この素晴らしい世界で蒼い悪魔に力を!   作:(´・ω・`)

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第59話「Chimera ~取り込む者~」

 誰もいない里の外れで、バージルとシルビアは睨み合う。

 彼女は紅魔族にバレないよう侵入を試みたようだが、運悪くバージルに見つかってしまった。否、それこそが彼女の狙いなのだろう。

 

「銀髪に青い衣ということは、貴方がバージル? へぇ……噂に聞いていた通り良い男ね。もうちょっと幼気があればアタシの好みなんだけど」

「御託はいい。貴様の目的は何だ?」

 

 バージルは刀を少し抜きつつシルビアに問いかける。対してシルビアは獣のような黄色い目でバージルを見つめると、彼へ手を差し伸べた。

 

「アタシ達の仲間にならない?」

 

 勧誘──想像の範疇を超えない目的であったが、バージルは黙って彼女の話に耳を傾ける。

 

「貴方は魔物の姿に変身できるそうね。もしくはそれが本来の姿なのかしら? 強化モンスター開発局局長としては実に興味深い個体だわ」

 

 シルビアは舌なめずりをし、彼の変身(デビルトリガー)に興味を示す。以前接触してきたウォルバグも、彼が異形の姿になれることに関心を寄せていた。

 ベルディア、バニル、ハンス。現在魔王軍は三人の幹部を失っている。少しでも戦力を補強しておきたいところ。その為、こうして勧誘を試みてきたのだろう。

 

「貴方の実力なら、幹部どころか魔王様の側近にもなりえる。そっち側で収まるべき男じゃないのよ。だから、アタシと一緒に行きましょう?」

 

 話し合いで穏便に済ませたいのか、シルビアは優しく語りかける。しばし睨み合ったバージルであったが、彼は自ら刀から手を離し、鞘に納めた。

 わかってくれたかと、シルビアの表情は少し和らいだが──。

 

「高く評価しているようだが、裏を返せば貴様等に目を付けられているということか」

 

 魔王軍から敵視されている事実を受け、バージルは愉快そうに笑う。彼の表情を見たシルビアは、差し伸べていた手を自ら降ろした。

 

「主に伝えておけ。いずれ、貴様の首を取りに行くと」

「……交渉決裂ね」

「では、力づくで連行するか?」

「それもやめておくわ。チンタラしてたら、厄介な紅魔族共が魔力を辿ってやって来そうだし」

 

 バージルの挑発には乗らず、シルビアは背を向ける。そして長い髪を揺らしながら彼に見かえり、妖美な笑みを浮かべて告げた。

 

「また会えるのを楽しみに──」

「『ゴッドインパクト』!」

 

 刹那、割って入るように青い閃光が走ると、バージルとシルビアの間に光の衝撃波が発生した。シルビアは驚嘆しながらも、バージルから距離を離すように跳んで回避する。

『ゴッドインパクト』──神の拳(ゴッドブロー)を地面に叩きつけ、衝撃波を起こす神の御業。直撃すれば相手の身体は塵すら残らない。

 

「加勢に来たわよお兄ちゃん!」

 

 現れたのはアクアであった。普段の服装とは違った水色の寝間着に、首へかけた白いタオル。乾ききっていない髪からは湯気が立ち昇っている。

 

「誰だか知らないけど、襲ってくるタイミングを考えなさいよ! こちとらお風呂上がりなのよ!? 湯冷めして風邪引いたらアンタのせいだからね! その時は診療代とお薬代と美味しいフルーツ代締めて五十万エリス! キッチリ払ってもらうから!」

「な、何なのこの女……初対面の相手に対して横暴過ぎない……?」

 

 暴論を振りかざすアクアに、シルビアはドン引きの様子。この状況を見せられてどちらが悪者かと尋ねられたら、多くの者は手をバキバキと鳴らしている青い方を指差すであろう。

 

「それにさっきの力、貴方聖職者ね? 加えて青で固められた服装ということは……」

「そのまさかよ! 私こそ! アルカンレティアの山を汚した罪深き魔王軍幹部を一撃で葬った最強の女神! アクア様よ!」

「……ねぇ剣士さん。この子からお兄ちゃんって呼ばれてたわね? ちゃんと教育してあげないと、周りから頭のおかしい子だって馬鹿にされるわよ?」

「安心しろ。もう手遅れだ」

「二人まとめて退魔魔法ぶちかますわよ!?」

 

 案の定女神だと信じてもらえず、アクアは独りがなり立てる。彼女としては、女神だと認めさせるのとストレス発散を兼ねてぶちのめしたい所であったが──。

 

「やる気になってるところ悪いけど、アタシは一旦退かせてもらうわ。さようなら!」

「あっ! 待ちなさい!」

 

 最初から逃走する気でいたシルビアは、アクアに別れの言葉を告げてから背を向けて走り出す。アクアの呼び止める声も聞かず、森の中へと消えていった。

 

「あんのガングロ女! 次会ったら『ゴッドブロー』を顔面にぶち込んでやるんだから!」

 

 シルビアが消えていった先を睨みつけ、アクアは握り拳を突き出して宣言する。バージルもシルビアの魔力が遠のいているのを感じ、半ば抜いていた刀を納めた。

 彼女を追いかけるのもここで仕留めるのも、彼にとっては容易いことであった。しかし敢えてそうしなかったのは、そうすべきではないと感じたからだ。

 理由はない。右か左かと尋ねられたら特に考えず片方を選ぶように、彼の勘がそう告げていたのだ。

 

「ところでお兄ちゃんはなんでこんな所に? さっきの奴を倒しに来てたの?」

「いや、奴の事は風呂へ向かう際に偶々見つけただけだ」

「お風呂って、あそこの混浴風呂?」

「コンヨク?」

「お風呂や温泉って男女別にされてるでしょ? その隔たりがないのを混浴って言うの。女の裸を一目見たいカズマみたいな男がこぞってやって来るわ」

 

 混浴という言葉に聞き覚えが無さそうだったバージルに、アクアは簡単に説明する。するとバージルは難しい顔を見せた。

 その表情の意図を汲み取ったのか、アクアは口元に手をかざし、おちょくるような顔でバージルに言葉を掛ける。

 

「あらあら? もしかしてお兄ちゃん期待してた? 堅物そうに見えてやっぱりムッツリなのねぇ。でも残念! 私はもう上がったし、そもそもあそこは名前だけで男女別に分けられてるわ。きっと混浴って響きが紅魔族の琴線に触れたのね」

「それは良かった。貴様が汚した風呂はとても入れた代物ではないからな」

「そんなに私の聖なるお風呂が好みなら、今から男湯に侵入してお湯に指を突っ込んで痛い痛い痛い痛い! わかった! やめる! だからアイアンクローはやめてぇええええええええっ!」

 

 

*********************************

 

 

 アクアの悲鳴が響き渡る一方、里から離れた森の中。

 

「ハァ、ハァ……ここまで来れば、紅魔族も追って来ないでしょうね」

 

 アクアとバージルから逃げおおせたシルビアは、近くの木へもたれかかる。そのままズルズルと座り込むと、安堵するように息を吐く。

 剣士の勧誘は失敗に終わった。相手は実力行使を勧めてきたが、シルビアも最初はその気でいた。彼から向けられた殺意を、肌で感じるまでは。

 荒れた息が整い出したところで、シルビアは前方を睨む。その先にあるのは木々と漆黒の闇のみ。

 

「ちょっと! あの剣士、仲間になる気が微塵も無かったわよ!? 挙げ句殺されるかと思ったわ!」

 

 しかしシルビアは、誰かに話しかけるように怒りの声を上げる。すると少し間を置いて、暗闇から男性の声が返ってきた。

 

「快く受け入れてくれると思っていたが……見ない間に、随分と変わってしまったようだ」

「一体何を根拠にそう思ったのかしら。何度勧誘しても断られそうな顔してたわよ」

 

 暗闇に紛れる男は、残念そうに結果を嘆く。その傍らで、ようやく息が整ったシルビアはおもむろに立ち上がった。

 

「紅魔族は、封印されている『魔術師殺し』を奪えばどうにでもなるとして……あの剣士、正直勝てる気がしないんだけど」

「では私が引き付けよう。彼がいては、君は望む物を手に入れることすら叶わない。それと……これを渡しておこう」

 

 シルビアの意見を聞いた男はそう告げると、シルビアの足元へ手に持っていた物を放り落とす。それは、暗い地面を照らすように赤く光る、何かの実と思わしき物体。

 

「……何なのこれ?」

「悪魔の力を得られる実だ。いざという時に使ってみるといい」

 

 男の説明を聞いて、シルビアはゴクリと息を飲む。その実はまるでシルビアを誘うように、妖美な光を放ち続けていた。

 

 

*********************************

 

 

 アクアを追い返し、風呂で寛いだ後にバージルはゆんゆん宅へ。

 外出している間に何があったのか。セシリーは亀甲縛りでリビングに放置プレイ。ソファーには疲れ切った様子のひろぽんがうなだれていた。

 理由を聞きたくもなかったバージルは、二人を無視してえぞばえのもとへ。寝床について尋ねると、ゆんゆんの友達がお泊りする時の為に用意してあった空き部屋を使ってもいいと言われたので、案内してもらうことに。

 男女どちらでも構わないよう配慮してかシンプルな内装で、綺麗に手入れされていた。文句のなかったバージルはそこで一晩を過ごした。

 

 それから何事もなく夜が明け、翌朝。

 朝食を終えた後、セシリーが「めぐみんさん達と合流したい」と提案。ゆんゆんはそれに賛同。バージルも、昨晩出会った魔王軍幹部についてカズマ達にも話しておくべきかと考えた為、それに乗った。

 くれぐれもゆんゆんには手を出さないようにと、ひろぽんから釘を刺されながらも、バージル達はゆんゆん宅を後にした。

 そして、めぐみん宅へ向かう道中。

 

「ねぇねぇめぐみん、今日は色んなお店を周りたいんだけど。あっ、クズマさんとは別行動ね」

「私もこの里にある鍛冶屋へ寄りたい。しかしそうなるとカスマをめぐみんに預けてしまう形になるが……」

「大丈夫ですよ。じゃあまずは皆で商業区に行きましょうか。ゲスマもそれで構いませんね?」

「昨日のことはホントに反省してるんでこれ以上はやめてください」

 

 探していためぐみん一行を見つけたのだが、何故かカズマは女性陣三人から距離を置かれていた。

 事情は大方予想できていたが、ひとまずバージル達はめぐみん等のもとへ歩み寄る。

 

「何があった?」

「バージルか。実は、この男がめぐみんの寝込みを襲おうと──」

「ぐぅるるぁああああああああらぁあああああああああっ!」

 

 ダクネスが説明した瞬間、セシリーは血相を変えてカズマに襲いかかった。

 

「なんだかんだで手を出さないタイプかと思ってたら、私の目を欺いて本性を隠していたとはね! アクア様! この男を監禁し、アクシズ教の説法を叩き込む許可を!」

「確かにそれぐらいしないと反省しなさそうね。やっておしまい!」

「やめろ馬鹿! 想像しただけでも恐ろしいわ! あとゆんゆんは魔法詠唱するのストップ!」

 

 仲間の三人に加えて、セシリーとゆんゆんからも怒りを買ってしまったカズマ。彼はセシリーと取っ組み合いをしながらも彼女に弁明した。

 

「親御さん協力のもとでめぐみんと同室にされて、同じ布団で寝させられたんだぞ!? お前だったらどうするんだよ!」

「手を出すに決まってるじゃない!」

「バージル、私の眼帯を貸しますので、あの二人に眼帯パッチンの刑を執行してくれませんか?」

 

 睨み合いながらも意見を合致させた変態二人。そんな彼等を、めぐみんは見下げ果てたような冷たい目で見つめていた。

 一方、彼等のいざこざにはまるで興味がなかったバージルは、カズマがセシリーの拘束から抜け出したのを確認して、魔王軍幹部の件を伝えた。

 

「昨晩、里の外れで魔王軍幹部と名乗る女を見かけた。何もせず姿を消したが、いずれ近い内に再び現れるだろう」

「あぁ、それならアクアから聞きましたよ。正直巻き込まれない内に帰りたいんで、バージルさんのテレポート水晶か、ゆんゆんの『テレポート』で俺だけ──」

「貴様がいなければ、誰がコイツ等の面倒を見る」

「前みたいにセクハラされそうなのでお断りします」

 

 自分だけトンズラはできないと知り、カズマはガクリとうなだれる。面倒事に巻き込まれる体質はここでも健在のようだ。

 片やめぐみんとダクネスは戦う気満々のようで、どんな敵なのか想像を膨らませている。またバージルも、シルビアを討伐するまでは里に居座るつもりでいた。

 せめて自分に火の粉がかからないようにと祈るカズマ。そんな彼を他所に、アクアがバージルへと近寄ってきた。

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん。昨日、服屋さんで気になる物を見つけたの。よかったら一緒に行かない?」

 

 普段なら最後まで聞かずに断るアクアからの誘い。しかし彼女の言う気になる物が、スパーダに関する物である可能性も捨てきれない。

 シルビア討伐以外は特に予定を決めていなかったバージルは、珍しく彼女の誘いに乗った。

 

 

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 道なりに進み、商業区へと足を踏み入れたバージル達。

 ダクネスは鍛冶屋に用事があるようで、カズマとめぐみんはそれについていくことに。またセシリーとゆんゆんも、めぐみんをカズマの手から守る名目で同行。結果、バージルとアクアだけ別行動になった。

 

 アクアの案内で、紅魔の里随一にして唯一の服屋へ向かう。彼女曰く、めぐみんのローブを購入する際に見つけたとのこと。

 しばらく歩いて、目的の服屋へ到着。質素な店の外には、何もかかっていない物干し竿が一つ。一見すればただの服屋である。

 しかしバージルは、アクアの話していた気になる物が何なのかをすぐに理解した。

 

「……紛れもなく狙撃銃だな」

 

 物干し台にかけられていた竿は、黒いフォルムに細長い銃身が特徴的な狙撃銃(スナイパーライフル)であった。

 

「ここの服屋に代々伝わる物干し竿で、錆びないから重宝してるって店主さんが言ってたわ」

 

 眉を潜めてライフルを見上げるバージルへ、隣にいたアクアが説明する。

 この世界で作られた物なら、にるにる製ハンドガンのように魔力で弾を装填するタイプなのであろうが、使い方を理解できなかったか、何かしらの理由があって使用できなかったのだろう。

 もっともライフルの製作者は、物干し竿として使われるなど想像していなかったであろうが。

 

「私はゲームでしか使ったことないけど、一発の狙撃で相手を倒せた時は気持ちいいのよね。お兄ちゃんはどう?」

「理解に苦しむ。どんな形であれ、銃など無粋の極みだ」

「けど持ってみたら、ライフルとか案外似合うんじゃない?」

「アクセサリーであろうと持つ気にはなれん」

 

 予想通り、スパーダに繋がる物ではなかった。それを確認したバージルは、銃を勧めるアクアに背を向けて歩き出す。

 

「おっ、いたいた」

「ムッ」

 

 とその時、バージルに声を掛ける者が。顔を向けると、前方から歩み寄ってきた黒髪の男──紅魔の里への案内役を努めたぶっころりーを見た。

 

「何の用だ」

「森に未発見のモンスターが現れたそうなんだ。よかったら君も一緒にどうかと思って」

「なんですって!? こうしちゃいられないわお兄ちゃん! 早く行きましょう! で、その子をとっ捕まえてペットにして、街の皆に自慢するのよ!」

 

 ぶっころりーの言葉を聞いて、バージルの表情が険しくなる。昨晩の魔王軍幹部に続けて、新種のモンスター。果たして偶然か必然か。

 バージルと、目を輝かせて行く気満々であったアクアはぶっころりーの誘いに乗り、彼を追う形で森へと駆け出した。

 

 

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 一方その頃、商業区にあった鍛冶屋の前にて。

 

「私の用事に付き合わせてしまってすまない。カズマは大人しくしていたか?」

「何もしませんでしたよ。まぁ、人目のつく場所で堂々と手を出せる勇気は持っていないと知ってたので、何も心配していませんでしたが」

「おい、あまり大人を舐めてると痛い目を見るぞ。前みたいにギルドのど真ん中でお前のパンツを奪って……あっ」

「ちょっと貴方! 今とんでもないことを口にしたわね!? そこに座りなさい! 私の聖なるグーを食らわせてあげるから! それが嫌なら何色だったのか正直に答えなさい!」

「黒だ!」

「めぐみん、この二人に『ファイアーボール』撃ち込んでもいいかな?」

「『インフェルノ』でもいいと思いますよ」

 

 ダクネスの用事に付き合っていたカズマ達。職業とその性癖も相まって鎧の消耗が激しい為、この里にいる腕利きの鍛冶屋に新たな鎧を頼むべく来ていた。

 鎧を発注し終えたダクネスは、昨晩現れたという魔王軍幹部に思いを馳せる。

 

「シルビアとやら……どれほどの強敵かわからないが、戦える日が楽しみだ。今からでも来てくれないだろうか。先程頼んだ鎧は間に合わなくなるが……」

「どうでしょう。最初に出会ったのがバージルだそうですから、分が悪いと思って魔王城に帰ったかもしれませんよ?」

「おいやめろ。こういう時にフラグ発言を軽々しく口にしたら──」

 

 二人の発言に不安を覚えるカズマ。お願いだから何事もありませんようにと祈る彼であったが──彼女等の言葉(フラグ)は、予定調和のようにすぐさま回収されることとなる。

 

『魔王軍襲来! 魔王軍襲来!』

「ほら見たことか畜生!」

 

 里に突如として響いたサイレン。どうしていつもこうなるんだと、逃れられなかった運命を前にしてカズマは頭を抱える。

 

「早速お出ましか! 行くぞめぐみん!」

「待ってください! 家でお留守番をしているこめっこが心配です! 一度家に帰って、こめっこを安全な場所へ避難させましょう!」

 

 そんな彼とは対照的にやる気を見せているダクネス。我先にと飛び出しそうであったが、めぐみんの言葉を聞いて足を止める。

 セシリー、ゆんゆんも彼女の案を聞いて頷く。こめっこの回収を第一の目的として、めぐみん達は駆け出した。

 

「お、おい! マジで行くのか!?」

 

 ただ一人、乗り気でなかった為に出遅れたカズマ。呼び止めようとするも、彼女等の耳には届かない。

 こっそり『テレポート屋』なる者を見つけて、自分だけアクセルの街に送ってもらおうと画策していたのだが、彼女等を放っておくと余計に事を大きくし、魔王軍幹部と戦うよりも面倒な役回りをさせられる危険性もある。

 

「だぁああああもう! しょうがねぇなぁ!」

 

 半ばヤケクソになりながらも、カズマはめぐみん達を追いかけた。

 

 

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 我先にと魔王軍のもとへ駆け出している紅魔族を他所に、めぐみんの家へ向かって走るカズマ達。まだ里の内部にまで及んでいないのか、道中で敵と遭遇することはなかった。

 しばらくして、視線の先にめぐみん宅が。こめっこの安否を心配しながら家に駆け寄ると、家の前に二人、誰かがいるのを発見した。

 

 

「おばさんおばさん、何食ったらそんなにおおきくなるの?」

「そ、そうね。好き嫌いせず、色んな物を食べることかしら。それと、おばさんはやめてくれる?」

「じゃあおじさん?」

「それならおばさんの方がマシね」

「こめっこ!? 一体誰と話しているのですか!?」

「あっ、お姉ちゃん!」

 

 家の前にいたのは、探していたこめっこと見知らぬ褐色の女性。

 めぐみんに気付いて駆け寄ろうとしたこめっこであったが、それを見た褐色の女は慌ててこめっこを片腕で抱きかかえ、めぐみん等と対峙した。

 

「おっと! そこを動かない方がいいわよ! この子が傷つけられたくなかったらね!」

「こめっこ!」

「褐色の肌に赤い髪……まさか、アクアの言っていた魔王軍幹部のシルビアは貴様か! 無垢な子供を人質にするとは卑劣な……!」

「あら、アタシのこと知っていたのね。もしかして昨日見たプリーストと剣士の仲間かしら?」

「おんどりゃこのデカパイ幹部! 私の可愛い可愛いこめっこちゃんを小汚い手で触らないで! 待っててねこめっこちゃん! 今すぐこわーいクソババァから助けて一時間ヨシヨシしてあげるからね!」

「うん! 頑張ってねセシリーおねえちゃん!」

「くぅうううううんっ! お姉ちゃん頑張りゅうううううううっ!」

「この状況でも笑顔を絶やさないこめっこちゃんって、やっぱり大物なんじゃ……」

 

 ダクネスは剣を構えて前に出るが、こめっこを人質に取られている為に攻撃へ転じることができない。ゆんゆんも魔法を放つことができず、睨み合いが続く。

 

「か、カズマ……」

 

 助けを求める目で、めぐみんはカズマを見た。大切な妹が危険な目に遭っているからであろう。普段の彼女にはない気弱さを、カズマは感じた。

 もっとも、窮地に陥って仲間から助けを求められるのはいつものことなのだが。毎度毎度頭を働かせるこっちの身にもなって欲しいと、カズマはため息を吐く。

 

 そして、既に思いついていた打開策を実行すべく、カズマは自ら前に出た。

 

「おいシルビア! 人質が欲しいなら俺がなってやる! だからその子を離せ!」

「か、カズマ!?」

 

 カズマの発言を聞いて、めぐみんは驚嘆する。何を馬鹿なことをと引き留めようとしたが、彼女はある事に気付いてその手を引っ込めた。

 準備体操をするように、彼は右手をワキワキと動かしている。頭が良く、カズマとも長い付き合いであった彼女は、それが何を意味するのかを理解していた。

 

「何を言っているのだ馬鹿者! 自ら人質役を買って出るなど! それなら私の方が適任だ! そして私は魔王城に連れ去られ、欲望に塗れた魔族の群れを相手に服を剥かれた姿で──!」

「こめっこちゃんに格好いい所見せて、カズマお兄ちゃん格好いい! 大人になったらお兄ちゃんと結婚する! って言わせるつもりなんでしょ! そうはさせないわよ! 人質役は私がやるわ!」

「お前等は頼むから黙ってろ!」

 

 セシリーは勿論のこと、頭の堅いダクネスはそれに気付かず。ゆんゆんも不安そうにカズマの動向を見守っている。

 カズマがダクネスよりも前に出る中、シルビアはカズマへと尋ねた。 

 

「貴方は?」

「コイツ等のリーダーをやってる者だ。ついでに言えば、昨日お前が会ったっていう剣士も俺の仲間だ。向こうから仲間になってくれとお願いされたんだ」

「へぇ……」

 

 カズマの言葉を聞き、シルビアは興味深そうに目を細めてカズマを見る。真正面から魔王軍幹部と対峙して思わず尻込みしそうになったが、なんとか堪えてカズマは睨み返す。

 

「今、バージルをちゃっかり自分の仲間にしていたが……」

「大丈夫かなカズマさん……これ後で先生が知ったら怒られるんじゃ……」

 

 後ろでダクネスとゆんゆんがカズマの嘘がバージルの耳に入ることを危惧していたが、バレなければ問題ない。そもそも言い方を変えているだけであって、決して嘘は吐いていない。

 

「貴方を人質にしておけば、あの剣士に攻撃される心配は無くなりそうね。勧誘も考え直してくれるかも……いいわ。ゆっくりこっちに近づいてきなさい。ちょっとでもスキルを使う素振りを見せたら、この子の首を撥ねるわよ」

 

 カズマを人質に取ることのメリットを考えたシルビアは、思考の末カズマの提案を受け入れた。承諾を得たカズマは、指示通りおもむろにシルビアへと歩み寄る。

 彼が眼前に立った所で、シルビアは脇に抱えていたこめっこを開放。地に足をつけたこめっこは、トタトタとめぐみんのもとへ。そしてシルビアは空いた右腕を使い、カズマを強く抱き寄せた。

 

「むぐっ!?」

「フフ……素直でいい子ね」

 

 丁度、彼の顔の位置に胸があった為に、カズマはシルビアの豊満な果実に顔を埋める。そんなカズマの頭を、シルビアは優しく左手で撫でた。

 カズマは苦しそうにもがいている……が、どうにか彼女の拘束から逃れようとする動きは見られない。

 

「カズマ! 何をしているんですか!」

 

 それを見兼ねためぐみんは、カズマに呼びかける。

 彼の考えた作戦──自らシルビアの人質になることでこめっこを開放し、その後『ドレインタッチ』や『初級魔法』を巧みに使ってシルビアの拘束から脱出するとめぐみんは思っていたのだが、未だその動きはない。

 不測の事態に陥り、焦るめぐみん。とその時、隣にいたセシリーが魔力を高め、シルビアに向けて手をかざした。

 

「今こそ好機!『エクソシズム』!」

 

 セシリーが唱えた瞬間、シルビアの足元から光の柱が昇った。シルビアと、人質にされていたカズマもついでに光へ呑まれる。

 

「何やってるんですかセシリーさん!? カズマさんまで巻き添えに──!」

「人間に効かない退魔魔法だから問題ないわ!」

 

 慌てるゆんゆんを宥めて、セシリーは様子を伺う。やがて光は消え、呑まれてしまったシルビアとカズマの姿が彼女達の目に映った。

 

「不意打ちなんて聖職者とは思えないわね。でも、残念だけどアタシは純粋な悪魔じゃない。自らの身体に合成と改造を繰り返してきたグロウキメラよ! その程度の退魔魔法じゃ、かすり傷にしかならないわ!」

 

 シルビアの身体からは焼けたように煙が立っているものの、表情に焦りは一切見られなかった。彼女はドレスを軽く払うと、ようやく胸元から開放されていたカズマに視線を移す。

 

「それにしても、貴方いい男ねぇ。可愛い顔立ちはアタシの好みだわ。もっとくっつきましょう?」

 

 逃げられないよう、シルビアはカズマの首に腕を回す。そして片方の手でロープを取り出すと手前に放り『バインド』を唱えた。

 ロープは意思を持ったように動き、シルビアの腰回りを締め付けた。当然、近くにいたカズマも巻き込まれ、シルビアと密着するように固定されてしまった。丁度、カズマの後頭部がシルビアのお山に当たるように。

 

「フフッ、これで貴方はアタシの物……」

「カズマ! いつまで小芝居を続けるつもりですか! 早くシルビアの拘束から逃れてください!」

「いや、めぐみん。カズマの顔を見てみろ」

 

 特に抵抗も見せず拘束されたカズマに苛立ちを覚え、声を荒げるめぐみん。そんな彼女へ、ダクネスはカズマを指差しながら伝える。

 

「あぁうんお構いなく。俺はシルビア姉さんのおっぱいをしばらく堪能したいから」

「この男っ!」

 

 カズマはシルビアの誘惑(おっぱい)に負けてしまったのだ。彼は極楽浄土にいるかのような、とても安らいだ表情を浮かべている。

 

「彼、このまま魔王軍に持って帰ってもらった方がいいんじゃないかしら」

「教育に良くないから、見ちゃダメだよこめっこちゃん」

 

 めぐみんやダクネスのみならず、セシリー、ゆんゆんからも呆れられている様子。だがそんな事はどうでもいいと、カズマは後頭部に当たる柔らかな感触を満喫する。

 

「残念ね、紅魔族のお嬢ちゃん。男というのは皆、大きな胸に弱いのよ。その点で言えば、貴方がどれだけ説得しようが誘惑しようが、この子は見向きもしないんじゃないかしら」

「おい! 私の成長途中な身体を嘲笑っているのなら受けて立とうじゃないか!」

「落ち着いてめぐみん! 相手の挑発に乗っちゃ──」

「そりゃあ貴方も大きいから落ち着いていられるでしょうね!」

 

 敵にまでコンプレックスを指摘され、激昂するめぐみん。ゆんゆんがフォローに入るも逆効果のようで、更に怒りが掻き立てられている。

 しかし、そんなことはよそ吹く風とばかりに、カズマは楽しそうにシルビアへ話しかけた。

 

「流石ですねシルビア姉さん! 女のみならず、男の心理まで理解しているとは!」

「半分は男なんだから当然よ。この胸も後から付けたものだし」

「なるほどそりゃ納得だ! ハッハッハッハッ……はっ?」

 

 聞き捨てならない──否、聞いてはならない言葉が聞こえ、カズマの思考がフリーズする。

 そして、彼は後頭部に当たっているのとは別の感触を覚えた。正確には、おっぱいに気を取られ今まで気付くことができなかった。

 

 自身の尻に当たる──熱くて固いナニか。

 

「あ、あの……ケツの辺りに、何か当たってるような……」

 

 聞きたくない。そんな本音とは裏腹に、カズマは恐る恐るシルビアへ尋ねる。

 するとシルビアは熱を帯びた表情で、カズマだけに聞こえるよう甘く囁いた。

 

 

「ムスコよ」

 

 そこでカズマの意識は途絶えた。

 

 

*********************************

 

 

「いたぞ! もう戦い始めてるみたいだな!」

 

 ぶっころりー案内のもと、バージルとアクアは新たなモンスターが発見されたという森へ来ていた。

 前方には、距離を取って魔法を撃ち込み戦っている紅魔族が複数人と、人間と同じくらい大きなトカゲ型のモンスターが数匹。モンスターの手には盾が装備されている。

 一見すれば、知能を持った未発見のモンスター。しかしバージルとアクアは、その正体を既に暴いていた。

 

「やはりか」

「クッサ! アレ悪魔じゃないの! 捕まえてペットにしようと思ってたけど前言撤回! 一匹残らずぶっ殺してやるわ!」

「ちょっ、二人とも!?」

 

 ぶっころりーの静止も聞かず、悪魔に向かって飛び出すバージルとアクア。

 丁度、紅魔族の攻撃の手が止まっており、反撃開始とばかりにトカゲの悪魔(アサルト)は紅魔族へと飛びかかる──が、そこへバージルが疾走居合で飛び込み、行動を起こしていたアサルトは一瞬で細切れにされた。

 

「急に何だ!? ていうか君誰!?」

「狩りの邪魔だ。そこで大人しく見ていろ」

「はっ!?」

 

 突然現れたバージルに困惑する紅魔族達。彼等に冷たく言い放って背を向けたバージルは、アサルトの群れへと走り出す。

 警戒した五匹のアサルト達は、バージル目掛けて爪弾を飛ばす。しかしバージルはそれら全てを刀で斬り落としつつ接近。

 

「散れ」

 

 バージルは足を強く踏み込み、一気にアサルト達の間を駆け抜ける。彼等が突風を感じた時、既に彼の姿はあらず。

 彼等の背後にいたバージルが刀を納めた瞬間、三匹ものアサルトが血を吹き出して倒れた。残った二匹の内一匹が爪を立て、バージルへと襲いかかる。

 

「遅い」

 

 バージルは刀から手を離すと、背中の両刃剣を握って振る。だがアサルトは片手に持っていた盾でそれを防ぎ、バージルの剣を弾いた。

 体勢を崩すバージルを見て、アサルトはもう片方の手を振り下ろす。剣での防御は間に合わず、ダメージを負うのは必至の場面。

 しかし、アサルトの爪は届かず。バージルは『トリックアップ』でアサルトの頭上に飛び上がって回避した。そして柄を握り締め、バージルは急降下しつつ剣を振り下ろす。

 

Cut off(断つ)!」

 

 彼の『兜割り』を脳天に受けたアサルトは、胴体を真っ二つにされて倒れる。

 残った一匹は、着地を狙うべくバージルに接近していた。再び、バージルの頭上からアサルトの爪が迫る。

 

「ハァッ!」

 

 だが、それも届かず。バージルは迫ってきたアサルトに向かって突き(スティンガー)を繰り出した。土手っ腹に穴を空けられたアサルトは、後方へと吹き飛ぶ。

 

「愚直に向かってくるだけか。島にいたのと比べて、随分と粗末な奴等だ」

 

 バージルはそう吐き捨て、横へと視線を移す。その先には、まだ残っているアサルトの群れ。彼等が再び迫りくるのを見て、バージルは剣を握り直した。

 

 

 二本の剣だけで、モンスターの群れを容易く屠るバージル。そんな彼を、先にこの場へ来ていた紅魔族達は熱心に見つめていた。

 最初、獲物を横取りされたことに腹を立てていた彼等だったが、バージルの戦いを見ている内にその気持ちは薄れ、ある者は目を奪われ、ある者は学びを得ようと観察している。

 里の学校に務めていた、紅魔族随一の担任教師を名乗るこの男──ぷっちんもまた、例外ではなかった。

 

「凄いでしょう、あの剣士」

 

 バージルに気を取られていた時、横から紅魔族の男に話しかけられた。対魔王軍遊撃部隊(レッドアイデッドスレイヤー)の一人、ぶっころりーである。

 

「君の知り合いか?」

「いや、里の外でバッタリ会ったんです。その時は、上級モンスター三匹を相手に一人で立ち回っていましたよ」

 

 ぶっころりーから話を聞き、ますます興味を引かれるぷっちん。少し目を離した隙に、彼は二体も討伐しており、その疾さは留まることを知らず。

 

「戦いにおいて一番大切な物は何か。僕達以上に、彼は理解しているようですね」

「全くだ。我が校に教師として招き入れたい程だよ……おぉ見ろ! 今魔力で剣を生成したぞ! 彼は魔法にも精通しているのか! これは本格的に勧誘しなければなるまいな!」

 

 もはや観客と化した紅魔族達。彼が鮮やかに敵を屠る度に沸き立つ傍ら──遅れてやってきたアクアは独り、アサルトと対峙していた。

 

「ちょっとー! こっちにも注目して欲しいんですけどー! 今から一撃でぶっ倒すシーンを見て欲しいんですけどー!」

 

 目立ちたがり屋だったアクアは、バージルだけ注目を浴びていることに嫉妬して大声を上げるものの、彼等に声は届かず。

 こうなれば、バージルが戦っている所に乱入して自分がまとめて殲滅するしかない。紅魔族からの名声を浴びるプランを考えたアクアは、前方にいる一匹のアサルトをさっさと駆除すべく向き直る。

 

「ほら、さっさとかかって来なさいよ。それとも怯えて盾で防ぐことしかできないチキンなのかしら? トカゲなのに? プークスクス!」

 

 相手を小馬鹿にするアクアの笑い。その挑発を受けたアサルトは、怒りのままにアクアへと突撃する。

 

「『セイクリッド・エクソシズム』!」

 

 が、彼女の眼前に来た瞬間に地面から退魔の光が昇った。女神によって放たれた光はあまりにも眩く、アサルトの身を瞬く間に焦がした。

 アサルトの始末を終え、ふぅと息を吐くアクア。予定通りバージルのいる方向へ足を向ける。

 

「それにしても、まだ悪魔臭いわねぇ。むしろ臭い増してない? あーヤダヤダ。終わったらまた混浴温泉に行かなきゃ」

 

 持ち前の嗅覚で感じ取った違和感。しかしその正体に気付くことなく、アクアはバージルのもとへ向かおうとする──が、その行く手を新たな悪魔が塞いだ。

 一匹は、先程倒したのと同じアサルト。その周りにいるのは、黒い髪のようなものを持った、二本足で立つ小さな悪魔が数匹。

 

「下級悪魔のクセに、私の邪魔をするつもり?」

 

 邪魔をするのなら、問答無用にぶっ倒すまで。アクアは拳を構え、悪魔と対峙する。

 すると、黒い悪魔が一匹動き出した。だが向かう先はアクアではなく、傍にいたアサルト。悪魔はかぶりつくように飛びかかると、触手であった黒い髪をアサルトの身体に纏わり付かせた。

 足だった物は鋭い剣のような触手へと変わり、アサルトの背には赤い花が開く。黒い悪魔(キメラシード)に取り付かれたアサルトは、何事もないかのようにアクアと向かい合っていた。

 

 

*********************************

 

 

「うぅん……」

 

 意識を取り戻したカズマは、おもむろに目を開ける。視界はぼやけており、思考もハッキリしない。

 何故自分は眠っていたのか、ここはどこなのか。身体に力が入り始め、現状を把握しようと起き上がる。

 

「やっと起きたわね」

「うわぁああああああああああああっ!」

 

 いつの間にか傍に立っていたのは、魔王軍幹部のシルビア。全てを思い出したカズマは悲鳴を上げ、自身の貞操を守るべく距離を取った。

 

「く、来るな! それ以上俺に近づくんじゃあねぇっ! ぶっ殺すぞ!」

「寝起きの一言にしては物騒ね。元気なのは良いことだけど」

 

 指を差して威嚇するカズマ。シルビアはちょっと寂しそうな顔を見せるも、すぐに彼から視線を外して足を進める。

 その先にあったのは、重く閉ざされている鋼鉄製のドア。反対側を見ると、長い通路の先に昇り階段があるのを確認した。

 

「ここって……」

「紅魔の里にある、地下格納庫の入り口よ」

 

 地下格納庫──昨日、めぐみんに観光名所を案内してもらい、ここにも足を運んでいた。

 曰く『世界を滅ぼしかねない兵器』が封印されているらしく、丘の上にある『謎の施設』と共に作られたと言われている。

 そんな場所に、魔王軍幹部が来ているということは──。

 

「お前、まさか『世界を滅ぼしかねない兵器』を盗むつもりか!?」

「半分正解ってところね。本命は別の兵器。そっちはあわよくば手に入れたいわね」

「でもここには、誰も解くことはできない封印がかけられてるって──」

「抜かりはないわ」

 

 そう言って、シルビアは懐から一枚のカードを取り出した。カードに目を引かれているカズマへ、シルビアは説明する。

 

「これは『結界殺し』……たとえ神々が施した封印だろうと解く、魔族が持つ魔道具でも特に強力なものよ」

 

 カードを右手に持ち、扉の前に立つシルビア。彼女は結界を解くべく『結界殺し』を扉へとかざした。

 

 

 ──が、何も起こらない。

 

「なんで!? どうして反応しないの!? まさか魔法的な封印じゃないっていうの!?」

 

 想定外の事態に、シルビアは苛立ちを抑えられず扉を叩く。それを見ていたカズマはそろりと近付き、後ろから覗き込む。

 ダイナマイトを仕掛けてもビクともしなさそうな扉。その横の壁に、何やら文字が記されているのを発見した。更に文字の下には台があり、入力機器らしきものが置いてあった。

 

「『下記の通りコマンドを入力してください』?」

「……っ!? 貴方、この古代文字が読めるの!?」

「いや、ただの日本語……それにこれ、ステプレのコントローラーじゃん」

 

 記されていたのは母国語であり、入力機器もカズマには馴染み深いゲームのコントローラーであった。カズマがさらりと解読したことに、シルビアは驚愕する。

 日本語に加えてゲーム機のコントローラー。何の因果か、この封印を施したのはカズマと同じ日本からの転生者であったようだ。

 

「フフッ、まだツキは残っているみたいね。ボウヤ、このロックを解除しなさい」

「なっ!? ふざけんな! 俺とお前は敵同士だろ!? はいわかりましたって従うと思うか!?」

 

 シルビアから解除するよう命令されるが、カズマは断固として拒否する。

 言うことを聞かないカズマを見て、呆れるように息を吐いたシルビア。だがすぐに顔を上げると、右手で棒状の何かを握るような形を作り、それを上下に動かしながら告げた。

 

「私、テクニックには自信があるのよ」

「はいわかりました! 全力で解除させていだだきます!」

 

 悪寒を感じたカズマは、速やかに封印解除を始めた。コントローラーを強く握り、壁に書かれている文字を見る。

 

「えーっと、L1、L2、R1、R2を同時に押して、十字キーを左上に、左スティックを右下に倒す……と」

 

 隠し要素が開放されそうなコマンドだなと思いながらも、慣れた手付きでコントローラーを操作する。

 すると、固く閉ざされていた扉がおもむろに動き出し、振動を伴いながら開かれた。歓喜の声を上げたシルビアは、そのまま奥へと進む。

 

「真っ暗ね……アタシの暗視スキルじゃハッキリとは見えないし、探すのに手こずりそうだわ」

 

 扉の奥はライトでも無ければ歩くのもままならないほどの暗闇で、シルビアは慎重に足を運ぶ。

 その一方でカズマはまだ部屋の外におり、どんどん進んでいくシルビアの背中を見つめたまま立っている。

 ──ふと、カズマは思った。

 

「(あれ? 今チャンスじゃね?)」

 

 カズマはコントローラーを再び手にし、もう一度同じコマンドを入力する。

 すると扉は、先程の逆再生のように振動を起こして動き出し、カズマの思惑通り閉まり出した。

 扉の奥でシルビアがそれに気付いたが、時既に遅し。もう人間一人が入れる隙間ではなくなっていた。

 

「ついでに『スティール』」

 

 更にカズマは、扉の向こう側にいるシルビアに対して『スティール』を使用。右手から眩い光が放たれ、ほんの少し遅れて扉が完全に閉まる。

 光が収まった彼の手には、シルビアの持っていた『結界殺し』が握られていた。

 

「何かに使えそうだから、ついでに貰っとくよ」

 

 別れの言葉代わりに、閉じ込められたシルビアへ告げる。奥からは扉を叩く音が聞こえるが、案の定扉はピクリとも動かない。

 シルビアを封印したことで一安心したカズマは、呑気にその場で座り込む。そこでしばらく寛いでいると、通路の先から複数人の足音が。

 

「カズマ! 大丈夫ですか!?」

 

 現れたのは、カズマを追いかけてきためぐみん達であった。ダクネス、セシリー、ゆんゆんの他に、里にいた紅魔族も何人か来ている。肝心のこめっこはダクネスがだっこしていた。

 

「遅かったな皆。シルビアの奴なら、俺が機転をきかせてここに閉じ込めてやったよ」

「カズマさん一人でですか!?」

「やるじゃないか! 俺達ですらシルビアを何度も捕り逃がしてたってのに」

「チッ! そのまま魔王軍に連れ去られればよかったのに……」

「おい聖職者」

 

 一人舌打ちをしている者がいたが、カズマの無事を確認して仲間達は胸を撫で下ろす。誰一人としてカズマが気絶した件について言及しないのは、彼女等なりの優しさなのだろう。

 

「しかし、よくシルビアは封印を解いて中に入れましたね……まぁでも、中にある兵器までは流石に動かせないから大丈夫でしょう」

「俺達ですら使用法すらわからないんだ。シルビアに動かせるわけないよ」

「んじゃあ、これにて解決だな! シルビア封印の祝いに一杯やろうぜ!」

「あら嬉しいお誘いね。お姉ちゃん朝まで飲んじゃおうかしら」

「待って、急に嫌な予感がし始めたんだけど」

 

 次々とフラグ臭い発言を口にする紅魔族とアクシズ教徒。彼等の台詞を聞いて、カズマは独り不安を抱く。

 

 刹那、呼応するように彼等のいる場が揺れ──やがて閉ざされていた扉は突き破られた。

 中から現れたそれは、凄まじい速度でカズマ達の前を通り過ぎ通路を抜ける。慌ててカズマ等が追いかけ、階段を昇り外に出ると、月光を背に宙へ浮かんでいる彼女を見た。

 

「礼を言うわよボウヤ! 貴方のおかげで、探していた物を取り込むことができたわ!」

 

 扉を壊して出てきたシルビアは気分が高揚した様子で、高らかに声を上げる。

 彼女の下半身は、大蛇のような長い鋼鉄の装甲に成り代わっており、腰回りには縁に鋭い棘のある、赤い花弁のようなものが。

 更には頭に長い触覚が生えており、彼女は異形と呼ぶに相応しい姿へと成り果てていた。

 

「あれは……まさか『魔術師殺し』!」

「大変だ!『魔術師殺し』が乗っ取られたぞ!」

 

 シルビアを見た紅魔族達は、一様にして『魔術師殺し』の名を口にする。一方でシルビアは、何もできず見上げている紅魔族達に向け、口から勢いよく炎を放った。

 紅魔族達はすかさず『ウインドカーテン』を唱えて防いだ。その熱は非常に熱く、勢いも強い。今までとは違う彼女であることを、紅魔族達はすぐに理解した。

 

「アハハハッ! 気分がいいわ! ついでに実も食ってみたけど、こんなに力が溢れてくるなんて! これが悪魔の力なのね!」

「こりゃあマズイ! 一旦魔神の丘へ『テレポート』するぞ!」

 

 このままでは全滅してしまうと見た紅魔族達は、逃げの選択を取った。カズマ達は慌てて紅魔族達の傍に寄る。

 全員テレポート可能なのを確認した所で魔法を唱える。そして、この場にいた者はシルビアを除いて姿を消した。

 

 

*********************************

 

 

 無事に『テレポート』を終え、魔神の丘に移動したカズマ達。ここが避難場所になっているのか、里に住んでいた大勢の紅魔族達もこの場に来ていた。彼等は丘の上から里を見下ろす。

 紅魔の里は──シルビアによって火の海と化していた。

 

「さ、里が……」

「もはや、この里は捨てるしかない……大丈夫だ。生きていればまたやり直せる」

 

 燃え盛る里を見て、呆然とする眼帯の少女。傍にいた紅魔族の族長、ゆんゆんの父ひろぽんは、自身にも言い聞かせるように話す。

 魔法のエキスパートと名高い紅魔族が、揃いも揃って消沈している。それほどまでに、シルビアが取り込んだ物は危険な代物なのだろうか。兵器について知らなかったカズマは、めぐみんへ尋ねた。

 

「めぐみん、アイツが取り込んだのってそんなにヤバイ兵器なのか?」

「あれは『魔術師殺し』……魔法が効かない特性を持った、対魔法使い用の兵器です」

「つまり、紅魔族の魔法じゃ太刀打ちできないってこと?」

 

 カズマの問いに、めぐみんはコクリと頷く。紅魔族が軒並み諦めているのも、それで納得がいった。

 となれば、頼れるのはバージルのみ──だったのだが、どういうわけか未だに姿を現さない。彼と同行していたアクアもだ。『千里眼』でシルビアの周辺を確認するも、影一つとしてない。

 もしかしたらバージルの方でも何かあったのではないかと、カズマは推測する。何かしらの理由があって、こちらへ来ることができないのでは、と。

 だが、彼がいなければ現状を打破するのも不可能なのは事実。まずはバージルを探しに行くべきだと、カズマが口に出そうとした時──。

 

「ですが、一つだけ方法があります」

 

 彼よりも先に、めぐみんが口を開いた。彼女の声を聞いた者達の視線が集まる中、めぐみんは自身の考えた打開策を話した。

 

「その昔、あの兵器が暴走して里に脅威をもたらしたそうですが、私達のご先祖様は地下格納庫に封じられてる『ある兵器』を使い、何とか破壊させたと伝えられています」

「破壊しただと? では何故あの兵器は未だ健在なのだ?」

「せっかくなので記念に残しておこうと、修理して再び封印したからだそうです」

「しょうもない理由で物騒な物を大事に取ってんじゃねぇよ!」

 

 真相を聞いて、カズマは思わずツッコミを入れる。今も昔も、紅魔族の感性は理解し難いようだ。

 

「つまり、その兵器をまた使ってシルビアもろともぶっ壊しちゃおうってことね!」

「えぇ。ですが問題は、兵器の使い方が誰にもわからないことです。使用法を記したと思われる文献も残されていますが、その古代文字は族長でさえ解読不能で……」

「(古代文字……ってことはもしかしたら……)」

 

 扉の傍に書いてあった日本語。シルビアもそれを指して古代文字と読んでいた。

 もし、あの封印だけでなく、格納庫の中にある物も日本の転生者が携わっていたのなら、めぐみんの話す文献も、日本語で記載されている可能性が高い。

 

「とにかく、使い方さえわかればなんとかなるんだな? だったら探しに行くしかない。少なくとも、ここでじっとしてるよりはマシだ」

 

 めぐみんの意見に、カズマは賛成の意思を示す。こういった面倒な状況には一番巻き込まれたくないタイプだというのにと、めぐみんは珍しそうに彼を見る。

 事実、カズマも同じことを思っていた。それでもなお自ら動いたのは、責任の一端が自分にもあると自覚していたからだ。

 シルビアを地下格納庫に閉じ込めさえしなければ、あの忌まわしき偽乳に騙されさえしなければ、シルビアは魔術師殺しを取り込むことはできず、紅魔族の方々がどうにかしてくれた筈。紅魔の里が炎で埋め尽くされることにはならなかった筈だ。

 少しでも罪滅ぼしになるのなら──彼なりに責任を感じての行動であった。

 

「よし! なら俺達が囮になる! その間に君達は兵器を探してきてくれ!」

「頼んだぞ! 世界の命運は君達にかかっている!」

「奴と戦うのも何度目になるか……さぁ! 最後の喧嘩を始めよう!」

 

 カズマに触発されてか、紅魔族の戦闘員は揃って意欲を見せる。マントを翻しては丘を駆け下り、シルビアのもとへ向かった。

 

「私達はどうすればいい?」

「ダクネスはバージルさんを探してきてくれ! あの人がいれば状況は一気に好転する! ついでにアクアもだ! 悪魔の力がどうとか言ってたから、退魔魔法が今なら効くかもしれない!」

「わかった! 私とバージルは、幾多のプレイで心を通わせた仲だ。すぐに探し出してみせる!」

 

 本人が聞いていれば全力で否定しそうな言葉を口にしながら、ダクネスは丘を降りていく。次にカズマは残る三人へと指示を出した。

 

「退魔魔法と回復魔法を使えるセシリーは紅魔族の皆さんのサポートだ! で、めぐみんはいつも通り爆裂魔法を撃てるよう待機──」

「カズマさん! そ、その……めぐみんが爆裂魔法しか使えないことは、里の皆には内緒にしてて……」

 

 そこへ、ゆんゆんが耳打ちしてめぐみんへの指示を止めてきた。彼女の話を聞いたカズマは、苛立った様子でめぐみんを見る。

 

「お前──」

「私は、紅魔族随一の天才として名を通しています。そんな私が爆裂魔法しか使えないと知られたら、どんな目で見られるのかは明白でしょう……勿論、自分で撒いた種なのは承知しています」

 

 めぐみんは杖を握りしめ、俯いたままカズマに訳を話す。その表情には、後悔の念が見て取れる。

 プライドの高い彼女のことだ。言うに言えずタイミングを失い、うやむやにしたまま里を出てしまったのだろう。彼女の心中を察したように、カズマは息を吐いて言葉を返す。

 

「なんだ。てっきり爆裂魔法で何かしら問題を起こしてて、バレるのが嫌だからと思ってたけど、そういうことなら仕方ない。じゃあめぐみんも兵器探しを手伝ってくれ」

「……わ、わかりました」

 

 めぐみんは彼から顔を背け、うわずった声で返事をする。

 その時、彼女の表情は更に後ろめたさを感じているものになっていたことを、カズマが気付くことはなかった。

 

「何急にリーダー気取って偉そうに命令してんのよ! 見た目からしてアンタ私より年下でしょ!? なら年上に対する礼儀ってものがあるんじゃないかしら!? まず私の事を呼び捨てにするのはやめなさい!」

「年上ならもっと状況見て物を言え! 少なくともアンタよりはマシな命令できる自信あるわ! あとゆんゆんも俺と一緒に来てくれ!」

 

 セシリーと口論しながらも、カズマは仲間に指示を出して先行する。その後をめぐみんが追いかけ、セシリーは渋々従って丘を降りようとする。

 

 そんな中、ゆんゆんだけは動き出そうとしなかった。

 

「……ゆんゆん?」

 

 どうしたのかと、めぐみんは足を止めてゆんゆんに呼びかける。セシリーとカズマも同様に止まり、ゆんゆんへ視線を向ける。

 火で包まれた紅魔の里──その中心で暴れるシルビアを見ていたゆんゆんは、決意の宿った赤い目を光らせ、口を開いた。

 

「セシリーさん、お願いがあります」

 

 

*********************************

 

 

 一方で、紅魔の里中心部。そこでは『魔術師殺し』を乗っ取ったシルビアと、紅魔族の精鋭達による熾烈な戦いが繰り広げられていた。

 

 

 ──ように思えたが。

 

「これが私の切り札。さようならシルビア……『テレポート』!」

「我が禁呪を使う時が来た……刮目せよ!『テレポート』!」

「もう少しいい女になってから出直してきな。その時は夜明けまで付き合ってやるぜ。『テレポート』!」

「だぁああああああああっ! さっきから近づいては逃げて近づいては逃げて! 揃いも揃ってアタシをおちょくりやがってぇええええええええっ!」

 

 紅魔族精鋭部隊は『テレポート』を駆使し、シルビアをからかっていた。

 最初は数々の魔法で攻撃を仕掛けたが『魔術師殺し』の影響で、彼女には傷一つとして付けられなかった。魔法こそ彼等の得意分野であると同時に、唯一の攻撃手段。

 それが効かないと判った途端、彼等はシルビアに接近しては各々戦う意志を見せたり、寸劇を始めたり、挑発したりして、シルビアが攻撃を仕掛けたらすかさず『テレポート』で逃げ始めた。

 もっとも、彼等の役割はシルビアの注意を引くことなので、理に適った行動ではあるのだが。

 

「誰か一人くらい、アタシと一対一で戦う奴はいないのかよ! このへにゃちんどもがっ!」

 

 あまりにイライラが溜まっているのか、シルビアの口調は荒れ、紅魔族を殲滅しかねない勢いで火を吹いている。

 カズマ達の到着が先か、紅魔族の魔力が尽きるのが先か、シルビアの怒りが爆発して暴れ狂うのが先か──そう思われた時だった。

 

「ッ!」

 

 横から火球が飛び、シルビアの顔に当たり爆発した。しかし、今の彼女にとっては蚊に刺された程度のダメージでしかない。

 シルビアは火球が飛んできた方向を見る。そこには、紅魔族の少女がひとり──『ファイアーボール』を放ったゆんゆんが立っていた。

 

「魔王軍幹部シルビア! 私と勝負しなさい!」

「ゆんゆん! 彼等と一緒に兵器を探しに行った筈じゃ──!」

「皆さんは下がっていてください! 私が相手をします!」

「何を無茶な事を言っているんだ! 下がれゆんゆん!」

 

 シルビアの注意を引いたゆんゆんは声を張り上げ、一対一で戦う意思を示す。

 魔法の効かない相手に、紅魔族が正面から一人で立ち向かうのはあまりにも無謀。この場にいた父ひろぽんは彼女を引き留めようと声を上げる。

 対してゆんゆんは、何も言わず父へ目を送る。光り輝く紅い瞳を見た父は、彼女の意思を感じ取ったのか、これ以上口を挟むことはしなかった。

 

 周りの紅魔族達も彼女を引き留めようとしたが……彼等のサガが、邪魔するべきではないと言っていた。

 ざわつきながら、ゆんゆんの様子を見守る紅魔族達。シルビアはゆんゆんへ近寄ると、懐疑的な目で彼女に尋ねる。

 

「そんなこと言って、アンタも『テレポート』して逃げるつもりじゃないでしょうね?」

「逃げも隠れもしないわ。正々堂々の戦いがお望みなら、私が付き合ってあげる」

「そうやって思わせぶりな台詞を吐いて、結局『テレポート』するのがアンタ達のやり方よ! まぁどっちだっていいわ。『テレポート』させる前に殺せばいいんだから!」

 

 殺気立った様子で、シルビアは獲物を狙う獣の目をゆんゆんへ向ける。対するゆんゆんは、それに一切臆することなく睨み返す。

 腰元の短剣を引き抜くと、その刃先をシルビアへと向け──ゆんゆんは名乗った。

 

「我が名はゆんゆん! アークウィザードにして上級魔法を操る者! 紅魔族随一の魔法の使い手にして、やがてこの里の長となる者!」

 




伏せる必要なかったかもしれない。

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