ポケットモンスター-黒衣の先導者-   作:ウォセ

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遅くなりましたぁああああ!

いや、ちょっと執筆の時間が取れなくて…あと疲れててちょっと筆が進まなくて…申し訳ない!

というわけでカナズミジムです。やっとこさ1つ目のバッジですよ。

先は長いですなぁ…


ジムリーダーは優等生 岩の洗礼カナズミジム

ホウエンリーグ出場を目指すサトシ達は、とうとう1番目のジムがあるカナズミシティへ辿り着いた。

現在は街のポケモンセンターでポケモンリーグへの登録手続きと、ジム戦前の休息を取っていた。

サトシはマサトと一緒にカナズミシティの地図を見ており、ハルカはケムッソにポケモンフーズを与えている。

そしてソラトは、クロガネの鋼鉄の鎧を磨いてやっていた。

 

「しっかし大きな街だな。ポケモンセンターも大きいし」

 

「カナズミシティはキンセツシティやミナモシティと並んでホウエンが誇る大都市の1つだからね。施設も色々あるんだよ。僕のイチオシはポケモントレーナーズスクールだよ!」

 

「ポケモントレーナーズスクール? 何だそれ?」

 

「ピィカ?」

 

「ポケモンの事を色々学べる専門の学校だな。他には大企業のデボンコーポレーションやポケモン協会のホウエン支部があるぞ」

 

ソラトはクロガネの鎧を磨きながらサトシの質問に答えた。

それはそうと大きな体のボスゴドラであるクロガネの鎧を磨くのは、流石にソラトも大変なようで汗をかきながらキュッキュッと磨いていた。

 

「ポケモン協会?」

 

「サトシってばそんな事も知らないの? ポケモン協会って言うのは……何だっけ?」

 

「「「だぁー!?」」」

 

ポケモン協会という聞き慣れない単語に再び頭に疑問符を浮かべるサトシだが、ハルカが得意気な顔で解説をしようとする。

しかしド忘れをしてしまったようで可愛らしく舌をペロリと出して誤魔化した。

思わずサトシとマサトとソラトはずっこけてしまう。

 

「ポ、ポケモン協会は世界各地にあるポケモン関連の施設の運営や維持をしてる組織の事だよ。このポケモンセンターもポケモン協会が運営してるんだ」

 

「あー、そうだったわね」

 

「それより、まずジム戦だぜ! 休憩もしたし、カナズミジムに行こうぜ!」

 

「ピカチュウ!」

 

バトルが楽しみで楽しみで仕方ないのか、今にもジムに向かって飛び出していきそうなサトシだが、マサトは少し不満そうな表情をする。

 

「えー、僕トレーナーズスクールを見学したいのに…」

 

「でもカナズミシティにはジム戦に来たんだぜ。早くジム戦をしたいんだよ」

 

確かにこの旅はサトシとソラトのホウエンリーグ出場の旅である。

その為にジム戦をするのは当然の流れであるが、マサトはマサトでやってみたい事があるのだ。

 

「サトシ、ソラトお願い! 先にちょっとだけトレーナーズスクールを見学させてよ!」

 

「えぇ…でも…」

 

渋るサトシの肩にソラトがポンと手を置いた。

 

「大丈夫だよサトシ。5年前もジムとトレーナーズスクールは隣にあったから、見学が終わればすぐにジム戦ができる筈だ」

 

「んー…まぁそれならいっか。それじゃジムとトレーナーズスクールに行くぜ!」

 

「「おー!」」

 

こうしてポケモンセンターから、まずはトレーナーズスクールへと向かったサトシ達。

大きな道を進み、地図を辿りながらカナズミジムとトレーナーズスクールがある筈の道へとやって来た。

しかし…

 

「あれ? 大きいけど、建物が1つしかないぞ?」

 

サトシの言うとおり学校のような大きな建物はあるが、ジムのような建物は見当たらなかった。

 

「あれ、おかしいな…5年前は2つの施設が隣接してたのに…」

 

「でもジムが無くなったって話は聞いた事ないし……まぁとりあえずトレーナーズスクールを見学させて貰おうよ!」

 

「えぇ、でも…」

 

「まぁまぁサトシ、トレーナーズスクールの人に話を聞けばジムがどこにあるのかも分かるだろうし、ここは一旦行ってみようぜ」

 

「そうそう、闇雲に探しても意味無いかも!」

 

「うーん…まぁそうだな」

 

どうやらソラトが以前来た時と少し様子が違う様である。

しかしここでこのまま立ち止まっていても仕方が無いので、サトシ達はトレーナーズスクールの建物へと入って行った。

建物に入ると受付の女性職員がすぐに声を掻けてきた。

 

「ようこそ、ポケモントレーナーズスクールへ。何か御用ですか?」

 

「僕、トレーナーズスクールの見学をしたいんです!」

 

「畏まりました、お手続きをしますのでしばらくお待ち下さい」

 

女性職員はパソコンを操作して見学の手続きを行っている。

その間にソラトはジムの事を聞いてみる事にした。

 

「あの、昔はここの隣にカナズミジムがあったと思うんですが、今はどこにあるんですか?」

 

「ジムですか? それならここですよ」

 

「え?」

 

「3年ほど前に、ジムとトレーナーズスクールの建物を合併させたんです。ここの生徒達にジム戦を見せた方がより様々な事を学べるだろうと」

 

「そうだったんですか」

 

どうやらジムとトレーナーズスクールは同じ建物内にあるらしい。

 

「そうだったんだ! よーし、だったらジム戦もやってやるぜ!」

 

「ジム戦もご希望ですか?」

 

「はい、俺とこっちのサトシがジム戦をやりに来たんです」

 

「畏まりました。そちらも手続きをしておきますね」

 

こうしてサトシとソラトのジム戦の手続きも行われる事になった。

5分も待っていると、トレーナーズスクールの見学のための首から提げるパスポートを受け取り、それぞれ身につけた。

 

「そのパスポートが見学のための身分証になります。それからお二人にはこちらを」

 

女性職員から、サトシとソラトだけもう1枚パスポートのような物を受け取った。

サトシの物には15、ソラトの物には16と書かれていた。

 

「これは?」

 

「それは受験票です。正午に必要になりますので無くさないようにして下さいね」

 

「受験票?」

 

「それではご案内させて頂きますね」

 

疑問は残ったが、これがあればジム戦ができると思ったサトシはそれ以上聞く事はなく、女性職員の案内に従って着いていく事にした。

 

「トレーナーズスクールには様々な分野のポケモンに関する勉強ができます。まずこちらがポケモンドクター志望の方々専門のクラスです」

 

最初に案内された教室では、ジョーイさん監修の元ポケモンの身体的特徴を学び、怪我の仕方や薬の種類についての授業が行われていた。

どのポケモンは体のどの部分に負担がかかり、どう対処すればいいか等が説明されていた。

 

「う、うわぁ…私こんなの覚え切れないかも…」

 

「流石はポケモンドクター専門クラス、難しいな」

 

5年間の旅で様々な知識を得たソラトをもってしても難しいと言わしめるポケモンドクター専門クラスの授業。

無論サトシやハルカに理解できる筈も無く、2人は頭がついていかずに目をぐるぐると回していた。

 

「それでは次のクラスにご案内しますね」

 

次に案内された教室には机や椅子はなく、大きく運動できそうなスペースと壁には全身が写る大きな鏡が設置されていた。

 

「此方はポケモンコンテスト専門のクラスになります」

 

「ポケモンコンテスト専門クラス!」

 

ポケモンコンテストの専門クラスと聞いてポケモンコンテストに興味を持っているハルカは目を輝かせて授業を見た。

コーディネーター志望のトレーナーや訓練用のポケモンが空中錐揉み回転をしてポーズを取ったり、技を美しくアピールして各自自主トレーニングをしていた。

 

「ステキ…!」

 

「お姉ちゃんもここでしっかりコーディネーターとしての基本を学んでいった方がいいんじゃない?」

 

「うーん、ホントに入学したくなってきたかも!」

 

「そう言って頂けると嬉しいです。では次のクラスですね。此方はポケモントレーナー入門クラスです。未来のポケモントレーナーがここでポケモンの基礎を学んでいるんです」

 

「ポケモントレーナー入門クラス! すっごいや!」

 

今度のクラスはマサトと同じ年の頃の少年少女の為のクラスらしい。

まだポケモンを持つことはできないが、将来の為にここで勉強しているのだろう。

マサトは期待に満ち溢れたキラキラした瞳をしながら教室の扉を開けた。

 

「と言う事じゃ。分かったかな?」

 

「「「はーい!!」」」

 

「えっ!?」

 

教室の扉を開けると、サトシ達の目に飛び込んできたのは大きなモニター。

そしてそのモニターに映し出されるオーキド博士であった。

カントー地方はマサラタウンに研究所を構える、世界でも知らぬ者はいないほどのポケモン研究の第一人者であるオーキド博士は、サトシも昔からお世話になっている人物である。

 

「オーキド博士!」

 

「ん? おぉ、サトシではないか!」

 

「オーキド博士! 何をしてるんですか?」

 

「ワシは各地のトレーナーズスクールにテレビ電話で特別講師をしておるんじゃよ」

 

流石はポケモン研究の第一人者である。

世界各地、様々な場所で研究だけではなく講師もしているとは。

 

「カナズミシティに来ているということはジム戦をしにきたんじゃな?」

 

「はい! トレーナーズスクールを見学したらジム戦をするつもりなんです」

 

「うむ、カナズミジムのジムリーダーは手強いから頑張るんじゃぞ。ところで、君がハルカ君とマサト君、そしてソラト君じゃね? サトシから話は聞いておるよ」

 

先ほども言ったがサトシは昔からオーキド博士にお世話になっているが、ハルカ、マサト、ソラトはオーキド博士とは初対面である。

しかし以前からサトシが連絡を取っておりその際にホウエン地方での旅の仲間として紹介していたようである。

 

「初めまして! 私ハルカです」

 

「どうも、ソラトです。オーキド博士とお話できるなんて光栄です」

 

「えと、あのその…!」

 

「ほらマサト、こういう時はまず挨拶からでしょ。すいませんオーキド博士」

 

どうやらこんな場所で憧れのオーキド博士と話す事ができるとは思わなかったマサトは混乱してしまい、何を言えばいいか分からないようである。

そんなマサトを見かねたハルカは注意をしつつアドバイスをした。

この辺りは姉としての責任感なのだろう。

 

「いやいや、いいんじゃよ。それはそうと、これからサトシはジム戦じゃな?」

 

「はい! 俺とソラトが挑戦します!」

 

「そうかそうか。それでは皆、サトシとソラト君のバトルをしっかり見て勉強するんじゃぞ。サトシはカントーとジョウトのポケモンリーグで良い成績を残しておるし、サトシの話だとソラト君もかなりの腕らしいからの!」

 

「「「はーい!!」」」

 

「それでは皆も何れはポケモンゲットじゃぞ!」

 

どうやらもうオーキド博士の授業は終わったらしく、オーキド博士はテレビ電話を消そうとすると、マサトは慌ててはいたが意を決した様子で博士に声を掛ける。

 

「オ、オーキド博士!」

 

「ん? 何じゃねマサト君」

 

「僕、博士の本全部持ってます! ラジオのポケモン講座も聞いてます! それで…それで…僕、オーキド博士を尊敬してます!」

 

不器用ながらも自分の気持ちを偽り無くマサトはオーキド博士に精一杯の言葉で伝えた。

そんな不器用さと純粋に自分を尊敬してくれるという気持ちを受け取ったオーキド博士は老いているその顔に喜びの表情を浮かべた。

 

「それは光栄じゃ! ありがとうマサト君! それ以外に言葉が見つからんよ。さて、すまんがワシはこれから別の用事がるので失礼するぞ」

 

「「「はーい!」」」

 

マサトとの会話を最後にオーキド博士はテレビ電話を切り、モニターが暗転した。

マサトは夢が1つ叶ったような気がして、しばらくモニターをボーっと見続けていた。

 

「ほらマサト、そろそろ次に行くわよ」

 

ハルカに声を掛けられてからようやくマサトは慌てた様子で反応した。

 

「オーキド博士と話せたのがそんなに嬉しかったんだな」

 

「そりゃそうだよ! 僕、将来はオーキド博士みたいなポケモン博士になりたいんだ!」

 

「マサトみたいな頭でっかちには無理かも」

 

挑発をするようなハルカの言葉にマサトは頬を膨らませてムッとする。

これは姉弟の間での軽いやり取りであり、ハルカも本気で言っている訳ではない。

しかし言われて嫌な事は変わり無い。

だがソラトはマサトの頭を撫でると何時もの不敵な笑顔を浮かべた。

 

「大丈夫さ。マサトは勉強家で努力家だから、時間をかけて勉強すればいつかオーキド博士のような…いや、オーキド博士を超えるようなポケモン研究者になれるかもしれないぜ」

 

「ソラト…えへへ、ありがとう!」

 

ソラトの言葉が嬉しかったのか、嬉しそうな、そして照れたような笑みを浮かべた。

逆にハルカはマサトに嫉妬したのか、今度はハルカがムッと頬を膨らませてしまった。

そうこうしている内に入門クラスの見学が終わり、最後にバトルの専門クラスの授業が行われている教室へと移動した。

 

「此方がポケモンバトル専門のクラスになります」

 

「おぉ! すっげぇ!」

 

バトル専門クラスの教室はバトルフィールドがあり、今丁度バトルが行われていた。

方やいわ/じめんタイプのポケモンであるサイドンを操る女性と、もう方やみずタイプのポケモンであるオーダイルを操る男性がバトルを行っていた。

 

「オーダイル、ハイドロポンプ!」

 

「オーダッ!」

 

オーダイルは指示に従い、凄まじい勢いで口から水を発射する。

 

「サイドン、あなをほるでお避けなさい!」

 

「グァウ!」

 

サイドンは頭の角をドリルのように回転させて地面を掘り進めてハイドロポンプを回避した。

更にサイドンはオーダイルの足元へと素早く移動して下から突き上げた。

 

「ダーイル!?」

 

「オーダイル!」

 

「トドメです、ドリルライナー!」

 

「グァアアアウ!」

 

そしてトドメに体ごと角を中心に回転して強力な突きをお見舞いしたサイドンのドリルライナーにより、オーダイルは倒れてしまい戦闘不能となった。

 

「すっげぇ! あのサイドン使いのトレーナー、かなりの腕だぜ」

 

「タイプ的にはオーダイルが圧倒的に有利だけど、相性を覆して勝っちゃったね」

 

「彼女がこのトレーナーズスクールの成績ナンバー1、そしてカナズミジムのジムリーダーでもあるツツジさんですよ」

 

「あの人がジムリーダー!?」

 

今しがたバトルに勝った女性が、カナズミジムのジムリーダーだったようである。

そんな事を聞いてしまっては、もうサトシは止められない。

 

「俺、今すぐジム戦がしたいんですけど!」

 

「そうですね…そろそろ時間ですし、移動しましょうか」

 

女性職員の案内に従ってある教室に案内されたサトシ達だったが、そこにはバトルフィールドも無く、机と椅子が並べられただけの部屋だった。

部屋には既に14人のトレーナーが席に着いており、何か本や辞書のような物を読んでいた。

 

「あ、あの…俺はジム戦がしたいんですけど…」

 

「はい、ではご説明させて頂きますね。カナズミジムではチャレンジャーを1日2人までにしておりますので、ここでポケモンに関するテストを受けて頂きます。そしてその成績が上位の2人にジムリーダーへの挑戦権が与えられるのです」

 

「えぇーっ!?」

 

これからバトル!と思っていたサトシにとっては出鼻を挫かれてしまった気分である。

しかもテストとは…正直サトシにはできる気がしなかった。

 

「あー…確かにジムではチャレンジャーの数を絞るための方法はそれぞれ自由だからな。こういう方法もあるっちゃあるか」

 

「そんなー…」

 

「ピィッカ…」

 

「まぁ文句言っても仕方が無い。とりあえず受けてみようぜ。折角だしハルカとマサトもテストだけ受けてみたらどうだ?」

 

「できるなら僕やってみたい!」

 

「うーん…皆がやるなら、私もやろうかな」

 

「畏まりました。では皆さん席に着いてください」

 

こうしてサトシ達は4人全員でテストを受けてみることになった。

少し待っていると、教室に1人の人物が入室してきた。

先ほどバトルフィールドでバトルしていたジムリーダーであるツツジである。

ツツジは教壇の上に上がると席に着いている顔ぶれを見渡した。

 

「皆さん、こんにちは。私がポケモントレーナーズスクール成績ナンバー1、そしてカナズミジムのジムリーダーでもあるツツジですわ。本日はジムへの挑戦ありがとうございます」

 

ツツジは自己紹介をすると同時に深くお辞儀をした。

しかし顔を上げると、そこには油断の無い表情をした1人のジムリーダーの表情をしていた。

 

「しかしながら、カナズミジムではこのテストにおいて点数上位の2名のみとバトルさせて頂きますわ。皆さんが学んだことや経験してきた事を存分にぶつけて下さいませ。それでは答案用紙を!」

 

ツツジの言葉に従いトレーナーズスクールの職員達が現れて問題が記載された用紙を参加者へ配り筆記用具を用意した。

 

「それでは、テスト開始!」

 

合図と共に教室の全員が用紙の問題を読んで問題を解いていく。

ソラトとマサトは特に問題無さそうに次々に問題を進めていき用紙にカリカリと記入をしていく。

だが、サトシは最初の1問で止まってしまい、ハルカも頭を悩ませながら苦しそうに回答を記入していく。

 

(ふむ、そんなに難しい問題は無いな。これならサトシ達もそれなりに解けるだろ)

 

(これはあの本で読んだ問題だ。それとこっちはパパが教えてくれたぞ)

 

(うぐぐ…わ、分からない…!!)

 

(えーっとえーっと、これ何だっけ…こうだっけ? あーん、分かんないかもー!)

 

テストの問題をスラスラと進めていくソラトとマサトに対し、サトシとハルカは全くと言っていいほど筆が進んでいなかった。

そして50分のテスト時間が終了し、答案用紙が回収されて採点へと入った。

 

「ふー、終わったな。まあそんなに難しい問題は無かったから大丈夫だろ」

 

「うん、僕でも分かる問題ばっかりだったし、サトシとお姉ちゃんも結構解けたんじゃない?」

 

ソラトとマサトは余裕の表情だったが、ハルカは苦笑いを浮かべており、サトシはガックリと項垂れて暗いオーラを発していた。

 

「あはは…全然分からなかったかも…」

 

「ああ…ダメだ…もう俺はジム戦できないんだ…」

 

「ピィカ…」

 

余程テストができなかったのか、サトシはこの世の終わりのような雰囲気を醸し出していた。

それを見たソラトは苦笑いをし、マサトはやれやれといった表情をしていた。

そして30分もすると採点が終わったのかツツジと職員の人が採点された答案用紙を持って出てきた。

 

「皆さん、採点が終わりましたわ。そしてなんと! 今回このテストにおいて初めて100点満点のチャレンジャーが現れましたわ! それもなんと2人も!」

 

周囲から驚きの声が出て辺りがどよめく。

だがあまりピンと来ていないハルカとマサトとソラトは顔を見合わせていた。

尚未だにサトシは暗いオーラを放っておりピカチュウに慰められていた。

 

「今回はそのお方達とバトルをさせて頂きますわ。そのトレーナーの名は…マサトさんとソラトさんです!」

 

「え、僕?」

 

「やるじゃんマサト、100点だってよ」

 

「えへへ、ソラトも流石だね!」

 

どうやら100点を取ったのはマサトとソラトだったようでお互いにサムズアップして称えたっていた。

 

「因みに、他の方の点数は此方に張り出しておきますわ」

 

大きくプリントされた張り紙が黒板に張られると、上から順に点数の高い順番でそれぞれの点数が表示されていた。

ハルカは32点で下から2番目、そしてサトシは18点でぶっちぎりのビリだった…。

普段から色々ぶっちぎりタイプだがこんな所までぶっちぎるとは、流石サトシである。

 

「ガーン! 下から2番目…ショックかも…」

 

「アハハ…俺はもうジム戦できないんだ…」

 

ハルカはハルカでショックを受けており、サトシは最早吹けば飛んでいってしまいそうなほど弱弱しく燃え尽きていた。

 

「ではマサトさん、ソラトさん、ジム戦のためにバトルフィールドへ移動致しましょう」

 

ツツジがソラト達の所へ来るとそう告げる。

だが1つ問題点があった。

 

「あ、でも僕トレーナーじゃないし…100点取ってもジム戦できないよ」

 

「ああ、マサトはお試しでテスト受けただけだからな」

 

「そうなのですか…では誰かに挑戦権を譲る事もできますわよ」

 

「うーん…それなら、サトシに挑戦権あげるよ!」

 

「えっ!? いいのか、マサト!?」

 

マサトの言葉に反応して、サトシがガバッと立ち上がってその顔に生気を取り戻す。

先ほどまで灰となりそうだったのにえらい変わりようである。

 

「うん。だってここで僕が挑戦権あげなかったら、サトシ一生ジム戦できないかもしれないしね」

 

「だぁー!」

 

「ピカー!」

 

続く言葉でピカチュウと共にずっこけた。

まぁ確かにサトシではこのままテストを受け続けてもいつ受けれるか分からないだろう。

兎にも角にもこれでサトシも挑戦権を手に入れた。

話し合った結果、まず最初にサトシが挑戦する事になり、バトルフィールドではサトシとツツジが対峙した。

 

「頑張ってー、サトシー!」

 

「さて、お互いにお手並み拝見といこうか」

 

「ツツジさんはいわタイプ使いだよね。サトシはピカチュウがアイアンテールを習得できたかどうかだけど…」

 

ソラトから教えられてからほぼ毎日サトシはピカチュウとアイアンテールの特訓を行ってきていた。

既に習得は終わったのか、それともぶっつけ本番か…これからのバトルで分かるだろう。

 

「それではこれよりジムリーダーツツジとチャレンジャーサトシのジム戦を行います! 使用ポケモンは2体。どちらかのポケモンが全て戦闘不能になった時点で試合終了とします」

 

「それではサトシさん、行きますわよ! イシツブテ、お行きなさい!」

 

「はい! よろしくお願いします! キモリ、君に決めた!」

 

「イッシ!」

 

「キャモー!」

 

ツツジの1番手はいわ/じめんタイプのイシツブテ。

そしてサトシの1番手はいわタイプに有効なくさタイプのキモリだった。

両者は岩が突き出ているバトルフィールドの中央で睨み合い、バトル開始の合図を待っている。

 

「それでは、バトル開始!」

 

「キモリ! でんこうせっかだ!」

 

「キャモ!」

 

審判のバトル開始の合図に合わせてスピードで勝るキモリが動いた。

こうかはいまひとつだが先手を取ってガンガン攻める気なのだろう、サトシらしい戦法だが、ツツジは落ち着いて対応した。

 

「イシツブテ、まるくなるですわ」

 

「イッシャイ!」

 

「キャモー!?」

 

イシツブテは丸くなって防御力を上げるとでんこうせっかを軽々と受け止めてキモリを弾き返してしまった。

キモリを弾き返したイシツブテはすぐさま反撃の体勢に入る。

 

「更にころがる攻撃ですわ!」

 

「イイッシ!」

 

「キャモッ!?」

 

「キモリ! 大丈夫か!?」

 

丸くなった体勢から転がり隙無くキモリに反撃を決める。

弾き返されたキモリは地面に倒れるが、サトシの言葉に反応してすぐさま起き上がってイシツブテを警戒する。

だがイシツブテとツツジは更に攻撃を仕掛けようとはしていなかった。

どうやら今の攻防でキモリの攻撃力を計算し、今のようなカウンター戦法をとる気のようだ。

 

「さぁ、どうしましたかサトシさん。アナタとキモリの力はこんな物なのですか?」

 

「まだまだ! キモリ、エナジーボール!」

 

「キャーモーッ!」

 

「イシツブテ、まるくなるですわ!」

 

手の平にエネルギーを集中してそれをイシツブテに放つと、吸い込まれるようにエナジーボールはイシツブテに直撃した。

まるくなるで更に防御力を高めたようだが、いわ/じめんタイプのイシツブテにくさタイプの技であるエナジーボールは効果絶大である。

ボロボロになったイシツブテだが、まだ戦う意思があるようである。

 

「イシツブテ、いわなだれ!」

 

「イッシャーイ!」

 

イシツブテは虚空から岩を召喚し、それを雨のようにキモリに襲い掛からせる。

だがこの程度のスピードの技はキモリからすれば遅すぎる。

 

「キモリのスピードならこんな攻撃! キモリ、岩を使ってジャンプするんだ!」

 

「キャモッ! キャモモッ!」

 

キモリはジャンプしてフィールドの岩の上に乗ると、そこから更にジャンプをしていわなだれの岩を跳び越えた。

攻撃を外した隙だらけのイシツブテの真上を取った状態になる。

 

「キモリ、もう1度エナジーボールだ!」

 

「キャモッ!」

 

「メガトンパンチで受け止めなさい!」

 

「イッシー!」

 

真上からキモリは再びエナジーボールを放つが、イシツブテも強力なパンチを繰り出してエナジーボールを受け止める。

ジリリ、とイシツブテがエナジーボールに押されるが、渾身の力を込めたメガトンパンチによりエナジーボールを弾き飛ばした。

 

「イッシャイ!」

 

「よくやりましたわイシツブテ」

 

「キャモー!」

 

「イシッ!?」

 

「なっ!?」

 

だがエナジーボールを弾き飛ばして油断してしまったイシツブテの隙を突くかのように、キモリが真上から落下してくる。

 

「いっけぇっ! はたく攻撃!」

 

「キャモォッ!」

 

キモリは落下の勢いを利用して体を捻りながらはたく攻撃を繰り出した。

はたき飛ばされたイシツブテはゴロゴロとフィールドを転がり、場外に出ると同時に止まった。

 

「イシツブテ、戦闘不能! キモリの勝ち!」

 

「いいぞキモリ!」

 

「キャモキャーモ」

 

キモリがイシツブテを下し、見学していた生徒達がどよめきだす。

成績ナンバー1と言う事はツツジはこのトレーナーズスクールで1番強いトレーナーである。

そのツツジのイシツブテを倒したのだから皆驚いているのだ。

 

「よくやりましたわイシツブテ、ゆっくりお休みなさい。お見事ですわサトシさん。しかし勝負はこれからですわ! 行きなさい、ノズパス!」

 

続けてツツジが繰り出したのはやはりいわタイプのポケモンであるノズパスだった。

この局面で出してきたと言う事はノズパスがツツジのエースポケモンなのだろう。

 

「ノズパス…変わったポケモンね」

 

『ノズパス じしゃくポケモン

体から発する強力な磁力で獲物を引き寄せ食料にする。寒い季節の方が磁力が強い。』

 

「ノズパスか…でも相手はいわタイプならこのままキモリで行くぜ!」

 

「キャモ!」

 

「では行きますわ! ノズパス、がんせきふうじ!」

 

「キモリ、でんこうせっか!」

 

ノズパスは岩を生み出してキモリに向けて射出し、キモリはそれをでんこうせっかのスピードで回避した。

動きの鈍いノズパスに対し、素早い動きでそれを翻弄するキモリ。

タイプ相性も相まってキモリが優勢に見えるが…。

 

「行けキモリ! エナジーボール!」

 

「キャーモッ!」

 

がんせきふうじを回避した所でキモリはジャンプしてエナジーボールを放った。

これが命中すればこうかはばつぐんだ。

 

「ノズパス、でんじほう!」

 

「ノーパー!」

 

「でんじほう!? いわタイプなのにでんきタイプの技を!?」

 

「キャモッ!? キャモー!?」

 

ノズパスの赤い鼻に強力な磁力と電力が集まり、キモリに向けて一気に発射された。

強力な電撃はエナジーボールをかき消し、キモリまでも飲み込んだ。

 

「キモリ!」

 

でんじほうが晴れると、キモリはまだ立ってはいたがかなりのダメージを受けているようだ。

それだけではなく、体に弱いが電気が流れていた。

 

「キモリ! 大丈夫か!?」

 

「キャ…モ…」

 

キモリの様子を見ていた観客席のソラトは顔をしかめた。

 

「まずいな…キモリは今のでかなりダメージを受けたみたいだな。しかもでんじほうを受けると100%まひ状態になる…」

 

「キモリ、大ピンチかも」

 

ダメージだけではなくまひ状態になってしまったキモリは普段の素早いスピードを生かす事ができないでいた。

 

「ノズパス、トドメのがんせきふうじ!」

 

「ノーパーッ!」

 

「キモリ、かわすんだ!」

 

再びがんせきふうじが放たれ、サトシはキモリに回避の指示を出すが体が痺れて動けないキモリは回避行動を取ることができなかった。

がんせきふうじの岩をまともに受けてしまい、キモリは大きく吹き飛ばされた。

 

「キャモー!」

 

「キモリ!」

 

キモリはサトシの前まで吹き飛ばされて倒れてしまい、立ち上がる事はできなかった。

 

「キモリ、戦闘不能! ノズパスの勝ち!」

 

「戻れキモリ。よくやってくれたな、後は任せてくれ。ピカチュウ、行けるか?」

 

「ピッカ!」

 

「よーし、ピカチュウ、君に決めた!」

 

「ピッカ!」

 

サトシはキモリをボールに戻し、2番手としてピカチュウを繰り出した。

これでお互いに残りポケモンは1体ずつであり、残り体力もほぼ互角だろう。

 

「一気に行くぜピカチュウ! アイアンテール!」

 

「ピィイイイッカ! ピッカ!」

 

先ほどと同じく素早さで勝るピカチュウが先手を取り、大きくジャンプして尻尾を振りかぶる。

そしてそのままアイアンテールをノズパスに叩き込んだ!

どうやらアイアンテールの習得は無事に成功したようだ。

 

「ノパー!」

 

「なるほど、その手で来ましたか…ノズパス、ピカチュウの動きを封じるのです! ふみつけ攻撃!」

 

「ノパッ、ノーパー!」

 

ノズパスは強固な防御力でアイアンテールを耐え切り、そそのまま一気に反撃に出た。

その重い体を生かしたふみつけ攻撃は、当たればかなりのダメージとなるだろう。

しかし、ピカチュウにとってノズパスの動きは遅すぎた。

 

「かわせピカチュウ!」

 

「ピッカァ!」

 

素早い動きでふみつけ攻撃を回避したピカチュウは1度距離を取り直す。

だがそれより先にノズパスが動いた。

 

「ノズパス、がんせきふうじ!」

 

「ノーズパー!」

 

「ピカ!? ピカー!?」

 

「ピカチュウ! そんな、完全にかわした筈なのに!」

 

がんせきふうじを避けきれず、ピカチュウは岩に弾き飛ばされてしまった。

何とか立ち上がり身構えるピカチュウだが、サトシの頭には疑問が残っていた。

今のがんせきふうじはまるで動きを先読みされたかのような狙いだった…完全に回避をした筈なのに攻撃を受けたのはそこにタネがあった。

 

「ノズパスはコンパスポケモン。その鼻は強力な磁石…ノズパスはその磁石でピカチュウの電気信号をキャッチして動きを読んだのですわ」

 

「そうだったのか…だったらこれは捉えられますか? ピカチュウ、でんこうせっか!」

 

「ピッカ!」

 

「ノズパス、すなあらし!」

 

ピカチュウは更なるスピードで攻め立てようとするが、ノズパスの巻き起こしたすなあらしにより視界が塞がれ動きを封じられてしまう。

対するノズパスは強力なすなあらしの中でも電気信号をキャッチしてピカチュウの位置を割り出していた。

 

「更にがんせきふうじ!」

 

「ノパー!」

 

「ピッカー!?」

 

「ピカチュウ! くそ、どうすれば…」

 

ノズパスのすなあらしはすぐに解除され、倒れるピカチュウとそれを見下ろすノズパスがすなあらしの中から現れた。

 

「でんきタイプのポケモンでよくここまで戦われました。しかし、これで終わりですわ! でんじほう!」

 

「ノーパー!!」

 

ノズパスがでんじほうを放つためのエネルギーをチャージし始める。

この間にもサトシはこの状況を打開するための作戦を考え続けていた。

ピカチュウはかなりのダメージを受けており、ピカチュウの動きはノズパスに先読みされてしまう…。

先読みされている内はピカチュウの攻撃は有効に決まらない。

 

「なら、ノズパスの動きを封じればいいんだ! でもどうやって…」

 

考え続けるサトシの視界に、でんじほうを放とうとするノズパスが目に入る。

 

「…そうだ! ピカチュウ、でんじほうを受け止めるんだ!」

 

「ピカ! ピッカチュウ!」

 

ピカチュウは立ち上がるとノズパスに向かって飛び掛り、放たれたでんじほうをその体で受け止めた。

でんきタイプのピカチュウにはこうかはいまひとつであり、戦闘不能にはならなかった。

 

「そのままノズパスに突っ込むんだ!」

 

「ピィッカ!」

 

「なっ!?」

 

ピカチュウはでんじほうの電気を身にまとったままノズパスへと体をぶつけた。

でんじほうの電撃がノズパスへと感電し、更にはピカチュウの特性であるせいでんきが発動されてノズパスの体を痺れさせる。

 

「ノパー!?」

 

「ノズパス!」

 

「サトシの奴中々やるな。相手のでんじほうの特徴とピカチュウの特性を利用してノズパスの動きを封じるとはな」

 

「「頑張れサトシー! ピカチュウー!」」

 

麻痺してしまったノズパスは動きが止まり、動けなくなってしまう。

 

「ノズパス、がんせきふうじですわ!」

 

「ノ…パ…」

 

ツツジはノズパスに指示を出すが、ノズパスは体が痺れて技が出せない。

その隙を突いてピカチュウは空中に飛び上がる。

 

「ピカチュウ、渾身の力を込めてアイアンテールだッ!」

 

「ピィイイイッカ…!」

 

「いっけぇえええええええええっ!」

 

「ピカピッカ!」

 

空中からアイアンテールをノズパスの頭に叩き落したピカチュウはスタッと地面に着地する。

それと同時に大きな音を立ててノズパスが崩れ落ちた。

 

「…ノズパス戦闘不能! よって勝者、チャレンジャーサトシ!」

 

「…ぃやったぁああ! やったぜピカチュウ!」

 

「ピィッカ!」

 

サトシのホウエン地方最初のジム戦は見事勝利となった。

真っ向からぶつかり合うバトルにツツジも満足したのか、満たされたような笑みを浮かべていた。

 

「おめでとうございますサトシさん。バッヂはソラトさんとのバトルが終わり次第渡させて頂きますわ」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「では続いてソラトさん、フィールドへ」

 

ツツジに呼ばれたソラトは観客席からバトルフィールドへ降りていく。

その途中で観客席へと向かうサトシとすれ違う。

 

「頑張れよソラト!」

 

「ああ、ホウエンリーグでお前たちと戦う約束だからな。ここで躓く訳にはいかないさ」

 

そしてソラトはバトルフィールドのチャレンジャー側に立つと不敵な笑みを浮かべた。

 

「ツツジさん、ポケモンはどうするんですか? さっきサトシとのバトルで戦闘不能の筈ですが」

 

「ジムリーダーには相手の強さに合わせて扱うポケモンを変更する事が義務付けられています。ソラトさんの経歴によるとホウエンリーグへの挑戦は2度目ですね?」

 

「はい、その通りです」

 

ポケモンリーグへの挑戦のための登録手続きの際にトレーナーの過去の挑戦経歴等が協会側で確認される。

その経歴によりジムリーダーはレベルの調整をしたポケモンを扱う事が義務付けられているのだ。

 

「ソラトさんの経歴を考慮して…私の持つポケモン達の中で最も強い2体を使わせて頂きます!」

 

ツツジはサトシとのバトルの時とは明らかに違う、気を張り詰めているような表情でボールを構えた。

先ほどのサトシとのバトルは1人のトレーナーとしてバトルを楽しんでいたようにも見えたが、今はそんな余裕など無さそうである。

 

「光栄ですね、ジムリーダーの貴女からそんなに高く評価して頂けるとは」

 

不敵な笑みを崩さず、ソラトもツツジに応えるようにモンスターボールを構えた。

 

「それでは、ジムリーダーツツジとチャレンジャーソラトのジム戦を開始します! 使用ポケモンは2体、どちらかのポケモンが全て戦闘不能になった時点でバトル終了です!」

 

「お行きなさい、ゴローニャ!」

 

「ゴロッ!」

 

「クロガネ、バトルの時間だ!」

 

「ゴォド!」

 

ツツジの1番手はイシツブテの最終進化系であるゴローニャで、ソラトの1番手はボスゴドラのクロガネだった。

両者とも大型のポケモンのため、ボールから出て着地すると岩のフィールドに大きな音と振動を発生させた。

 

「マサト、タイプ的にはどっちが有利なの?」

 

「もー、お姉ちゃんそんな事も分からないの? いわタイプを持つゴローニャははがねタイプを持つクロガネに不利なんだよ。でもじめんタイプの技を使われたらクロガネも不利だけどね」

 

「…つまりどっちが有利なの?」

 

「え? …あれ、どっちなんだろ?」

 

「まぁそれはバトルが始まれば分かるって!」

 

ハルカとマサトがタイプの上での有利不利を話し合っていたがどちらもどちらであり話に結論が出なかった。

そういった部分はサトシの言うとおり始まって見れば分かる事である。

 

「では、バトル開始!」

 

「ゴローニャ、ステルスロックですわ!」

 

「ゴローニャ!」

 

ゴローニャは試合開始早々に体から石を周囲に放出してフィールドに棘々しい岩を設置した。

 

「ステルスロックって何だ?」

 

「相手がポケモンを交代する時にダメージを与える技だよ! まずはフィールドを支配してきたね!」

 

バトルの今後の展開を考えてフィールドに地雷を設置したのだ。

だがソラトは不敵な笑みを崩さずにクロガネに指示を出した。

 

「クロガネ、がんせきふうじ!」

 

「ころがるで回避しなさい!」

 

クロガネはがんせきふうじをゴローニャに向けて放つが、ゴローニャは丸くなりゴロゴロと転がる事でそれを回避した。

イシツブテやゴローニャは通常のすばやさは低いが転がって移動する速度は意外にも速いのだ。

攻撃を外したソラトだったが、更なる攻撃を指示する。

 

「クロガネ、アイアンテール!」

 

「ゴォッド!」

 

ソラトが指示するとクロガネは尻尾にエネルギーを集めながらゴローニャへ向けて突進する。

 

「もう1度ころがるでお避けなさい!」

 

「ゴロッ!」

 

「クロガネ、そのまま岩にアイアンテール!」

 

タダではゴローニャも当たらないとばかりに再び転がって回避した。

だがクロガネは勢いを止めずに走り続け、先ほどクロガネが放ったがんせきふうじの岩に向かってアイアンテールを放った。

アイアンテールを受けた岩は弾き飛ばされてゴローニャに命中した。

 

「ゴロ!」

 

「ゴローニャ、しっかりなさい!」

 

「ゴロゴロ!」

 

避けたと思って攻撃を受けたため少しゴローニャは動揺したが、ツツジの声を聞いてすぐに立て直した。

 

「ゴローニャ、もう様子見は無しにしましょう。じしん攻撃ですわ!」

 

「ゴロー…ゴロ!」

 

ゴローニャは高くジャンプしたと思ったら地面に力強く着地して強力なじしんの波動を発生させる。

その振動は観客席で見ていた人々にも伝わり、このじしんの威力がどれほどのものかを物語っていた。

じしんは岩のフィールドを砕き、一直線にクロガネ目掛けて奔った。

 

「まずいよ! じしんはじめんタイプの中でもかなり強力な技だし、クロガネには効果絶大だ!」

 

「お兄ちゃん逃げてー!」

 

ハルカはじしんを避けてほしくソラトに向かってそう叫んだが、ソラトは再びその顔に不敵な笑みを浮かべる。

 

「クロガネ、てっぺきを使って突っ込め!」

 

「ゴド! グォオオオオド!」

 

てっぺきを使い自身の防御力をぐーんと上げたクロガネはじしんの波動に向かって真正面から突っ込んだ。

いくら防御力を高めたと言ってもこの威力のじしんをまともに受ければタダでは済まないのは火を見るより明らかだが、ソラトは迷わなかった。

そしてじしんがクロガネに命中すると建物を震わすほどの大きな振動を発生させて粉塵が巻き上がる。

 

「ど、どうなったんだ…?」

 

「ピカ…」

 

粉塵が巻き上がったせいでクロガネの姿は確認できないが、果たして…。

 

「流石にこの威力のじしんを受けては立ち上がれないでしょう」

 

「ゴロ!」

 

ツツジとゴローニャも勝ちを確信したような笑みを浮かべるが、その油断が致命的な隙を作り出してしまった。

突如、粉塵の中で大きな影が現れて揺らめいた。

 

「…クロガネ、捕まえろ!」

 

「ゴドォオオオッ!」

 

「なっ!?」

 

「ゴロ!?」

 

粉塵を振り払ってクロガネが姿を現すと、ゴローニャに一気に接近して体を掴んで捕まえた。

ボスゴドラであるクロガネの体重は360キロ。

流石のゴローニャもこの重さの相手に捕まれてはそう簡単には引き剥がせない。

 

「クロガネ、メタルバーストだァ!」

 

「グゥゥゥ…ゴドラァアアアア!!」

 

「ゴロー!?」

 

ゴローニャを掴んだまま全身から鋼のエネルギーを射出する。

メタルバーストは受けたダメージを割り増しして相手に撥ね返す技である。

先ほどのじしんで受けたダメージを増大させてゴローニャへとぶつけると、ゴローニャはその体重を無視したような勢いで吹き飛び、壁にめり込んだ。

 

「ゴローニャ!?」

 

「ゴロ…ニャ…」

 

「ゴローニャ戦闘不能! ボスゴドラの勝ち!」

 

強力な攻撃を受けた後にそのダメージを受けてしまったダメージを割り増しで相手に返したのだ。

ピンチの後にチャンス有りとは正にこの事である。

 

「ゴローニャ、お戻りなさい。よくやってくれました。お見事ですソラトさん、まさかあのじしんを受けきられるとは…」

 

「クロガネの特性は、がんじょうなんですよ。まぁ保険でてっぺきも使いましたがね」

 

「ですが、今度は確実に仕留めさせて頂きます! お行きなさい、ダイノーズ!」

 

「ダダッ」

 

「ダイノーズか…戻れクロガネ」

 

ツツジが次に繰り出してきたポケモンは先ほどのノズパスの進化系であるダイノーズだった。

先ほど大きなダメージを受けたクロガネを引き戻してポケモンを交代しようとするソラトだったが、ボールのビームの照射が途切れてしまい、クロガネを戻す事ができなかった。

 

「ゴドッ!?」

 

「…なるほど、そのダイノーズの特性はじりょくですね」

 

「その通り。これではがねタイプのボスゴドラはもう戻す事はできませんわ! 最後までお付き合いをお願いしますわ!」

 

「それなら仕方ないか…いくぜクロガネ」

 

「ゴド」

 

ダイノーズの特性であるじりょくにより、はがねタイプのポケモンの交代が封じられたソラトはこのままクロガネでのバトルを続行する事になった。

 

「ダイノーズ、でんじほう!」

 

「ダダダッ」

 

「クロガネ、がんせきふうじで壁を作れ!」

 

「ゴォッド!」

 

ダイノーズからでんじほうを放つが、クロガネはがんせきふうじを使って岩を積み上げて壁を作り出しでんじほうを受け止めた。

でんじほうによりがんせきふうじで積み上げられた壁が弾けて崩れ落ちる。

 

「距離をつめろ! アイアンテールだ!」

 

「接近されてはなりません! ロックブラスト!」

 

「ダダダダッ!」

 

「ゴォド! ゴドゴド!」

 

ダイノーズは鼻先から大きな岩を生み出しクロガネに向けて4発発射するが、クロガネはアイアンテールで全て弾き飛ばして接近した。

 

「そのまま尻尾を叩きつけろ!」

 

「足元がお留守です。ダイノーズ、だいちのちからですわ!」

 

「何っ!?」

 

アイアンテールを打ち込もうとした瞬間、クロガネの足元が砕けて大地の力が吹き出る。

そしてだいちのちからがクロガネを覆い尽くした。

再びじめんタイプの技を受けてしまったクロガネは絶大なダメージを受けてしまう。

だいちのちからの放出が止まりクロガネの姿が現れるが、体が揺らめきそのまま倒れてしまった。

 

「ゴド…」

 

「ボスゴドラ、戦闘不能! ダイノーズの勝ち!」

 

「よくやったなクロガネ、戻って休め」

 

戦闘不能になったクロガネを戻すと、ソラトは次のボールを構えた。

 

「お兄ちゃんのクロガネがやられちゃった…」

 

「なぁに、まだまだこれからさ。でもソラト、次のポケモンは何にするんだろう」

 

「やっぱりスイゲツじゃない? いわタイプに有効なみずタイプの技を使えるし、かくとう技のグロウパンチもじめん技のマッドショットも使えるからね」

 

「ライ、バトルの時間だ!」

 

「プラプーラ!」

 

てっきりラグラージのスイゲツが出てくるかと思われたが、ソラトが繰り出したのはでんきタイプのプラスル、ライだった。

じめん技のだいちのちからを使えるダイノーズには不利なのは明らかだが…。

 

「えっ!? 何でライを!?」

 

「う~ん、ソラトの事だからサトシと違って何か作戦があるんだろうけど…」

 

「俺と違ってってなんだよマサト…」

 

マサトのさりげない発言に心を抉られるサトシだが、そんな事をしている間にバトルが再開された。

そしてライの足に鋭い岩が突き刺さりダメージを与える。

先ほどのゴローニャのステルスロックの効果が発揮されたのだ。

 

「プラ…!」

 

「ライ、大丈夫か? 動きに問題は?」

 

「プラプラ!」

 

任せて!といったようなガッツポーズと返事によりライの動きに問題が無いと判断したソラトは攻撃の指示を出す!

 

「ライ、10万ボルトだ!」

 

「ダイノーズ、ロックブラスト!」

 

「プ~ラ~!!」

 

「ダダッ」

 

ライは10万ボルトの電撃を放ち、ダイノーズは今度は2発のロックブラストを放った。

だがライの強力な電撃によりロックブラストの岩を砕き、ダイノーズに直撃する。

 

「ダダッ!?」

 

「なっ!? なんて威力…ダイノーズ、だいちのちからですわ!」

 

「来るぞライ! 岩に飛び乗って避けろ!」

 

「プラッ!」

 

フィールドの地面が砕かれてだいちのちからが溢れ出るが、ライはフィールドから突き出ていた岩に飛び乗ってそれを回避した。

 

「そのままアンコールだ!」

 

「アンコール!? 何でこの状況で!?」

 

「今使うとじめんタイプの技が沢山使われちゃうかも!」

 

突然のアンコールに観客席のサトシ達も驚きが隠せずに目を見開くが、当のソラトはいつもの不敵な笑みを浮かべるだけである。

 

「プラ! プラプーラ! プラプーラ!」

 

ライは岩に乗ったまま拍手をしてダイノーズを煽てると、ダイノーズはアンコールを受けて同じ技しかだせなくなってしまう。

しかし出せる技はライに有効なだいちのちからである。

 

「何故今アンコールを…? ダイノーズ、だいちのちから!」

 

「ダダダダダッ」

 

「ライ、だいちのちからに捕まるなよ! 駆け抜けろ!」

 

「プラッ!」

 

地面が砕かれて幾つものだいちのちからが溢れ出る。

プラスルは駆け出すと素早い動きでだいちのちからを回避しながらダイノーズに接近していく。

砕かれる大地を横っ飛びで避け、回避できないものはフィールドの岩に飛び乗って凌ぎながら近づき、ダイノーズに肉薄する。

 

「そのままダイノーズの周囲を走れ!」

 

「プラプラプラプラプラ!」

 

「ダーダダッ」

 

「はっ! いけませんわダイノーズ! プラスルを追ってはいけません!」

 

ライはダイノーズの周囲をグルグルと回るようにして駆け巡ると、ダイノーズはそれを追おうとして体の向きを変える。

それを見たツツジはソラトの狙いに気がつくが時すでに遅し。

ダイノーズはライを追って後ろを向こうとするが、何かに引っ張られるようにグルンッと回転して正面を向いてしまい、それを何度も繰り返す。

 

「ダダダッ、ダダ…ダダ…ダ…」

 

グルグルと回転してしまい、ダイノーズは目を回してしまい動きが止まってしまう。

 

「そっか! ダイノーズの鼻は強力な磁石になってるから北をむいちゃんだ! それを利用して相手の目を回したんだ!」

 

「なるほど、流石はソラト!」

 

「お兄ちゃん…! いっけぇー!」

 

マサトもソラトの狙いに気がついてそう叫ぶと、サトシとハルカも応援に身が入る。

 

「ダイノーズ、しっかりなさい!」

 

「ライ、まねっこ!」

 

「プラ! プーラッ!」

 

ライが勢い良く地面を叩くと、ダイノーズの足元の地面が砕かれてだいちのちからが溢れ出る。

ダイノーズはノズパスから進化していわ/はがねタイプとなっているため、じめんタイプの技は効果絶大である。

つまり、だいちのちからをまねっこで真似るためにアンコールで技を絞ったのだだ。

 

「一気に決めろ! 10万ボルト!」

 

「プラプラ…プ~ラ~!」

 

そして強力な10万ボルトが放たれ、ダイノーズを包み込む。

だいちのちからと10万ボルトを同時に受けてしまったダイノーズはその巨体を揺るがせ、大きな音を立てながら倒れたのだった。

 

「ダイノーズ!」

 

「…ダイノーズ、戦闘不能! プラスルの勝ち! よって勝者はチャレンジャーソラト!」

 

「やったな、ライ!」

 

「プラー!」

 

ライは嬉しさのあまりソラトに飛びつき、頭の上に乗ってソラトに甘えると、ソラトもそれに応えるようにライの頭を撫でてやった。

これで無事、サトシとソラトは両者ともカナズミジムの攻略に成功した。

 

「やったなソラト!」

 

「お兄ちゃんかっこいいかもー!」

 

「流石ソラト! 完璧にデザインされた作戦だったね!」

 

観客席からサトシ達も降りてきて、共に勝利の喜びを分かち合う。

 

「お見事でした、ソラトさん、サトシさん」

 

そしてツツジはサトシとソラトを称えると、予め用意しておいたポケモンリーグ公認のジムバッヂをソラトとサトシに向けて差し出した。

 

「カナズミジムを戦い抜いた証、ストーンバッヂですわ」

 

サトシはバッヂを受け取ると、それを天高く掲げて声高らかに叫んだ。

 

「よーし! ストーンバッヂ、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

「キャモ!」

 

そしてソラトはバッヂを器用に指で弾いて宙に打ち上げ、落ちてきた所を再び掴んで前に突き出した。

 

「ストーンバッヂ、イカしたバトルでゲットだぜ!」

 

「プラー!」

 

「ゴドッ!」

 

カナズミジムのジムリーダー、ツツジを打ち破り、見事1つ目のバッヂを手に入れたサトシとソラト。

次なるジムに向け、また新たなる挑戦の旅が始まる!

 

 

 

to be continued...




あ、次の投稿は今回ほど期間は空かないと思いますが…ちょっとまた遅れるかもです。

…こんなんばっかですね私。

反省します。
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