Re:ゼロから始める素晴らしいオーバーロード! 作:梶本 楓
―追記―2016.9.22
地の文等の改稿を致しました。
平凡な少年、
ある理由にて死亡した結果、死んだ者が向かう場所、天界にて女神と出会い、異世界への転生を果たした佐藤和真は、見渡す限りの中世都市に目を輝かせた。
そんな彼の横にて憤慨する少女が一人。
「なっ、何よここ!私の知ってる『アクセルの街』じゃないわ!」
足をドタドタと鳴らしながら何度も地面を踏みつけて怒りを露にする青髪の少女。
彼女の名前は『アクア』。水を司る
しかし、腐っても女神である彼女は転生者の転生先である『始まりの街・アクセル』については理解していた筈だった。
だが、彼女の目には覚えの無い巨城や、竜が荷を引く光景、皆々首から鉱石を垂らしている
アクセルの街には余りにも不自然で異様な光景に、彼女は思考の回転を止めてしまう程だった。
そうとは知らない和真は、何がおかしいのか気付かぬままに呆れた顔でアクアに向かう。
「なんだよ、ここがその『アクセルの街』じゃないのがそんなにおかしいのか?」
「おかしいわよ!いい!?始まりの街であるアクセルは、まだ低レベルのアナタたち転生者が基礎基盤を作る為にあるの!それなのに、この繁盛っぷりじゃあまるで王都よ!」
アクアは無知な和真に激昂する。燦然たる存在でなければならない女神たる自分に、不可解な災難が降り注ぐ事は非常に堪えきれない程の衝撃を与えるには十分すぎた。しかし、和真は一切の違和感を覚えていない。
「はぁ...まあさ、何とかなるんじゃないか?取り敢えず“冒険者ギルド”に行ってみようぜ」
和真の飄々とした態度に、アクアは全てを投げ出すように肩を落とし、諦めた格好をしてしまう。
和真は、肩を落とし項垂れるアクアを置いて歩いていく。後ろを振り返らず、他人のペースを気にせず歩く和真らしい行動に、アクアも急いで着いていき、間に合うと同時に和真の頭を叩いた。
この時、和真達は未だあのような悲劇に巻き込まれるとは思いもしていなかったのだった。
◆◆◆◆◆
22世紀、日本。
和真よりも約100年後の地球ではあるゲームが流行っていた。
ヴァーチャル技術を駆使した仮想現実体感型ゲーム・・・DMMO-RPGである。その中でもかつて一世を風靡したタイトルが1つある。
『ユグドラシル』
鈴木悟も、そのゲームのプレイヤーであった。
過疎化したユグドラシルのサービス終了のその時、古参プレイヤーだった彼はギルドルームで最後を迎えていた。本来なら強制的にゲームハードが落ちる。
筈だった。
「あれ?...何処だ?ここ」
気付けば、鈴木悟はゲームキャラクター『モモンガ』の姿で街の外れの森の中に立っていた。
近くには6人のメイド、1人の執事、1人の美女。
6人のメイドを『プレアデス』、執事を『セバス・チャン』、美女を『アルベド』と言い、それぞれ鈴木悟のギルドメンバーが作り出したNPCだ。
鈴木悟は考えた。バグだと。
実はサービス終了がドッキリで、今からユグドラシル2が始まるのではないか?等。
しかし、その瞬間、思考を停止させる程にあり得ない事が起きた。
「モモンガ様?如何なされましたか?」
アルベド...最も身近にいた美女が片膝を着きながら心配そうな顔をして鈴木悟の顔を見ていた。
鈴木悟は困惑する。こんな機能はユグドラシルには存在しない。
NPCに表情や台詞を設定する事は出来ただろう。しかし、ここまで人間味溢れる“生”を感じさせる事は不可能だった。
そして、鈴木悟の中に1つの仮定が生まれた。
――――――ゲームの現実化。それも、違う世界に。
鈴木悟は周囲を見渡す。
何処までも鬱蒼と広がっていそうな森の中で自分の所だけ僅かに盛り上がっている事が分かる。
それは、ユグドラシルで自らが座っていた玉座...いや、天井と壁が無いことを除いて、最後の地『玉座の間』と同じになっていた。
引退していった
彼が保有していた最硬の居城『ナザリック地下大墳墓』は存在しない。仲間と築き上げた彼の城は消え去っていた。
鈴木悟は激昂する。
自らの宝を奪った現象を。自らの宝が消えた世界を。自らの仲間達の象徴を地面に突き刺すという愚かさを。
故に、鈴木悟は...いや、モモンガは宣言する。
「プレアデス!セバス!アルベドよ!」
『はっ!』
素晴らしくタイミングの合った返答を感動半ばに彼らを見つめモモンガは叫んだ。
「この嘗め腐った世界に鉄槌を!『アインズ・ウール・ゴウン』の名声をこの世界の虫一匹たりとて既知の物とせよ!!」
『はっ!御心のままに!』
モモンガ達は笑う。
森の中でこれからの世界に希望を抱きながら。
◆◆◆◆◆
菜月昴は平凡だ。
いや、平凡以下だろう。それは肉体的なスペックや頭の良さではない。人としての出来がだ。
何となく始まった引きこもり生活。
菜月昴のそんな日常に1つの終わりが与えられた。
夜、コンビニにてカップラーメンとスナック菓子を購入した菜月昴は、気付けば昼間の異世界に飛ばされていた。
「なんっだ...これ...」
菜月昴は驚愕を隠せない。当たり前だろう。これがごく普遍的で並の感想であるのに間違いはない。
菜月昴は歩み始めた。この異世界を研究するために歩みを進める。
暫くして分かった事がいくつか。
この世界は異世界ファンタジーもの定番の中世設定。獣耳を生やした獣人は
日本の通貨は使えなさそうだ。八百屋のような所でリンゴのような物―――リンガ―――を買おうとしたら、無一文と罵倒された。
菜月昴は纏めた事をぶつぶつと呟きながら路地裏に入る。何の要素もない路地裏に足を運んだ彼は、ある光景を目にした。
それは、黒髪の美少女と、チンピラの言い争いの光景だったのだ。
「ほんっとーに物分かりの悪い方々ですね!私が大金なんて持ってる筈無いじゃないですか!」
「けっ!嘘付いたってそうは行かないぜ!」
「そうだそうだ!紅魔族は代々優秀な魔術師になる...そしてお前も紅魔族!冒険者としてパンパンに稼いだ金を俺たちに寄越しな!」
「くっくっく、魔術師であるお前が、これだけ敵を近付けちまったのは失敗だったなァ!」
菜月昴は目の前に広がる光景を見て悟る。
―――これが、俺の異世界初イベントだ!と!
「おーっと!こんな所に居たのかよ!いやー、こいつ俺の連れでして!すんません!」
菜月昴は笑いながら黒髪の美少女の手を取る。細く繊細で柔らかい手を握りながら、逃げるように去ろうとする。が、チンピラが許す筈もなく昴の目の前に壁になって出てきた。
「逃げられると思ってんのかぁ?」
「てんで弱そうな男が加わっただけか...やっちまえ!」
「いかにもな台詞ご苦労ご苦労!俺のこれからの異世界生活への最初の経験値となって貰うぜ!」
昴が気合いを入れつつ回し蹴りを放つ。すると、顔面に直撃した男がその場に倒れ込んでいった。
「しゃあ!やっぱ俺って異世界では強い設定か!」
喜ぶ昴に、男がナイフを懐から取り出した。
それを見るや否や、昴は硬直してしまう。
暇があれば体を鍛えていた昴も、ナイフ等の刃物は専門外。もしここに美少女が居なければ土下座していてもおかしくない程、昴はビビっていた。
そんな昴にお構い無く、じりじりとチンピラが近付いてくる。
そして、遂にナイフが振り上げられたその時。
「そこまでよ、悪党」
何処からともなく流れる綺麗な声音。
音を頼りに昴が視線を向けてみると。
そこには、銀髪の美少女が凛とした佇まいで立っていたのだった。
次は『この素晴らしい世界に祝福を!』メインの話だと思います。