ゼロの使い魔 並べられた数字の少年   作:TomomonD

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三召喚目 使い魔たちとの交友

一十百が扉を開ける。

石造りの廊下を挟んで、似たような木でできたドアが三つ並んでいる。

 

そのうちの一つが開いて、燃えるような赤い髪の女性が現れた。

その姿を見て、ルイズが一瞬ムッとした表情をする。

 

鮮やかな赤色の髪、褐色の肌、そして、圧倒的なスタイル。

一般的な男性なら目を奪われただろう。

「おはよう、ルイズ」

にやっ、と笑って挨拶をする。

「おはよう、キュルケ」

あからさまに嫌そうに視線を逸らしルイズも挨拶をする。

 

この後、いつもなら皮肉の一つでも言われるのだが、何も言ってこない。

どうしたのかしら?

ルイズが視線を戻すと、キュルケの少し驚いたといった表情をしている。

「ル、ルイズ、貴女いつから朝に強くなったのよ?」

「はい?」

「いつもなら、寝癖とかがそのままだったり、服がしわしわだったりするのに……。今日は、ずいぶんと気合が入ってるじゃない」

 

確かにキュルケが言ったように、朝に弱いルイズは授業に行くのがギリギリになる事が多々あった。

寝癖が付いたまま授業を受けることも少なくなかったようだ。

 

しかし、昨日から朝に弱いルイズに、強力な助っ人ができた。

「まあ、私の使い魔が思ってた以上の存在だったのよ」

「あなたの使い魔って……、そこの平民よね?」

キュルケが一十百を指差す。

「そうよ。でも、ただの平民じゃないわ。まだ、私にもまだよくわからないけど、ただの平民じゃないのよ!」

「まともな使い魔が召喚できなかった負け惜しみにしか聞こえないわよ、ゼロのルイズ」

「うるさいわね」

 

 

ルイズとキュルケが話している間、一十百は別の存在と話していた。

それは、キュルケの後に続いて出てきた巨大なトカゲであった。

大きさは虎ほどもあり、真っ赤に染まった鱗を持っている。

尻尾は燃え盛る炎でできているようだ。

熱気が体から放たれているような存在だ。

一十百はこの火トカゲの種類を知っている。

主に火山帯に住んでいる、サラマンダーと呼ばれる種族だ。

ドラゴンほどではないが、炎を吐き、火を食らい、人間では太刀打ちできない生物の一つだ。

一十百が元いた世界では、既に希少な存在となりつつあった生物だ。

 

「おはよう、お隣さん」

「おはよう」

サラマンダーから低いうなり声が漏れる。

人間にはそれを理解できない者がほとんどだ。

しかし、一十百は違った。

しっかりとサラマンダーの言いたいことを理解し、ペコリと頭を下げた。

「うん? 珍しいな。俺たちの言葉がわかるのか?」

「はい。えと、僕はそちらにいるルイズの使い魔の一十百です。よろしく」

「ヒトトモモ、珍しい名前だな。ああ、俺はフレイムだ、よろしくな」

 

 

一十百とフレイムが話しているのを見て、キュルケが驚く。

「ねえ、ルイズ……。あなたの使い魔って、人間よね。なんか、フレイムと話せてるみたいなんだけど……」

「別に、今さらそのくらい出来ても驚かないわよ」

「ふ~ん、まあいいわ。それじゃ、お先に失礼」

キュルケは赤い髪をかきあげて、すたすたと廊下を歩いて行った。

 

「それじゃな。ヒトトモモ」

「はい」

後に続くように、フレイムがゆっくりと歩いていく。

 

 

キュルケが見えなくなると、グッと拳を握りしめ、ダンと一回地面を踏む。

「まったく、なによー! “私の使い魔は、サラマンダーよ”ってあからさまに自慢してるわ、う~……」

ルイズの握った拳が軽く震える。

「どうしました、ルイズ?」

「ああもう! トモモ、いい! あのキュルケには絶対に負けたくないの!」

「は、はい……」

「あの女が召喚したのはサラマンダー。たぶん火竜山脈のやつだわ。確かに使い魔としては、相当格の高いものだけど……、能力じゃ、たぶん負けないわ! そうよね!」

「ル、ルイズ、落ち着いて……」

どうやら、ルイズとキュルケの間には妙な因縁があるようで、何が何でも負けたくないようだ。

一体何があったのかは……、聞かないほうがいいよね、うん。

さわらぬ神に祟りなし、である。

 

しかし、一十百はルイズとキュルケの話で気になったことがあるので尋ねてみることにした。

「あの、ルイズ、ちょっといい?」

「何?」

「さっき話してた時に聞こえたんだけど、ゼロのルイズって……」

その瞬間、ルイズが一十百の事をキッと睨み付けた。

どうやら、聞いてはいけないことを聞いてしまったようだ。

「えと、その……。な、何でもないです」

「……ゼロって言うのはあだ名みたいなものよ」

「あだ名ですか……」

いったい何がゼロなのだろうかと一十百が考えるが、昨日召喚されたばかりでルイズの事は、まだほとんどわからない。

きっと使い魔として立派になった時に自然と分かるようになるだろうと、心の中で頷いた。

 

 

その後、ルイズが向かったのは、トリステイン魔法学院の本塔にあるアルヴィーズの食堂という食堂だ。

長いテーブルが三つ置かれており、一つのテーブルに百人は優に座れるだろう。

ルイズが向かったのは真ん中のテーブル。

他のテーブルを見てみると、紫色のマントを羽織った少し大人びたメイジが右のテーブルに座っている。

左のテーブルには、茶色のマントを羽織ったメイジ達が座っている。

どうやら、マントの色は学年別で決まっているようで、座る場所も学年別で決まっているようだ。

 

ルイズが座る場所を決めたようで、椅子の前まで歩く。

一十百はルイズの後ろについていき、ルイズが決めた席の椅子をそっと引いた。

ルイズはさも当たり前のようにそこに腰かけた。

さすが貴族と思えるような振る舞いだ。

 

「トモモ、わかってるとは思うけど、ここの席は貴族の席。本来、使い魔は外だけど、私の特別な計らいで、中に入れてもらえてるの」

「はい」

一十百はルイズの斜め後ろに立っている。

勝手に座る様な事はしない。

それを見て、ルイズは少し考える。

やっぱり、ただの平民じゃないわよね……。

なんだか、私のような貴族に仕えるのに慣れてるみたいだし。

そんな事を考えながら一十百の事をチラリとみる。

「どうかしました?」

「…な、何でもないわ」

ニコッと一十百が微笑んでこっちを見たので、慌てて前を向く。

 

 

マントを羽織った生徒たちがだいたい席に着くと祈りの言葉が唱和される。

「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」

ルイズも目を閉じてそれに加わっている。

 

そして、祈りの言葉が終わると食事が始まった。

祈りの言葉とは裏腹に、豪華な朝食がテーブルに置かれている。

大きな鳥のロースト、色とりどりのサラダやフルーツ。

鱒の形をしたパイや、ワインなど、ささやかな糧というには少し豪華すぎる朝食だ。

ルイズも黙々とその料理を食べる。

その時、手に置いてあったフォークがぶつかりテーブルから落ちてしまう。

急いで手を伸ばすも、届かずそのまま床に落ちると思われた。

しかし、フォークは途中で姿を消した。

「!?」

ルイズが驚く。

すると、そっと一十百が元の場所にフォークを置きなおした。

どうやら消えたように見えたのは、途中で一十百がキャッチしたためだったようだ。

「ありがと」

いえいえと一十百は微笑む。

 

 

食事が終わると、ルイズと一十百は教室に向かった。

階段状になった席が扇状に並び、一番下の段に教卓と黒板のようなものがある。

ルイズと一十百が教室に入ると先にいた生徒たちが一斉に振り向いた。

そしてくすくすと笑い始めた。

ルイズは教卓から少し遠い後ろの席に座る。

一十百はその後ろに立つ。

ルイズは一瞬、一十百の事を見る。

いくら平民…使い魔とはいえ、ずっと立ちっぱなしっていうのも疲れるわよね。

それなりに、風格もあるみたいだし……。

そこまで考え、ルイズはトモモの事を呼ぶ。

 

「トモモ、ちょっと…」

「はい。なんですか?」

「立ちっぱなしだと、疲れない?」

「いえ、大丈夫ですよ」

「そう? ならいいんだけど……」

疲れているなら隣の席に座れば、と言うつもりだったが、無駄な心配だったようだ。

一十百の声に疲れの色は見えない。

 

 

段々と生徒たちが教室に集まり始め、同時に使い魔が教室に集まり始めた。

カラスや蛇などの一般的に知られる動物もいるが、やはり普通では見られない珍しい使い魔がたくさんいる。

なぜかそんな使い魔たちばかりが一十百の元に近寄ってくる。

 

始めに来たのはキュルケのサラマンダー。

「あっ、フレイム」

「ヒトトモモ。退屈じゃないか? 俺はこの授業とか言う物の時は、寝ることにしてる」

「さすがに僕は寝るわけにいかないよ」

「そうか、人間ってのも大変だな」

そう言うとフレイムはキュルケの机の下にもぐり眠ってしまった。

 

次に来たのはふわふわと浮いている巨大な目玉。

バグベアーと呼ばれる、悪魔の一種のようなものだ。

「こんにちは?」

「……コンニチハ」

バグベアーには口という物がない。

目の動きが彼らの言葉であり、感情表現である。

故に、人間がバグベアーの言葉を理解するのはかなり難しい。

しかし、あっさりと一十百はその言葉を理解したようだ。

「どうしたの?」

「イヤ、ニンゲンハトモカク、他ノ奴ラガ、コワイ……」

「ほえ? 同じ使い魔だから、襲ってきたりはしないと思うよ」

「ソ、ソウナノカ? ヨシ」

何だか安心したようにふわふわと主の元に戻っていったようだ。

 

その後に来たのは上半身は青色の人間の少女、下半身は蛸のような生物。

スキュアと呼ばれる海の生物である。

「おはよう」

「おはよ~、陸は乾燥してるね~」

「だいじょうぶ? 外に噴水があったけど…」

「ん~、干からびることはないから、へ~き」

半分は人の姿をしているとはいえ、人間の言葉を話すわけではない。

キュルキュルと不思議な鳴き声を放つだけだ。

手だと思えるものを振って、主の方に向かっていたようだ。

 

こんな感じに、なぜか一十百の所に使い魔が集まってくる。

その光景をみて、ルイズは首をひねる。

どうして、他の使い魔がトモモの所に来るのかしら?

あれかしら、人間の使い魔が珍しいから?

なんか違う気がするわね。

それよりも……、なんで話が通じるのよ?

私にはわからないけど、たぶん通じてるわよね、あれ。

 

はぁ~、とルイズは疲れたように深いため息を吐いた。




~今回の結果~

使い魔たちとの交友を深めた:経験値20
ゼロのルイズと言う言葉を聞いた:経験値5

合計 経験値25

「僕が次のレベルになるまで 25/140 です!」

現在の称号:不思議な使い魔 Lv2
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