どうも、ふぁもにかです。意外と女体化雲雀さんに需要があったのが驚きな今日この頃です。とりあえず、前回の感想で指摘された草壁さんの雲雀さんへの呼称については、草壁さんのセリフの時は「委員長」、草壁さんの心中文の時は「雲雀さん」と使い分けようかなと思います。心の中でまで「委員長」「委員長」なのは何だか違う気がしちゃったので、ね。
雲一つない青空が広がり、穏やかな日差しが差し込む並盛中の応接室にて。
この世界の女の子な雲雀さんに憑依した僕は今、ソファーに腰かけてとある本を読んでいる。
姿見に映った今の僕は中々に絵になっているのではなかろうか。
え、ナルシストだって? 別にいいじゃん、恭華さんかわいいって思ってるだけだしね。
今は午前10時であり、本来なら学生は授業に出席しないといけない。
しかし、雲雀さんは風紀委員長として築き上げてきた強権により、授業参加を本人の意思に任されているため、わざわざ授業を受けなくていいことになっている。
そもそも僕は大学生で、今さら中学生を対象にした簡単な授業は暇すぎて受けたくない。
雲雀さんは優秀なので、中学生レベルの授業なんて雑魚すぎて相手にならない。
僕も雲雀さんも授業を受ける理由がないため、こうして当然のようにサボっているのだ。
中学生を何度も繰り返すエヴァンジェリンさんがサボり常習犯になった気持ちが今ならわかる。
しっかし、雲雀さんって本当は何歳なのだろうか。
Wikiでは年齢不詳となっていたが、平然とバイクを乗りこなす辺り、最低でも16歳は超えているのかな。でも、どうしてずっと並盛中に留まっているんだろう。
並盛でもっと独裁を振るいたいのなら、どこかの高校や大学で再び権力を構築すればいいのに。
雲雀さんなら簡単にトップに君臨できるだろうに。
っとと、思考が脱線しちゃった。今はこの本を集中して読む時間帯だから、集中集中。
僕は手元の本に視線を落とす。今、僕が読んでいるのは料理のレシピ本だ。
『目指せ、お菓子職人! オリジナリティあふれる最強レシピ200選!』とのタイトルを掲げたこの本には、たくさんの写真と平易な文章でレシピをわかりやすく紹介している。
さて、なぜ僕がお菓子作りの勉強をしているのか。
答えは簡単、僕が憑依した雲雀さんが女の子だから。この一言に尽きる。
雲雀さんが女の子だとわかった以上、この手の勉強も必要だろう。
偽名&男装を施した上で並盛を支配するスタンスな、この世界のおにゃのこな恭華さんに女の子らしい特技があるとは思えないしね。
今は†孤高の浮き雲†スタンスを貫いているけど、人生は何が起こるかわからない。
唐突に出くわしたイケメンに一目惚れして、一気に乙女になっちゃう可能性も否めないのだ。
恋に恋して夢を見るのが女の子だってかの偉大なLM.Cさんもそう言ってたし。
雲雀さんだって恭華さんで、一応は女の子なのだからきっと例外ではないと思われる。
なので、いざそんな状況に陥った時に、イケメンに手料理を振舞えないのは不利だろう。
男を篭絡する手段として、胃袋を掴むのは非常に有効だからね。
そんなわけで、僕が憑依している内に、まずはお菓子作りの勉強をしているのだ。
要するに、ただのおせっかいだ。雲雀さんの意識がない時にそんなことをしても意味がないのではないかとも考えはしたが、今は無駄じゃないとの結論に至っている。
なぜなら。特に何の武術の嗜みもない僕が、雲雀さんと同様に敵を咬み殺せるからだ。
それは、雲雀さんの体は意識がなくても適切な動かし方を覚えていることを意味している。
戦闘技術が体に染みついているのなら、料理の知識や経験も体に覚えさせられるはずだ。
体にお菓子作りの極意を叩き込みさえすれば、そこに雲雀さんの意識の有無は関係ないはずだ。
……何か表現がエッチくなったけど、気にしたら負けかなと思ってる。
こんなことをしていたら雲雀さんの精神が帰ってきた時によりボッコボコにされそうで怖いけど、それでも雲雀さんのために何かをしておきたいという僕の衝動は止められない。
どうせ雲雀さんの体に憑依した時点でいずれ咬み殺されるのは確定なんだし、多少はね。
まぁ、雲雀さんは群れることを嫌う人だから、何でも一人でできるようになるのは悪いことではないはず。うん、そのはず。理論武装完了。
それにしても、勉強するのって楽しいなぁ。
なんて言ってみたけど、実を言うと、僕自身はあまり勉強は好きじゃない。
でも、この雲雀さんの体のおかげか、知識がどんどん吸収されていくから凄く楽しい。
1の努力で10の結果が伴ってくるとか、ある種の快感だよ。病みつきだよ。
元の僕の体の、1の努力で0.5の結果しか返せない状態を知ってるとなおさらねぇ。
さすがは雲雀さんボディ。雲雀さんってば天才型っぽいからね。
努力を積み重ねていく姿とか似合わないし、ホント雲雀さんってさすひばだよ、さすひば。
うん、うん。よし、このレシピ本の大体の知識は詰め込んだし、後は実践だね。
思い立ったが吉日、適当にスーパーで食材を買い込んで、色々なお菓子を作ってみよう。
どうせなら並盛の新名物になり得る、特産品チックな独自のお菓子に挑戦してもいいかもね。
さてさて、どんな結果になるのやら。レッツ、ポイ――クッキング。
……危ない危ない。思わず勢いでポイズンクッキングって言っちゃいそうになったよ。
これ、食中毒でぶっ倒れるフラグだったりしないよね?
今のリボーン世界はまだギャグ路線だから、補正で死なずに済むよね? ね?
◇◇◇
並盛中の風紀委員は、風紀委員長である雲雀恭弥によって統率されている。
雲雀の意に背く行いをした者は速攻で咬み殺されるため、逆らう者は存在しない。
しかし、例え雲雀に従順だろうと、雲雀の虫の居所が悪ければ理不尽に咬み殺されるため、ほとんどの風紀委員は雲雀恭弥を恐怖の権化とみなし、恐れていた。
しかし、雲雀を全く恐れていない風紀委員も中には存在する。
秋田勝。並盛中の生徒になってからは諸事情により不登校だったものの、とあるきっかけで再び並盛中に通い始めた生徒だ。秋田がなぜ雲雀を怖がらないのか。理由は簡単、かの凡人が憑依した後の雲雀しか知らないからだ。
日頃は大概家に引きこもっていた秋田は、ある時ふと気分転換に外へと出かけた。
昼夜逆転生活を行っていたため、外出したのは午後10時である。
その時、秋田は運悪く、古典的な当たり屋と接触してしまったのだ。
肩甲骨が骨折したと声高に喚く、秋田よりも遥かにガタイの良い全身刺青男。
ヤバいと思った時はもうとっくに手遅れだった。
全身刺青男の絶叫を待ちかねたようにわらわらと秋田を取り囲む人相の悪い男たち。
全員が全員、日本刀を帯刀していることから、秋田は理解した。
眼前の男たちが、並盛町を拠点に活動している武闘派のヤクザ:
日本刀を抜刀され、殺気まみれの眼光で睨まれ、ドスの利いた声で脅され。
秋田の精神状態は極限にまで追い詰められていた。
どのような言動が最善かわからず、ただ震えることしかできない。
今、自分が持っている全財産を差し出せば危機を回避できると頭の中の冷静な部分ではわかっていても、体が一切、自分の言うことを聞いてくれない。
自分の無力さを呪うことしかできず。
うっかり夜に外出した自分のうかつさを憎むことしかできず。
リーダー格のヤクザが痺れを切らして日本刀を振り上げた時、秋田は心から願った。
――誰か、助けて。
神様の気まぐれの恩恵か、秋田の願いは叶えられた。
今まさに秋田を斬りつけようとしていたリーダー格のヤクザがトンファーで殴られ、十数メートル後方へと吹っ飛ばされたからだ。
「やぁ、桃巨会の諸君。元気そうだね。さて、今こうして徒党を組んで群れているだけでも問題だけど……派手に風紀を乱してくれたようだね?」
リーダー格のヤクザが泡を吹いて気絶し、配下のヤクザたちが動揺を顕わにする中。
ボサボサの黒髪に学ランを羽織った姿が特徴的な人物が淡々と言葉を紡ぐ。
後ろ姿だけだったが、秋田は誰が自分の目の前に割って入って来たかがわかった。
あれだけ並盛中で悪名高い人物だ、わからないわけがない。
「君たちヤクザの役割は理解している。だから、僕は君たちを潰さずに泳がせている。でも、みだりに風紀を乱す不届き者は並盛町にはいらない。よって、君たち全員――咬み殺す」
後は一方的な蹂躙劇が残されるのみだった。
あっという間に桃巨会のヤクザたちをぶちのめしてみせる雲雀恭弥。
秋田は呆然と、雲雀による圧倒的な粛清シーンを眺めていた。
すると、ヤクザたちの死屍累々を築き上げた雲雀が、ふと振り向いた。
「秋田勝。怪我はないかい?」
「は、はい!」
「そッ。じゃあさっさと帰ろうか。僕はこれの後始末で忙しいんだ。いつまでもここでボケーッと立っているようなら……目障りだ、咬み殺すよ?」
「ひぇ、は、はい! 失礼します!」
雲雀恭弥にギンと睨まれた秋田は冷や汗を流しながら家へとダッシュしようとする。
その時、秋田は気づいた。たった今、自分の名前をあの雲雀恭弥に呼ばれたことに。
――あれ、雲雀先輩。今、俺の名前を呼んだ? 俺、学校に全然行ってないのにどうして俺のことをわかっ……え、まさか雲雀さん、全校生徒の名前を覚えているんじゃないのか?
その可能性に思い至った時、秋田は一旦、立ち止まった。
「雲雀先輩! 助けてくれて、ありがとうございました!」
声を張り上げて、頭を下げて、心からの感謝の意を告げる。
そうして。今度こそ秋田は雲雀の元から走り去った。怯えられていた生徒からまさか感謝されると思わなかった雲雀が、どんな滑稽な顔をしていたかを見ることなく。
◇◇◇
その後。秋田勝は不登校をやめた。
なけなしの勇気を抱えて再び並盛中に足を運び、そして風紀委員になった。
ただ恐怖を煽り立てるうわさと違い、強く優しい雲雀先輩のためになりたかったのだ。
そして今日、草壁が他校の生徒との渉外活動に向かったため、彼の代わりに秋田が応接室の雲雀の元へ赴いている。秋田以外の風紀委員は誰も応接室に入りたがらなかったからだ。
「雲雀先輩、今大丈夫ですか?」
「入って」
命令されたので、素直に入室する。
そして、秋田は一連の報告事項を簡潔に雲雀へ伝える。
話すことはすべて話し終え、秋田が応接室を後にしようとした時。
ふと、秋田の目に、テーブル上の色とりどりの興味深い物体が映った。
「雲雀先輩、それは?」
「かるかん。作ってみた」
「え、ひ、雲雀先輩がですか!?」
「まぁね。桃かるかん、レモンかるかん、いちごミルクかるかんやブルーハワイかるかん。思いつくままに色々試してみたけど……僕がこんなことに取り組むのはおかしい?」
「い、いえ! とんでもないです! けど、雲雀先輩が料理も上手いのが何だか意外で――」
「僕にできないことはないからね、やればできる。……あぁ、これはあくまで並盛の新名物を生む一端だから、誤解しないように」
「な、なるほど。そういうことだったんですね!」
雲雀作のカラフルなかるかんが盛りつけられたお皿が異彩な雰囲気を放つ中。
雲雀と料理という、あまりに想定外な組み合わせに秋田が驚愕していると、ここで雲雀が「食べる?」と秋田に問いかけてきた。
「へ?」
「ちょうどその辺の草食動物の感想が聞きたかったんだ。……あ、嘘を吐いたら咬み殺すから」
「は、はい! で、では、いただきます」
秋田はおずおずと手前にあったレモンかるかんを手に取り、パクつく。
雲雀作のお菓子は、秋田の予想に反して、優しい味わいだった。
「お、美味しいです! えと、レモンの仄かな酸味とかるかんの甘さが絶妙にマッチしてるっていうか、そんな感じです! すみません、上手く表現できなくて」
「そう。じゃあ、もう君に用はないから、帰っていいよ」
「はい、失礼しました!」
そっけない雲雀の物言いを特に気にすることなく、秋田は応接室を後にする。
雲雀恭弥の新たな一面を知ることができて、とっても嬉しい秋田勝であった。
雲雀恭弥:本作の主人公。本名は雲雀恭華。今は凡人が憑依している。将来、元の体を取り戻した恭華がなるべく困らないように、お菓子作りの知識や技術を恭華の体に覚えさせている。
秋田勝:2話目にして早速登場したオリキャラ。並盛中に入学後、1か月だけ登校し、その後は不登校だったが、雲雀への憧憬から再び登校を始めた模様。これから継続的に出番があるかもしれないし、今後一切登場しないかもしれない。
桃巨会のヤクザたち:所詮、雲雀さんのかませ犬にしかなれなかった可哀想な人たちである。
というわけで、2話は終了です。凡人憑依者は早速雲雀さんのイメージ崩壊に取り組んでおります。雲雀さんの言動を模倣するとの方針は一体何だったのか。
凡人憑依者「雲雀さんのエプロン姿を他人に見られさえしなければセーフセーフ」
あ、そうですか。