Re:ゼロから始める素晴らしいオーバーロード!   作:梶本 楓

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リゼロメインの話です。リゼロメインの話なのに、頭のおかしいあの娘が出てるのはご愛嬌です。








2話 路地裏の白と黒

「そこまでよ、悪党」

 

 

 

時が止まる、というのはこういうことだろうか。

路地の入口、さっきまでのチンピラ達と同じように一人の少女が立っている。

 

美しい少女だった。

腰まで届く長い銀色の髪をひとつにまとめ、理知的な瞳が射抜くようにこちらを見据える。柔らかな面差しには美しさと幼さが同居し、どことなく感じさせる高貴さが危うげな魅力すら生み出していた。

 

スバルも、黒髪の少女も、チンピラ達も動くことを止めて、その美少女を眺めていた。

 

「それ以上の狼藉は見過ごせないわ。そこまでよ」

 

威厳や人の心を打ち震わせる何かを持った彼女の姿に声に、スバルはただ驚愕と感動に包まれていた。

 

それはチンピラも同じだったようで、慌てた様子を見せていた。

 

「待て待て待て! 待ってくれ! な、なんだかわからねえが、こいつは見逃す! だから俺たちのことは勘弁して……」

 

ナイフを持つ手を震わせながら、路地を少しずつ後退りしていく男。それを見た銀髪の少女は、困ったような悲しいような顔をする。

 

「潔くて助かるわ。今ならまだ取り返しがつくから、私から盗った物を返して」

 

「だから悪かったって……へ? 盗った物?」

 

 

 

「お願い。あれは大切なものなの。あれ以外のものなら諦めもつくけど、あれだけは絶対にダメ。――今なら、命まで取ろうとは思わないわ」

 

 

 

途中までは懇願のようにも聞こえた。しかし、最後の台詞だけには...明らかな怒気が感じられた。

 

少女の視線は鋭く、差し伸べるように向けられた掌は何も掴んでいない。

しかし、そこに言葉にし難い何かが集まり始めるのを、この場の誰もが感じ取る。

 

そこに割り込むのは、黒髪の美少女だった。

 

 

「あのあのっ!貴女は私たちを助けに来てくれた人なんじゃ...」

 

悲願に満ちた瞳で見つめる黒髪の少女を、銀髪の少女は、チラリと見やった。

 

「……その格好に、深紅の瞳。貴女、紅魔族ね?

優れた魔法使いである筈の紅魔の人が、こんな人達に苦戦するとは思えないし...それにその変な格好の人...仲間割れの途中?三対二なんて感心しないけど……私に関係があるのか聞かれたら、無関係と答えるしかないわ」

 

話をはぐらかされているとでも思ったのか、少女の口調には苛立ちが混じる。

その態度に焦りを覚えたのか、男たちは慌てた素振りで弁明を始めた。

 

「ちょ、ま、待ってくれ! こいつらが目的じゃないなら、俺らは別口だ!盗まれたとかって話なら多分、さっきの女だろ!」

 

「あ、ああ、そうだ。さっきの!壁蹴って屋根伝いに逃げてった!!」

 

「奥だ奥!その向こう!あの勢いなら通りをもう三つは抜けてる!」

 

「だ、誰の事だ...?」

 

弁明の為に壁の向こうを指すチンピラを見ながら、スバルは首を傾げた。状況が把握できて無いのだろう。

 

そしてそれを見た銀髪の少女もまた、困惑の顔で黒髪の少女を見てしまう。思わず頷いてしまった彼女を見た銀髪の少女は「うう...」と不承不承の声を上げた。

 

「な、なら...」

 

と壁の方に向かおうとする銀髪の少女。

 

それ見て安堵したチンピラを見た瞬間、スバルは素早くナイフを持つ男の近くに駆け出した。

 

(何だか分からないけど...落ち込んでるツイン美少女を見て安心したその油断...それこそがお前らの敗因になるって事を教えてやるぜ!)

 

「とあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

全力の回し蹴りによる衝撃は、男の手からナイフを落とさせるには十分だった。

 

そしてすかさずラリアットを咬ましたスバルにより、ナイフの男が仰け反っていった。

 

「はっはっはー!見たか!風呂上りストレッチが可能としたハイキックと、日々の暇な時間を使って鍛え上げたこの筋肉ラリアットだぜ!」

 

ドヤ顔で高らかに宣言したスバルは、最後の一人に向き直る。その間に最初に攻撃した男は、先ほど殴りかかった男を担いでいた。

 

「クソガキ共が!今度あったらタダじゃおかねえぞ!」

 

いかにも三下風の喋りを唱えてから、逃げ去るチンピラ達を見て、スバルは大きく息を吐きながらその場に座り込んだ。

 

「だっはー!死ぬかと思った!いやマジ全然強くねえじゃん俺!」

 

そう叫ぶスバルに、黒髪の少女が近寄っていく。

 

「あの、ありがとうございます...。何か助けて頂きましたね...」

 

頬を染めながら、魔法使いっぽい帽子の鍔を使い顔を隠して礼を言う美少女を見て、スバルのテンションは最高潮に上がっていった。普段ならロリロリしてる子は守備範囲外なのだが、異世界での活躍中上がったテンションから、その辺の意識が薄くなっていたのだ。

 

「なはは!良いって事よ!俺の名はナツキ・スバル!天衣無縫の無一文だ!ヨロシク!」

 

「奇遇ですね!私も無一文なんですよ!」

 

「世知辛いな異世界!」

 

二人でやけに盛り上がっていると、その二人に向けて銀髪の少女の冷たい声が響いた。

 

少女の横には、宙に浮かぶ灰色の猫が居た。

 

「動かないで」

 

「うーん、リア。僕はオススメしないんだけどなぁ」

 

喋る上に宙に浮かぶ猫を見て、スバルの上がっていたテンションは影を潜め出す。そして冷静になって見てみると、何やら銀髪の少女の周りには氷の礫が浮かんでいた。

 

「貴女...精霊使いですか!」

 

「ええ。だとしたら何かしら。アナタ達が知ってる事を全部教えないと許さないんだから」

 

銀髪の少女の瞳には警戒の色が濃い。スバル達が男たちと別口だとは理解していても、その存在が善性であるとは欠片も思っていない、そんな目だ。

 

氷の礫が何個かスバルと黒髪の少女の間を通過する。

 

脅しを掛けた銀髪の少女は、何かを確信した様子でドヤ顔をしているが、黒髪の少女の一声でその顔も崩れた。

 

「あの、貴女も...隙を作ってくれたんですよね?ありがとうございます」

 

まさか、先制攻撃をしてから感謝されると思っていなかった彼女は、困ったように空飛ぶ猫に問い掛ける。

 

「えっ?も、もしかして、本当に只の被害者なの?」

 

「だから言ったじゃないか。早く行かないと見失っちゃうよ。あの犯人の速さからして『風の加護』を持ってる。そうなると面倒だからね」

 

「う、嘘...!本当に時間の無駄だったのね...!」

 

顔面蒼白になっていく銀髪の少女を見て、スバルはクスリと笑ってしまう。

 

先ほどまであんなに威厳のあった少女でも、普通の女の子らしいところが有る所に、そこはかとなく共感を覚えたのだ。

 

本来ならばきっと優しい性格なのだ。

 

本来ならばもっと感謝されるべきだ。

 

自分のやった恩を、感じさせない為にわざと冷たく振る舞いながら過ごす。

 

 

 

それはとても、面倒くさくて損する生き方だ。

 

 

 

「なぁ二人とも」

 

スバルは声を掛ける。この路地裏に居る黒と白に。

 

「良かったら名前を教えてくれないか?」

 

どことなく似た声音の真逆の容姿の二人の少女は、顔を見合わせてから、まず黒髪の少女が前に出た。

 

「我が名は“めぐみん”!紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操る者...!」

 

決まった―――、と言う顔をしためぐみんは、ニヤニヤしたまま一歩後ろに下がった。

 

ちなみにスバルは紅魔族のノリが分からず困惑。もしかして頭の弱い子かな?とまで思う始末だった。

 

そして銀髪の少女は、非常に急ぐ用事があるにも関わらず、足を一歩前に出して名乗る。

 

「サテラ――――――」

 

その名前を聞いて、めぐみんは目を見開き猫は呆れた顔をした。

 

「そうね、サテラとでも呼ぶと良いわ」

 

「趣味が悪いよ...」

 

猫の呟きで、その場に僅かな静寂が流れたのだった。

 

 

 

 

 

 




殆どリゼロは変わらない展開でしたね。

次は『このすば』メインの話だと思います。
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