やはり俺が青蘭学園で青春をおくるのは間違っている。 作:キール
世間はGWに入り、行楽地には人があふれ、ニュースでは帰省する人たちのことを伝えていた。
私はというと、千葉にある本家を訪れていた。
「そうか。順調そうで安心した」
私は本家の代表である三輪さんに青蘭学園での生活のことを話した。
「今日は三輪さんだけなんですね」
「もっと人が多くいたほうがよかったか?」
「いいえ…。あの人たちの前で話すとかありえませんから」
ここの関係者は皆すごい人たちで、過去には偉大な功績をのこしたこともあるらしい。
私と兄は幼いころから、ここから送られた人による指導を受けていた。
その指導はスパルタで、体が悲鳴を上げようが、怪我していようが、続けようとしていた。
私が中学生になったころ、そんな過酷な練習を続けてきた反動が来たのか、兄は練習の合間に倒れてしまった。
すぐに病院に運ばれ、幸いなことに一命は取り留めたが、兄はあれから目覚めることはない。
その師範はすぐに解雇され、関係者による監視での生活を強いられているらしい。
私は大好きだった兄が奪われたことで、この家のやり方に反感を覚え、それまでは話を聞くことが多かった老人たちの話にも耳を貸すことをしなくなった。
「兄貴はまだ目覚めませんか?」
「ああ……君たちには悪いことをしたと思っている。いくら強くなるといっても、体が壊れてしまっては意味がない。君がわれわれに反感を持つのは当たり前のことだと受け止めている」
「しょうがないです。私も兄も強くなる。その一心で練習してたんですから」
このことで復讐をはじめようとは思わない。私はそこまで心が幼くないからだ。
「それにしても、体つきがかなりよくなったな。向こうで相当鍛えてるんだろ?」
「相棒は付き合ってくれないんですけど、毎日5キロ走ってますからね。体つきのよさは自分でも自覚してますよ」
中学を卒業するころと今の自分の体つきは変わってきたと自覚している。
向こうでの走りこみと日々の練習で筋肉がついており、体の動きは以前よりもました。
「そうか。もう少しここにはいるんだろ?」
「はい。二日間は滞在する予定です」
「美奈も喜ぶだろう。歩ちゃんが来るのも心待ちにしてたみたいだからな」
美奈というのは三輪さんの娘さんで私の幼馴染でもある。
美奈ちゃんは兄のことがあって以来話すことや会う機会は減ってしまった。
「ちょっと、お父さん。いつまで歩と話してるのよ」
「おっと…姫がご機嫌ななめのようだ。話はこれで終わりだ。二日間、楽しんでいくといい」
三輪さんはそういって笑いながら部屋を出て行った。
「相変わらずのぶっきらぼうな面ね」
「会ってすぐに罵倒がくるとは……そういうところは変わってないんだね」
「何よ?悪い」
「むしろ安心したかな。それでこそ、美奈ちゃんだからね」
「なっ……!?ほ、ほめても何もでないわよ」
「そういう素直じゃないところも変わってないようで」
久しぶりに見る幼馴染の姿は私よりも大人に見えた。
「まともに話をするのは3年ぶりね」
「うん。兄貴が倒れたのがその時期だからね。ここにくるまでの道のりは迷わずにこれたよ」
3年たっていることで町の風景や建物も変わっており、私は本家に来るまで迷わないか、不安だったが、頭は道のりをきちんと把握していたようで、迷わずにこれた。
「青蘭学園に通ってるみたいね。どうなの、調子は」
「ぼちぼちかな…。まだ一ヶ月だし、これからが大事になるかな。そっちはどうなの?」
「こっちも順調よ。総武に通えることを誇りに思ってるわ」
総武といえば、八幡も前に通っていたみたいだけど。
「ねぇ。プログレスってそんなに特別なの?」
「何さ、いきなり」
「私の友達でもプログレスの子がいるのよ。その子がこの前いってたのよ『私は特別な存在。神に選ばれたんだ』って」
なんじゃそりゃ……そりゃ貴重な存在といわれてるけどさ。
「別に特別な存在かどうかはその人が決めることじゃないかな」
「じゃあ、歩は自分が特別だと思ってるの?」
そんなこと思ったことないし、特別ってなんだろうと疑問に感じる。
「私は普通だよ。あそこでは特別とか関係ないと思うし。それにまだまだ力は下のほうだと思うしね」
「歩らしいわね」
「まぁ…強さを求めてあそこにいったみたいなもんだけどね」
私は強さを求めて青蘭学園に入った。
入学してから思ったことは、私より強い人は沢山いるし、ここなら成長できると思った。
「それにいいパートナーも見つけたしね」
「パートナーって男よね…ど、どんなやつなのよ?」
何で美奈ちゃんの顔が赤くなってるんでしょうかねぇ。それも若干不機嫌そうに見えるのは私の気のせいだろうか…
「それは…」
美奈ちゃんは息を呑んで私の言葉を待っていた。
「教えません~」
「はぁ!?なんでよ!」
「だって教えないほうが面白そうなんだもん」
「相変わらず、性格が悪いわね!歩が私に隠し事なんて百万年早いわよ!いいから教えなさい!」
「いやでーす~」
そして、しばらくの間、私と美奈ちゃんの追いかけっこは続いた。