太陽が空の真上を通り過ぎ、西の山の向こう側を目指してのんびりと進む時刻。とある世界では「
「いつもご利用ありがとうございます。こちらサービスの、雪精で冷やしたイチゴのスノーボールです」
「うむ」
バージルもまた、行きつけのサキュバス喫茶店にてスイーツタイムを過ごしていた。今やここのお得意様にもなっており、たまに試作段階のスイーツを試食し、口を出すこともあった。
この店本来のサービスを一切受けることなくスイーツを食べ続けるバージルを、店内に訪れていた冒険者は凝視しているが、バージルは気にせず食べ続ける。因みにバージル推しの店員は、彼と話しているサキュバスを羨ましそうに見つめながら仕事していた。
「女。注文の前に、少し聞きたいことがある」
「はい。何でしょうか?」
次に緑髪子供体型サキュバス――ロリサキュバスは紙とペンを手に取って注文の品を尋ねようとしたが、それよりも前にバージルが口を開いた。彼女は首を傾げてバージルを見る。
席に座っていたバージルはロリサキュバスに視線を向け、質問――今日この店へ訪れた本来の目的を話し始めた。
「この街にデストロイヤーが向かってきた日、同時に謎のモンスターが現れたことは知っているか?」
「鎌を持った悪魔達のことですか? 知ってますよ。といっても直接見たわけではないので、喫茶店に来る冒険者から話を聞いたぐらいの知識しかないですけど」
「……悪魔だと気付いていたか」
「最近、そのモンスター達の種族を悪魔だとギルドが定めたと、小耳に挟んだので。それに、青髪のアークプリーストが悪魔撲滅だなんて口にしながら、次々と殴り倒していったという話も……あぁ怖い」
サキュバスも一端の悪魔ではあるため過激派のプリーストは怖いのか、怯えるようにブルリと身体を震わせる。
一方、あのモンスター等が悪魔だと説明する前置きが省けたと思ったバージルは、話を本題に持っていった。
「俺は、その悪魔共について調べている。同じ悪魔族である貴様等なら何か知っているかと思い、こうして尋ねにきたわけだが……」
「んー……ウチにくる冒険者さんから、どんな姿だったかは耳にしましたけど……私は記憶にないですね」
「そうか。他の奴等は?」
「皆私と同じで、覚えはないと言ってましたよ」
「……Humph」
冒険者や先輩との話を思い出しながら答えるロリサキュバス。あの悪魔達についての情報を聞き出すアテの1つが外れ、バージルはため息を吐いた。
しかし、ここのサキュバス達は魔界での地位が低い上に人間界へ移住してきた者達。最初から期待薄だとは思っていた。彼は悲観することなく、白い皿に置かれた赤みのあるスノーボールを1つ口に入れ、咀嚼しながら思考を働かせる。
この世界の魔界の情勢を知るには、下位の悪魔では役者不足だ。少なくとも中位以上でなければ、魔界について詳しく聞き出すのは難しいだろう。
「随分と困ってるようだな。銀髪の兄ちゃん」
「……ムッ?」
とその時、不意に横から野太い男の声が聞こえた。声を掛けられていると思ったバージルは左横に顔を向ける。
彼の隣の席に座っていたのは、半裸の上からサスペンダーに肩パッドを身に着けた、モヒカンにヒゲという特徴のあり過ぎる男。
「貴様は……」
「アンタとこうして話すのは、ギルドで始めて会った時以来か?」
「あっ、ポチョムキン4世さん! 今日も来てくれてたんですね!」
「おう、いつも世話になるぜ。ちっちゃなサキュバスさんよ」
「(……4世……)」
彼が始めてギルドに入った時、受付の場所を教えてくれた優しいおじさんことポチョムキン4世だった。この店で顔なじみなのか、気さくにロリサキュバスと言葉を交わす。
バージルは彼の名前を聞いてなんとも言えない顔をしていたが、めぐみんやゆんゆんの例もある。深く考えることはしなかった。
「で、話は戻るが兄ちゃん。ちょっと離れた席で聞かせてもらったが、あの悪魔共の情報を集めるのに苦労してるんだってな?」
「盗み聞きか。趣味の悪い男だ」
「まぁそう言うなよ。ソイツ等ついて詳しそうなヤツに、心当たりがあるんだ」
「……誰だ?」
ポチョムキン4世から有力な情報があると聞き、バージルは耳を傾ける。ロリサキュバスも注文を取ることを忘れて聞く態勢になっている中、彼は机に置いてあった水をひと飲みしてから切り出した。
「悪魔のことなら悪魔に聞けばいい。つうわけで、この国でも目撃情報がある、仮面の悪魔を探してみるのはどうだ?」
『仮面の悪魔』――別称、見通す悪魔。手配書にも載っている魔王軍幹部の1人だ。
ベルゼルグ王国で度々目撃情報が上がっており、予知と予見という強力な力で数多のベテラン冒険者達を返り討ちにしてきた。かの高名なアークウィザードも討伐に向かったが、手も足も出せなかったという。
「仮面の悪魔! それってバニル様のことですよね!? 私超好きなんですー!」
「会ったことがあるのか?」
「ないです! でも、冒険者さんから話を聞く度にどんどん好きになっちゃって、今や大ファンの1人です! あぁ……一度でいいから会ってみたいなぁ……バニル様……」
バニルのファンらしかったロリサキュバスは天井を見つめ、ニヤけた表情で妄想に耽る。相当ミーハーなのだろう。
そんな彼女を見てポチョムキン4世は小さく笑いながらも、バージルに顔を向ける。
「まぁそういうわけだ。ソイツなら、耳寄り情報を聞けそうじゃないか?」
「既に仮面の悪魔と接触する方法も考えていた。しかし、悪魔はいつどこに現れるかわからん。貴様は、海に落ちた宝石をヒントも無しに探せと言うのか?」
しかし彼が提示してきた方法は、バージルも視野に入れていたものだった。ベテラン冒険者ですら手に負えないのなら、中位以上なのはまず間違いない。魔界の情報を聞き出すことは期待できる。
だが問題は、どうやって仮面の悪魔と出会うか。バージルが話した通り、何の情報もなく目的の悪魔を探すのは、運でも良くない限り非常に難しいだろう。
そう思ってバージルは言葉を返したのだが、それを聞いたポチョムキン4世はというと、何の問題があるのかとばかりに告げた。
「根気強く探せばいいだけだろ? 逸る気持ちもわかるが、そう焦って探してちゃあ見つけられるモンも見つけられなくなる」
「ムッ……」
彼の言葉を聞き、バージルは顔をしかめる。確かに彼の言う通りだ。有力な情報が無い以上、神出鬼没な彼等と会うにはそれしか方法がない。
バージルとしては、さっさと魔界に精通している者から話を聞きたいところなのだが――。
「アンタは若いんだから、今日みたいに時折ここでスイーツを楽しみながら、生き急がずのんびり探せばいいさ」
「……そうかもな」
ポチョムキン4世が続けて発した言葉を聞いて、バージルはそれもアリかと同調するように呟いた。
心の隅にあった焦燥感が少し和らぐのを感じながら、バージルはスノーボールをまた一口入れ、妄想にトリップしているロリサキュバスが帰ってくるのを待った。
*********************************
サキュバス喫茶店で糖分を摂取したバージルは、夕飯の買い物やクエスト帰りで賑わう街をブラつきながら帰路を歩いていった。
こういう時、自身の運の無さもあって大概カズマ達と遭遇するのだが、今日は珍しく彼等とすれ違わなかった。どころか、その姿すら見ることもなかった。
絡まれずに済んでよかったと安堵する傍ら、湖でバッタリ遭遇した時のようにまた別の場所でかち合うのではと不安を抱くが、予測不可能回避不可能な未来を心配していてもしょうがない。彼等のことは頭の隅によけて、街の郊外へと足を進めた。
賑わいのあった区域から郊外への道中でも、彼等と会うことはなく、バージルはカズマ達が住む屋敷の前に着く。明かりがついていないのを見るに、屋敷にもいないのだろう。主が不在なのを確認してから屋敷の正門前を通り過ぎ、隣の自宅へ。
そのまま家の中に入り、読書でもしながら依頼人を待つかと考えていたのだが……彼は家の前でピタリと足を止めた。
「おっ、帰ってきた」
「……ここで何をしている」
家の前にいたのは、退屈そうに座っていた堕女神ことタナリス。彼女は跳ねるように立ち上がると裾部分を軽く手で払い、見上げる形でバージルと向き合った。
「少し前に、僕をこの家に案内してくれたよね? もしかしたらあの時君は、僕に何か話があって連れてきてくれたんじゃないかなーと思ってさ。で、今日ここで君の帰りを待ってたんだけど……どう? ビンゴ?」
「……察しのいい奴だ」
タナリスから自分の考えていたことを言い当てられ、バージルは思わずひとりごちる。流石は、多くの人間を見てきた元女神と言うべきか。見た目は活発系ロリだが。
とにもかくにも、また会った時には話をしようと思っていた。バージルは前にいたタナリスを軽く退かし、鍵を開けて彼女を家に招き入れた。
*********************************
「ねぇバージル。コーヒーない?」
「紅茶ならある。そこの棚の上にティーポットとリーフの入った袋、火を起こす魔道具があるだろう。飲みたいなら勝手に使え」
「そこは気を利かせて、君が紅茶を用意すべきだと思うんだけど?」
「そう文句を言ってきた輩は全員、外へ蹴り出してきた。貴様もそうなりたいか?」
「君が僕を家へ入れたのに追い出すのか……」
あくまで自分本位なバージルを呆れた表情で見るタナリス。紅茶はあまり好きじゃないのか用意するのが面倒だからか、結局紅茶には手を付けず、背もたれに全身を預けるようにソファーへ座る。
「で、話ってなんだい? 良いバイト先ならいくらでも紹介するよ?」
リラックスした様子のまま、タナリスはバージルに話を振る。対してバージルは腕も足も組み、木の軋む音を鳴らせながら背もたれに背中を預けた姿勢で、タナリスに切り出した。
「この世界に、俺の元いた世界の悪魔が現れた」
単刀直入に告げられた言葉と共に、漂っていた雰囲気が和やかなものから重みのある真剣なものへと変わる。タナリスもそれを感じ取ったのか、子供のように無邪気な表情から、少し真面目なものへと切り替わる。
「ゲイリーという鍛冶屋から、街の前に突然モンスターが現れたという話を聞いただろう。それが悪魔共のことだ。奴等は、前兆すら見せずに現れていた。貴様がタダで譲り受けた鎌も、奴等が持っていた武器を模したものだ」
「えっ? あの鎌ってそうだったの? あぁでも確かに、言われてみれば悪魔の下っ端の下っ端があんなような鎌を持っていたような……」
元天界の住人故、魔界にはそこまで詳しくないのだろうか。鎌の誕生秘話を聞いて、タナリスはうろ覚えといった様子で呟く。
「その後、奴等が現れた場所を中心に調査したが、入り口のような物は見られなかった。そこで俺は、奴等はこの世界の魔界から人間界へと進出してきたと睨んでいるが──」
「問題は、どうやって別世界の魔界に移動したか。で、ついこの間までその悪魔達もいる世界の住人だった僕に話が聞きたいと」
「そういうことだ。何か知っているか?」
彼女が話の本題を理解してくれたところで、バージルは尋ねる。少しでも情報が得られればと思っての質問だったが、タナリスは当惑するように腕を組む。
「何かって言われてもねぇ……魔界は今頃、空いた玉座を奪い合うのに必死で、異世界に目を向ける暇なんてないと思うけど……あっ」
話している途中、タナリスはまるで口が滑ったかのように声を出し、片手で口を隠した。彼女の行動をバージルは不思議そうに見ていたが、やがてその意味を把握すると、彼は少し呆れるように息を吐いた。
「あちゃー……ついうっかり喋っちゃった。サプライズ感が欲しかったのなら、ごめんね?」
「いらん世話だ。そもそも、魔剣スパーダを持った奴が負けるとは思っていない。むしろそれで負けたのなら、とんだ恥さらしだ」
反省しているのかしていないのか。手を合わせペロッと舌を出して謝るタナリスに、バージルは気にしていないと答える。
もし、
「で、話は戻るが、悪魔共の異世界旅行については?」
「さっきも話したけど、悪魔達は旅行に赴いてる場合じゃない筈だよ。それに、魔界で異世界への扉が開いたなんて情報は耳にしてない。まぁ僕は、比較的魔界に近い場所を担当してただけであって、魔界に詳しいわけじゃないんだけどね」
「……悪魔を従える者が、こちら側に送られた経歴は?」
「無いね。君以外に地獄行きとなる人を転生させた覚えはないし、君の後に誰かを転生させたわけでもない。そもそも、あっちの世界からこっちの世界へ転生してきた人は君で最後の筈さ。あっ、僕はノーカウントね」
「……? 何故最後だと言い切れる?」
その言葉が引っかかり、疑問を抱いたバージルはすぐさま尋ねる。タナリスは内緒話をするように口元へ手を当て、されどバージルには聞こえる声量で答えた。
「エリスにはまだ言ってないんだけど、実は君を転生させて少し経った後、この世界へ死者を転生させる取り組みを、ウチの天界は勝手に止めちゃったんだよね」
「……何故だ?」
「それどころじゃなくなったからさ」
タナリスは簡潔に答え、ソファーから立ち上がる。そのままバージルのもとへ近寄ると、机に置いてあった赤と青の宝石を両手に持った。
「上の連中は、とある『左目』を探しててね。ただの目じゃない。僕達天界側のトップが復活するための鍵になる目さ」
2つの内、左手にあった赤い宝石。それを人差し指と親指で摘み、自身の左目へ重ねながら、タナリスは話を続ける。
「君も、君のパパも、勿論僕も知らないずっと昔。僕らのいた世界は元々1つだった。でも、ある戦争をきっかけに世界は3つに別れた」
「……『ファーストハルマゲドン』か」
「おや、知ってたのか」
バージルのいた世界は、天界、魔界、人間界の3つに分け隔てられているが、元々は1つの、光と闇が混じった混沌の世界だった。
しかし、今やおとぎ話となったスパーダの伝説よりも遥か昔、神々の間で戦争──『ファーストハルマゲドン』が起こった。世界を二分する、覇権をかけた総力戦だったと伝えられている。
その戦争の果て、世界は光の天界と闇の魔界、そして2つのバランスをとる中間──後に人間界と呼ばれる混沌界の3つに分断された。
「元々1つだった世界を創ったジュベ……レイア? っていう創造神は、戦争の果てに天界へ追いやられ、力を失って眠ってしまったんだ」
「ジュベレウスだ。貴様等の主神だろう?」
「だって、僕そんなに好きじゃなかったもん」
『創造神ジュベレウス』──本来は神々の頂点に立つ、世界を創りし者だったが、
しかし、力を失ったジュベレウスは長き眠りについた。スパーダが魔帝に反旗を翻した時も、魔帝が復活した時も、天界の主神は眠ったままだった。
「復活反対の少数派もいるみたいだけど、天界の住人の多くは、創造神復活を願ってる。で、色々あって復活の鍵となる『目』を探すことになったんだ」
タナリスは話しながら、右手に持っていた青の宝石を元あった場所に置く。気に入ったのか、赤の宝石は未だ持ったまま。宝石を通して、天井に吊るされた明かりを見る。
「詳しいことは僕も知らないけど、右目は天界の手にあった。残るは左目。そしてその在処もわかっていた……けど、未だ手に入れることはできていない。なんでだと思う?」
「目が隠されたダンジョンに、天使泣かせの罠でも仕掛けられていたか?」
タナリスは宝石から顔を逸し、バージルを見ながら問いかける。
魔界ならまだしも、天界の事情はそこまで詳しくない。バージルは適当に答えると、タナリスは赤い宝石を青い宝石の隣に置き、正解を告げた。
「『魔女』さ。左目は、1人の魔女が持っていてね。その魔女さんがべらぼうに強いみたい。おまけに、自分から天使を誘い出したりもするそうだし」
彼女の口から出た『魔女』という言葉。それに、バージルは覚えがあった。
元の世界で読んだ古い書記。ある人間の一族で、
その両方共、五百年前に滅んだと言われていたが、どうやらタナリスの話を聞く限り、生き残りがいたようだ。そして悪魔ではなく、天使を狩っている。デビルハンターならぬエンジェルハンターというべきか。
「じゃあ見逃すのかって言われると、そういうわけにはいかない。復活祭も近く、オマケに魔界の神が不在ときたんだ。この機を絶対に逃すまいと、天使達は今でも1人の魔女狩りに没頭してるだろうね」
「故に、異世界の面倒を見ている時間も惜しいと」
「そゆこと。僕も上司に、転生させてる暇があったら手伝え! って言われて駆り出されてね。運良く例の魔女とは遭遇しなかったけど。いやぁ、僕の悪運も捨てたもんじゃないね」
タナリスは「帰って早々異世界に飛ばされちゃったけど」と加え、手を後頭部で組んで陽気に笑う。
元いた世界の天界が、異世界転生の取り組みを止めた理由を聞き、バージルは独り納得する。どの程度死者を転生させていたかによるが、こちらの世界からすれば一方的に取引を止められたということ。迷惑でしかないだろう。
魂の導き、神器回収に加え、タナリスの面倒を見ることと、1つの世界から転生の取引を止められた後処理。天界で忙しなくアタフタするエリスの姿を、バージルは想像した。
とその時──唐突に、扉をノックする音が2人の耳に入ってきた。
「……入れ」
誰かが来る予定も、呼ばれる覚えもない。となれば、家の前に来たのは十中八九依頼人。バージルはタナリスとの会話を終わらせ、扉の向こうにいるであろう来客に声を掛ける。
彼の声を合図に、扉は木の軋む音を立てながら開かれる。バージルとタナリスが入店してきた来客を見ると──その者は、バージルが知る人物だった。
「貴様は……」
「裁判の一件以来ですね。バージルさん」
以前会った時と同じ服装に見を包んだ、王国検察官のセナ。彼女は扉を閉め、バージルのもとに近寄ってくる。その手には、紙が何枚か重ねられたクリップボードが。
セナはコツコツと足音を鳴らし、机越しにバージルの前に立つ。とそこで、近くにいたタナリスの存在に気が付き、セナは不思議そうに彼女を見つめた。
「えっと……貴方は?」
「僕はタナリス。バージルの恩人ってヤツかな」
「その恩はもう返した。コイツはちょっとした知り合いだ」
「は、はぁ……」
言い分の違う2人の紹介を聞き、セナは少し困惑する。しかしすぐに喉を鳴らすと、尋問や裁判で見せた仕事モードのキツイ目を見せて、バージルと向かい合った。
「……何の用だ? 奴のように、檻の中に放り込まれる覚えはないが」
その視線を受け、バージルはふんぞり返って尋ねる。セナはチラリと手元のボードに目を移すと、すぐに視線をバージルに戻してから、口を開いた。
「バージルさんは便利屋として、依頼を請け負っているそうですね」
「……あぁ」
セナの問いに、バージルは短く答える。するとセナは、ボードにまとめられた紙をバージルへ見せるように、ボードを静かに机の上へ置いた。
「では私から貴方に、調査の依頼をさせてもらいます」
ベヨネッタに関するものを書きましたが、あっちの天使勢は本文で書いた通り魔女狩りに全力を注いでいる最中なので、天使勢は関わってきません。