〜ふぁもにか、とある日の歯科医院での虫歯治療の一幕〜
歯医者さん「痛かったら左手を上げてくださいねー」
ふぁもにか「( ´θ`)ノスッ(痛みを一切味わいたくないため、さっさと麻酔を使って欲しい派のふぁもにか。今はまだ痛くないけど早速手を上げる)」
歯医者さん「痛いんですね、わかりましたー」
ふぁもにか(よし、これで麻酔を使ってくれるはず。計画通り)
歯医者さん「では笑気ガスを使いますねー」
ふぁもにか「ッッッ!?!?!?」
ふぁもにか(瘴気ガス、だと……!? え、え、本気で瘴気ガス!? あの!?)
というわけで。どうも、ふぁもにかです。ここ最近は「おれの聖剣を妹が抜いた」というweb漫画にハマりにハマって何度も読み返しまくっていた結果、本作品の執筆が疎かになっていました。すみません。いやしかし、ああいう面白い作品に唐突に出会う楽しみがあるからこそ、小説や漫画、アニメやゲームは辞められないんだなぁと再認識した今日この頃でした。
「……ん」
気が付いた時、僕の視界にまず最初に入ったのは、見知らぬ天井だった。
僕はゆっくりと起き上がり、今まで体を預けていたベッドから立ち上がる。
その後、身にまとう病衣を見て。病衣の隙間から覗き見た、胸元に残る傷跡を見て。僕の眠っていたベッドを中心にして、周囲に置かれた様々な医療器具を見て。状況を察した。
(あぁ。これ、僕がメローネ基地で意識を失ってから3日くらい経ってる奴だ)
あの時、僕は入江くんの研究室まで戦闘不能状態の山本くんとラル・ミルチさんを運び切った後に力尽き、草壁さんの前で倒れた。白蘭が発動させた超炎リング転送装置によってメローネ基地のほぼ全域が消失した、あの状況だ。草壁さんはきっと慌てながらも、僕の治療に最善な環境まで僕を運び込み、僕を治療してくれたのだろう。とすると、ここは多分、並盛の風紀財団アジトだろうか。次点でボンゴレアジトもあり得るかな。
「……」
しっかし。なんだか僕っていつも医療施設のお世話になっているような気がする。
骸くんと戦った後も並盛中央病院で治療してもらったし、ヴァリアーとの大空戦の時も途中で力尽きて気がつけば中山外科医院の病室のベッドの上だったし、今回もアジトの病室送りである。僕の憧れはあくまで雲雀さんであって、上条さんではないんだけどな。これからは病院送りにならない程度の怪我にとどめる努力も必要だね。
さて。体は少しだるいけど、怪我はもう完治しているし、動く分には問題ない。
だから。まずはお礼を言いに行こうか。僕を治療してくれたであろう、あの子に。
「へッ!?」
と、ここで。外に出ようとしていた僕の視線の先の扉が開かれ、その先にいたスーツ姿の男性が僕の姿に驚きの声をもらす。この人物のことを僕は知っていた。僕が雲雀さんに憑依してから出会ったがために憑依前の雲雀さんの恐ろしさを知らず、それゆえに純粋に僕を慕って風紀委員活動を実践してくれていた、秋田勝くんである。
僕は前にもこの10年後の秋田くんに助けられていた。大空戦の時、デスヒーターを解除できないまま戦うことを強いられた僕が、デスヒーターやレヴィアたんの電撃による怪我を治す手段を求めて10年バズーカを使った際、10年後の世界で、秋田くんが匣兵器を用いて僕を迅速に治療してくれたあの日の出来事は、未だ記憶に新しい。
「雲雀先輩! よかった、目が覚めたんですね!」
「おかげさまでね。僕を治療したのは君だね? 助かったよ」
「そ、そそそそそそんな滅相もない! 俺はただ風紀財団の一員として、当たり前のことをしただけですから! お、俺、草壁先輩を呼んできますねッ!」
「あ」
僕が感謝の念を込めてニコリと微笑むと、対する秋田くんはドギマギとした様子で返事をする。その後、秋田くんは草壁さんを呼ぶことを理由に、逃げるようにして僕の前から去っていった。
んー。男装していない今の僕に対する秋田くんの態度からして、秋田くんは既に僕の性別のことを知っているようだったし、せっかくだから雲雀恭華として、お茶でも飲みながら秋田くんとゆっくり話してみたいと思っていたのだが、残念ながらお預けとなったようだ。
「恭さん! お目覚めになられたのですね!」
「君や秋田くんのおかげでね。それで、今の状況を教えてくれるかな?」
「はッ!」
秋田くんが去ってから数分後。僕の元に速やかに駆け寄ってきた草壁さんから僕は情報を得るべく質問する。草壁さんは息を整えた後、僕に現状をわかりやすく伝え始める。
ここは10年後の僕が設立した風紀財団のアジトであること。僕があの時気を失ってから丸3日経過していること。白蘭率いるミルフィオーレファミリーとツナくん率いるボンゴレファミリーとの力比べとして開催される『チョイス』まで残り7日の猶予があること。などなど。
「報告は以上です」
「なるほどね」
「それで、恭さん……申し訳ありませんでした!」
「?」
僕に伝えることを一通り伝え終えた草壁さんが唐突に土下座の体勢をとり、渾身の謝罪の言葉を放つ。何事かと思い、ひとまず草壁さんの言葉を待つ僕を前に、草壁さんは床に頭を叩きつける勢いで謝罪を続ける。
「我々風紀財団一同、最善を尽くしました。しかしそれでも、恭さんのお体に傷跡が残ってしまう結果になってしまいました! 誠に申し訳ありませんッ!」
「あぁ、何だ。そのことか。別に、気にしなくていいよ。マフィアの世界に足を踏み入れた以上、この程度は覚悟の上さ。むしろあれだけ深手だったのに、後遺症もなしに僕を治せたことをもっと誇っていいんじゃないかな。だからほら、立った立った」
「恭、さん……」
結果、草壁さんの謝罪内容を聞き、何か原作では描写されていない類いの深刻な事態が起こったのではないかと警戒していただけに肩透かしを食らった僕は、ホッとため息を吐きつつ、気に病むことはない旨を口にした。そして中々土下座状態を解除しない草壁に立つことを促した。
(実際、あの胸の傷跡があるおかげで――僕はいつでも、僕が雲雀恭華として生きることを雲雀さんに承認されたあの出来事を思い出せるからね)
「ところで、さっき話していたチョイスってなにかな?」
「それは……」
「正一と白蘭が学生時代に遊んでいた自作ゲームだって話だ。2つの陣営に分かれた後、戦場、戦闘員、基地、戦後の報酬。あらゆる要素を選択して戦う戦争ゲーム……白蘭はこのチョイスを、現実世界で再現する気みてぇだな」
とはいえ。いくら僕が気にするなと言っても、草壁さんの性格からして、きっと僕の傷跡のことを気にせずにはいられないだろう。そのことを踏まえ、僕は話題逸らしのためにチョイスについて草壁さんに尋ねる。未だチョイスの詳細を把握していないらしい草壁さんが答えに窮した時、不意に僕の足元から第三者の声が割って入ってきた。視線を下に向けると、そこにはいつの間にかスーツ姿のリボーンが姿を現していた。相変わらずの気配の読めなさである。
「リ、リボーンさん!?」
「ちゃおッス。元気そうだな、恭華」
「ま、僕の部下が優秀だったからね。それで、わざわざ風紀財団のアジトまで来て、一体何の用かな?」
「お前にこれを渡しにきたんだ」
草壁さんが神出鬼没なリボーンに驚愕する中。いつもの挨拶を繰り出すリボーンに僕が用件を尋ねると、リボーンが僕に何かを放り投げてくる。空中でキャッチしたそれを見た所、紫色をベースにボンゴレの紋章が刻まれた、ボンゴレ匣だった。
「これは、匣?」
「この時代のツナが用意したボンゴレ匣だ。あの時、メローネ基地でお前が正一からもらうはずだった物を、オレが持ってきたんだ。白蘭との戦いまでにそいつをものにしておけ」
「へぇ、ボンゴレ匣ね。……どんな匣兵器なのか、楽しみだね」
き、きききキター♪───O(≧∇≦)O────♪
よ、待ってました! 雲雀さんのボンゴレ匣ぅ!
これで晴れて、ボンゴレ匣のロールを
「ところで、恭華。お前は一体、誰と戦ったんだ?」
「ん?」
リボーンからボンゴレ匣を受け取った僕が内心で浮かれに浮かれていると、リボーンがジッと僕を見上げて問いかけてくる。どうやらリボーンにとっては、僕にボンゴレ匣を渡すことはあくまでもののついででしかなく、これからが本題だったようだ。
「ツナが幻騎士と戦った時に、幻騎士が言っていたぞ。ツナを殺した後に、今度こそお前を殺してみせる。あの時お前にハメられた借りを何百倍にして返してやるって。……お前は大した怪我を負うことなく幻騎士を撃退できたはずだ。そのお前が一体誰と戦ったら、あんな深手を負うことになるんだ?」
「あれ、入江くんには聞かなかったんだ?」
「今、正一はチョイスの準備で手一杯だからな。で、どうしてお前はあそこまで深手を負ったんだ? メローネ基地には幻騎士以外にもまだ、強敵がいたのか?」
「恭さん。その件、是非私にもお聞かせください」
どうやらリボーンは僕とレシア・アルノルの戦いのことを聞き出したいらしい。僕としてはミルフィオーレのCランク兵士にうっかり殺されかけた失態は秘密にしたい所なのだが、話題を逸らそうとしてもリボーンが即座に軌道修正してくるため、逃げられそうにない。加えて、草壁さんもリボーンに乗っかってきた以上、ここは諦めて白状するしかなさそうだ。
「ん、と。別に、幻騎士クラスの強敵と戦ったわけじゃないよ。レシア・アルノルという、ミルフィオーレのCランク兵士の仕掛けた罠に見事なまでに引っかかったまでさ。……入江くんは僕の弱点を的確に突く罠を用意できるレシア・アルノルに、僕の情報を教えた上で僕と戦わせたのさ。僕を成長させるためにね」
「恭さんの弱点、ですか?」
「何なのか気になるな」
「それは内緒。で、レシアと対峙した当時の僕は、10年バズーカでこの時代に来てから早速、ミルフィオーレのボンゴレ強襲部隊との戦いを征し、幻騎士を撃退した直後だった。だから、レシアが自分をCランク兵士だと明かした時、僕は油断したのさ。レシア相手に僕が負けることなんて万に一つもあり得ないってね。その結果がレシアの罠に思いっきりかかって危うく死にかけた無様な僕、というわけさ」
僕は己の幻覚無効化能力こと
「……でも、あの戦いは僕にとって良いきっかけになったよ。おかげで僕は初心を思い出すことができたし、覚悟を決めることもできた。もう、あんな無様は晒さないから安心していいよ。草壁さん、リボーン」
「恭さん……」
「……ふッ。地に足のついた、良い女になったじゃねーか。恭華」
僕は目を開き、これからの戦いではレシア戦のような失態を犯さないことを宣言する。すると、草壁さんは僕のまとう雰囲気がガラリと変化したことに思わず息を呑み、リボーンは帽子を目深に被り直して口角を吊り上げながら、僕に高評価を与えてきた。
「そう言ってくれると嬉しいよ。ありがとう、リボーン。……さて、僕からの話は以上だけど、こんな感じの答えで満足できたかな?」
「あぁ。用は済んだし、オレはボンゴレアジトに戻るぞ。恭華も後で、ツナたちに顔を見せに来い。特にツナはお前のことを心配していたからな」
(おっと、ツナくんたちにも余計な心配をさせちゃってたんだね。なら早く安心させた方がいいか。……ただ、群れるのを嫌う雲雀恭弥がツナくんに積極的に会いに行くのは違和感凄いから、ここは特に変装しないで会うとしよっかな)
「オッケー。わかったよ」
「それに今、おもしれーことになってるからな。ツナたちに会うなら早めがオススメだぞ」
「え、面白いこと?」
「じゃあな」
「「?」」
リボーンは僕にボンゴレアジトに来るよう指示した後、最後に意味深な言葉を残してテクテクと歩き去っていく。結果、この場に残された僕と草壁さんはそろって首を傾げるのだった。
雲雀恭弥→本作の主人公、かつボンゴレ雲の守護者。本名は雲雀恭華。今は凡人の井伊春白虎が憑依している。病衣の恭華さんというのも中々に素敵だと思うのです。なお、恭華さんの胸の傷のイメージはルフィの胸の傷をもうちょい小さく細くしたようなイメージです。
リボーン→ツナを立派なボンゴレ10代目にするために、イタリアから派遣された凄腕の殺し屋。恭華さんがズタボロになった原因であるレシア戦のことを知り、結果として大きく成長した恭華さんを評価するとともに、次に控える白蘭戦のために恭華さんをより一層10年後ディーノさんに鍛えさせる必要性を感じた模様。
草壁哲矢→風紀財団に所属し、雲雀さんを支える腹心。今回は若干空気だった印象。恭華さんの体に消えない傷跡が残ってしまったことを気にしていた模様。
秋田勝→2話が初登場なオリキャラ。雲雀に恐怖せずに崇拝している数少ない風紀委員の一人。闘争の中に身を置き、ほぼほぼ勝利するものの意外と生傷の絶えない雲雀さんの身を案じた結果、医者を志すことにした彼は今、10年の時を経て、治療系匣兵器:晴ヒトデと医療器具の両方を使いこなす新時代の医大生として風紀財団で活躍中である。
というわけで、45話は終了です。次回は例のあの話について関わることになります。お楽しみに。ところで。大空戦にて恭華さんを苦しめたデスヒーターの解毒と、レヴィアたんの雷撃の傷を10年後の秋田くんが治療した件については、29話のおまけを参照してください。
〜おまけ(秋田くんの心境をプラスした会話シーン)〜
秋田「雲雀先輩! よかった、目が覚めたんですね!」
秋田(それにしても、改めて見ると10年前の雲雀先輩ってこんなに幼い顔つきしてたんだ。……10年って長いんだなぁ)
恭華「おかげさまでね。僕を治療したのは君だね? 助かったよ(ニコリ)」
秋田「!?!?!?(不意打ちの微笑みを前に一瞬にして赤面)」
ふとしたきっかけから雲雀さんの真の性別を知ってからというもの、秋田くんは雲雀さんに忠誠心以外にも、そういった類いの気持ちも抱くようになったとか。