この素晴らしい世界で蒼い悪魔に力を!   作:(´・ω・`)

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プロローグ 転生
プロローグ1-1「Son of Spada ~バージル~」


 今からおよそ二千年前。

 

 人間界の平和は、魔界の進攻によって砕かれた。戦いが日常と化した混沌の世界の住人に、平和な世界で暮らしてきた人間が勝てる筈もなく、悪魔達は殺戮を繰り返す。勇気ある者ほど早死にし、人々は救いを求めて祈ることしかできない。

 だが、そんな人間達の祈りに応えるように、ひとりの悪魔が正義に目覚め、魔界の軍勢に立ち向かった。

 

 彼の名は、スパーダ――伝説の魔剣士。

 

 圧倒的な力で迫る悪魔をねじ伏せ、魔界の軍勢を率いていた魔界の王──魔帝ムンドゥスを封印し、人間界に勝利をもたらした。彼は英雄として、人々から讃えられた。今や彼を知る者は数少ないが、それでもなお、おとぎ話として語り継がれている。

 人間界を救った後、彼は人間達の平和な世界を影から見守り続けた。その中で、彼と、彼が愛した女性──エヴァの間に双子が授けられる。

 

 弟はダンテ、兄はバージルと名付けられた。

 

 平和な人間界で、幸せな家庭を築いていくスパーダ。しかし、彼は突如として家族の前から姿を消した。「彼はすぐに帰ってくる」と、母のエヴァは双子に語りかける。また家族四人で食卓を囲める日を待ち望む、ダンテとバージル。

 

 が、その日が訪れることはなかった。

 

 赤い月が昇った夜、彼等のもとに魔帝の差し向けた悪魔が現れた。双子は協力して果敢に立ち向かったが、悪魔によって力を二分される。

 家から離れた墓場に移され、悪魔に心臓を刺されたものの一命を取り留めたバージル。彼は刀を杖に家へ向かう。二人が生きていることを願ったものの、進んだ先で見たのは、崩壊した家と血の跡。そして、彼へ見せしめるように残った、首から下が消されていた母の頭部。

 無残に殺された母の亡骸を見て、バージルは心に誓った。

 

「母さんを守れなかったのは、俺が弱かったからだ。愚かだったからだ。力こそが全てを制する。力がなくては何も守れはしない。自分の身さえも──ならば求めよう。親父から──スパーダから受け継いだ、悪魔の力を──」

 

 バージルは、悪魔として生きる道を選んだ。全てはスパーダを超える力を得るために。邪魔をする者は、誰であろうと容赦はしない。悪魔だろうと、人間だろうと、子供だろうと、女だろうと、協力者だろうと。

 

 

 たとえ──血を分けた兄弟であろうとも。

 

 バージルは力を得るために。ダンテは兄を止めるために。スパーダの血を受け継いだ二人は剣を交えた。家族として生きていた、あの頃の兄弟喧嘩とは違う。己の全てを賭けた魂の戦い。

 

「俺達がスパーダの息子なら、受け継ぐべきは力なんかじゃない。もっと大切な──誇り高き魂だ! その魂が叫んでる。あんたを止めろってな!」

「悪いが俺の魂はこう言っている──もっと力を!」

 

 吠える二人の魂。互いの全てをぶつけ合う戦いは、人間界のみならず魔界をも揺らした。何者も介入することのできない熾烈な戦い。長く続いた彼らの戦いは、剣の一閃で終わりを迎える。

 

 勝利したのは、誇り高き魂であった。

 

「これは誰にも渡さない。これは俺の物だ。スパーダの真の後継者が持つべき物──」

 

 敗れたバージルは母の形見を手に、魔界の底へ堕ちようとする。それを止めるべくダンテは駆け寄ったが、バージルは彼の助けを拒んだ。

 

「お前は行け。魔界に飲み込まれたくはあるまい。俺はここでいい。親父の故郷の──この場所が──」

 

 差し伸べられたダンテの手を払い、バージルは魔界に堕ちた。

 気付けば地の底にいたバージル。傷を押さえながら立ち上がり、黒雲たちこむ魔界の空を見上げる。そして、遂に対面した。

 かつて、父が封じ込めた魔界の王。自分から母を奪った元凶──魔帝ムンドゥスと。

 

「魔界の王とやり合うのも悪くはないか。スパーダが通った道ならば──俺が通れない道理は無い!」

 

 単身、魔帝に立ち向かったバージル。しかし、魔帝を討つために必要な魔剣スパーダがない上に、ダンテとの戦いで負った傷を抱えたまま。今の彼に勝機はなく、数多の悪魔を切り伏せてきた閻魔刀さえも折られ、魔帝に敗れた。

 しかし魔帝は、バージルを消滅させなかった。魔帝は、まるでスパーダを侮辱するかのように彼を操り改造し、新たな悪魔として迎え入れた。

 

 漆黒の鎧を身に纏い、巨大な剣を振るう黒き天使(ネロ・アンジェロ)として。

 

 あの世へ行くことも許されず魂を囚われ、魔帝の駒となってしまった彼は、数年の時を経て、マレット島と呼ばれる場所で再びダンテと剣を交える。

 過去にバージルを倒した時よりも成長したダンテと、互角の戦いを繰り広げるバージル。三度の死闘を経て、遂に決着が訪れる。

 

 バージルは再び、ダンテに敗北した。

 

 叫びを上げ、ダンテのもとから消え去る漆黒の騎士。残されたのは、彼が肌身離さず持っていた金色のアミュレット。

 

 そして、魔帝の黒き呪縛から解放された、消えゆくバージルの魂。

 

 薄れゆく意識の中、彼は見た。二つのアミュレットと剣が合わさり、魔帝を討つ剣──魔剣スパーダの誕生と、父によく似たダンテの姿を。

 かつての大戦を再現するように、ダンテは魔剣を手にして魔帝に立ち向かうのだろう。彼の未来を見たバージルは微笑み、目を閉じる。

 

 

 こうして、彼の魂はこの世から完全に消え去った。

 




出だしからこのすば要素皆無になりました。クロスオーバーとは(哲学)

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