかりに突進を繰り出す。蒼い狩人はその突進も火球も紙一重でひらりひらりと躱して、少ないチャンスに確実に一撃を打ち込んでいく。
「強い…」
自分のような
しかし流れは唐突に変わる。蒼い狩人が竜の正面から離脱するときに、左に行くか右に行くか。きっかけはそれだけだった。離脱が遅れた彼は、竜の放った火球の爆炎は避けたものの、爆風を浴びて吹き飛ばされる。狩人が体勢を直す前に、空に飛び上がった竜は、急降下と足蹴りで狩人を襲う。狩人はその攻撃をまともに食らってしまい、立ち上がった後もフラフラで、歩くことさえできないでいた。その
「逃げろぉぉぉぉぉっ!!」
ヒカルは、自分が身を隠していることも忘れて叫ぶ。しかしその思いは届くことはなく、無情にも巨大な火球が狩人に向かって放たれる。
ヒカルの目の前が炎一色になり、やがてもとの暗い色に戻っていった。その数秒ですら、蒼い狩人を助けたい彼には永遠に感じられた。
「…」
まず彼の目に入ってくるは、水分を含んでヌメヌメとしていた泥さえ焼き尽くされ、からからに乾かされた大地だった。その惨状には形容する言葉も見つからない。草も木も土も全てが黒ずんだ景色の中に、彼はやっと蒼い狩人を見つける。しかしその身体は一寸も動くことなく倒れていた。見つけた瞬間の安堵は急速に消えていき、悲哀と焦燥が彼の心を埋め尽くした。
銀色の竜は、刀傷こそ付けられどその甲殻の一つさえ焦がすことはなかった。襲い来るものは退けたと誇示するかのようにその翼を広げ、ここに舞い降りたときと同じようにゆったりと羽ばたき、やがて灰色の空に消えて行った。
ヒカルは、銀の竜が去ったと同時に蒼い狩人のもとに駆け寄る。やはり微動だにしていない。脈を測ろうとその兜を外した彼が見たのは、
「何!?」
まさかと思い、蒼い狩人の鎧の中を探る。すぐに
- Hikaru -
「あぁ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
彼は恐ろしくなり、跳ねるように立ち上がって、蒼い狩人を置き去りにその場から走って逃げ出した。何処までも、遠くへ、それだけを考えながら。
彼が銀竜と再び合間見えるのは、四年後のこと。
これはまだ彼がハンターとして歩み始めた頃の、どす黒い原風景。
我ながらとんでもないことをしてしまったものだ。元ネタがあるんですが、分かった人もわからない人もどしどし感想ください。僕が泣いて喜ぶだけですが。