ポケットモンスター-黒衣の先導者-   作:ウォセ

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今回はバトルがメインの回になります。
個人的には熱いバトルが描けたのではないかぁ、とか思ったりしています。


ムロジムリベンジマッチ 信じろ! ポケモンが信じる自分を!

ムロジムへのリベンジのために修行に明け暮れるサトシ達。

修行の成果によってサトシのポケモン達は格段にレベルアップしており、サトシ自身もトレーナーとして成長していた。

しかし現状に満足はせず、今日も今日とて修行を行っていた。

 

「キモリ、はたく攻撃!」

 

「避けろキノコ!」

 

「キャモーッ!」

 

「ガッサ」

 

今行っているのはソラトを相手にした模擬バトル訓練。

実戦とほぼ変わらぬバトルを行いサトシとポケモン達の調整を行っているのだ。

キモリが尻尾を振るい攻撃を繰り出すも、キノコは慌てずにフットワークを利用してそれを避ける。

 

「マッハパンチ!」

 

「ガーッサ!」

 

音速に匹敵する強力なパンチが放たれる。

回避は間に合わないと判断したサトシは例の方法で受け止める事にする。

 

「キモリ、尻尾を盾にしろ!」

 

「キャモッ! キャモーッ!?」

 

柔らかく弾力のあるキモリの尻尾によってマッハパンチを受け止めて凌ごうとするが、強烈なパンチにはキモリを弾き飛ばしてしまう。

しかしダメージを軽減したのも確かなようで、空中で体勢を立て直したキモリは見事に着地してキノコを警戒する。

 

「キモリ、大丈夫か!?」

 

「キャモ!」

 

「やるなキモリ。ならコイツはどうだ…? キノコ、かみなりパンチ!」

 

「ガサガサ、ガーッサ!」

 

キノコの右腕にバチバチと電撃が集まると、雷を纏ったパンチが繰り出される。

 

「なっ!? キモリ、もう1度尻尾で受け止めるんだ!」

 

「キャモッ! キャモモモーッ!?」

 

先ほどと同じように尻尾でキノコの拳を受け止めたキモリだったが、今度は電撃を纏ったパンチである。

尻尾に触れたかみなりパンチはそのまま尻尾を伝いキモリへ電撃のダメージを与える。

 

「ああっ! 大丈夫かキモリ!?」

 

「キャ、キャモ…」

 

「尻尾の防御は悪くないが…頼りすぎるのは良くないぜサトシ。何度も見てればトウキさんだって対策してくるだろうし、今みたいに予想外の技で突破されるかもしれないからな」

 

「そうか…そうだな! でもソラトのキノコも、何時の間にかみなりパンチを覚えたんだ?」

 

「俺だって修行に付き合うだけじゃないさ。オヤジを見つけて連れ戻すためにも、もっと強くならないといけないからな」

 

どうやらソラトはソラトで修行を重ねていたらしい。

キノコは弱点となるひこうタイプの相手へのジョーカーとなり得るかみなりパンチを習得していたようだ。

 

「トウキさんだって、サーフィンを利用して日々鍛えているだろうし…ハリテヤマも前より強くなってるだろうな」

 

「望む所だぜ! 今度こそ絶対に勝ってやるんだ!」

 

バトルが一息ついたところでハルカとマサトがサトシ達の元へやって来る。

 

「凄いやソラト! キノコがかみなりパンチを覚えたんだね!」

 

「お兄ちゃんもサトシも、どんどん強くなっていくわね!」

 

「でもサトシ、今度こそ勝つって言うけどいつトウキさんにリベンジしに行くの?」

 

「え? それは…」

 

確かに、サトシはトウキにリベンジするために幾日も修行に励んでいる。

だがいつリベンジをするのかは明言してはいない。

ホウエンリーグの開催はまだまだ先だがいつまでもこの場所に留まっている訳にもいかないため、そろそろムロジムへのリベンジを本格的に考えなければならなかった。

だが…

 

「いや、リベンジはまだ先だ。ポケモン達は頑張ってくれてるけれど、俺はまだまだだからな」

 

「キャモ…」

 

「ピカ…」

 

「よし、ピカチュウ、キモリ! このまま走りこみ行こうぜ!」

 

「ピカ…」

 

「キャモ…」

 

自らを未熟だと言うサトシは自身もまた鍛えるために砂浜を駆け出した。

傍にいたピカチュウもキモリもそんな事は無いと言いたげにサトシを見つめるが、サトシは走っていってしまう。

 

「サトシ、ちょっと自分に厳しすぎないかしら」

 

「多分、ムロジムで負けた時の事を反省してるんだろうな。自分がもっと冷静にしていれば勝てたかもしれない。そうじゃなくてもキモリやスバメにあんなに負担をかけなかったかもしれないって考えちゃうんだろうな」

 

サトシの背中を心配そうに見つめるハルカとマサト。

そしてサトシを気遣う気持ちはソラトも同じだった。

バトルに負けたトレーナーの気持ちは大きく2種類に分けられる。

1つはポケモンが弱くて負けたと敗北の理由をポケモンに押し付けるタイプ。もう1つは自分の指示が悪かったとトレーナー自身が大きく責任を感じてしまうタイプである。

前者も悪いわけではない。ポケモンのレベルが足りなければ勝てないのは道理であるし、それによってポケモンを鍛えたり進化させたりと様々な解決法がある。

寧ろ問題なのは後者である。トレーナーの力量はポケモンのレベル等とは違い目に見えにくい。つまりトレーナーとしての力量が上がっても自分では実感し難いのだ。

そのためトレーナーが責任を感じてしまうと立ち直るのに時間がかかってしまう。

丁度今のサトシのように…。

 

「…また一つ、話しておくとするか」

 

遠くなっていくサトシの背中を追いかけるピカチュウとキモリを見つつ、ソラトはそう呟いた。

 

 

 

その日の夜。

満天の星空の下。夕飯を済ませたサトシ達はそろそろ眠る時間だった。

だがサトシは建てられているテントから出てしまっており、相棒のピカチュウと共に芝生に腰を降ろして空を見上げていた。

サトシが眠れない理由、それは…

 

「俺、成長できているのかな…」

 

「ピカピ…」

 

「ピカチュウ、お前やキモリ…皆は頑張ってくれてるよ。でも俺自身がトレーナーとして成長できてるか不安でさ…」

 

サトシを気遣い傍に寄り添うピカチュウに、内心の不安を吐露するサトシ。

そのまま星空を眺めていると、夜の闇に溶けるような黒いコートを着たソラトがやって来た。

 

「キレーな空だよな」

 

「え? あ、ソラト…」

 

「よう、サトシ」

 

ソラトはサトシの横に腰を降ろすとそのまま寝転がると共に空を見上げた。

 

「…」

 

「それで、いつ頃トウキさんにリベンジしに行くか決めたか?」

 

「…分かんないよ、そんなの」

 

まさに今考えていた痛い所を突かれたサトシは少々ぶっきらぼうに返事をした。

修行をしてポケモン達は強くなってきた。だが自分自身はどうなのか。もう挑んでもいいのか、まだ早いのか…その判断がサトシにはできないでいた。

次こそ勝つと自分とポケモン達に誓った。

それでも勝てるかどうか不安は拭えない…そういったサトシの複雑な内心がソラトも手に取るように分かった。

 

「…俺もさ、旅する途中で何度も負けたよ」

 

「…」

 

「それで悔しいって思う気持ちもある。この前だってダイゴさんに負けて、本当は凄く悔しかった」

 

「え…」

 

あの時確かにソラトは負けたが、サトシから見たら冷静そのものだった。

それでもソラトが内心悔しがっていたと聞いてサトシは意外そうに目を見開いた。

 

「この世界、上を見上げればキリがない。チャンピオンのダイゴさんに、四天王、ジムリーダー…まだ見ぬトレーナー達…そして俺のクソオヤジもな」

 

「アラシさんも…」

 

「ああ。自分の積み上げてきた全てを打ち崩されるような敗北を喫することもある…それでも俺達は、もう1度最初から積み重ねて前に進む」

 

そこでソラトは1度言葉を区切ると、頬を撫でる涼しげな一陣の風が吹きぬける。

 

「それがポケモントレーナーだ」

 

「ポケモン…トレーナー…」

 

「ピィカ…」

 

ソラトの思うポケモントレーナーとは…その言葉の意味を知ったサトシはソラトの顔を見つめる。

 

「後は自分の積み重ねたものを信じて、全力を尽くすだけだ…だからさ、サトシも自分と、自分の積み重ねたものを信じてみろ」

 

「俺自身と、俺の積み重ねたものを…」

 

「お前がこの修行で積み重ねたものは決して無駄じゃない。俺が保障する」

 

再びサァーっと風が吹き抜けると、サトシは不安に覆われていた心がスッキリと晴れていくような気分だった。

ソラトに修行は無駄ではないと言われるととても安心できた。

自分の努力をひけらかすのはあまり好きではないサトシだったが、こうして認められるのは悪い気はしないのだ。

 

「…ありがとうソラト。俺、明日トウキさんにリベンジするよ!」

 

「そうか…頑張れよ」

 

「うん!」

 

サトシはソラトの真似をするように草原に寝転ぶと満天の星空の下で眠るのだった。

 

 

 

 

 

翌日の朝。

サトシは皆と共にムロジムの前へとやって来ていた。

 

「たのもーう! トウキさん、リベンジしに来ましたー!」

 

「ピカピカチューウ!」

 

ムロジムの扉を叩くサトシは気合に満ち溢れており燃えに燃えていた。

 

「サトシってば朝一番でムロジムに再挑戦するーって言うなんて、ホント突然過ぎるかも」

 

「でも今のサトシ達なら十分トウキさんに通用するよ! 頑張ってねサトシ!」

 

「おう! トウキさーん! お願いしまーす!」

 

しばらく扉を叩いていると、中から扉が開けられる。

中から現れたのは勿論ジムリーダーのトウキである。

 

「おっ、やっぱりこの声はサトシ君達だったか! リベンジに来てくれたんだね?」

 

「はい! お願いします!」

 

「勿論オッケーだ。待っていたよ」

 

サトシはトウキの案内でジムの中へ通されるとバトルフィールドの挑戦者側へ立つ。

ハルカ、マサト、ソラトの3人は観客席側へ通されてサトシのバトルを応援する事になった。

そしてトウキは不敵な笑みを浮かべてサトシに向かい合うようにバトルフィールドのジムリーダー側に立った。

 

「さてサトシ君、キミとポケモン達の修行の成果を見せてくれよ!」

 

「はい! 修行の成果を出し切れるように全力で戦います!」

 

「それではこれよりジムリーダートウキとチャンレンジャーサトシのジム戦を行います! 使用ポケモンは2体。どちらかのポケモンが全て戦闘不能となった時点でバトル終了とします!」

 

審判の言葉と共にサトシもトウキもそれぞれ先方のポケモンの入っているモンスターボールを手に取った。

そしてトウキからモンスターボールを投げてポケモンを繰り出した。

 

「ワンリキー、テイクオフ!」

 

「リキッ!」

 

1番手はワンリキー。以前と変わらない様子だがトレーニングは欠かしていないため筋肉はバッチリ保たれているし経験値は得ているため以前より少しレベルアップしている。

 

「俺はコイツだ! クチート、キミに決めた!」

 

「クーット!」

 

サトシが繰り出したのは新しい仲間であるクチートである。はがね/フェアリータイプのクチートならば完全に有利とは言えないが不利とも言えないだろう。

 

「クチートだ!」

 

「サトシの一番手はクチート…新しい仲間がどこまでやれるかだな…」

 

「クチート頑張ってー!」

 

観客席にいるマサト、ソラト、ハルカから声援が飛んでクチートも心なしかやる気が出て来ているようである。

そして以前には見なかったポケモンをサトシが繰り出した事でトウキも面白いそうに笑っていた。

 

「へぇ、クチートか。もしかして石の洞窟でゲットしたのかい?」

 

「はい! 新しくゲットした仲間なんです!」

 

「面白い…! それじゃ、新しい仲間と成長したキミの力を見せてくれよ!」

 

「はい!」

 

「それでは、バトル開始!」

 

審判の合図と共にフラッグが振り下ろされる。

そして先手を取ったのはやはりサトシとクチートだった。

 

「クチート、ようせいのかぜ!」

 

「クートーッ!」

 

フェアリータイプの力を引き出して風を巻き起こして攻撃を放つ。

ようせいのかぜは真っ直ぐにワンリキーに向かい直撃するものの、相変わらずの身のこなし…攻撃を受け流す動きによってダメージを最小限に抑えられてしまった。

 

「リキ!」

 

「どうしたサトシ君! キミとクチートの力はそんなモンかい!?」

 

「まだまだぁ! クチート、かみつく攻撃!」

 

「クァー!」

 

後頭部の大きな顎を開いてかみつき攻撃をする。

あくタイプのかみつく攻撃はワンリキーに対してこうかはいまひとつであるが、敵に喰らいついて攻撃する関係上受け流したりする事ができない。

確かに命中すればそれなりのダメージになるだろう。

 

「避けろ、ワンリキー!」

 

「リキッ!」

 

だがタダで喰らうトウキとワンリキーではない。素早いステップで大きな顎を避けると、クチートのかみつく攻撃は地面に噛み付いてしまう。

 

「そこだワンリキー! からてチョップ!」

 

「リッキャ!」

 

右手を振りかざしてからてチョップを繰り出そうとするワンリキー。ターゲットのクチートは地面に噛み付いてしまっており隙だらけである。

だが、それはサトシの作戦だった。

 

「今だクチート!」

 

「クトクート!」

 

クチートは噛み付いた地面ごと後頭部の顎を振り回すと、バコッとフィールドの地面が割れて後頭部で岩を噛み付いたままそれを振り上げる。

そして勢いよく顎を振り回して噛み付いていた岩をワンリキーに向けて投げつけた!

 

「リキャッ!?」

 

「ワンリキー!? くっ…今のは完全に予想外だったぜ…!」

 

まさか噛み付いた地面の岩を投げつけてくるとは夢にも思わずトウキもワンリキーも反応仕切れなかった。

受け流す事もできずにまともに受けてしまったため今の攻撃はかなりのダメージになっているだろう。

 

「ワンリキー、ビルドアップ!」

 

「リキ! リッキ!」

 

「え? あの技は何?」

 

「ビルドアップだ! 攻撃力と防御力を同時にアップさせるかくとう技だよ!」

 

自分の筋肉を誇示するようにポーズを決めるとワンリキーの攻撃力と防御力が上昇する。

戦いはまだまだこれからだと言う事である。

 

「からの…ワンリキー! クロスチョップ!」

 

ビルドアップでパワーアップしたワンリキーは真正面からクチート目掛けて腕を交差させて突撃する。

 

「クチート、ようせいのかぜ!」

 

「クートーッ!」

 

再びようせいのかぜによって攻撃するクチート。真正面から突撃してきていたためワンリキーも受け流すこともできず直撃する。

しかしワンリキーは止まらない。

寧ろクロスチョップでようせいのかぜを切り裂き一気に突破した。

 

「リキリキーッ!」

 

「クーッ!?」

 

「クチート! しっかりしろ!」

 

真正面から攻撃を打ち破られてしまい、クロスチョップが命中したクチートは吹き飛ばされてしまう。

ビルドアップでのパワーアップも考えると結構なダメージを受けてしまっただろう。

しかし倒れていると追撃を受けてしまう。クチートは気合で立ち上がった。

 

「ク、クー…!」

 

「頑張れクチート! もう1度ようせいのかぜだ!」

 

「クートーッ!」

 

三度ようせいのかぜを放つクチートだが、ワンリキーは今度も華麗に攻撃を受け流した。

体を横にクルリと回転させて受け流したワンリキーは今の攻撃ではほとんどダメージを受けていないようだ。

 

「いいぞワンリキー! 距離を詰めろ!」

 

「来るぞクチート! てっぺきで防御するんだ!」

 

「リキリキリキ!」

 

「ククー!」

 

てっぺきで防御力をぐーんと上げたクチートに対し、ワンリキーは一気に接近すると拳を振り上げた。

 

「かみなりパンチ!」

 

「何っ!?」

 

てっぺきを発動したクチートは後頭部の顎でワンリキーのかみなりパンチを受け止める。

パンチの威力はかなり殺せたが、奔る電撃のダメージはそれだけでは防ぎきれずクチートの体に電流が流れてしまう。

昨日のソラトとの模擬バトルと同じであった。

 

「ワンリキー、もういっちょかみなりパンチ!」

 

「そうはいくか! 対策は思いついてるんだ! クチート、かみつく攻撃!」

 

「リキーッ!」

 

「クーッ!」

 

ワンリキーのかみなりパンチが再びクチートに命中するものの、クチートは攻撃をあえて受けて懐に飛び込み後頭部を向けるとワンリキーに噛み付いた。

 

「そのまま地面に向けて投げろ!」

 

「クート! クトクトクート!」

 

「リキ!? リキーッ!?」

 

後頭部の顎で喰らい付いたワンリキーを振り回すとグルグルと振り回した上で地面に向けて叩きつけるようにブン投げた。

大きく振り回されたワンリキーは受身を取る事もできずに地面に叩きつけられてしまい大ダメージとなる。

 

「なっ!? 大丈夫かワンリキー!?」

 

「リキ…!」

 

何とか立ち上がったがワンリキーはほとんど体力が残っていないだろう。もう一押しだった。

 

「いいぞ! もう少しだクチート!」

 

「クー!」

 

「やるなサトシ君! ワンリキー、渾身のクロスチョップ!」

 

「リッキー!」

 

最後の力を振り絞りワンリキーは腕を交差させてクロスチョップを放つ。

だがそれもサトシは冷静に対応した。

 

「クチート、おどろかす!」

 

「クー、クット!」

 

「リ、リキーッ!?」

 

後頭部の口を突き出すようにワンリキーに向けると、その凶悪な顎に驚いたワンリキーは動きを止めてしまう。

ここがトウキの相手の攻撃を受け流す動きを止める狙い目である。

脚が竦んで動けない今のワンリキーに攻撃を避ける事も受け流す事も出来はしない。

 

「トドメだクチート! ようせいのかぜ!」

 

「クートーッ!」

 

巻き起こしたようせいのかぜは今度こそ完全にワンリキーを捉えて吹き飛ばした。

 

「リキーッ!?」

 

「ああっ! ワンリキー!」

 

「リ…キ…」

 

これまでのダメージの蓄積と、こうかばつぐんの攻撃を受けた事でワンリキーは完全に目を回してしまっており戦闘不能になっていた。

 

「ワンリキー戦闘不能! クチートの勝ち!」

 

「いいぞクチート!」

 

「クートクート!」

 

まず先鋒戦はサトシに軍配が上がった。まずまずのスタートである。

 

「やったやった! クチートが勝った!」

 

「サトシ、良い調子かも!」

 

「あぁ…だがトウキさんの真の力はこれからだ。なんたってあのハリテヤマが控えているからな」

 

「あ…そっか…。前のバトルではハリテヤマに手も足も出なかったよね…」

 

「でもサトシ達だって修行で成長したから大丈夫よ!」

 

「あぁ、以前のようにはいかないだろう。バトルはこっからが本番だ」

 

観客席でもマサトとハルカとソラトが喜びつつも応援としても気を引き締めなおす。

ソラトの言うとおり、トウキのパートナーは先日進化を果たしたハリテヤマでありハリテヤマも以前より成長しており更に安定した戦いができるだろう。

終わるまでバトルはどうなるか分からないのだ。

 

「うん、やっぱり成長したねサトシ君。俺の柔の動きをここまで封じられるとはね」

 

「ありがとうございます! この調子で一気に勝たせて貰いますよ!」

 

「ソイツはどうかな? こいつの強さを忘れちゃいないだろう? ハリテヤマ、テイクオフ!」

 

続いてトウキが繰り出したのはやはりハリテヤマ。

ドスンと音を立ててその巨体がバトルフィールドに現れるとやはり威圧感がある。

 

「ハリーテ!」

 

「ク、クー…!」

 

「頑張れクチート…! 行くぞ!」

 

「バトル開始!」

 

威圧されるクチートだが、サトシの言葉を受けて気を持ち直す。

そして審判が再び合図すると再びサトシが勢いよく攻勢に出た。

 

「先手必勝! おどろかすだ!」

 

「クー、クーット!」

 

先ほどのワンリキーにしたように後頭部の顎を突き出しておどろかせようとするが、ハリテヤマはビクともしなかった。

 

「何っ!?」

 

「俺のハリテヤマの胆力を甘く見てもらっちゃ困るぜ! ハリテヤマ、あてみなげ!」

 

「ハリテー!」

 

「クーット!?」

 

「ああっ! クチート!」

 

おどろかすを使ってハリテヤマの真正面に無防備に飛び出してきたクチートをあっさり捕まえたハリテヤマはそのまま地面に叩きつける。

見事に決まったあてみなげにクチートは地面を吹き飛ばされてしまい、サトシの近くまで地面を転がってくる。

何とか立ち上がったクチートであるが、ワンリキー戦のダメージも蓄積されておりもう1発攻撃を受けたらまずい状況だった。

 

「ク、クゥー…」

 

「クチート、地面にかみついて岩を投げつけろ! ハリテヤマを近づけるな!」

 

「ク、クート!」

 

先ほどと同じく地面に後頭部の顎でかみつくと岩を引き剥がして勢いよくハリテヤマに投げつけた。

確かにハリテヤマはかくとうタイプらしく近接攻撃を多く使うため近づけなければ有利に立ち回る事が可能ではある。

 

「はたきおとす!」

 

「ハリーテ!」

 

「クッ!?」

 

「な、何だって!?」

 

だが投げつけた岩は無情にもその大きな掌ではたき落とされる。以前のバトルでキモリのエナジーボールを受け止めたように、あの手のひらは強力な盾にもなるのだ。

 

「近づけなければ有利っていうのは甘いぜサトシ君! ハリテヤマ、じしんだ!」

 

「ハーリテッ!」

 

四股を踏むように片足を高く上げてそのまま地面を勢いよく踏みつけるように下ろすと、強力な衝撃波が発生してクチートに迫る。

確かにじめんタイプ最強クラスの技でもあるじしんは物理技ながらも離れた場所から使える優れた技だ。

 

「クチート! ジャンプして避けるんだ!」

 

「ク、クー…ト…! クトーッ!?」

 

迫るじしんの衝撃波を避けるように指示を出すサトシだったが、クチートの体がそれについていけなかった。

体力が限界に近かったクチートはジャンプが間に合わず、じしんをまともに受けてしまったのだ。

はがねタイプを持つクチートにじめん技はこうかばつぐんで戦闘不能だった。

 

「クチート、戦闘不能! ハリテヤマの勝ち!」

 

「よくやったな、戻れクチート」

 

クチートをモンスターボールに戻したサトシは次のポケモンを繰り出すためにモンスターボールを握る。

 

「クチートがやられちゃったわ…」

 

「流石トウキさんだ。ハリテヤマにじしんを覚えさせているとはな…」

 

「サトシは次はどのポケモンにするんだろう?」

 

「ボールを持ったって事はピカチュウじゃないんだろうけど…やっぱりひこうタイプのスバメかしら?」

 

「案外ヘイガニかもしれないよ!」

 

次に繰り出すサトシのポケモンは何かハルカとマサトで話し合っているがソラトは誰が出てくるか予想がついていた。

サトシの性格を考えればほぼ間違いない。

 

「頼むぜキモリ! キミに決めた!」

 

「キャモーッ!」

 

「キモリだ」

 

「やっぱりそう来たか、サトシ」

 

「そっか、そうよね。前は負けちゃったけどリベンジするならキモリが1番よね!」

 

ソラトの予想通り、サトシは2番手はキモリを繰り出した。

先ほどまではスバメやヘイガニを予想していたハルカとマサトもリベンジする意味を考えればキモリになるのも納得という表情をする。

そしてかつて自分を打ち負かしたハリテヤマを前に、キモリは再戦の闘志を燃やしつつも冷静に枝を咥え、相手の様子を伺った。

 

「ハリーテ」

 

「キャモ」

 

「やっぱり2番手はキモリだったか」

 

「はい! 今度こそこいつに勝たせてやりたいんです! だから、全力で行きますよ!」

 

「ああ、かかってこい!」

 

「試合開始!」

 

審判の合図と共に、今度は先手を取ったのはトウキとハリテヤマの方だった。

 

「ハリテヤマ、じしん!」

 

「ハーリテッ!」

 

再び四股を踏むように片足を持ち上げてじしんを放とうとするが、そこが狙い目。

大きな技を繰り出す時には隙が出来る。

 

「キモリ、懐に飛び込め! でんこうせっか!」

 

「キャモッ!」

 

一気に間合いを詰めてハリテヤマの顔面目掛けてでんこうせっかを決めるキモリ。

片足を上げる関係上攻撃を受け流す事が難しい体勢のため、攻撃を加えるならここしかないと先ほどのじしんの際にひらめいていたのだ。

 

「ハリテッ!?」

 

「まだまだ! キモリ、はたく攻撃!」

 

「キャーモッ!」

 

「ハリーテッ!?」

 

でんこうせっかとはたくの連続攻撃を受けたハリテヤマは思わずたたらを踏んで後ろに下がる。

 

「落ち着けハリテヤマ! キモリが来るなら迎え撃つんだ! つっぱり!」

 

「ハリハリハリハリ!」

 

「かわせ!」

 

「キャモキャモッ! キャモモッ!」

 

4連続のつっぱり攻撃をキモリは軽快なフットワークで避けて凌ぎ切った。

全体の流れは、今はキモリが掴んでいると言っていいだろう。

 

「なら、ハリテヤマ! はたきおとす攻撃!」

 

「ハーリテ!」

 

「キモリ、尻尾を使って防御だ!」

 

「キャモッ!」

 

ハリテヤマからの猛襲を、今度は尻尾を使って防ぐキモリ。

柔らかく弾力のある尻尾はハリテヤマのはたきおとす攻撃を受け止めるとダメージを抑えて距離を取った。

 

「よしっ! いいぞキモリ!」

 

「へぇ、やるなサトシ君!」

 

「へへっ! キモリ、一気に決めるぞ! エナジーボールだ!」

 

「キャモキャーモッ!」

 

「もう1度はたきおとすだ、ハリテヤマ!」

 

牽制と遠距離攻撃を兼ねてエナジーボールを放つキモリだったが、放たれたエナジーボールはかつての戦いの時と同じくハリテヤマの掌で叩き落されて掻き消される。

そのままハリテヤマはキモリへと接近してくる。

 

「迎え撃てキモリ! はたく攻撃!」

 

「キャモーッ!」

 

「受け流せハリテヤマ!」

 

「ハリッ!」

 

接近してきたハリテヤマを迎撃するように尻尾を使い攻撃するキモリだったが、ハリテヤマは攻撃を受ける瞬間身を捻りダメージを最小限に抑えると共に即座に反撃の体勢に入る。

 

「そのままつっぱりだ!」

 

「ハリハリハリ!」

 

「もう1度尻尾で防ぐんだ!」

 

「尻尾ごと鷲掴みだ!」

 

「ハリッ!」

 

「キャモ!?」

 

ハリテヤマの猛攻を再び尻尾を使い防ごうとしたサトシだったが、ハリテヤマはその大きな手で尻尾ごとキモリを鷲掴みにして持ち上げると空中へ放り投げた。

 

「に、逃げるんだキモリ!」

 

「今度こそキメろ! つっぱり!」

 

「ハリハリハリハリハリ!」

 

「キャモモーッ!?」

 

空中に放り投げられてしまい身動きが取れなくなってしまったキモリは逃げる事も防ぐ事もできずにハリテヤマの放つ怒涛の5連続のつっぱり攻撃を受けてしまった。

大きく吹き飛ばされたキモリは大ダメージを受けて地面を転がる。

 

「追撃だ! じしん!」

 

「ハーリテッ!」

 

再び四股を踏みじしんを放つと、大地を駆ける強力な衝撃波がキモリを襲った。

 

「ギャモーッ!?」

 

「キモリーッ!」

 

ハリテヤマの連続攻撃を受けてしまったキモリはボロボロになってしまう。

それでもどうにか、キモリはハリテヤマを睨みながら立ち上がった。

 

「キ…モ…」

 

「キモリ、大丈夫か!?」

 

「キャ…」

 

立ち上がりはしたものの、キモリはかなりのダメージを受けているようで片膝を着いてしまう。

もし次も攻撃を受けてしまえば…

 

「くそっ…! やっぱり俺にはまだ早かったのか…!?」

 

クチートもキモリもベストを尽くしてくれていた。

昨日ソラトに尻尾での防御について注意されたというのに安易に尻尾の防御に頼ってしまいこうして追い詰められてしまっている。

サトシの胸中をやっぱり自分はまだ未熟で、リベンジは早すぎたのではないかという後悔が渦巻いていく。

 

「キモリ…俺…!」

 

「キャモッ…!」

 

リタイアしてしまおうかとも思ってしまうサトシだったが、それはキモリ自身が遮り立ち上がった。

 

「キモリ…!」

 

「やっぱりキミのキモリのガッツは凄いな。でもこのままじゃ、前の時の焼きなおしだぜ」

 

「ハリ」

 

「くっ…!?」

 

ハリテヤマとトウキが普段よりも大きく見えるような気がしてしまい、サトシ自身が怯んでしまう。

目を瞑ってしまい、勝負を諦めかけてしまうサトシに観客席で見守るハルカとマサトも心配そうな視線を向ける。

ソラトも1度目を伏せると、腹の底から声を出した。

 

「サトシッ!!」

 

「っ!?」

 

「キモリを見ろ! お前の指示を待っている! お前を信じて待っている! 自分自身に自信が持てなくても、ポケモンなら信じられるだろう!? だったら…!」

 

今日一番…いや、今までで1番芯の通った大きな声でソラトはこう言った。

 

「ポケモンが信じる、自分を信じろ!!」

 

「ポケモンが信じる…キモリが信じる俺を…! キモリ、俺を信じてくれるか…!?」

 

「キャモッ! キャモォオオオオオオッ!」

 

例え自分を信じる事ができなくても、自分を信じてくれるポケモンを信じるのなら。

それなら、誰よりもポケモンが大好きなサトシにならできる。

サトシは迷いを振り払った瞳でキモリを見つめて問いかけた。

そしてそれに当然だと言わんばかりにキモリは声を張り上げると、体が輝き始めた。

 

「なっ!? あれは…!」

 

「キモリ…!?」

 

観客席のソラトはこうなると分かっていたと言う様な優しい笑みを浮かべており、ハルカとマサトは驚愕に目と口を開きながら観客席から身を乗り出した。

 

「あれはもしかして!」

 

「キモリが進化するんだ!」

 

姿がどんどん変化していき、形を変えた光は弾け飛ぶと内なる姿を現した。

 

「ジュルァアアアアアアアッ!」

 

「あのポケモンは…!」

 

ハルカはポケモン図鑑を取り出して進化したポケモンをスキャンする。

 

『ジュプトル もりトカゲポケモン キモリの進化系。

体から生えた葉っぱは森の中で敵から身を隠す時に使われる。密林に暮らす木登りの名手』

 

キモリが進化してジュプトルになった事により、より体が大きくなり能力が大幅に上昇した。

体力も上がった事で、ダメージは減ってはいないが多少体力に余裕ができたらしく、ジュプトルはサトシに向けてサムズアップする。

 

「ジュルルァ」

 

「ジュプトル…! 俺に応えてくれたのか…! よーし、行くぞジュプトル!」

 

「ジュルァ!」

 

仕切り直しとばかりにジュプトルは強靭な後ろ足で爆発的に加速してハリテヤマに迫る。

だがトウキとハリテヤマに驚きはあっても油断は無い。冷静に迎撃の構えを取る。

 

「ハリテヤマ、あてみなげだ!」

 

「ハリッテ!」

 

「潜り込め!」

 

「ジュルァ!」

 

ジュプトルを捕まえようとするハリテヤマだったが、素早く下に潜り込んだジュプトルはあてみなげを回避するとその腕に付いている草を鋭い刃にしてすれ違い際にハリテヤマを斬りつける。

脇腹を切り裂かれたハリテヤマに大きなダメージを受けて膝を着く。

 

「ハリ…!」

 

「今のは…!?」

 

サトシはポケモン図鑑を開いて今のジュプトルの技を確認する。

そして新たに覚えた技の正体は…

 

「リーフブレド…!? リーフブレードを覚えたんだなジュプトル!」

 

「ジュル」

 

新しい技、リーフブレードを覚えたジュプトルは腕の草を戻してニヤリと笑った。

 

「リーフブレード…あの鋭い攻撃を受け流すのは無理か…! だったら攻めるまでだ! ハリテヤマ、つっぱり!」

 

「ハリハリ!」

 

「かわせジュプトル!」

 

「ジュルッ! ジュラッ!」

 

リーフブレードを受け流す事が難しいと判断したトウキは逆に攻勢に出る。

つっぱりの連続攻撃を放つが、進化した事で更なる素早さを手に入れたジュプトルは軽々とそれを回避する。

 

「バックステップからのエナジーボール!」

 

「ジュラ! ジュルルァ!」

 

「ハリーッ!?」

 

強靭な後ろ足でバックステップしてハリテヤマの体勢が崩れた所でエナジーボールを放ち更なるダメージを与える。

攻撃を受け流す動きを捨てて攻勢に出た今のトウキ達になら、他の攻撃を当てる事ができる。

 

「くっ!? ハリテヤマ、最後のパワーを振り絞れ! じしんだァ!」

 

距離が離れたジュプトルへ最大の力で攻撃をするため、ハリテヤマはひっくり返ってしまうのではないかというほど足を高く上げ―

 

「ハァアアアアアアリテェエエエエエッ!」

 

―踏み下ろした。

ハリテヤマを中心に蜘蛛の巣状にフィールドの地面が砕け、最大最強のじしんがジュプトルに向かう。

 

「お前の刃で、じしんを切り裂け! いっけぇえええええええっ! リーフブレードォ!」

 

「ジュルァ! ジュルァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

両腕の草を再び刃へと変化させてじしんの衝撃波へと突撃するジュプトル。

そして雄叫びと共にフィールドを丸ごと両断する勢いで振るわれたリーフブレードとじしんがぶつかり合った。

強力な技同士がぶつかり合い大きな砂埃が巻き上がる。

砂埃はジュプトルの姿を隠してしまい、どうなったか見えなくなってしまう。

 

「ジュプトル…!」

 

「どうなった…?」

 

サトシもトウキも砂埃で見えなくなったジュプトルがどうなったかを伺う。

観客席のハルカ達も固唾を呑んで見守る。

そして…砂埃を切り裂いてジュプトルが姿を現した!

 

「ジュルァアアアアアッ!!」

 

「ジュプトル!」

 

「何っ!?」

 

「ハリッ!? ハリーッ!?」

 

砂埃を切り裂き飛び出したジュプトルはそのまま右腕のリーフブレードをハリテヤマの体に叩き付けけて袈裟切りにした。

ジュプトルもハリテヤマも数秒そのままの姿勢で固まっていたが、ガクリとハリテヤマが膝を折って倒れた。

 

「ハ、リ…テ…」

 

「…ハリテヤマ、戦闘不能! ジュプトルの勝ち! よって勝者、チャレンジャーサトシ!」

 

「勝っ…た…? ぃやったぁあああああっ! 勝ったんだぁああああっ!」

 

「ピカ! ピッピカチュウ!」

 

自分が勝ったという事を少しずつ噛み締めていくサトシは、勝ったということをやっと認識すると大声をあげてガッツポーズを決めた。

そして喜びのあまりフィールドの中へ駆け込みジュプトルを抱きしめた。

 

「ありがとうジュプトル! お前のお陰だ! お前が俺を信じてくれたお陰だぜ!」

 

「ジュルァ」

 

最後まで自分を信じてくれたジュプトルと、それに応えたサトシの2人の勝利を互いに称え合う。

このバトルは、正にジュプトルとサトシ…ポケモンとトレーナーが互いを信じあったからこそ勝てたバトルと言えるだろう。

 

「戻れハリテヤマ」

 

戦闘不能になったハリテヤマをボールに戻したトウキは拍手しながらサトシに歩み寄った。

 

「見事だったよサトシ君。クチートもジュプトルもキミも、最高の信頼関係だったぜ!」

 

「ありがとうございます! トウキさん!」

 

「まぁ、背中を押してくれた存在もあったけどね」

 

トウキはそう言うと観客席から此方へ向かってくるソラトへ視線を向ける。

確かに途中のソラトの言葉が無かったらサトシはリタイアしてしまったかもしれない。サトシとポケモンと、そして導く存在の全てがありこの勝利に繋がったのかもしれない。

 

「サトシ、トウキさん、お疲れ様」

 

「サトシ君、ソラト君、ムロジムで勝利したキミ達にはこのバッジを進呈するよ。ムロジムを勝ち抜いた証、ナックルバッジだ」

 

トウキが差し出す手には2つの拳を模したバッジがあった。

ナックルバッジ。これこそがこのバトルを勝利した証となる。

 

「よーし、ナックルバッジ、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

「クートット!」

 

「ジュラ!」

 

サトシは勝利をより強く噛み締めるように受け取ったバッジを空に掲げてピカチュウとクチート、ジュプトルと勝利の余韻を味わった。

そして同じく今までバッジを受け取るのを先延ばしにしていたソラトも漸くバッジを手に入れる。

指でパチンとハッジを弾き、手元へ落ちてきたバッジを掴んで前に突き出した。

 

「ナックルバッジ、イカしたバトルでゲットだぜ」

 

「やったねサトシ! ソラト!」

 

「すっごいバトルだったかも!」

 

「あぁ! でも…ありがとなソラト! 俺、ソラトのお陰でここまで来れた!」

 

サトシもこのバトルや修行での日々を思い返せば、ソラトの背中を追いかけ、そしてソラトに背中を押して貰っていたのを強く実感していた。

ソラトが居なければ、サトシはここまで来れなかっただろう。

 

「いいや、俺は少しだけ背中を押しただけだ。勝利を掴み取ったのは、間違いなくサトシ達の力さ」

 

「それでも、ありがとう!」

 

「…そっか。それじゃ、ジムバトルも済んだし準備をしたら海を経由してカイナシティに向かうとするか!」

 

次の街へ向かうための準備をするため、ソラトはトウキに一礼をすると踵を返し、ジムの出口へと向かった。

その遠くなっていく黒い背中を追いかけるようにしてサトシは駆け出した。

自分の目指す人はまだまだ先に居て、その背中に追いつけるまでどれくらいかかるかは分からない。

それでもいつか必ず追いついてみせると、彼から教えて貰った事を胸に強く刻み込みながら…サトシはまた一歩、トレーナーとして高みへと昇るのだった…。

 

 

 

to be continued...




2個目のバッジゲットです。
そして本来のアニポケよりだいぶ早いですがジュプトルへ進化してもらいました。
ゲームだと遅くてもこれくらいで進化しそうですしお寿司。

次はシーキンセツの話になるのですが…どことなくニヤニヤできるような話にしておくつもりなのでご期待下さい。
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