ゼロの使い魔 並べられた数字の少年   作:TomomonD

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偉大な作者の方々に追いつけるように、頑張っていきます!

では、どうぞ~。


一召喚目 桃色の髪の主

透き通るような青空の中、桃色がかったブロンドの髪を揺らして少女が杖を振り下ろす。

直後、大きな爆発が起きる。

爆風に桃色の髪がなびく。

 

「………」

「……コホン。ミス・ヴァリエール、そろそろ次の授業が…」

「待ってください、ミスタ・コルベール! もう一度、もう一度だけ!」

「もうこれで十回目です。 ……とはいえ、使い魔召喚をしないわけにはいきませんので、次で召喚できなければ……」

「わかっています」

ヴァリエールと呼ばれた桃色の髪の少女はグッと杖を握る。

 

 

春の使い魔召喚。

トリステイン魔法学院の魔法学生が二年生に進級する際に行う儀式である。

この呼び出された使い魔によって、これから進む魔法の属性を決め、専門の課程へと進んでいく。

同時に、この召喚で呼び出された使い魔とは長き時を共に歩む。

この使い魔が強力であればあるほど、希少であればあるほど、メイジとしての格がつく。

メイジにとって使い魔とは、ステータスであると共に、生涯共に支えあうパートナーでもあるのだ。

 

 

先ほど大きな爆発を起こした桃色の髪の少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。

この使い魔召喚を十度失敗している。

使い魔召喚はメイジならそれほど難しくはないが、それを十度失敗するというのも珍しい。

 

ともかく、次の十一回目が最後のチャンスとなった。

深呼吸と共に焦る気持ちを落ち着かせていく。

そして、杖を振り上げる。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール…」

静かに呪文が唱えられていく。

 

そこまで唱えたとき、次に失敗したらという気持ちが強く心を揺さぶった。

失敗するわけにはいかないわ……。

そう、絶対に……。

そう強く念じる。

揺れた心は落ち着いていく。

しかし、そのせいで大事なことを忘れてしまった。

次の呪文が頭から抜け落ちてしまったのだ。

 

本来ならこの後には“五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし、使い魔を召喚せよ”と続くはずだった。

一度忘れてしまうと思い出せないもので、ルイズは困り果ててしまった。

とはいえ、ここで呪文を止めたら、それこそ失敗で終わらせられてしまう。

完全にパニックになってしまったルイズは、とうとう心の内に秘めた一言を呪文として吐き出した。

 

「十一回もやってるんだから、使い魔として何か、出てきなさい!!!」

 

振り下ろした杖から光が放たれる。

直後、そこにひときわ大きな爆発が起こる。

ああ、また……失敗……。

爆発の煙が風に吹かれてだんだんと晴れていく。

諦めかけた、その時……。

 

「……えっ?」

「あうぅ……、い、一体何が?」

晴れかけた爆発の煙の中には、黒い髪の少女…いや、少年が座り込んでいた。

いきなり爆発の中に現れたのか、驚いたように周りを見ている。

……使い魔?

この子が?

服に着いた土埃を叩きながら目の前の黒髪の少年は立ち上がった。

背丈は私と同じくらい、ショートカットの黒い髪。

少年とも少女ともつかない容姿。

 

「えと、こ、ここは?」

「あんた、誰?」

召喚が成功した喜びよりも、この人間が何者なのかが気になった。

もしかしたら、人間によく似た亜人なのかもしれない。

そんな淡い期待を込めて尋ねる。

「ぼ、僕は、一十百です。その……、ここは?」

一十百と名乗った目の前の存在はいきなり呼び出されたことに戸惑っているようだった。

 

他の事を聞こうとした時に、周りで見ていた人垣から声が聞こえてくる。

「ゼロのルイズが平民を呼び出したぞ!」

「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」

そんな声が笑い声と共に聞こえてくる。

ルイズは強く杖を握る。

どうして……平民が、出てくるのよ!

そう心の中で強く叫んだ。

 

そんな事をルイズが思っている間、呼び出され一十百と名乗った少年は、今自分の置かれた状況を急いで整理していた。

この少年は今まで魔法という物に深くかかわってきた。

魔力こそないものの、知識は他の魔法使いと同等以上にあり、魔方陣にかけては天才的としか言えないほどの実力を持っている。

 

その一十百から見て、今自分の置かれている状況は……。

この魔方陣は、召喚のための物。

目の前にいる桃色の髪の人は、魔法使い。

それに、さっき聞こえてきた単語、『サモン・サーヴァント』……。

えと、つまり、従者召喚のための儀式。

それで、僕がここにいるってことは……、呼び出されちゃった!?

しっかりとそこまで理解できた。

 

 

「ミス・ヴァリエール」

黒いローブを着た中年の男性が目の前の少女に話しかける。

「しっかり召喚できたようですね」

「こ、これは、何かの間違いです! もう一度やらせてください!」

「そういうわけにはいかない。君も知っているだろうが春の召喚の儀式は神聖なものだ。好む好まざるにかかわらず、彼……いや彼女を使い魔にするしかない」

「そ、そんな……」

ルイズはがっくりと肩を落とす。

 

「さて、では儀式を続けなさい」

「……はい」

なにか諦めたように一度ため息を吐くと、ルイズは一十百の前に歩いて行った。

「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」

「ほぇ?」

一十百の目の前でルイズは軽く杖を振り、呪文を唱える。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を持つペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

そして唱え終わったのか、ルイズは一十百にそっと唇を重ねた。

 

「……ふぅ、終わりました」

「どうやら『コントラクト・サーヴァント』は上手くいったようだね」

そう言って黒いローブを着た中年の男性は一十百を見た。

一十百の左手が淡く光っている。

そして、バチッという音と共に稲光が走る。

「あぅぅ……」

弾けるような痛みが一十百の左手を襲った。

ギュッと一十百が左手を握る。

 

少しするとその光も収まり、痛みも引いていった。

「どれ、見せてもらってもいいかい?」

「は、はい」

一十百は左手に刻まれたルーンを見せる。

「珍しいルーンだな」

「ほぇ?」

黒いローブを着た中年の男性は一度頷くと、周りの人垣に声をかける。

「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」

杖を振り上げると、中年の男性の体がふわりと浮く。

そして、そのまま少し遠くに見える石造りの建物の方へと飛んで行った。

周りの人も同じように飛んでいく。

そして、広場にはルイズと一十百だけが残った。

 

 

二人きりになったのを確認すると、ルイズはキッと一十百をにらみつけた。

「あんた、なんなのよ!」

「ふぇえっ! えと、一十百です」

「それはわかったわ! どうして、あんたが召喚されるのよ」

「それを僕に言われても……」

一十百が少し困ったように微笑む。

「どうして平民が使い魔なのよ……。ドラゴンとか、グリフォンとか、マンティコアとか、せめてワシやフクロウでもよかったのに」

はぁ、と心底落ち込んだため息がルイズから漏れる。

 

しかし、その言葉を聞いて一十百の強い光が灯った。

そして、そっとルイズに語りかけた。

「なら……、ドラゴンよりも、グリフォンよりも有能な従者……じゃなくて、使い魔として、僕が事をこなせればいいんですよね」

「何言ってるのよ、あんた」

呆れた表情でルイズは一十百の事を見る。

 

そして、驚く。

今までの、ほわほわしたような雰囲気ではなく、鋭く凛とした雰囲気が一十百を包んでいた。

そして、そっと一十百が口を開く。

それほど大きな声は出していないはずだが、ルイズの耳にしっかり届く声だった。

 

「私、一十百はここに誓います。貴女が倒れそうなとき支え、心を病んだとき守り、共に道を歩むことを。従者として、貴女が納得でき、皆より一目置かれる存在になるまで、常に精進を重ね、いつしか、此度の召喚が誰よりも上手くいったものだと思えるようになるまで、私は貴女を、この誓いを守り続けましょう」

 

遠く澄んだ空よりもさらに澄んだ声で一十百はそう言った。

そして、片足を引き跪く。

 

その行為にルイズは呆気にとられた。

何でもない、ただの平民……じゃないの?

まるで、王宮騎士のような……。

そこまで考えハッと我に返る。

 

「コホン。あ、あんたの心意気はわかったわ。えっと、ヒトトモモ……だっけ? その言葉に偽りないように、しっかりと使い魔として働きなさい」

「はいっ」

一十百が立ち上がる。

いつしか鋭く凛とした雰囲気は消え、さっきまでのほわほわした雰囲気に戻っていた。

 

「えと、一十百と呼び辛かったら、適当に切って呼んでください」

「じゃ、トモモって呼ぶことにするわ。私の事は、ルイズさ……いえ、ルイズと呼んで」

「ふぇっ? よ、呼び捨てですか? 主なんですから、様とか殿とか、せめてさんとか…」

「いいのよ。トモモは私の使い魔なんだから、呼び捨てで構わないわ」

う~ん、と少し悩んで一十百は一度頷いた。

 

「そ、それじゃ、ルイズ。これから、よろしく」

そう言って一十百はそっと手を前に差し出した。

その手をルイズはギュッと握る。

 

多分、私が召喚したのは、ただの平民なんかじゃない。

きっと、この場にいた誰よりも、立派な使い魔を召喚した。

それを誰よりも早く気が付かないとね。

 

 

 

 

一十百が呼び出された世界とは全く別の場所。

そう、一十百の元の世界。

森の中にたたずむログ豪邸。

そこには、一十百の主が住んでいる。

一人は金色の長い髪の少女。

もう一人は、緑色の髪の人形。

その二人が、向かい合って座っている。

 

「オイ、御主人。気ガ付イテルカ?」

「フン、当り前だ。また、一十か。あれは、どうしてそういう事に巻き込まれるんだ」

「デ、ドウスルンダ?」

「放っておけ。そのうち戻ってくる。また、執事として、従者として一回り成長してな」

「ケケケ、下僕トカ言ッテテモ、チャント期待シテルジャネエカ」

金色の髪の少女は、注がれていた紅茶を飲む。

紅茶はまだ温かく、入れたばかりだ。

「まあ、いい。一十を呼び出した奴に任せるとするか。そいつの苦労が目に浮かぶぞ、クックック」

「苦労スルッテノハ、確カダカラナ」

そっと、紅茶のカップを置き、金色の少女は遠くを眺めた。

 

一十、私の従者なのだから、途中で投げ出すようなことはするな。

きっちりとやることはやってから帰ってこい。

そう呟くと、残りの紅茶をくっと飲み干した。




~今回の結果~

異世界に召喚された!:経験値30
新しい主に誓いを立てた:経験値20

合計 経験値50

「僕が次のレベルになるまで 50/100 です!」

現在の称号:不思議な使い魔 Lv1
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