ゼロの使い魔 並べられた数字の少年   作:TomomonD

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九召喚目 失敗続きの主の苦悩

トモモは学院に戻ると、デルフリンガーの錆び落としを始めた。

錆び落としは魔法学院の噴水の近くでやることにしたようだ。

部屋の中でやると、金属粉が舞ってしまうため、外でやることになった。

それが珍しいのか、外にいる使い魔たちがわらわらとトモモの周りによってきた。

 

「なにをやってるんだ?」

始めに話しかけてきたのはキュルケの使い魔のフレイムだ。

「あっ、フレイム。ルイズに買ってもらった剣の錆び落としをしているんだよ」

「随分、ボロい剣に見えるが、使えるのか?」

「ボロいわけじゃないよ。ちょっと錆びてるだけ。錆びさえ落ちれば、立派な名剣だよ」

「そうなのか?」

そう言ってトモモが錆を落としていく。

 

次に話しかけてきたのは噴水で水浴びをしていたスキュアだ。

スキュアというのは種族名だが、彼女の主がそう呼び続けているので、そのまま名前になったらしい。

聞いた話では、その主は水系統のドットらしい。

「や~、トモモ。なにやってんの?」

「この剣の錆びを落としてるんだ」

「へ~、おもしろい?」

「う~ん、面白くはないけど、立派な剣の状態に戻したいからね」

スキュアは段々と光沢が戻っていく刀身に魅かれたのか、面白そうに横から見ていることにしたようだ。

 

次に来たのは二足歩行をし、黒のマントつきタキシードにシルクハット、さらにモノクルにおしゃれな杖まで持った黒猫だった。

魔法使いの使い魔として有名なケットシーの一種。

 

名前はダスター。

人の言葉を話すことができ、自分の事をダスター伯爵と名乗っているようだ。

ダスターは貴族であるギーシュと負かしたトモモの実力を認め、使い魔として尊敬する存在だと本人の口から言っている。

トモモも博識であるダスターの事をよく思っており、愛称を込めて伯爵と呼んでいる。

 

「おや、誰かと思えば、トモモ殿ではないか」

「こんにちは、伯爵」

「うむ。何やら不可思議なことをやっているようだが、何をやっているのか是非、お教えいただけるかな?」

「この剣の錆を落としてるんです。せっかく立派な剣なので、錆びつかせてるのがもったいなくて」

「なるほど。『名剣一つ、城壁を穿つ』と言うが、トモモ殿がそこまでするのだから、やはりそれもまた……」

「はい! 立派な名剣ですよ」

「ふむ。とても興味深い。見学させてもらうとしよう」

ダスターはマントを翻し、噴水の縁に腰かけた。

 

こんな感じに次々と使い魔たちが集まってくる。

トモモはどの使い魔とも話すことができる様で、種族を隔てることなく友好的な関係を築いているようだ。

 

 

「あれ? もう落ちた」

トモモが思っていたより、あっさりとデルフリンガーの錆びは落ちた。

山吹色の刀身が日の光を受けて輝く。

その光を見て、使い魔たちは歓声を上げる。

歓声と言っても、鳴き声であったり、目の色が少し変わったりするだけなのだが。

「やっぱり、立派な剣でした。貨幣価値はまだしっかりと理解できていないですけど、間違いなくいい買い物をしたはずです」

「そう言われると、買われた俺もうれしいね」

カシャカシャと鍔の部分が上下に動く。

 

「ふむ。なかなか興味深いものだった。錆びたものは朽ちていくのみかと思っていたのだが……。なに、少し手を加えれば、また蘇るのだな。なるほど」

ダスターは何やら納得したように頷くと、学院の中に戻っていった。

主の部屋に戻るのだろう。

「見てて面白かったよ。やっぱり、トモモといると飽きないね~」

スキュアも満足したのか、噴水の中に横たわるように伸びをして、そのまま眠ってしまった。

「さてと、それじゃ、部屋に戻ろうかな」

トモモは駆け足で主であるルイズの部屋に向かっていった。

 

 

トモモが部屋に戻ると、ルイズは暇そうに椅子に座っていた。

「もう、錆び落とし、終わったの?」

「はい。この通りばっちりです」

そう言ってトモモはデルフリンガーを鞘から抜いた。

山吹色の刀身が輝いている。

「へ~、ちゃんと落ちてるじゃない。てっきり、中まで錆びてるのかと思ったわ」

「いえいえ。刀身の上に乗っかるように錆が付いていたんで、刀身自体はほとんど錆びてないんですよ」

「そう言えば、そんなこと言ってたわね」

ルイズは椅子に腰かけたまま、ため息を吐いた。

 

買い物も終わって、暇になってしまったのだ。

魔法の練習をしようにも、部屋の中でやれば大惨事になることは経験済みだ。

だからと言って、座学をする気にもならない。

散歩に行くのも気分転換としてはいいのだが、それすらやる気にならないのだ。

 

やることもなく、本を手に取る。

授業で使う参考書といったところだ。

その本を見て、トモモがハッとした表情になる。

「どうしたの?」

「いえ、その、今気が付いたんですけど……。僕って、ここの文字が読めないんだなぁ、と思いまして」

「……読めないの?」

「はい。初めて見る文字ですから」

「ふ~ん……」

何でもできるような使い魔だと思っていたけど、意外なことができないのね。

まあ考えてみれば、ただの平民じゃないとしても、平民には変わらないし、文字を習わなかったのかもしれないわね。

 

「わかったわ。トモモ、こっちに来なさい」

「なんでしょうか?」

「あなたに文字を教えてあげる。読めたりしないと色々と不便でしょ」

「えっ、でも、手間をかけさせてしまうかもしれませんよ?」

「いいのよ。やることもなくて暇だったから。それに、使い魔が文字を読めないなんて、私からしてみたらそっちの方が嫌よ」

そう言って、ルイズは立てかけてある本を一つとり、トモモに見えるようにテーブルの上に開いた。

 

 

五分後……。

トモモはその本をあっさりと読破してしまった。

確かに、始めは全く読めていなかったわ。

本当に文字を習ったことがなかったみたいだったわね。

でも、途中で何かコツをつかんだのか、そこからは一気に読めるようになってたわ。

「……それでも、五分で読破って、早すぎるわよね」

「どうかしましたか、ルイズ?」

「何でもないわ」

今、トモモに読ませてるのは、魔法の触媒に使う秘薬の一覧表のようなもの。

気が向いたら、探してきてもらうつもりだけど……、出来るかしら。

 

「はい。ありがとう、ルイズ。これもしっかり読めるようになったよ」

「えっ、もう読み終わったの! 相変わらず、トモモはすごいわね」

「そんなことはないですよ。それに……」

ニコッと微笑み、指を一本立てる。

「もし、僕がすごい使い魔なら、それは、ルイズ自身が立派なメイジであるという事ですよ」

「そ、それは、そうなんだけど……」

「もっと、ルイズは自分に自信を持ってください」

何だか、本当にいい使い魔を召喚したわね。

 

「それで……、ルイズはどの系統が得意なんですか?」

「え゛……」

「先ほど見た秘薬の一覧表も、使う系統別に書かれていましたし。秘薬を集めるときルイズの得意な系統を知っていた方が効率がいいと思いまして」

……悪気がないのは分かる。

自分の為に、秘薬を集めようとしてくれているのだ。

 

「え、ええ。得意な系統ね…」

「はい。その、確かに土系統の『錬金』は失敗していましたけど、それ以外の得意な魔法……いえ、系統があるはずですから」

「………」

「ルイズ?」

「………わよ」

「?」

「ないわよ! 得意な系統なんてっ!」

「ふええっ!! い、いきなりどうしたんですか!?」

ルイズは手に持っていた本をトモモに投げつける。

投げつけられた本をキャッチして、トモモは心配そうにルイズを見つめた。

 

「何を唱えても、失敗ばかり……。得意な魔法なんて……」

「ルイズ……」

トモモがそっとルイズの前に紅茶を出した。

いつものほんのり甘い香りとは違う、ツンとしたハーブのような香りのする紅茶のようだ。

「これは?」

「特製のハーブティーです。落ち着きますよ」

「……ありがとう」

「いえいえ。落ち着いてから、いろいろ話しましょうか」

「……うん」

 

 

ルイズがハーブティーを飲みきって、一息ついた。

さっきまでの険しい表情も、随分と緩やかになった。

「十分落着けたわ、ありがとう」

「使い魔として、主の支えになるのは当たり前のことです」

ニコッとトモモが微笑む。

 

「それで、ルイズ……。今まで魔法が失敗ばかりというのは、本当ですか?」

「ええ。一つたりとも、まともに発動できなかったわ」

「……僕もその失敗のうち、ですか?」

「えっ?」

 

その言葉を聞いて、ルイズはトモモの方を向いた。

どことなく、寂しげな微笑を浮かべている。

……ああ、そうだったわ。

私にもあったじゃない。

失敗してない魔法……。

「トモモ。あなたのおかげで思い出せたわ。私はゼロじゃない。ちゃんと成功してる。立派な使い魔を召喚できたもの」

「えへへ、ありがとう、ルイズ」

 

「でも、『サモン・サーヴァント』は系統魔法じゃないわ。コモン・マジックといって、どの系統のメイジも使うことができる初歩的な魔法よ」

「う~ん……。コモン・マジックは他に何かありますか?」

トモモが少し考えながらルイズに尋ねる。

「簡単なのだと、杖に明かりを灯す『ライト』、扉に鍵をかける『ロック』、それを外す『アンロック』……。他にもいくつかあるわ」

「えと、試しに『ライト』を唱えてもらっていいですか?」

「……失敗すると思うから、ちょっと離れてて」

「えっ、で、でも…」

「いいから」

仕方なくトモモは部屋の隅に移動する。

 

ちゃんと移動したのを確認すると、ルイズが杖を振り上げルーンを唱える。

一瞬、杖の先に強い光が灯ったように見えたが……。

次の瞬間、そこから大爆発が起こる。

爆煙が部屋に充満する。

「けほっ、けほっ……。ル、ルイズ、大丈夫ですか!?」

窓を開け、トモモがルイズに駆け寄る。

「大丈夫じゃないけど、まあ、無事ではあるから問題はないわよ」

顔についた煤を払って、何事もなかったかのように、そう言った。

着ていた服もボロボロになって、大丈夫には見えないのだが、慣れているのか何ともないように振る舞った。

 

「えと、ルイズ。ちょっと気になったことがあるので、服を着替えましたら、聞いてください」

 




~今回の結果~

デルフリンガーの錆び落としに成功:経験値20
異世界の文字を理解:経験値65

合計 経験値85
一十百はLvUP!
一十百はランクUP!

「僕が次のレベルになるまで 0/150 です!」

現在の称号:優秀な使い魔 Lv1

会得称号:不思議な使い魔 LvMAX
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