何時か見し銀竜   作:N-ao

3 / 3
タイトル通りです(笑)

では、第三話、どうぞ!


三、呪いの金環日食

狩猟クエスト

「曇天を呼ぶ繚乱の番い」

 

報酬金:36000z

契約金:5000z

制限期間:一週間

指定地:旧沼地

主なモンスター:

・リオレイア希少種

・リオレウス希少種

特殊条件:

パーティを組むことを認める。

 

クエストLv:

★★★★★★★★★+?

成功条件:

リオレイア希少種1頭と

リオレウス希少種1頭の狩猟

失敗条件:

・ネコタクで三回緊急搬送される

・期間内に狩猟を終えられない

・死亡事故の発生

 

依頼主:村長

依頼内容:

邪留まりは十中八九火竜希少種の番いがきっかけであろう。なるべく早期に狩猟してくれることを望む。御武運を。

 

 

 

 

 

 

「で、こいつらは誰なんですか?」

 

ヒカルは依頼書から目を離し、目の前に現れた男女2人組を、次いで村長を睨めつけた。彼が身につけている蒼火竜(リオソウル)の刀と鎧がその表情を更に威圧感溢れるものにしている。しかし村長はそんなものどこ吹く風と言わんばかりに答えた。

 

「私なりの最高の手助けだよ。」

 

彼は村長のその返答を聞き、村長に自分と銀火竜との因縁を説明しなかったことと、依頼書の「特殊条件」をよく読まなかったことを後悔した。

 

 

 

ヒカルが自分の未来らしきものを見た時には、周囲に別のハンターなど居らず、銀竜とは一騎討ちだった。いつか襲い来る、神聖にして真剣な勝負。故に、彼の理想としては、銀竜との一騎討ちというのがベストであった。

 

しかし、全て今更である。

 

村の願いは、一刻も早く邪留まりが収まることだ。その強い願いがヒカルと、彼が睨んでいるハンターに懸けられている。ヒカルだけの事情で、二人分の援護を、もしくはそれが嫌で依頼そのものを断るのは問題だろう。

 

 

 

目の前の男女2人組の内男の方は、黙り通すヒカルの様子を窺っていたが、ヒカルの方からは挨拶する意思が無いことを察してか、自己紹介をしようと話し出す。

 

「俺はタケシ、ガンナーをやってる。とりあえず後ろは任せろ。」

 

そう言うと、タケシは身に着けていた鎌蟹(ショウグンギザミ)製の防具のうち、銀色の籠手(ギザミUガード)を外し、さっと手を差し出す。人当たりの良さそうなタケシの表情に、握手を返さなくては申し訳ないと、ヒカルは躊躇いつつも手を差し出した。タケシはそれに対しよろしく、と握手だけでなく言葉での挨拶もしっかり返す紳士だった。

 

 

 

「あ…あの、」

 

そこに割り込むように、女…というより少女という表現の方が近いか…彼女が話しかけた。少しフルフルと震えている様子から察するに、緊張して、しかも自分だけが会話に参加していなくて不安なのだろう。タケシはともかく、ヒカルには聞こうとする様子は微塵も見えないが、彼女は構わず名乗り始める。

 

「ぇと、私はっ、キョウ…って言います。と、得意な武器は、狩猟笛です……よろしくお願いしますっ!!」

 

そう言って手を差し出しつつ頭を下げるキョウ。背負ったフルフルを模した狩猟笛の口が見えて少しシュールだ。タケシはガッチリと握手をしているが、ヒカルには不安感しか届かなかった。

 

こいつはそもそも狩人に向いているのだろうか。

 

そんなことを考えているヒカルの目の前にも、キョウのほっそりとした手が差し伸べられている。白い籠手(フルフルSアーム)を外し忘れているが、ヒカル自身も、先程のタケシとの握手で自分の蒼色の籠手(リオソウルUアーム)を外すのを忘れていたため、外さなくても別に構わないだろうと、そのまま握手をする。

 

 

 

…いつまで経ってもキョウは手を放そうとしない。かといって、馴れ馴れしいわけでもなく未だフルフルと震えている。一般人でも普通ここまで臆病になるのかと言いたくなるほどだ。更に、彼女がまるで棄てられた仔犬のような目でいることにヒカルは痺れを切らし

 

『お前、本当に火竜を狩りにいけるのか?』

 

と目でキョウにメッセージを送る。彼女はヒカルに睨まれた瞬間に、蛇に睨まれた獲物の如く萎縮し、手をすっ込めた。

 

 

 

丁度タイミングを計ったかのように、タケシが村長に話しかける。

 

「村長、そろそろ出発して宜しいでしょうか?」

「そこはヒカルの判断だよ。クエスト受注をしたのはあくまで彼だ。」

「彼はヒカルというんですね。おーい、ヒカル?」

 

全ての決定権は、自分に。

 

引くか、進むか。

 

タケシとキョウの二人組を信頼するか、しないか。

 

村長の返答、そしてタケシの呼びかけは、それらでさえも「ヒカルに任せる」と、暗に告げている。村長はともかく、初対面である筈のタケシが、何か納得したような口調で呼びかけてきている。

 

一体何があって、その口ぶりなのか…

 

ヒカルは、何も分からずに、だが今はそんなことは気にすべきことでもないだろう、と自分に言い聞かせ、顔を振り向かせる。

 

「承知した。クエストに出発しよう。

俺の名は村長の言う通り、ヒカルだ。太刀を扱っている。」

 

と、前へ(クエストへ)今はただ前へ(彼等を信頼する方向性へ)向かうことにして、彼は己の名を名乗った。

 

 

 

 

 

普段よく旧沼地へ狩猟に出掛けるヒカルでさえ顔をしかめるほど、空は禍々しい雨雲に覆われていた。雷鳴が何度でも響く。雨音が天井を叩く。

 

何かが違う。そして、何かが同じ。

 

この空は、彼の記憶の中にある、銀竜に遭遇した沼の空と同じだった。

 

今から、一世一代の狩りが始まる

 

そう考えれば、いくら怖い記憶があろうとも恐れなど消える。まるで満月の夜に、一升もの酒を呑んだような高揚に、彼はひたすらに酔っていた。草食竜アプトノスの引く車の窓際で、不機嫌な表情に次いで不気味な笑みを浮かべた彼に、キョウは言わずもがな、タケシも声をかけられなかった。

 

 

 

 

 

 

適当な所で三人は竜車から降り、御者をしてくれたアイルーに報酬のマタタビを払う。そのアイルーも今回の事情を知っているのか

 

「すご〜く嫌な予感がするニャ。無理はしないで欲しいのニャ。」

 

と、心配の声をかけてくれた。それに

 

「…ああ」

「ありがとうな。俺たちは大丈夫だ!」

「……」

 

三者三様に感謝の意(?)を示す。そのまま御者アイルーに別れを告げ、枯れ木だらけの森の中へ足を踏み入れた。

 

 

 

瞬間、三人全員が、目つきを変えた。

 

 

 

駆け出しのハンターは、ハンターズギルド指定のベースキャンプから行動を開始する。支給された弾薬等を受け取り、心を狩人の状態に入れ替えるのだ。しかし優秀なハンターにそんなものは必要無い。弾薬は自分で必要量を用意し、心の切り替えは常に一瞬。

 

常在戦場

 

それを会得するに至った者達は、モンスターの出にくい場所にあるベースキャンプを経由することはなく、直接狩りの場に降り立つ。

 

 

 

今ヒカル達が歩くのは正にそのような場所。故に、ヒカルは口を真一文字にして、タケシは顎を引き、キョウはふぅ、と息を吐き、己が内の堰を切った(ストッパーを外した)

 

 

 

三人は暫くヒカルを先頭にして、道無き道を掻き分け、大きく開けた場所に着いた。ぬかるんだ広場を、枯れ木の森が囲う、その景色は…

 

「ここか…」

 

ヒカルの「恐怖」の原風景。未来の彼が死する舞台(フィールド)

 

「二人とも、準備はいいk…ん!?」

 

タケシがモンスターを呼ぶ角笛を取り出したその時のこと、既に小雨になっていた雨が完全に止み、一瞬の凪ののち、向きを変えた風が三人の身体を舐めた。そして、

 

 

 

雲が切れ、陽光が辺り一面に降り注ぐ。

 

 

 

あり得ない、と三人が三人とも呟く。沼地は、狩場の中で雨雲が途切れないことで有名だ。雨が降らないならともかく、沼地が晴れたことは彼等の経験上、皆無。そして、さらに『あり得ない』ことが起こる。

 

ヒカルは歯を食いしばり、

 

タケシは周囲を見渡しつつ、

 

キョウは防具のフードを脱いで、

 

 

 

太陽の光が(・・・・・)刻一刻と(・・・・)弱まっていく(・・・・・・)のを、只々見つめていた。

 

 

 

常在戦場の念すら吹き飛ぶ、その光景は、辺りが宵の如く暗くなり、光が弱まり切った太陽に、薄雲が掛かることで、その最盛(クライマックス)を迎える。

 

「太陽に…穴…?」

 

キョウが見たままを口にする。ヒカルやタケシに至っては、口をあんぐりと開けて、言葉を発することさえ叶わない。

 

 

 

邪なる者が留まる沼に、大きく喰われた太陽が、金の指環となって姿を見せる。

 

 

 

その太陽を横切る影が一つ。

 

 

 

もう一度、影が横切る。

 

 

 

その影は、ヒカル達の周囲を何回か旋回すると、羽音を響かせて、巨体の割に静かに着地した。

 

『呪われている』

 

ヒカルは、数年前に始めて見た時と変わらぬ銀色の巨影を目の前にして、驚き半分、呆れ半分に、この感想を抱いた。

 

 

 

銀火竜が、吠えた。




という訳で、戦闘、始まりませんでした(謝)

もう一回、感覚と描写のズレを直すため、金銀火竜同時討伐クエスト今からやってきます(やべえ…何回かやったけど全部リタイアしてしまってるんだよな…orz
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