何だか結構な高評価がついて嬉しい限りです。
これも全てサトシ達とポケモン、そして読者様達のお陰です。
これからもこの小説をよろしくお願いします。
あ、あと今回は自分の欲望とかそういうのが見え隠れしている感じになっちゃいましたw
許してつかぁさい…。
ホウエンリーグ出場を目指し、旅を続けるサトシ達。
最初のジムのあるカナズミシティを目指し旅をしていたサトシ達は、カナズミシティの目の前にある森の中を進んでいた。
最初のジムであるカナズミジムはもう目前である。
「もうすぐカナズミシティだな。久しぶりだし、楽しみだな」
「よーし、ジム戦頑張るぞ!」
「ピッピカチュウ!」
ジム戦を行う予定のサトシは燃え上がっており、ソラトも久々のカナズミシティとジム戦を楽しみにしているようである。
「サトシもお兄ちゃんもジム戦頑張ってね」
「でもその前にサトシはまずアイアンテールを完成させないとね」
「私もジム戦はしないけど何かポケモンゲットしたいかも。アゲハントとか!」
どうやらハルカは先日のポケモンコンテストで目にしたメグミのアゲハントに感化されてしまったようでアゲハントに強い憧れを抱いている様だ。
そしてその憧れから、アゲハントのゲットを目指しているようである。
「アゲハントか。なら丁度良いんじゃないか? この森にはアゲハントの進化前のケムッソが住んでいる筈だからな。俺も旅に出た頃にゲットしようとしてたぜ」
「そうなんだ。じゃあソラトはアゲハント持ってるの?」
「いや、その時のゲットは失敗してな…まぁ代わりに当時キノココだったキノコをゲットできたんだけどな」
「へぇ、お兄ちゃんでも失敗した事あるのね」
「そりゃそうだろ。俺だって旅に出たての頃は失敗ばかりだったし、今でも失敗はするモンだ」
ハルカ的には頼れる兄貴分であり、バトルも家事も何でもできるソラトが失敗をするというイメージが浮かばないらしい。
だがそんな完璧なイメージを苦笑しながら否定するソラト。
そこからソラトの失敗話へと話が移行していった…バトルで負けた事、ゲットに失敗した事、料理に失敗して黒い炭を食べた事、ポケモンフーズの調合に失敗してポケモンを怒らせてしまった事等の様々な失敗談をソラトは思い出の様に語った。
「やっぱりソラトは5年も旅してただけあって凄く沢山の経験があるんだね」
「俺も旅をして色々経験したなぁ…昔は俺もライバルのシゲルに失敗した事馬鹿にされてたっけ…」
「ピィカ」
サトシは同郷のライバル、シゲルの事を思い出す。
シゲルとは旅に出る前から様々な事で勝負をしたライバルだったのだ。
まぁ勝負についてはサトシは負け越してしまっているのだが、シロガネ大会でリベンジをしたと言ってもいいだろう。
「へぇ、サトシのライバルか。どんなヤツなんだ?」
「スッゲー強いんだぜ! それにオーキド博士の孫だから小さい頃からポケモンに触れてるし、本人もポケモン研究家を目指して勉強してるんだぜ」
「へぇー、オーキド博士の孫なんだ! 僕も会いたくなっちゃったな!」
マサトはオーキド博士の事を尊敬しているので、その孫であるシゲルにも会いたくなってしまったようだ。
「そうだ、ソラトは旅の中でライバルはできなかったのか? ソラトのライバルならすっげー強そうなヤツがいそうだぜ!」
「ああ、いるぞ。色んな地方を巡ってきたから、それなりにな」
「くぅ~、やっぱそうなんだ! 俺もいつかその人達とバトルしてみたいぜ!」
「ピカピカ!」
まだ見ぬ強者を妄想して勝手にやる気を湧き上がらせるサトシを見てソラト達は苦笑しつつ若干引いていた。
そんな燃え上がっているサトシを他所に、突然ハルカの目の前にスルリと上から降りてくるようにして野生のポケモンが現れた!
「ケム?」
「え? ひゃあああああああっ!?」
驚いたハルカは体を飛び跳ねさせて後ずさる。
ハルカの目の前に現れたの赤いトゲトゲした体が特徴的なむしポケモン、ケムッソだった。
噂をすればなんとやらである。
「お姉ちゃん! それがケムッソだよ!」
「び、びっくりした…これがケムッソなのね」
『ケムッソ いもむしポケモン
木の枝にくっついて葉っぱを食べる。口から出す糸は空気に触れるとネバネバになり、敵の動きを鈍らせる。』
いもむしポケモンというだけあってウネウネ動き、苦手な人が見れば一発アウトのような見た目をしているが、顔をよく見ればまん丸な黒い大きな瞳と口には愛嬌がある。
この愛嬌は、ハルカは決して嫌いではなかった。
「この子、よく見たら凄い可愛いかも!」
「ああ、いい顔してるぜコイツ。俺も始めてゲットしたポケモンはむしタイプのキャタピーだったからな」
「むしタイプは初心者にオススメだぜ。進化前はあまり強くないけど、進化するスピードが早いからな」
「よーし、ゲットしちゃうわよ!」
ケムッソを見つけたハルカは意気揚々とゲットしに行くが、ケムッソはそんなハルカの事などお構いなしに草むらへと入っていく。
「あーっ、ケムッソ待ってー!」
「お姉ちゃん!」
「あ、おいハルカ!」
1人で勝手にケムッソを追いかけるハルカの背中を追い、サトシ達も草むらを掻き分けて走り出した。
どんどん森の奥へ進んでいくハルカだが、草木が邪魔になってケムッソが視界から居なくなってしまった。
立ち止まって一度周囲を見渡して見るが、やはりケムッソの姿は無かった。
「あーあ、見失っちゃったかも」
「ハルカー!」
「待ってよお姉ちゃん!」
「ピッカッチュウ」
「ケムッソ見失っちゃった…」
余程ケムッソをゲットしたかったハルカは、コンテストに参加できなかった時と同じようにガックリと項垂れてしまった。
その様子を見て慰めるようにソラトはハルカの頭を撫でた。
「よっぽどメグミさんのアゲハントを見て気に入ったんだな。なら諦めないで探してくるといい。さっきの奴以外にもケムッソはいるからな」
「うん! そうよね、1回で諦めちゃダメだよね! じゃあ私、この近くをぐるっと回って探して見るわ!」
「分かった、じゃあ俺達も一緒に―」
「待てサトシ。ここはハルカだけで行かせてやろう」
「え? 何でだよソラト」
皆で一緒に探した方が見つかる可能性は高い筈なのにソラトはその案を否定してハルカだけを行かせると言った。
真意を測りかねてサトシは首を捻る。
「1人でポケモンをゲットするのはトレーナーとしていい経験になる。その為にも今回はハルカだけで行ってみるものいいんじゃないかと思ってな」
「そっか…そうだな! ハルカ、頑張れよ!」
「うん! 絶対ケムッソをゲットするかも!」
「お姉ちゃん、僕らはこの辺りで休憩してるからねー! 気をつけてねー!」
こうしてハルカはケムッソゲットを目指して森の奥へと進んでいった。
サトシ達は近くにあった開けた場所を休憩場所として休むことにした。
ハルカは草むらを掻き分け、枝を折り先へ先へと進んでいく。
森の中では比較的目立つ赤色の体毛のケムッソは注意していれば必ず見つかる筈だと信じて。
そんなハルカ達を見つめている3つの視線が…。
と言うのも何時もの通りロケット団の3人組、ムサシ、コジロウ、ニャースである。
「なるほど、この森にはケムッソがいるのか」
「いいんじゃない? ケムッソをゲットしてアゲハントに進化させればポケモンコンテストで優勝しまくり! リボン独り占めよ!」
「でもってコンテストで優勝したアゲハントを献上すれば心も和んでこれまでのミスも帳消しだニャ!」
「よーし、早速ケムッソをゲットするのよ!」
「「おー!」」
「ソーナンス!」
どうやらロケット団にしては珍しく他人のポケモンを奪ったりするのではなく野生のポケモンを狙ってゲットする作戦のようである。
こうして保護区外の野生のポケモンをゲットするのであれば大して文句も出ない…事も無いのだろう。
ゲットされても悪用されるのではサトシ達やジュンサーさんに邪魔されるだろう…。
そんなこんなでロケット団も行動を開始した頃、ハルカは森の中を歩き回りケムッソを探すが、今のところ見つかってはいなかった。
「ケムッソー! ケムッソどこなのー!? 全然見つからないかも…ああ! わぁ~!」
「「「「バナバナバ~ナ。バナバナバ~ナ」」」」
ケムッソを探していた筈のハルカだったが、森の中で見つけた小さな花畑で輪を作って踊っているキレイハナ達を発見した。
可愛らしいポケモンの可愛らしいダンスに目を輝かせるハルカだが、本来の目的を完全に忘れていた。
「ケムッソー! ケムッソー! ケムッソちゃーん! 出ておいでー!」
一方此方はロケット団。
闇雲に叫びながらあちこち探すムサシに対し、コジロウは冷静に周囲を観察していた。
そして良さ気な木を見つけた。
「おっ、よっと。ほっと」
「何やってるニャコジロウ?」
「ああ、こんな木ならポケモンがいるんじゃないかと思ってさ」
コジロウはその良さ気な木を片手で抑えて軽く力を入れながら揺らして見る。
慎重なコジロウらしい動きだが、ムサシはそんなチンタラしていられる性格では勿論ない。
「ダメダメ、そういう事はもっと派手にやんないと意味が無いのよ。ほらほら出て来いケムッソォオオオオ!」
ムサシ必殺のメガトンキックが木に炸裂すると木どころか地面が大きく揺れて周囲に振動を与えた。
ボトンと落ちてきたのはケムッソではなく、何となくは似ているが全然違うポケモンだった。
「お、何か落ちてきたぞ」
「こりゃビードルだニャ」
「やっぱりそうよ! この木にはポケモンがいるんだわ! オルァアアアアア!」
ポケモンが出てきた事に調子を良くしたムサシは連続で木に蹴りを叩き込んでいく。
今度落ちてきたのはさなぎポケモンのコクーンだった。
「今度はコクーンだニャ」
「このこの! この、この! もっと出てきなさい!」
ゲシゲシと木を蹴り続けるムサシに対して、何か頭の中で引っかかるコジロウはうーんと唸りながら考え事をしていた。
「なぁ、ビードルの進化系ってコクーンだったよな」
「そうだニャ」
「で、コクーンの進化系は…」
「「あっ」」
「「「スピッ!!」」」
「「「スピアー!?」」」
コクーンの進化系はスピアーであると気がついたときには時すでに遅し。
進化前の仲間を攻撃されたと思ったスピアー達に囲まれてしまったロケット団は、脱兎のごとく逃げ出した。
そしてその向かう先にはキレイハナを見つめるハルカが居た。
「見事なダンスね~。なんだか見とれちゃうかも」
「「「ギャー!!」」」」
「ん? あれはロケット団!?」
「ちょっと邪魔邪魔ー!」
「どいたどいたー!」
「怪我しても知らないニャー!」
「え!? なになに!? きゃぁああああっ!」
スピアーの大群に追いかけられるロケット団と鉢合わせてしまったハルカは状況が把握しきれないが、とりあえずスピアーの大群から逃げるためにロケット団と一緒になって走り出した。
4人は全速力で走って逃げるがスピアー達の速度は速く、このままでは追いつかれる!と思ったその瞬間4人は1メートルほどの段差に気づかずガクッと落ちてしまう。
「「「「わぁああああっ!?」」」」
「スピッ、スピスピッ!」
段差から落ちた4人はスピアー達から見れば突然消えたように見えたせいで見失ってしまう。
スピアー達は何グループかに分かれると森の中へ飛び去っていった。
「「「あぁ~、助かった~」」」
「もう、何なのよ!」
「もう、何なのよ! と聞かれたら」
「答えてあげるが世の情け」
「あっ、見つけた! 待ってケムッソ!」
何時もの口上を言おうとしたロケット団であったが、ハルカは目の前をモゾモゾ移動しているケムッソを発見すると、口上そっちのけでケムッソを追いかけていった。
因みにハルカは状況に対して何なのよ!と声を出したがロケット団には何も聞いていない。
閑話休題。
「こらー! 最後まで聞きなさいよー!」
「そうだそうだ! 俺達の口上は心が篭ってるんだぞ!」
「そんなこと言ってる場合じゃニャいニャ。ニャーたちも追うのニャ!」
「「そういやそうだ!」」」
森の中の獣道を進むケムッソだが、それほどスピードは速くは無い。
ハルカはすぐにケムッソに追いつきモンスターボールを構えた。
「ケムッソ、あなたを絶対ゲットするわ! 頼むわよ、アチャモ!」
「チャモチャモ!」
アチャモを繰り出しバトルの体勢に入るハルカだったが、そこへロケット団が追いついてしまった。
「させないわよ! 行けハブネーク!」
「ハッププー!」
「チャー!?」
ハブネークを見た臆病なアチャモは驚いてしまい、大声を上げて身を硬くする。
というかそもそもバトルへの乱入は厳禁であるが…ロケット団には今更だろう。
「ちょっと待ってよ! あのケムッソは私が先に見つけたのよ!」
「フン、それがどうしたのかな?」
「どうしたのかなって…ゲットする権利は私にあるでしょ!」
「アンタの権利はアタシの権利。アタシの権利はアタシの権利なの。だからこのケムッソをゲットするのはこのアタシなの!」
酷いジャイアニズムを見た。
だがそれで納得する人間などどこにも居るはずがない。
「なんですって!」
「ハブネーク、ケムッソにポイズンテール!」
「そうはいくもんですか! アチャモ、ハブネークの動きを封じるのよ!」
「チャモ! チャモチャモチャモチャモチャモ!」
攻撃に入ろうとしたハブネークの周囲をウロチョロと動き回ってハブネークの妨害をするアチャモ。
狙い通りハブネークは微妙に動けず技を出し損ねてしまう。
「こら邪魔だニャ!」
「こうなったらアチャモを先に片付けるのよ!」
「おう! 行けサボネア、ミサイルばりだ!」
「ハブネーク、ポイズンテール!」
「チャモー!?」
「アチャモ!」
ハルカのアチャモが邪魔になると見るや否やハブネークとサボネアの2体がかりで攻撃を仕掛けるロケット団。
アチャモはその場から動けずにおり、このままでは攻撃はクリーンヒットしてしまう。
だがそこへ巨大な影がハルカの横を凄まじい速度で通過し、ハブネークとサボネアを吹き飛ばした。
「ハブッ!?」
「サボネッ!?」
「えっ!? このポケモンは…?」
ハルカを守るようにロケット団の前に立ち塞がったポケモンは、水色の大きな体に赤い翼が特徴的なドラゴンポケモン、ボーマンダだった。
「な、なによこのポケモンは…!?」
「こ、こいつはボーマンダだ…かなり強いポケモンだぞ」
「んー、初心者っぽい女の子に2対1で勝負するなんて、お姉さんちょっと卑怯だと思うんだ~」
そこへ妙に余裕たっぷりの聞きなれない声が響く。
声の正体はハルカの後ろに現れた、灰色の古めかしいフード付きの外套を纏った短い黒髪の女性だった。
その女性に足には、渦のように足に巻きついた不思議なアンクレットが装着されていた。
どうやら彼女がボーマンダのトレーナーの様である。
「何よ! 卑怯は私らのトレードマークなのよ! ハブネーク、あいつをやっつけなさい!」
「サボネア、お前もだ!」
「ハッブ!」
「サーボネ!」
「ふっふ~ん、そいじゃドラゴンクローいってみようか!」
「グルァ」
「ハプッ!?」
「サボボッ!?」
ボーマンダはドラゴンクローを発動させて軽く腕を払うと、ハブネークとサボネアは軽々と弾き返されてしまい、ロケット団を巻き込んで吹き飛んだ。
「「「ギャーッ!? ヤなカンジー!?」」」
キラーン☆と今日はいつもより早く星になって消えていったロケット団を見送ると、ハルカは本来の目的を思い出した。
「あっ、そうだケムッソは!?」
「大丈夫だよ可愛いお嬢ちゃん。ほらこれ」
謎のボーマンダ使いのトレーナーが背中を見せると、彼女の背中の外套にケムッソが引っ付いていた。
「あっ、さっきのケムッソ!」
「さっき逃げようとしてたから一応確保して背負っておいたんだー。この子ゲットするの?」
「はい! あ、それと助けてくれてありがとうございます!」
「いいよいいよー。新人さんには優しくしてあげないとねー。ほら、ゲットするためにはバトルしなきゃね」
謎の女性トレーナーは背中からケムッソを降ろすとボーマンダの傍に行きハルカの様子を見守る事にした。
ハルカも再びアチャモと共にバトルの体勢に入る。
「アチャモ、ケムッソをゲットするのよ! つつく攻撃!」
「チャモチャモー!」
「ケム? ケーム!?」
「よーし、行けモンスターボール!」
ひこうタイプのつつく攻撃を受けたケムッソは大きく吹き飛んで地面に倒れた。
それをゲットのチャンスと捉え、ハルカはモンスターボールを投げつけた!
ボールは見事にケムッソに命中し、ケムッソをボールの中へと納めるが最後の抵抗とばかりにケムッソはボールを大きく揺らす。
するとダメージが足りなかったのかモンスターボールの中からケムッソが出てきてしまい、ゲットが失敗してしまう。
「ええっ!? そんな!?」
「うーん、ダメージが足りなかったみたいだね。まだまだ頑張れお譲ちゃん!」
お気楽そうな声で、一応応援してくれる謎の女性トレーナーの言葉を受けて追撃に入るために指示を出そうするるハルカだが、その前にケムッソが動き出した。
「ケームー!」
「チャモー!」
ケムッソのたいあたりが決まり、アチャモは吹き飛ばされて地面を転がってしまう。
「負けないでアチャモ! 今度はひのこよ!」
「チャモ! チャーモー!」
「ケムムムッ!?」
負けじと立ち上がったアチャモは今度は口から炎の弾丸を放ちケムッソに浴びせる。
ひのこを受けてまたもこうかはばつぐんで大ダメージを受けたケムッソはその場に倒れて動けなくなってしまった。
「よーし今度こそ! お願い、モンスターボール!」
もう1度モンスターボールを投げてケムッソに当てると、モンスターボールに吸い込まれたケムッソはまたしても最後の抵抗をする。
だが先ほどより揺れが小さく、数秒でポンと音を立ててゲットが完了した。
「ちゃんと入ったかな? もう出てこないかしら?」
「大丈夫、ゲット成功だよん」
「やったー! ケムッソ、ゲットかも!」
モンスターボールを掲げて初ゲットの喜びに浸るハルカ。
目標のアゲハントへの第一歩が余程嬉しいのか、モンスターボールを大事そうに抱えて飛び跳ねていた。
「あの、ありがとうございます。助けて貰った上にケムッソも逃げないようにしてくれるなんて…」
「いやいや~、そんな大した事はしてないよん」
「私、ハルカっていいます」
「私はヒガナっていうんだー。ハルカちゃんはケムッソをゲットしにこの森へ?」
「はい。それと、仲間と一緒にこの先のカナズミシティを目指してるんです。ヒガナさんは何でこの森に?」
「にゃはは。私は友達を探してるんだ。ずーっと旅に出てたんだけど最近ようやくホウエンに帰ってきたみたいだからちょっと顔を見に行こうと思っててね」
ヒガナと名乗ったボーマンダ使いのトレーナーは掴みどころのなさそうな態度だが、ハルカには友達想いの良い人に見えていた。
「そうだ、さっきのやつ等みたいなのがまた出るかもだし、ハルカちゃんの友達の所まで送っていってあげようか」
「いいんですか? じゃあお願いします!」
「じゃ、ボーマンダの背中に乗って、しっかり捕まっててね!」
こうしてハルカは無事にケムッソをゲットし、ヒガナのボーマンダの背に乗せてソラト達の元へと戻る事になった。
一方のソラト達は昼食のシチューを食べていた。
「もぐもぐ…お姉ちゃんちゃんとケムッソをゲットできたかな?」
「なーに、ハルカだってここまで結構バトルしてきてるしちゃんとゲットできてるさ!」
「ピッピカチュウ!」
「だな。ハルカが心配なのは分かるけど、ここは信じてやろうぜ」
「べ、別に心配なんかしてないよ! ただお姉ちゃんってちょーっと抜けてるからさ」
「それを心配って言うんじゃねーかな…ん?」
談笑しながら食事を進めていくサトシ達に、突如大きな影が差す。
空を見上げれば大きな体のポケモンであるボーマンダが空を羽ばたいており、サトシ達の上で停止している。
「な、何だあのポケモンは!?」
「あれはボーマンダだよ!」
「ボーマンダ!?」
『ボーマンダ ドラゴンポケモン
タツベイの最終進化系。翼が欲しいと強く思い続けてきた結果、細胞が突然変異を起こし見事な翼が生えたという。』
ボーマンダの背中には誰かが乗っているように見えるが、3人の位置から顔は確認できないため3人は立ち上がってボーマンダを警戒しつつ見つめていた。
そしてボーマンダは翼を羽ばたかせて高度を落とすと着地した。
ボーマンダの背中からひょこっと顔を出したのは見慣れたハルカと、見知らぬ女性だった。
「ハルカ!」
「お姉ちゃん! これってどういう事!?」
「サトシ、マサト、お兄ちゃん! 実はケムッソを探してたらロケット団と鉢合わせてケムッソを横取りされそうになったんだけど…この人に助けてもらったの!」
ハルカはヒガナを紹介するが、当のヒガナは驚いたような表情をしており、またソラトも気まずそうな顔をして向かい合っていた。
「お兄ちゃん、ヒガナさん? 2人ともどうしたの?」
「あー…久しぶりだな、ヒガナ」
「………ィヤッホォオオウ! ひっさしぶりだねソラトー!」
「うわーっととと!? バカ! 離れろヒガナ!」
硬直していたヒガナは、表情を驚きから輝くような笑顔にするとソラトに向かってジャンプして抱きついた。
ソラトはしがみ付くヒガナを振りほどこうとするが、ヒガナはよほどの力で抱きついているためか引き剥がせずにいた。
突然のヒガナの奇行に唖然として何も言えなかったサトシとハルカとマサトだったが、ハルカがいち早く復活してヒガナを引き剥がしに掛かった。
「ちょ、ちょっとヒガナさん! お兄ちゃんから離れて下さい!」
「お兄ちゃん? あれ、ソラトって妹いたんだっけ?」
「いいからまず離れろって! 色々当たってんだよ!」
「ンフフフフ、当ててんのよ?」
「黙ってろバカ!」
「もー! とにかく一旦離れて欲しいかもー!」
ゴチャゴチャドタバタしているソラト達が大人しくなるまで、サトシとマサトは口をあけてそれを見続けるしかなかった…。
5分ほどしてようやく落ち着いたソラトとヒガナとハルカだったが、場には妙なピリッとした雰囲気が流れていた。
「いや~、申し訳ない、ひっさしぶりにソラトに会ったから抑えが効かなくってね。私はヒガナ、ソラトのライバルだよん。よろしくね」
「俺はサトシです」
「僕はマサト!」
「で、ハルカちゃんだね。いや~、ソラトにこんな可愛い妹がいたなんて知らなかったな~」
「別に本当の兄妹ってワケじゃないさ。妹分って事だよ」
話を整理すると、どうやらソラトとヒガナは5年前からの知り合いであり、お互いに認め合うライバルであるようだ。
ただ、先ほどヒガナがソラトに抱きついたのは唯の友人やライバル等とは違うようにも思えるが…。
「ヒガナさんがさっき言ってた友達って、お兄ちゃんの事だったんですね」
「まぁね。ソラトがホウエンを離れた5年前からそれっきりでさ~。もうソラト冷たいと思うよ? もうちょっと連絡くれてもバチは当たらないと思うんだけど」
「それについては悪かったよ。でも態々会いに来るって俺に何か用でもあったのか?」
ソラトが態々自分に会いに来た理由を聞くと、ヒガナは立ち上がってボーマンダの頭を撫でて不敵な笑みを浮かべた。
「ソラト、ポケモンバトルしよ!」
「はぁ? 何だよ急に」
「ほら、5年前は私が負けちゃったけど今じゃ負けないって事を証明しに来たの! さぁさぁ、勝負勝負!」
「なんだ、まだあの勝負の事根に持ってたのか?」
「そりゃね! さぁ始めよう!」
どうやら2人の間には5年前にできた因縁があるらしく、2人の間でのみトントンと話が進んでいく。
当然サトシ達は頭に疑問符を浮かべる。
そしてハルカだけはどこか面白く無さそうな表情で2人を見ていた。
「ねぇねぇ、5年前に何かあったの?」
「あぁ、ヒガナとは5年前に流星の滝って場所で出会って親しくなってな。んでオヤジの事を聞いたら知ってるって言うから教えてもらおうと思ったんだが…」
「タダで教えても面白くないからね~。交換条件出してみたんだ」
「交換条件って、どんな条件なんですか?」
「ンフフ、1対1でポケモンバトルしてソラトが勝ったらアラシさんの事を教えてあげるって言ったの。んで私が勝ったら……」
ヒガナは不敵な笑みと言うか、少しだけ挑発するような笑みでハルカを見ると言葉を続けた。
「私のお婿さんになって貰うって言ったの」
「「「ええぇえええええええっ!?」」」
まさかの爆弾発言である。
5年前というとソラトはポケモンを手に入れて旅に出たばかりなので10歳である。
ヒガナも年の頃はソラトと同じくらいに見えるがまさかこんな約束をしていたとは思わず、サトシもハルカもマサトも大声で驚いた。
「まぁ俺が勝ったからオヤジの事教えてもらって終わったけどな。後は5年前のホウエンリーグでもバトルしたな。その時も俺の勝ちだったな」
「そうなんだよねー。だからリベンジマッチって事で! 私も修行してたんだから昔のままだと思わないでよ?」
「いいけど、今回は交換条件はナシな」
「オッケー!」
ソラトとヒガナは広場で向かい合いソラトはモンスターボールを構え、ヒガナはボーマンダを前に出した。
その様子をサトシはワクワクしているような様子で、そしてハルカは不安かつ不満そうな表情でバトルを見守っていた。
「行くぜヒガナ! サジン、バトルの時間だ!」
「フーラッ! フラフラ~」
ボールから放たれたサジンは甘えるようにしてソラトへと頬ずりをする。
「分かった分かった…ほら、久しぶりにヒガナとバトルするぞ」
「フラ? フラッ!」
「それじゃよろしくねボーマンダ!」
「グァウ!」
「サトシ、悪いが合図を頼む」
「ああ、使用ポケモンは1体! それじゃバトル開始!」
サトシの合図でバトルが始まると、サジンとボーマンダ両者は翼を羽ばたかせて空へと飛びあがった。
両者ともドラゴンタイプのポケモンのため、空中を羽ばたき立体的な移動をする。
「ボーマンダ、かえんほうしゃ!」
「サジン、りゅうのいぶき!」
「グゥウウアッ!」
「フーラッ!」
灼熱の炎と竜のエネルギー波がぶつかり合い空中で激しい爆発を起こして相殺された。
「「ドラゴンクロー!!」」
今度は両者ともドラゴンクローを使い接近戦へと持ち込んだ。
緑の巨大な爪がぶつかり合い、ガキィンと音を立てて空気を振るわせる。
ここまでは両者互角のいい戦いが続いているが、ヒガナはニッと笑ってボーマンダに指示を出した。
「ボーマンダ、はかいこうせん!」
「グルァッ!」
「かわせ!」
ボーマンダは急速上昇をしてサジンの上を取ると、強力な特殊技であるはかいこうせんを放った。
だがサジンはソラトの指示通り素早く羽ばたきはかいこうせんを回避した。
そしてボーマンダは空中で静止している。はかいこうせんを放った後は反動で動けなくなってしまったのだ。
「焦ったなヒガナ! サジン、ドラゴンクロー!」
「フラァッ!」
動けないのをチャンスと見てソラトはドラゴンクローで一気に攻め立てた。
反動により動けないボーマンダは当然ドラゴンクローを避ける事も防ぐ事もできずまともに受けてしまい大きなダメージを受けてしまう。
「やった! ドラゴンタイプにドラゴンタイプの技はこうかはばつぐんだよ!」
「おー! いいぞサジン! 頑張れ!」
「ピカピーカ!」
「お兄ちゃん、サジン! 頑張ってー!」
ドラゴンクローをまともに受けたボーマンダだったが、ギロリと鋭い目でサジンを睨むと反動が解けたのか大きく翼を広げて反撃の体勢に入る。
「何っ!?」
「そっちこそ勝負を急いだんじゃないかな? パワーならボーマンダの方が上だよ! そのまますてみタックル!」
ドラゴンクローを放ち、ボーマンダに接近していたサジンはそれを回避することはできず、すてみタックルの直撃を受けてしまう。
すてみタックルを放ったボーマンダはサジンを巻き込みながら地面に叩き落すつもりらしい。
地面にたたき付ければ更なるダメージを狙うことができるのだ。
「いっけぇっ!」
テンションが上がってきたヒガナの言葉と共にボーマンダのすてみタックルはサジンごと地面に叩き落してしまった。
あまりの衝撃にもうもうと立ちこむ土煙に周囲がまるで見えなくなってしまった。
「今のすてみタックル、凄いパワーだぜ…」
「お兄ちゃん…!」
近くで見ていたサトシ達にも凄まじい衝撃が伝わってきた。
ハルカは心配そうにソラトを見つめ、祈るようにして両手を前で組んだ。
「どう? 私のボーマンダ、凄く強くなってるでしょ?」
「ああ、パワーもスピードも技のキレも5年前とはまるで比べ物にならないな…だが…」
立ち込める土煙が晴れてくると共に、ソラトは不利だと思われる状況にも関わらずいつもの不敵な笑みを浮かべた。
「ソイツは俺も同じだぜ、ヒガナ!」
「っ!?」
土煙が晴れると地面に叩きつけられていたのはボーマンダだけであり、サジンの姿はどこにも無かった。
代わりにあるのはフライゴンであるサジンが入ることができそうなほどの大きさの地面の穴だった。
「しまった! あなをほる!?」
「叩きつけられる直前にな。行けサジン!」
「空中に逃げてボーマンダ!」
「もう遅い!」
すてみタックルは自分自身にもダメージが返ってくる諸刃の技であり、反動のダメージを受けていたボーマンダは痛みですぐには動くことができなかった。
その隙を突いて地面からボーマンダを突き上げるようにサジンが姿を現し、ボーマンダを吹き飛ばした。
「ボーマンダ!」
「トドメだサジン! りゅうのいぶき!」
「フーラァアアアアッ!」
空中に打ち上げられたボーマンダを狙い、りゅうのいぶきが放たれると見事に直撃した。
そのまま地面に落ちてしまったボーマンダは戦闘不能になり、バトルは決着を見せた。
「俺の勝ちだな」
「そうみたいだね。ボーマンダありがとう、ゆっくり休んでね」
「やっぱりソラトは強ェな! あの状態から逆転するなんてさ!」
「そりゃお兄ちゃんだもの、当然よ!」
「よく言うよ、お姉ちゃんが1番心配してた癖に」
「あはははは! まぁ私もまだまだ修行が足りないって事だね!」
バトルが終われば皆仲良し。
これがポケモンバトルの極意であり真意なのかもしれない。
「それじゃ、私はもう行くね」
「ああ、久しぶりに会えて良かった」
日も傾き夕焼けが差す頃、ヒガナは回復させたボーマンダの背中に乗り再び羽ばたこうとしていた。
「ソラト、私、これから多分このホウエンに…ううん、世界に風を起こすと思う。その時、ソラトは私をどう思うかな?」
「…さァな。その時にならないと分からないが…まぁ事が起きるまでは止めはしないさ。頑張れよ」
「うん、ありがと!」
そのまま飛び立ち分かれるかと思ったが、直前にヒガナは何かを思い出したようでニヤニヤと笑いながらハルカに耳打ちをする。
「フフ、ハルカちゃん、私達ってそっち方面のライバルなのかな? ソラトは渡さないよん?」
「えっ、あ、えっと……私も負けないかも!」
「んじゃ、また会うときまでハンデあげるよん。そいじゃ頑張ってね!」
そう言い放つと同時にボーマンダが翼を羽ばたかせ、ヒガナは夕暮れの空へと飛んでいってしまった。
「ハルカ、ヒガナに最後何を言われたんだ?」
「…お兄ちゃんには秘密かも! それじゃ、カナズミシティ目指してしゅっぱーつ!」
「あ、おいハルカ!」
「待ってよお姉ちゃーん!」
「おいおい! まずは俺のジム戦だからな!」
「ピカピーカ!」
昔のライバルと再会したソラト、そして新たな恋のライバルを得たハルカ。
これから2人の関係はどうなっていくのだろうか。
さぁ、最初のジムのあるカナズミシティは、もう目の前だ!
to be continued...
というワケでゲームの方からヒガナ参戦です。
この小説としてはヒガナはソラトと同じ15歳設定なのであしからずご了承下さい。
ハルカもケムッソゲットでイイカンジー。
次回はカナズミジム編になりますのでよろしくお願いします。