ポケットモンスター-黒衣の先導者-   作:ウォセ

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更新を待っていた方も、こんな小説には見向きもしていないという方も。
本当に申し訳ありません。
情けなくも戻って参りました。
執筆が進まなくなってしまったのをきっかけに執筆活動を中止していました。
これからの執筆活動については活動報告の方に書いておきたいと思います。

あと前話のジムリーダーのポケモンに関しては協会からの支給ポケモンにしていましたが、自分も思う所あり自身の手持ちポケモンに変更しております。


接近! アクア団の影!

ホウエン地方のカナズミジムで見事バッヂをゲットしたサトシとソラトは、ポケモンセンターで1日休息を取ったのだった。

 

「へへへ、ストーンバッヂゲットだぜ! この調子で次のバッヂも頂きだ!」

 

「ピカピカ!」

 

バッヂケースに収められたストーンバッヂを見てニヤニヤしているサトシは、次なるジム戦に向けて闘志を燃やしていた。

すぐにでも次のジム目指して飛び出していってしまいそうなサトシだが…。

 

「あれ、次のバッヂって…次のジムはどこにあるんだ?」

 

「カナズミからなら、ムロジムかキンセツジムが近いな。海を渡るなら船に乗ってムロタウン、陸路で行くならカナシダトンネルってトンネルが最近できたらしいからそこからキンセツシティに行けるぞ」

 

流石と言ったところか、すかさずソラトが近くのジムの情報をサトシと共有する。

直接的な距離ならキンセツの方が近いだろうが歩きになり着くにはそれなりに時間がかかるだろう。

大してムロは海を渡らなければならないが定期船が出ているため進行は思いのほか速いだろう。

 

「うーん、どっちに行こうかな…」

 

「ま、それも考えておいてくれ。俺はちょっと街に出てるからさ」

 

「街に出るって、どこに行くのか?」

 

サトシがどちらのジムに向かうかを考えている間にソラトはポケモンセンターから出て行こうとする。

何か用事でもあるのかと思ったサトシが尋ねると、ソラトは苦笑いして答えた。

 

「いや、オヤジの情報を集めようと思ってな。聞き込みや情報屋から情報を買い取ったりな。他にも旅の消耗品の購入や進化の石を売ってお金にしたり」

 

旅の仲間の最年長でもあり、父親のアラシを探すソラトはやる事が沢山あるのである。

だがソラトの父親探しの旅という目的をサトシはすっかり忘れていたようで、今思い出したかのような仕草をする。

 

「お兄ちゃん、私も手伝うかも!」

 

「そうだよ、そういう約束だったし!」

 

以前にアラシを探す手伝いをするという約束もあり、元々ハルカはソラトのアラシを探す旅を手伝う筈だった。

思い出したサトシと、ハルカも手伝いを申し出るがソラトは笑いながら首を横に振った。

 

「いや、いいさ。オヤジ探すのは俺の目的であってサトシやハルカの目的じゃないしな。気が向いたら手伝ってくれればいいさ。じゃ、行ってくるな」

 

そう言い残し、ソラトはカナズミシティの街へと繰り出していった。

 

「結局僕たちはどうするの?」

 

「俺はピカチュウと一緒にアラシさんの事を聞きこみしてくるよ。ついでにどっちのジムに行くか考えておく」

 

「じゃあ私はちょっとショッピングに行こうかな。そこでアラシさんの事を聞いてくるわ」

 

「僕はサトシと一緒に行って、そっちの方でアラシさんの事聞いてみるよ!」

 

「それじゃ、一時自由行動って事で! また後で会おうぜ!」

 

「「おー!」」

 

こうしてサトシとマサトは街へアラシの情報探しに、ハルカはショッピングとアラシの情報集めへと向かう事になった。

街に繰り出したソラトは人通りが多そうな大きな噴水のある広場でアラシの情報が無いか聞き込みを行っていた。

道行く人に声をかけてアラシの写真を見せて覚えが無いか聞いてみるが、今のところ成果は上がっていなかった。

 

「ふぅ、もう50人くらいには聞いたが成果無しか。もしかしたらカナズミシティには来てないのか…?」

 

カナズミシティはホウエン地方でも有数の大都会なので誰かがアラシを見ていないかと期待していたソラトだったが、もしかしたらという考えに至る。

だがまだまだカナズミシティには多くの人がいるため諦めてはならないと考え直し、休憩がてら噴水の縁に腰掛ける。

 

「…ん、何だ?」

 

噴水の縁に腰掛けて目を閉じてソラトが何やら集中していると、何か気配を感じ取ったのか目を開けて訝しげに噴水の水面を見続ける。

噴水は見た目よりも深く底の方はよく見えず黒い陰しか見えないが。ソラトにはハッキリと何かが感じ取れていた。

ソラトの感じた何かは、水底を移動してソラトではなくソラトから少し離れた場所の噴水の縁に座っている白髪の初老の男性の方へ移動する。

そして水底の黒い影は一気に水面から飛び上がり初老の男性に向けて襲い掛かった!

 

「キバッ!」

 

「なっ!? うわぁっ!」

 

「行けデン! でんこうせっか!」

 

「マイ! マーイッ!」

 

「キバーッ!?」

 

水底から飛び出したのは赤と青の体色をした鋭い牙やヒレを持つポケモン、キバニアだった。

だがソラトは素早くボールを投げてデンを繰り出すと、でんこうせっかでキバニアを吹き飛ばした。

噴水の水に着水したキバニアは態勢を整え、口を開いてそこからいやなおとを放つ。

 

「キィイイイイイ!」

 

「きゃあああっ!」

 

「な、なんなんだこれはーっ!?」

 

いやなおとは噴水広場の周囲にいた多くの人々の耳に届き被害を与えていた。

ソラトは一瞬周囲の人々に気をとられるが、すぐさまキバニアに意識を向けるとデンに指示を出した。

 

「デン、でんげきは!」

 

「マイマイ、マーイッ!」

 

「キババー!?」

 

みず/あくタイプのキバニアにでんきタイプの攻撃はこうかはばつぐんだ。

ダメージを受けたキバニアは噴水の水底へと逃げていき、しばらくすると黒い影は見えなくなり、事態は収束したのだった。

一先ずソラトは先ほどキバニアに襲われた初老の男性に声をかけることにした。

 

「よし…大丈夫ですか? 怪我はありませんか?」

 

「ああ、大丈夫だよ。助けてくれてありがとう。私はツワブキだ」

 

「ソラトです。それにしてもこの噴水にはキバニアが住み着いているんですか? 人を襲うキバニアの出る噴水なんて…」

 

「いや、私はこの噴水広場にはよく来るけどこんな事は初めてだよ。いったいどうなっているのやら…」

 

どうやら今のは日常茶飯事という訳ではないようである。

ソラトは何故キバニアのような気性の荒いポケモンがこんな街中の噴水に迷い込んだのかを考えていると、ソラトの肩にライが乗る。

 

「マイ、マイ!」

 

「ん、どうしたライ?」

 

「マイ」

 

ライが指差した先には噴水の排水溝があったが、そこは普段ならば頑丈な鉄製の格子で閉じられている筈が、今は格子が破壊されていた。

 

「なるほど、排水溝の格子が壊れていて下水道から野生のキバニアが迷い込んできたのか。危ないし後で業者に修理を依頼しておかなくてはな」

 

ツワブキがそう結論付けるが、ソラトは破壊された格子の跡をよく観察して見ていた。

そしてある事に気がついた。

 

「いえ、あの格子は何かで切られたような跡です。キバニアが壊したならもっとひしゃげている筈…恐らく人の手で壊されています」

 

「何だって? 誰が何のために…」

 

「今のキバニアがツワブキさんに襲い掛かったのも偶然じゃないかもしれませんね。何か襲われるような心当たりはありますか?」

 

「…ここでは話せないな。こっちに来てくれ」

 

ツワブキは周囲を警戒するような仕草を見せるとソラトに着いてくるように促して歩き出した。

ソラトはツワブキの後に続いて歩き出した。

アラシを探していた筈なのに何故ツワブキのゴタゴタに態々首を突っ込むのかとも思えるが、これは単にソラトの面倒見の良さが発揮されているだけである。

要は困った人を放っておけないのだ。

 

こうして噴水広場を離れていくソラトとツワブキを人目につかない建物の角から覗き見している集団がいた。

それはいつものズッコケロケット団ではなく、青い服に黒く長い髪をたなびかせた美しい女性とそれに付き従う青いバンダナをして白黒の水夫のような服を着た人物達だった。

 

「イズミ様、ターゲットが離れてゆきます」

 

「見りゃ分かるよ! ったく、何なんだいあの小僧はアタシのキバニアをこうもあっさり退けちまうし…あの小僧がターゲットに着くなら少々厄介だね」

 

イズミと呼ばれた長い黒髪の女性は忌々しそうにソラトの後姿を睨みつける。

 

「ではいかが致しますか?」

 

「…こうなったらターゲットを追跡するよ。そしてブツを手放した瞬間に掻っ攫うんだ。BチームとCチームにも連絡しておきな」

 

「「はっ!」」

 

こうして青い装束の集団はその場を離れてソラト達が向かった方角へと足を進めたのだった。

そしてソラトがツワブキに案内されてやってきたのは巨大なビルの1つであり、ホウエン地方に住む者ならば誰もが知ってる大企業、デボンコーポレーションだった。

 

「ここは…」

 

「さぁ、中へ入りたまえ」

 

何やら家に帰ってきたかのような気軽な雰囲気でデボンコーポレーションに入るツワブキを見て、デボンの役員なのかと思うソラトだったが、ツワブキを見た周囲の社員がツワブキに向かって礼をして挨拶をする。

 

「おかえりなさい、社長!」

 

「社長、後でお話がありますので時間の調整をお願い致します」

 

「社長…もしかしてツワブキさん、デボンコーポレーションの…!」

 

「ああ、改めて自己紹介しよう。私はツワブキ ムクゲ。デボンコーポレーションの社長をやっているんだ」

 

流石のソラトも大企業の社長を助けたとは知らずに驚きに目を見開いている。

大企業の社長が昼間っから噴水広場でのんびりしていていいのかというツッコミは置いておこう。

しかしデボンの社長というだけでは誰かにポケモンを使って襲われるという理由としてはあまり納得ができない。

 

「…まだここでは話せないんだ。社長室へ行こう、そこで話すよ」

 

「はい」

 

そんな風に考えるソラトの思考を察したのかツワブキはエレベーターに乗り社長室のあるビルの最上階までソラトを案内した。

 

「さて、改めてお礼を言わせてくれ。先ほどは助けてくれてありがとう」

 

「いえ、お礼ならコイツに」

 

「マイマイ!」

 

「そうか、ありがとうマイナン」

 

「マイ!」

 

ソラトの肩に乗っていたデンに礼を言うツワブキに、デンも嬉しそうに応えた。

そしてそこからソラトは気持ちと表情を切り替えて本題に入る。

 

「それで、貴方が襲われる理由…心当たりがあるんですね?」

 

「うむ…実はコレなんだ」

 

そう呟いてツワブキはスーツの内ポケットから何か小さな物を取り出して机の上に置いた。

何かの機械の部品のようにも見えるそれは、傍から見ればそれほどの価値があるとは思えなかった。

 

「これは何ですか?」

 

「これは今カイナの造船所で作られている潜水艦の不可欠なパーツなんだ。このパーツを組み込むことで今まで行くことができなかった更なる深海を探査する事ができる革新的なパーツなのさ」

 

「なるほど…それを狙う奴らに心当たりは?」

 

「残念ながらそこまでは…だがこれは奪われたりする訳にはいかないんだ。すぐにでもカイナの造船所に送らなくてはならないからね、今日にでも発送すれば大丈夫だろう」

 

「そうですか、気をつけて下さいね。そうだ、ツワブキさんにお聞きしたい事があるんですが…」

 

ツワブキ社長の事情を把握したソラトはついでに聞いておこうと荷物の中からアラシの写真を取り出してツワブキ社長に見せる。

アラシの事を知らないか尋ねようとしたがソラトが何かを言う前に、今度はツワブキ社長が目を見開いて驚いていた。

 

「アラシ…!」

 

「オヤジを、オヤジを知っているんですか!?」

 

アラシの事を何か知っているような態度に、ソラトは相手が社長だという事も忘れて両肩を掴んで前後に揺する。

 

「わたた! ソ、ソラト君落ち着いてくれ!」

 

「あっ、すいません…」

 

自分が今会社の社長に対してもの凄く失礼な事をしてしまっていると気がついたソラトはハッとなってすぐにツワブキ社長の両肩を離す。

少しスーツがシワになってしまったかもしれないがツワブキ社長は気にした様子は無かった。

 

「い、いや構わないさ。もしかしてソラト君がアラシの息子なのかい?」

 

「はい、5年前から行方不明になったオヤジを探す旅をしているんです」

 

「そうか…実はアラシと私は古い友人でね。つい1週間前ほどにも私の元へ訪ねて来たんだ。そしてこれを置いていったんだ」

 

そう言ってツワブキ社長が取り出したのは古めかしく、妙な形をしたペンダントだった。

ペンダントは白く丸い小さな石を中心に×印のように黄土色の装飾があり、×印の左右が丸く縁取りされているかのような形状をしていた。

一見するとただの古いペンダントだが、ソラトはこのペンダントに見覚えがあった。

 

「これは…!」

 

「これが何か知っているのかい?」

 

「これは、オフクロが昔から持っていた物と同じです…最後にオヤジが旅に出るときにお守りとして渡していた筈なんですが…」

 

ソラトの母親であるソヨカから、アラシが5年前に旅に出るその日にアラシの身を守りますようにと渡されていた筈なのだ。

だがアラシはそんな大切なペンダントを古い友人であるツワブキ社長に託していた。

 

「そうか、あの言葉はそういう意味だったのかアラシ」

 

「え?」

 

「実はアイツがこれを置いていった時にこう言っていたんだ。『あるクソガキが来たらこいつを渡しとけ。もう1週間もすれば来るだろうから任せた』だそうだ。恐らくソラト君が来るのを予測して私に渡しておけと言ったんだろう」

 

「あのクソオヤジ…大企業の社長であるツワブキさんを顎で使いやがって…」

 

ソラトは手で顔を覆って呆れと諦めのような雰囲気を漂わせながらアラシに対しての感情を露にする。

そんなソラトの様子を見て何か思う所があるのかツワブキ社長も苦笑いをしていた。

 

「まぁ古い友人からの頼まれごとだ。これはソラト君に渡しておくよ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

ソラトはツワブキ社長からペンダントを受け取るとそれを力強い眼差しで見つめ、自分の首へとかけた。

 

「ツワブキ社長、ありがとうございま―!?」

 

ソラトがお礼を言おうとした瞬間、デボンコーポレーションのビルに爆音が響き、大きくビルが揺れた。

どう考えてもこのビルで爆発が起ったのだ。

その振動が最上階の社長室まで伝わったということは、かなりの規模の爆発だったのだろう。

ツワブキ社長は机の電話を取るとすぐに社員に電話をかける。

 

「どうした!? 今の音は!?」

 

『しゃ、社長! 青い装束の者達が突然乗り込んできて…! 今エレベーターで何人か社長室に向かいました!』

 

「なんだと!? はっ!」

 

そうして連絡を取り合っている間にエレベーターがこの最上階に到着してしまい、ドアが開くと黒く長い髪をした青い装束の女性を先頭に青い装束の男が2人乗り込んできた。

 

「あれは…」

 

「お前たちは何者だ!」

 

「我々はアクア団、アタシは幹部のイズミだよ。ツワブキ社長アンタの持っている例のパーツを渡してもらおうか」

 

アクア団と名乗った集団のリーダー的存在なのか、長い黒髪の女性は一歩前に出るとそう宣言した。

それに対し、アクア団とツワブキ社長の間に割り込むようにしてソラトが前へ出た。

 

「お前らが最近ホウエンで暗躍してる悪の組織、アクア団か」

 

「アンタはさっき邪魔してくれたヤツだね。今度も邪魔するならタダじゃおかないよ! 行けグラエナ!」

 

「グァウ!」

 

「デン、バトルの時間だ!」

 

「マイ!」

 

ソラトがアクア団の前に立ち塞がると幹部の女性であるイズミがグラエナを繰り出し、それに応える様にソラトは肩に乗っていたデンを繰り出した。

まずはグラエナが地面を蹴って跳びかかる。

 

「グラエナ、かみつく攻撃!」

 

「グァ!」

 

鋭い牙を光らせながらデンに噛み付こうとするグラエナだが、それを易々と受けるデンとソラトではない。

 

「かわせデン!」

 

「マイマーイッ!」

 

ジャンプしてグラエナの攻撃を回避することに成功したデンだったが、その隙にアクア団のしたっぱの2人が脇をすり抜けてツワブキ社長の所へ行ってしまう。

 

「こ、こらやめろ!」

 

「いいから例のブツをよこせ!」

 

「しまった! ツワブキ社長!」

 

「今だよグラエナ、とっしん!」

 

「グラウッ!」

 

「マイー!?」

 

ソラトがツワブキ社長の方へと意識を逸らしてしまい生み出した隙を、イズミは見逃さなかった。

グラエナの強力なとっしんが決まり、デンが大きく吹き飛ばされてしまう。

そしてその隙にツワブキ社長はアクア団のしたっぱに無理矢理潜水艇のパーツを奪われてしまう。

 

「デン! 大丈夫か?」

 

「マイ…!」

 

「パ、パーツが!」

 

デンはまだ何とか戦闘に戻れそうだったが、パーツを手に入れたイズミはもう用は無いとばかりにグラエナをボールに戻してしまう。

 

「目的は達成した。ズラかるわよ!」

 

「「イエッサー!」」

 

撤退を決めたアクア団は社長室の窓を突き破り外に飛び出した。

高層ビルの最上階なのでかなりの高さがあるが、アクア団は持っていた機械を展開すると一瞬で簡易のグライダーのようなもので安全に降下していった。

 

「パーツが奪われてしまった…! すぐにジュンサーさんに連絡しないと!」

 

「俺が追いかけます! 戻れデン。出て来いサジン!」

 

「フラッ! フラ~」

 

ソラトはデンを戻し、サジンを新たに破れた窓の外に出す。

ボールから出てきたサジンだったが、何時も通りソラトを見るとすぐに顔を擦り付けて甘えてしまう。

だが今はそんな事をしている余裕は無い。

 

「こらサジン! 今は緊急事態なんだ! あの窓からアクア団を追うぞ!」

 

「フラ、フライッ!」

 

サジンの背中に乗って窓の外に飛び出たソラトはアクア団が飛び去って行った方向へ飛び後を追跡する。

その間にアクア団は道路に着地して陸路を逃走する。

空から降りてきた怪しい集団に周囲の人々は驚いていたが、そんな事はお構いなしとばかりにアクア団は風のように街を駆け抜ける。

だがサジンで空から追跡するソラトはアクア団をすぐに補足する。

 

「逃がすか!」

 

「チィ、もう追いついてきたのかい!」

 

アクア団が逃げ、ソラトが追跡するその先にはサトシとピカチュウとマサトが出店で買ったであろうアイスクリームを食べながら歩いていた。

 

「うーん、美味しいなこのアイス!」

 

「ピッカ!」

 

「うん! …あれ、もしかしてあれってソラト?」

 

「え?」

 

道を歩いていたサトシとピカチュウとマサトだったが、道を走るアクア団とそれを追いかけるソラトを発見する。

 

「サトシ! ピカチュウ! マサト! 頼むそいつら止めてくれ!」

 

「え? えっと…ピカチュウ、とりあえず10万ボルトだ!」

 

「ピーカーチュゥウウウウウウ!」

 

「なっ!? 総員回避!」

 

ピカチュウの10万ボルトが放たれるが、アクア団は間一髪で回避する。

だが外野からの攻撃を受けて焦っているようにも見えた。

それもそうだ、10万ボルトなんて技を受けてしまえば先ほど奪ったパーツが壊れてしまうかもしれないのだ。

 

「外野まで攻撃してくるとはね…こうなったら…!」

 

イズミはサトシからの攻撃を受けて考えを変えたのか、近くにいた老人の傍にいたキャモメを無理やり捕まえると脇に抱え込んだ。

 

「ピ、ピーコちゃん! 何をするんじゃ!?」

 

「黙りな! 攻撃するんじゃないよ、もし攻撃してきたらこのキャモメは唯じゃ済まないからね!」

 

「キャー! キャー!」

 

「人質…じゃなくてポケ質を取るなんて卑怯だぞ! て言うかお前等誰だ!?」

 

「サトシ、そいつらはアクア団だ。ホウエン地方に暗躍してる悪の組織で、今まさに強盗の真っ最中なんだ!」

 

「このキャモメがいれば逃げ切れるね。ズラかるよ!」

 

「「はっ!」」

 

状況がよく分かっていないサトシにソラトが補足をするが、それで状況が変わる訳でもない。

そのままアクア団はキャモメをポケ質に取ったままカナシダトンネルのある方向へと向かった。

 

「俺達も追いかけよう!」

 

「うん!」

 

「先に行くぞ!」

 

サトシとピカチュウとマサトもすぐにアクア団を追いかけようとし、ソラトはサジンに乗ったまま追跡を再開した。

そしてその後を走って追いかけようとするサトシだったが、そのサトシの腕を何者かが掴んだ。

 

「え?」

 

「た、頼む少年! ワシのピーコちゃんを助けてくれ!」

 

サトシの腕を掴んだのは先ほど連れ去られてしまったキャモメのピーコちゃんのトレーナーであろう老人だった、

連れて行かれてしまったパートナーであるキャモメのピーコちゃんを余程心配しているようで、鬼気迫る様子でサトシに詰め寄ってきている。

 

「任せて下さい! 必ず助け出してみせます! 行くぞピカチュウ、マサト!」

 

「ピカ!」

 

「うん!」

 

そしてサトシ達もアクア団が走り去っていた方向へと走り出す。

アクア団を追いかけて行く道の途中、ショッピングと聞き込みを終えたハルカが荷物を持ってサトシ達の視界に入る。

 

「あ、お姉ちゃん!」

 

「あれ、マサトにサトシ。そんなに急いでどうしたの?」

 

「大事件なんだよ! ソラトが犯人を追ってるから俺達も行くぞ!」

 

「え、え? ちょっと何がどうなってるのー!?」

 

と、このように道すがら合流したハルカも何がなんだか分からない内に巻き込まれてしまうのだった。

ハルカを巻き込みカナシダトンネルの付近へとやってきたサトシ達はすぐにトンネルの入り口を見つける。

 

「あった! あれがカナシダトンネルだよ!」

 

「あれってさっきの奴らだよな。なんかいっぱいいるけど見張りか?」

 

「もー、何がなんだか分からないかも~」

 

文句を言っているハルカはさて置き、トンネルの入り口は4人の青い水夫のような服を着た男女…アクア団のしたっぱ達が封鎖していた。

 

 

 

 

 

一方、トンネルというよりは洞窟と言ったほうが良いほど整備されておらず、とりあえず穴を掘って開通させただけのトンネル、カナシダトンネル。

ホウエン地方の大都市カナズミシティとのどかな田舎町シダケタウンを繋ぐために開通させられたホウエンの大切な陸路。

そんなカナシダトンネルをアクア団は通過していた。

このままシダケタウンへと行き、逃げ切る算段をつけているのだろう。

街でキャモメをポケ質にしてから追跡も振り切れ、後ろには既に誰もいなかった。

 

「ふぅ、何とか振り切ったかね」

 

「イズミ様、そのキャモメはどうするのですか?」

 

「そうだね…このままアジトへ連れ帰ってアクア団の新たな戦力にするというのも悪くないね」

 

「キャー…」

 

「まぁまずは今回のミッションの要である例のパーツを運びきるのが先だね。最後まで油断するんじゃないよ」

 

「「はっ!」」

 

そうしてやり取りをしている最中、アクア団のしたっぱの足元の土が盛り上がる。

 

「「へ?」」

 

「フーラッ!」

 

「「のわーっ!?」」

 

ボコっと音がすると同時に、その盛り上がった土からサジンが飛び出してアクア団のしたっぱを吹き飛ばした。

イズミは間一髪で回避したが、その隙に捕まえていたキャモメを手放してしまう。

キャモメは翼で滑空するとサジンの背に乗っていたソラトの肩に止まって落ち着いた。

 

「チィ、さっきのフライゴン…穴を掘って先回りしてたのかい!」

 

「そういう事だ。さぁ観念して潔くお縄に着きな」

 

サジンのあなをほるによって作られた地中の道を通り、ソラトが姿を現した。

吹き飛ばされたしたっぱは気絶してしまっているようで動くことができない。

今度こそソラトとイズミの一騎打ちだった。

 

「このトンネルの入り口に別のチームを配備して追っ手を撒く手はずだったってのに無駄になったかい」

 

「今頃そいつ等も俺の仲間が相手してるさ。さぁ、降参するか?」

 

「冗談じゃないよ。アンタを倒して逃げ切らせて貰う! いきなグラエナ!」

 

「グァウ!」

 

「サジン、バトルの時間だ!」

 

「フーラッ!」

 

再びイズミのグラエナがモンスターボールから繰り出され、ソラトもサジンを前に出す。

デンはキャモメとは反対のソラトの肩に乗っかり待機していた。

 

「グラエナ、とっしん!」

 

「ドラゴンクローで迎え撃て!」

 

「グガウッ!」

 

「フライッ!」

 

全身全霊のとっしん攻撃を繰り出すグラエナだが、サジンは緑のエネルギーで生み出された竜の爪を振るって迎撃する。

突進と爪がぶつかり合った瞬間、トンネルを揺るがす大きな振動が起こり相殺される。

イズミは舌打ちすると大勝負に出ることにした。

このまま時間を浪費してしまえばソラトだけではなくサトシ達やジュンサーにも追いつかれてしまう。

 

「グラエナ! このトンネルごと吹き飛ばすんだ! はかいこうせん!」

 

「させるか、サジン! りゅうのいぶき!」

 

「グァ!」

 

「フラー!」

 

トンネルを破壊して逃げようと考えたイズミははかいこうせんを天井に放ちトンネルを崩そうとする。

はかいこうせんの威力があれば、まだしっかりと整備されていないカナシダトンネルを崩落させる事はできるだろう。

だがそれを易々とさせるソラトではない。りゅうのいぶきではかいこうせんを相殺させてトンネルの崩落を防ぐ。

 

「くっ!」

 

「よし、今なら反動で動けない! サジン、もう1度りゅうのいぶきで―」

 

はかいこうせんの反動で動けないグラエナを狙いもう1度サジンに攻撃の指示を出そうとするソラトだが、その周囲で蠢く気配に気がつき思わず動きを止める。

周囲で蠢いた気配、それは周囲の岩に擬態していたポケモン達だった。

 

「イシツブテにゴローン…ゴローニャ…!」

 

カナシダトンネルは整備がされていないため野生のポケモンが多く出没するため未だに通る人は少ない。

そしてこのイシツブテとゴローンとゴローニャは岩に擬態するため接近されても気がつかない人々が多いのだ。

ソラトとイズミもゴローニャ達が動き出して正体を現すまで気がつかなかった。

しかもゴローニャ達は近くでドンパチされたためか興奮しており、怒りに体を震わせていた。

 

「ゴロ」

 

「ゴロー」

 

「イッシ!」

 

「あー…これはヤバいな…」

 

「ま、まさか…!?」

 

「「「「ゴローッ!!」」」」

 

周囲に10体以上のゴローニャ達に囲まれ、体を震わせながら体内にエネルギーを溜める。

そして体を炸裂させるようにしてそれを解き放った!!

 

「じ、じばくだぁ!」

 

「くっ!?」

 

「「どわぁあああああああっ!?」」

 

ゴローニャ達のじばく攻撃による爆風と衝撃でソラトとイズミ、そしてようやく目を覚ましたアクア団のしたっぱ2人は大きく吹き飛ばされる。

ソラトは吹き飛ばされるが地面を転がりすぐに体勢を立て直すが、イズミは吹き飛ばされてしまいそのまま倒れこんでしまう。

そしてアクア団のしたっぱ2人はカナシダトンネルの出口の方まで吹き飛ばされてしまった。

 

「まずい! 今の衝撃でトンネルが崩れる…!」

 

ゴローニャ達のじばくにより、カナシダトンネルが大きく揺らめき崩落を始める。

アクア団のしたっぱ2人は大慌てでトンネルの出口から逃げ出していくが、奥に吹き飛ばされてしまったイズミはそう簡単に脱出はできない。

すぐに立ち上がりイズミも部下が出て行った出口に向かって走り出すが、どう考えても間に合わない。

イズミの頭上の岩が崩れ、イズミを押し潰そうとする。

 

「なっ…!」

 

それを見て流石に体が膠着してしまい動けなくイズミ。

だが、次の瞬間イズミの視界が大きくブレると崩れてきた岩から逃れる事ができた。

 

「…ア、アンタ」

 

ソラトがイズミに飛びつき岩から逃れたのだ。

まさか追っ手に助けられるとは思わなかったのか、イズミも目を見開いて驚いている。

 

「ふ~、あっぶね…急いで脱出するぞ!」

 

「あ、ああ…」

 

ソラトはイズミを助け起こし、サジンとグラエナと共にすぐにトンネルの出口から脱出した。

それと同時にカナシダトンネルが大きく揺れて出口から大量の粉塵が吹き出てくる。

カナシダトンネルの外に出ると、先ほど先に脱出したアクア団のしたっぱ2人とカナシダトンネルの入り口を守っていたしたっぱ6人が、サトシ達とバトルを繰り広げていたようだ。

 

「けほっ、けほっ! ったく、生き埋めになるとこだったぜ」

 

「まったくだね…こほっ」

 

「お兄ちゃん! 大丈夫!?」

 

「ああ、なんとかな」

 

「「ソラト!」」

 

洞窟から出てきたソラトを見るや否や、ハルカはバトルを放棄してソラトの元へと向かう。

サトシとマサトもソラトの元へと駆けつける。

 

「俺は大丈夫だよ。さてアクア団、お前らはどうする? このままバトルして捕まるかそれとも盗った物を返すか…選びな」

 

「フラッ!」

 

ソラトがそう宣言するとサジンがキッとアクア団を睨みつける。

その実力を知るアクア団のしたっぱ2人は震え上がり、イズミも額に汗を流している。

 

「…仕方ないね。正直アンタの実力は尋常じゃないし、さっき助けられた借りもあるしね」

 

イズミは持っていた潜水艦のパーツをソラトに向けて放り投げ、ソラトはそれを受け取ると先ほど見たパーツだと確認するとポケットの中に納めた。

 

「だが覚えておきな。アクア団の理想の世界を作るまで、アタシ達は諦めないよ! ズラかるよお前たち!」

 

イズミはパーツを返すとすぐさま合図してしたっぱ達を率いて撤収する。

カナシダトンネルの近くにある森の中へとスッと溶けるように消えていった。

 

「ああっ、逃げちゃったよ!」

 

「深追いはしない方がいいな。今は奪われた物を取り返せただけでも良かった事にしよう」

 

「キャー!」

 

「あっ、お前カナズミシティにいたお爺さんのキャモメだな。無事でよかったぜ」

 

先ほどポケ質にされていたキャモメも無事だったようでサトシの頭の上に留まると元気に鳴いた。

これにて事件は一件落着ということでサトシ達はカナズミシティに戻ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

日も暮れてきた頃、取り返した潜水艦のパーツを返すためにサトシ達はデボンコーポレーションのビルの下でツワブキ社長と対面していた。

周囲にはデボンコーポレーションの社員の人々やジュンサーさんが事後処理と取調べを行っていた。

ソラトは1歩前に出て持っていたパーツを差し出した。

 

「ツワブキさん、潜水艦のパーツは取り戻しました。お返しします」

 

「ありがとうソラト君。君は我が社の恩人だよ」

 

「ソラト、まさかデボンコーポレーションの社長さんと知り合いなの!?」

 

その一連の光景を見ていたマサトが驚きの声を上げた。

 

「さっき知り合ったばかりだけど、オヤジの古い友人らしいんだ。先日オヤジがツワブキさんにこのペンダントを預けていったらしいんだ」

 

ソラトはツワブキ社長から貰った母親のペンダントを見せると3人はまじまじとそれを見つめた。

 

「不思議なペンダントだね」

 

「それをアラシさんがソラトに宛てて預けたのか」

 

「でもそれ着けたお兄ちゃんもかっこいいかも!」

 

「はは、ありがとな。さて、それじゃムロ島に向けて出発するか」

 

「あれ? でもキンセツジムにも行けるんだろ?」

 

この件が済み、次の町に向かうために行き先を決めるソラトだったがそれに対してサトシが疑問を浮かべる。

陸路でキンセツシティのキンセツジム、海路でムロタウンのムロジムの筈だったがソラトは既にムロジムに決めているような口ぶりだった。

 

「いや、キンセツシティを目指すにはカナシダトンネルを抜けなきゃいけなかったんだが、今回のゴタゴタで崩れちまったからな。ムロタウンに決定だ」

 

「あの爆発で崩落しちゃったんなら、開通にはまた時間がかかっちゃうかも」

 

今回の事件で崩落してしまったカナシダトンネルを通らなければキンセツシティには向かうことができないため、ムロタウンへ向かう事に決定したらしい。

そのためには定期便に乗らなければならないのだが…。

 

「残念だけど、今回の件で定期便はしばらく出せないわ」

 

ジュンサーさんが話を聞いていたのかサトシ達に近寄ってそう言った。

 

「ええっ!? 何でですか!?」

 

「アクア団は海を縄張りにしているから、今回の事件を聞いた定期便を運営している会社がしばらく船を出すのを自粛するそうよ」

 

「そ、そんな~!」

 

「ピ、ピーカ!」

 

船や船員の安全のために定期船がしばらくでないと知ったサトシはショックを受けてしまい項垂れる。

ジッとはしていられない性質なのだが、陸路も海路も塞がれてしまってはどうしようもない。

落ち込むサトシに皆は苦笑いするが、そこへ近づく人影があった。

 

「そういう事ならワシに任せてくれんかの」

 

「キャー!」

 

「アナタは…ハギ老人!」

 

ジュンサーさんが近寄ってきて声を掻けたガタイの良い老人を見てそう言った。

 

「誰なんですか?」

 

「この街に住んでいる船乗りのお爺さんよ」

 

「あなたは、さっき事件に巻き込まれていたキャモメのトレーナーさんですね!」

 

そう、今回の事件に巻き込まれてしまったキャモメのトレーナーである男性の老人だ。

その肩にはしっかりとキャモメがとまっており元気そうに鳴いていた。

 

「ピーコちゃんを助けてくれたお礼じゃ! ムロまでワシの持つ高速船、ピーコちゃん号で連れて行ってやろう!」

 

「本当ですか!? やったぁ!」

 

「ピーッカ!」

 

どうやらハギ老人が船を出してムロ島まで送ってくれる事になったらしく、一転サトシとピカチュウは元気になった。

何とかムロタウンへの道は開けたようである。

 

「だが出発は明日の朝じゃな。明日港で準備しておるからな」

 

「「「はい! ありがとうございます!」」」

 

サトシとハルカとマサトはハギ老人にお礼を言い、そしてソラトはそれを微笑ましく見守っていた。

そしてそんなソラトにツワブキ社長が声を掛ける。

 

「ソラト君、ムロ島に向かうなら2つほど頼まれてはくれないかね?」

 

「え?」

 

「1つは、この潜水艦のパーツをカイナの造船所まで届けて欲しいんだ。ムロでの用事が済めばカイナに向かうだろう? 今回の事があるし、普通の輸送手段では不安でね…」

 

貴重なパーツをソラトに渡す事でまた危険な目に逢わせてしまうかもしれないという不安からだろうか、ツワブキ社長の目には躊躇いが見て取れた。

だが、ソラトは持ち前の面倒見の良さが発揮されてフッと笑った。

 

「はい、このペンダントの件もありますし、お礼代わりになるのでしたら」

 

「そうか、すまない。危なくなったら捨ててしまっても構わないから、頼んだよ」

 

「大丈夫です、必ずカイナまで持っていきます」

 

「ありがとう。もう1つはムロ島の石の洞窟という場所に私の息子のダイゴがいると思うから、この手紙を渡して貰えないかな?」

 

「それくらいなら、お安い御用です」

 

ソラトはツワブキ社長からパーツと手紙を受け取ると大切にリュックに仕舞い、サトシ達の元へと向かった。

 

アクア団の魔の手から無事に大切なパーツを取り返したソラト達。

さぁ、次のジムがあるムロタウンへの船出はもうすぐである!

 

 

 

to be continued...




前書きにもありましたが今後については活動報告に書いておきます。
またこれからもポケットモンスター黒衣の先導者をよろしくお願いします。

追記
あと今回ソラトに渡されたペンダントの形って皆さんに伝わりましたか?
アレです、あのそうぞうポケモンのマークの真ん中に石がはめ込まれた感じでイメージして下さい。

…ってこれネタバレですねスイマセン。
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