ゼロの使い魔 並べられた数字の少年   作:TomomonD

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六召喚目 ルーンの欠片

ヴェストリの広場にいた誰もが唖然となった。

 

ギーシュはグシャリと言う音で我に返ったようだ。

気が付けば、自分の作り出した青銅のゴーレムが銅塊同然になっている。

そして、今さっきの光景が目に浮かんだ。

もしも、あれを僕自身が受けていたら……。

杖を持つ手が震える。

目の前の銅塊が自分の姿と重なった。

 

「クッ!!」

ギーシュは急いで、杖を振り下ろす。

薔薇の造花が舞い、青銅のゴーレムが六体現れる。

そのゴーレムは一斉に一十百に襲い掛かる。

一気に揉みつぶすように、飛びかかったゴーレム。

そこに一瞬、青い閃光が真横に煌めいた。

その瞬間、すべてのゴーレムの上半身だけがなくなっていた。

ガシャと力なく、腰から下だけになったゴーレムが倒れていく。

その中心に何事もなかったかのように一十百が立っていた。

「ひ、ひぇ…」

ギーシュはストンと腰を落とした。

それに合わせるように、ガシャと空からゴーレムの上半身が降ってきた。

何が起こったのかは分からない。

ただ、自分の青銅のゴーレムが一瞬で破壊されたことだけだった。

 

ゆっくりと一十百が草を踏みしめ近づいてくる。

そして、ギーシュの目の前に立つ。

グッと握った拳がゆっくりと近づいてくる。

「ひっ!」

咄嗟にギーシュは目を閉じた。

自分も目の前のゴーレムのようになると、そんな恐怖に震える。

 

しかし、いつまでたっても、考えていたような痛みが襲ってこない。

恐る恐る目を開ける。

そこには、握った手を広げて、こちらに差し出している平民の姿が見えた。

「あの~、立てますか?」

「へ?」

「えと、腰を抜かしてしまったみたいだったので、手を貸そうかと思ったんですけど……」

きょとんとした表情で一十百が尋ねた。

コテンと首を横に倒して自分にそう聞いてくる姿は、今さっきまで、自分が作り上げた青銅のゴーレムを屠ってきた姿と似ても似つかなかった。

そう思うと、気が抜けたのか、ギーシュはそのまま後ろに大の字に倒れた。

「参った。完敗だよ」

 

 

一十百があっさりとギーシュを負かしたのを見て、周りで見ていた貴族たちから歓声が沸いた。

その歓声の中、一十百がルイズの元に戻る。

「ただ今、戻りました」

「トモモ……。あんたって、すごい使い魔だったのね」

「ふぇ? そうじゃないですよ」

「そうじゃない、って?」

「“すごい人の使い魔”ですよ、ルイズ」

ニコッと一十百が微笑んだ。

「っ!! 何言ってるのよ! さ、さあ、部屋に戻るわよ」

「あ、ルイズ、待ってください」

ルイズは早足で学院の中に向かっていった。

置いていかれないように、一十百も駆け足でルイズの後をついていった。

 

 

一十百とギーシュの決闘を見ていたのは、生徒たちだけではなかった。

本塔にある学院長室から、マジックアイテムの『遠見の鏡』を通して二つの影がその決闘を見ていた。

一人はルイズの使い魔召喚に立ち会った、コルベール。

もう一人は、この学院の学院長、オールド・オスマン。

一部始終を見終えると、二人は顔を見合わせた。

「オールド・オスマン」

「うむ」

「あの平民、勝ってしまいましたが……。それも、圧勝です」

「うむ」

「やはり、あのルーンは伝説の使い魔『ガンダールヴ』!」

「うむむ……」

オスマンは深く考え込む。

 

「ミスタ・コルベール。彼……いや、彼女か? とにかく、あの使い魔は本当にただの平民だったのかね?」

「はい。どこからどう見ても、ただの平民でした。念のため、召喚された時に『ディクテト・マジック』で確かめたのですが、正真正銘ただの平民でした」

「ふ~む……。では、呼び出した方に原因があるのじゃろう?」

「いえ、その、ミス・ヴァリエールはそこまで優秀ではないというか、むしろ無能というか……」

「……謎、じゃな」

「はい」

オスマンはふぅ、と大きなため息を一つ吐いた。

そして、コルベールの方を見る。

「この件は私が預かる。他言は無用じゃ。ミスタ・コルベール」

「は、はい! かしこまりました!」

 

 

部屋に戻ったルイズはトモモの事をしっかりと聞くことにした。

かなりの速さで動けることは、さっきのケーキを配ったことでわかった。

しかし、それだけでは青銅のゴーレムをあれほど高々と吹き飛ばすことはできない。

教室に新しい机を運んだ時もそうだ。

中庭では聞きそびれちゃったけど……、やっぱりトモモって……。

「ねえ、トモモ。もしかして……、かなり重いものとか持てる?」

「ほぇ? かなり重いもの? なにか、運んでほしいものでもあるの?」

「そういうわけじゃないわ。ただ、見た目によらず力があるのかも、と思っただけよ」

「う~ん、自分ではそんな風に思ったことはないですけど……」

そう言って、部屋にあるベッドの方を向く。

「でも、あれくらいなら、簡単に運べますよ」

「ええっ! ……ちょっと、持ち上げてみてくれる?」

「わかりました」

 

トモモはベッドの前に立つ。

そして、その下に両手を入れた。

「よっ」

ふわりとベッドが持ち上げられた。

一十百の小柄な体型からは考えられない光景だ。

「………」

「ルイズ?」

「……あ、ええと、下ろしていいわよ」

ストンとベッドが音もなく下ろされた。

何事もなかったかのようにトモモは振り返る。

……トモモって、本当に人間……よね。

ルイズはそんなことを考える。

 

考えてみれば、目の前にいるトモモは『サモン・サーヴァント』で呼び出された使い魔だ。

古い歴史の中で、人間を使い魔にしたという例を聞いたことがない。

もしかして……、人間によく似た亜人だった?

そう思ってルイズは自分の知っている人間似の亜人を考える。

 

まず一番初めに思い付いたのは、尖った耳と強力な先住魔法の使い手として有名なエルフ。

しかし、トモモの耳は尖っていない。

それに、エルフならギーシュとの決闘の時、先住魔法を使っただろう。

そう考えるとエルフではない。

 

次にルイズが思いついたのは、人間を餌とする夜の人狩人、吸血鬼。

人間と見分けがつかず、血を啜るその一瞬前まで牙を隠すことができる。

もしや、と一瞬思ったが、ギーシュとの決闘は真昼から行われていたことを思い出した。

いくら正体を隠すためとはいえ、苦手と言われている日光の中、ずっと外にいようとは思うまい。

それに、もし吸血鬼なら、いくら使い魔とはいえ、私は昨日のうちに血を啜られていたはずだ。

 

あと考えられるのは、人とは少し違うが、力が強く巨大なトロール鬼くらいなものだ。

人間の五倍はあるトロール鬼だが、もし小さい個体がいたなら、と考えた。

しかし、トロール鬼は人の言葉を話せるほど知性が高くない。

トモモは使い魔のルーンが刻まれる前から人間の言葉を話していた。

つまり、トロール鬼でもない……。

 

結局、ルイズはトモモに尋ねることにした。

「ねぇ、トモモ。あんたって、人間よね?」

「ふぇっ!?」

「いや、別に人間じゃなくてもいいんだけど……。ちょっと、気になっただけ」

「に、人間ですよ! 前に人外って、よく言われたことがありましたけど、正真正銘、人間です」

トモモは慌てたように手を振りながら、そう言った。

前に人外って言われてたことあったのね……。

ルイズはそんなことを思う。

同時にトモモの反応を見て、人間であることを確信した。

少なくとも本人は自分の事を人間だと思ってるみたいね。

まあ、別に亜人だったからって、何かするつもりじゃなかったけど……。

 

ふっ、と息を吐きルイズは椅子に腰かけた。

その時、チラリとトモモの左手に刻まれたルーンが見える。

そのルーンをみて、ルイズの表情が驚きのものになった。

「ちょっ、ちょっと! トモモ、左手!」

「ほぇっ?」

「ルーンが……」

トモモも何事かと思って、自分の左手を見る。

手の甲に刻まれたはずのルーンが、始めの一文字だけになっている。

 

「あれっ? 前はもっと長かったような……」

「ど、どうして使い魔のルーンが消えかけてるのよ!」

がしっとルイズがトモモの左手をつかんだ。

確かに自分が刻んだはずのルーンがほとんど残っていない。

「本当に消えかけてる……」

「えと、どうしましょう?」

このままだと、せっかく呼び出せた使い魔との契約が切れてしまう。

それも、トモモ程の実力の使い魔となると、二度と呼び出せない可能性がある。

「学院長とかなら、何かわかるかもしれないわ! 行くわよ!」

「は、はい!」

 

 

二人が飛び出すように部屋を出ていく。

本塔への渡り廊下を駆け抜け、階段を二段飛ばしで駆け上がる。

そして、学院長室の前までたどり着いた。

 

「はぁはぁ、こ、ここが学院長室よ」

「大丈夫ですか? 一度休んでからでも……」

「そういうわけにはいかないの!」

ルイズは息が上がったままノックをする。

「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです。お話したいことがあってきました!」

カチャリと扉が開く。

中には、オールド・オスマンとコルベールがいた。

 

「うむ。どうしたのじゃ、ミス・ヴァリエール?」

「トモモの……、使い魔のルーンについて、聞きたいことが!」

「お、落ち着きたまえ。ミス・ヴァリエール。おお、使い魔君も一緒か」

コルベールが一十百の事を見て、少し驚いた表情をする。

「し、失礼しま~す。えと……、ルイズ」

一十百が確認するように、ルイズの名を呼ぶ。

ルイズは一度頷く。

わかった、と一十百は左手の甲を、二人に見えるように向けた。

一文字だけになってしまった使い魔のルーンを見て、二人の表情が変わる。

コルベールは明らかに、オスマンは眉をひそめる程度だ。

 

一十百はその二人の表情を見て、何かに気が付く。

特にオスマンの表情の違和感に気が付いた。

もしかして……、何か重要なことをしってる?

でも、あれは言うに言えないような感じだなぁ。

よ~し……。

 

「ルイズ、ちょっといい?」

「なに? 今は一刻も早くルーンを……」

「そのことなんだけど、杖、忘れてきてるよ?」

「えっ? あっ、本当だわ! ちょっと、取ってくるわね!」

慌てていたのか、ルイズはトモモに頼まず一人で部屋に戻っていった。

それを確認するように、一十百がそっと学院長室の扉を閉めた。

 

 

「えと、それじゃ、このルーンの事を教えてください」

「そ、それは、ミス・ヴァリエールが戻ってきてからでも……」

コルベールが少し慌てたように、そう言った。

一十百が軽く首を横に振り、自分の服の袖に手を入れる。

すると、一十百の袖から一本の棒が取り出された。

それは今さっきルイズが部屋に取りに戻ったはずの杖だった。

「それは、ミス・ヴァリエールの!」

「はい。ちょっとの間、ルイズに退出してもらうために、そっと僕が預かっておきました」

「し、しかし、なぜ……?」

一十百の瞳が一瞬だけ青く光る。

そして、学院長の方を向く。

 

「学院長さん。このルーンについて知ってることを教えてください」

 




~今回の結果~

青銅のゴーレムを六体撃破:経験値90
使い魔のルーンの異変に気が付く:経験値10

合計 経験値100

「僕が次のレベルになるまで 100/170 です!」

現在の称号:不思議な使い魔 Lv3
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