ポケットモンスター-黒衣の先導者-   作:ウォセ

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古代から来たポケモン! VSマグマ団

ホウエン地方で新しい冒険を始めたサトシは、ハルカとソラトという旅の仲間を得てホウエンリーグ出場を目指していた。

まず目指すのはコトキタウンだ。

だがその道中、ハルカは初めての野生のポケモンであるルリリを発見し、バトルを行おうとしていた。

 

「よーし、可愛いルリリ、必ずゲットかも!」

 

「頑張れよハルカ」

 

「ルリ?」

 

サトシとハルカはルリリと対面するハルカの後ろで待機しており、ハルカの初バトルを見守っていた。

 

「しっかしどっちかって言うとポケモンが苦手だったハルカがこんな風にバトルするとはな」

 

「えーっと確かゲットする前にバトルして弱らせるのよね。お願い、アチャモ!」

 

「ちゃんと勉強もしてたみたいだな。いきなりモンスターボール投げるんじゃないかと思ったぞ」

 

「ちょっとお兄ちゃん馬鹿にし過ぎかも! えーっとアチャモの使える技は…」

 

ハルカは腰のバッグからサトシと同じポケモン図鑑を取り出すとアチャモの技を確認する。

だが相手は野生のポケモンであり、待ったなどしてはくれない。ルリリは尻尾で弾みながらその場を去っていってしまう。

 

「おいハルカ! 逃げちゃうぞ!」

 

「あっ、ちょっと待ってルリリー!」

 

「チャモー」

 

「俺達も行こうぜソラト!」

 

「ああ」

 

森の奥へ弾み去ってしまうルリリを追いかけてハルカとアチャモも森の奥へと走って追いかけていく。

サトシとソラトもハルカ達を追いかけて走り出す。

そうして森を進んでいくと森を流れる小さな川に突き当たった。

 

「これで追い込んだわ。アチャモ、ひのこよ!」

 

「チャモー!」

 

炎の弾丸を放つルリリにクリーンヒットするが、それはルリリの背後に突然現れた2つの影にも当たってしまう。

 

「ルリー!」

 

「マリリ!」

 

「マリルリ!」

 

「ってアレ? なんだが増えてたかも…」

 

3つに増えた影は、ルリリの他にマリル、マリルリの物だった。

ルリリの進化系のマリルとマリルリは恐らくハルカが追いかけていたルリリの仲間だろう。アチャモのひのこを突然受けたマリル達は額に青筋マークを浮かべている。

 

「マリ!」

 

「マリルリ!」

 

「あはは、えーっと…ごめんね?」

 

「チャ、チャーモ?」

 

首を傾げて可愛らしく謝るハルカとアチャモだが、マリルリ達の青筋は消えなかった。

そしてマリルリ達3匹は大きく息を吸い込んだ。

 

「「「ルーリー!!」」」

 

「きゃああああああああっ!」

 

「チャモチャモー!」

 

「ハルカー、大丈夫か…ってどわぁあああああ!?」

 

「ピィカ!?」

 

「何だ? ってホントに何だ!?」

 

「「うぁああああああああああ!?」」

 

マリルリ達の合体みずでっぽうによりハルカはアチャモと共に吹き飛ばされてしまう。

そしてハルカ達を追いかけてきたサトシとソラトも撒き沿いを受けてしまい纏めて吹き飛ばされてしまった。

3人とピカチュウ、アチャモはみずでっぽうにより森の奥から街道近くまで押し戻されてしまう。

 

「あででで、何があったんだよハルカ~」

 

「水の技、強力かも~」

 

「あー…こりゃしばらく動けねぇな…」

 

吹き飛ばされた3人は目をグルグルに回しながら地面に倒れこんでしまい、そのまましばらく動けなかったのだった。

 

 

 

みずでっぽうからどうにか復活した3人はルリリのゲットは諦め、改めてコトキタウンを目指して街道を進んでいた。

だがハルカは先ほどルリリをゲットできなかったのが効いているのか俯きながらフラフラと歩いている。

しかもどんどんサトシとソラトから離れてしまっている。

 

「おい遅いぞハルカ」

 

「そんな疲れるほど歩いてねぇぞ」

 

サトシは早く次の町へ行きたいのかハルカを急かし、ソラトはやれやれと呆れた様子で後ろを振り返る。

だが体力が尽きてきたのか、とうとうハルカはその場に座り込んでしまう。

 

「だって~…自転車さえあればなぁ…」

 

「無い物ねだってもしょうがないだろ」

 

「はぁ~…」

 

ハルカの自転車は先日のロケット団とのゴタゴタで自転車を吹き飛ばされてしまった際に壊れてしまったのだ。

 

「もうダメ~、動けないかも…」

 

「まったく、これじゃ何時まで経っても次の町に着かないぞ」

 

「ハルカはグズると長いんだなこれが…。仕方が無い、ほらハルカ」

 

ソラトは背中に背負っていた肩掛けリュックを体の前に持ってくるとハルカの前にしゃがみ背中を差し出す。

 

「ちょ、ちょっとお兄ちゃん。子供扱いしないでよ…」

 

「何言ってるんだ。昔はよくやってただろ?」

 

「だからそれ5年も前の話でしょ」

 

「じゃあ自分で歩くか?」

 

そう言われて脚の疲れを思い出したハルカは、少し頬を赤く染めながらソラトの背におぶられた。

 

「この感じも久しぶりだな」

 

「…そうね。昔は遊びつかれた私をお兄ちゃんがおぶって私を連れて帰ってくれたっけ」

 

「2人はホントに仲がいい兄妹なんだな」

 

ソラトとハルカの仲を見てそう漏らしたサトシだが、その言葉にソラトとハルカはきょとんとした表情でサトシを見返す。

 

「え、俺何か変なこと言ったか?」

 

そう問い返されて、2人はやっと納得がいったといった顔をする。

 

「私たち、ホントの兄妹じゃないのよ」

 

「え、そうなのか?」

 

「ああ、所謂幼馴染で兄妹分ってヤツだな。昔はよく野山を駆け回って遊んだモンだぜ」

 

「へー、そうだったんだ。幼馴染か…俺達もシゲルがいるからな、ピカチュウ」

 

「ピッカピカチュウ」

 

サトシは自分の幼馴染であり最大のライバルでもあるマサラタウンのシゲルを思い出す。

今頃何をしているのだろうか…。自分と同じ空を見上げているのだろうか…。

そう考えると色々な思い出が蘇ってくる…からかわれた事やケンカした事、そして熱いポケモンバトル…。

 

「おい、サトシ」

 

「へ?」

 

「ピカ?」

 

思い出に耽っているとソラトに声をかけられ思わず足を止める。

何やら足元に違和感を感じる…。

 

「そこから急な坂だぞ」

 

「へ? どわぁあああああああああああ!」

 

「ピィイイイカァアアアアア!?」

 

突然の急な下り坂に油断していたサトシは坂を駆け下りてってしまう。

恐らく止まれないのだろう。叫びながらどんどん下のほうまで駆け下りていく。

 

「…俺らはゆっくり行くか」

 

「うん」

 

そんなサトシとピカチュウを遠目に見ながらソラトはハルカを背負いながらゆっくりと坂を下っていった。

 

 

 

「酷いじゃないか! もっと早く言ってくれよ!」

 

「悪い悪い、気づいてると思ってな」

 

やっとの思いでコトキタウンに到着したサトシ達。ポケモンセンターで一休みしようとロビーに入りながらサトシは先ほどの急な坂の件についてソラトに食って掛かっていた。

ハルカは疲れた足を休めるためにソファーに座りながら初めてのポケモンセンターを見渡している。

 

「そうだハルカ、さっきのルリリ達とのバトルでアチャモもダメージ受けてるだろ。今の内に回復してやれよ」

 

「そっか、ポケモンセンターでポケモンの回復ができるのよね。じゃあ行ってくるね」

 

ソラトに言われてハルカはジョーイさんの所にアチャモのモンスターボールを預けに行った。

 

「んじゃ、俺は少し用事を済ませてくるよ」

 

そう言うとソラトはフードを被りポケモンセンターから出て行こうとする。

 

「え、どこに行くんだ?」

 

「…コトキ遺跡」

 

「コトキ遺跡?」

 

それだけ言うとソラトは普段とは違うピリッとした雰囲気でポケモンセンターを出て行った。

妙な雰囲気を纏うソラトの背中を見送ったソラトとピカチュウは顔を見合わせる。

 

「どうしたんだろうな?」

 

「ピィカ?」

 

「あれ、お兄ちゃんは?」

 

モンスターボールを預け終わったのかサトシ達の元へハルカが戻ってきた。

だがソラトが見当たらない事に気がついたのか周りを見渡している。

 

「なんかコトキ遺跡に行くって言ってたぞ」

 

「コトキ遺跡?」

 

「それなら、町の外れにある遺跡の事だよ」

 

「「え?」」

 

突然横から声を掛けられ、そちらを向くと短い茶髪に作業服を着た男性が1人立っていた。

 

「えっと、貴方は?」

 

「僕の名はウメズ。コトキ遺跡を研究している考古学者さ」

 

「俺はサトシです。コイツは相棒のピカチュウ」

 

「ピッピカチュウ!」

 

「私ハルカです」

 

「知り合いがコトキ遺跡に行ったみたいだね。もし良かったら君達も行くかい? 僕が案内してあげるよ」

 

「どうする?」

 

「アチャモの回復にも時間がかかるし…折角だし行ってみたいかも」

 

「それじゃ着いてきてくれ」

 

こうしてサトシとハルカは考古学者のウメズに案内をされてコトキ遺跡へ向かうことになった。

一方で先に出発したソラトはコトキ遺跡へ続く道を歩きながらボロボロになっている1枚の写真を見ていた。

写真には黒髪の幼い少年が顔つきの似た黒髪黒髭の男性に肩車されており、男性の横には長い黒髪を靡かせている美しい女性が写っていた。

ソラトの写真を見つめる視線は真剣かつ力強かった。何か決意を新たにしているかのような顔つきだった。

 

「…あれがコトキ遺跡か」

 

ソラトの視界に崩れた岩の柱のようなものと古ぼけてはいるがまだ立派に残っている建物が見えてきた。恐らくあの建物がコトキ遺跡だろう。

 

「さて…」

 

コトキ遺跡に到着したソラトは遺跡の入り口となる扉を見つけると扉に手をかざして目を閉じ何やら集中を始めた。

 

「…この遺跡は違うか」

 

「おーい! そこの君!」

 

何かを調べ終わったソラトはかざしていた手を下ろすと、丁度追いついてきたサトシとハルカを連れたウメズがやって来た。

 

「サトシ、ハルカ。来たのか」

 

「ちょっと君! この扉は無理に開けようとすると崩れるんだ! 下手に触らないでくれ!」

 

「別に触ってませんよ。扉の模様を見てただけです」

 

ウズメはソラトが扉に触っていたように見えたのだろう。ソラトに警告するとすぐに扉の様子を確認する。

 

「ソラト、何をしてたんだ?」

 

「別に、この遺跡をちょっと調べてただけだよ」

 

「お兄ちゃんってこういう遺跡に興味あったの?」

 

「そういう訳じゃないよ。単なる人探しだ」

 

「え? …あぁそういう事ね」

 

何故かハルカは納得したような表情になるが、サトシは頭の上に?マークを浮かべている。

そしてソラトは扉を調べていたウメズに向けて声を掛ける。

 

「貴方はここを調査しているんですか?」

 

「ああ、考古学者のウメズだよ」

 

「俺はソラトです。誓ってこの遺跡には何もしてませんので安心して下さい」

 

「…うん、確かに何もないね。こっちこそちょっとキツい言い方してゴメンよ」

 

ソラトは先ほど見ていたボロボロの写真を取り出してウメズに差し出した。

 

「突然申し訳ないですが、この写真の男に見覚えはありませんか?」

 

「うーん……特に見覚えは無いかな」

 

「そうですか、ありがとうございます」

 

写真を仕舞おうとすると、不思議そうにサトシが写真を覗きこむ。

 

「なぁ、それ何の写真なんだ?」

 

「俺のガキの頃の家族写真さ。オフクロとオヤジも写ってる」

 

サトシに写真を見せると何やら妙な既視感を感じて写真を見つめ続ける。

つい最近見た覚えがあるような、無いようなといった感じだった。

 

「ん~…?」

 

「知ってるのか!? いつ、どこで見た!? 何か話したか!?」

 

「うわっ! ちょ、ちょっと待ってくれよ!」

 

突然焦ったような、必死な様子でソラトはサトシに詰め寄るが逆にそれでサトシが焦ってしまい思い出そうとしていた事が抜けていってしまう。

 

「何でそんなに必死なんだよ!?」

 

「ほらお兄ちゃん、落ち着いて」

 

「あっ…悪い。オヤジの事になるとついな…」

 

バツが悪かったのかソラトは被っていたフードを引っ張り更に目深に被り顔を隠す。

そしてサトシはやっと思い出すことができた。

 

「あぁ! このオジさん、ミシロタウンでピカチュウを回復させてくれた人だ! ってどわぁああああああ!」

 

「ピィカ、ピカチュ。ピィカ~!?」

 

「何!? ミシロタウンで!? って事はつい先日だな!?」

 

「だからお兄ちゃん落ち着いてってば!」

 

ソラトはサトシが思い出した事を口にすると、またも血相を変えてサトシの両肩を掴んで前後に揺する。

グラグラと揺すられて目を回すサトシとピカチュウ。ハルカもソラトを止めようとするが、聞こえていないのかサトシを揺すり続ける。

 

「そ、そうだよ~! ソラト達と会った日だからついこの間だよ~!」

 

「よし! 出て来いサジン!」

 

すぐさまソラトはモンスターボールを投げると、中から出てきたのは緑色の体と赤い目が印象的なドラゴンタイプのポケモン、フライゴンだった。

 

「フラ! フラゴ~!」

 

だがボールから出てきたサジンと呼ばれたフライゴンは翼を羽ばたかせてUターンするとソラトへ飛びつくとスリスリと頭をソラトの頬に擦り付けて甘えている。

 

「フラ~」

 

「だぁ! それはいいんだってサジン! 飛ぶぞ!」

 

「フラッ!」

 

サジンはソラトから離れると背中にソラトを乗せて再び力強く翼を羽ばたかせた。

高く青い空へと飛び上がったサジンはそのままミシロタウンの方へと飛んでいく。

 

「ちょっとお兄ちゃんどこ行くのー!?」

 

「ミシロタウンだ、夜には戻る! 行くぞサジン!」

 

「フライッ!」

 

そのままソラトを乗せたまま空を飛んだサジンは、しばらくすると見えなくなっていった。

振り回されて目が回ったサトシとピカチュウだが、ソラトが見えなくなった頃には回復して起き上がる事ができた。

 

「いったいどうしたんだ、ソラトは…?」

 

「ごめんねサトシ。お兄ちゃんアラシさんの事になると必死になっちゃうのかも」

 

「アラシさん?」

 

「さっきの写真に写ってた男の人よ。サトシも会ったんでしょ?」

 

「ああ、港でピカチュウの帯電状態を治してくれたんだ」

 

サトシはミシロタウンの港で出会ったソラトの父親であろうアラシを思い出す。

妙に口の悪いオジさんだと思っていたが、まさかソラトの父親だったとは。

手をかざしただけでピカチュウの帯電状態を治したのだが、あれはいったいどうやったのか…今更気になってきたサトシはその時の事を考える。

 

「んー、でもあの時何をしたのかなぁ」

 

「2人とも、遺跡を見なくていいのかい?」

 

考え事をしているとウメズから声を掛けられ、遺跡を案内して貰えるという事を思い出したサトシとハルカ。

 

「うーん、お兄ちゃんも行っちゃったし折角だし遺跡を見て回りましょう」

 

「ああ、そうだな」

 

「じゃあこっちにおいで」

 

ウメズを先頭に移動すると、先ほどソラトが調べていた遺跡の入り口の扉の前へとやって来た。

不思議な模様が扉全体に刻まれており、何かをはめ込むような4つの窪みがある扉だ。

 

「これはさっきソラトが調べてた扉ですね」

 

「ああ。実はこの遺跡は古代のポケモン世界と、我々の世界を結ぶ扉があるんじゃないかって言われてるんだ」

 

「古代のポケモン世界?」

 

「ああ、かせきポケモンじゃなくて大昔から姿を変えずにずっと生き続けているポケモン達の事だよ」

 

「へぇー、会ってみたいな!」

 

「それなら、もうすぐ会えるかもしれないよ。この石版にこの扉を開ける方法が書いてあるんだ。まだ鍵がないから開ける事はできないけどね」

 

ウメズはポケットから小さい石版を取り出すとサトシ達に見せた。

何が書いてあるのかサトシとハルカには全く分からないが、ウメズには何がどう書いてあるかが分かるらしい。

 

「へぇー。頑張って下さいねウメズさん!」

 

「ああ、ありがとう! それじゃもう少し案内するよ」

 

「「お願いします!」」

 

そしてサトシとハルカはウメズの案内により日が暮れる頃までゆっくりと遺跡を巡った。

流石に日が暮れる頃になるとサトシの腹の虫が鳴き始めた。

 

「うっ、あはは…お腹減っちゃった…」

 

「も~、サトシったら…あっ…」

 

サトシに呆れるハルカだったが、丁度ハルカのお腹も鳴ってしまった。

 

「あはは、ごめんよ。遺跡の事になるとすぐ熱くなっちゃってね。そろそろポケモンセンターに行くとしようか」

 

恥ずかしそうにするハルカを見てウメズはニコリと笑いながらそう提案した。

ポケモンセンターはトレーナーなら誰でも無料で泊まれて食事も自由という至れり尽くせりである。

3人はポケモンセンターに戻るとすぐに夕飯を食べることにした。

 

「美味しーい! ホントポケモンセンターって最高かも!」

 

「だろ? 他にもロビーでポケモンの情報交換したり、転送装置で手持ちのポケモンを入れ替えたり、他のトレーナーとポケモンを交換したり、とにかく色んな事ができるんだぜ!」

 

「うんうん、最高かも! ふぅー、ごちそうさま!」

 

「さて、じゃあ僕はこのポケモンセンターにある研究室に戻って研究成果を纏めるよ」

 

ウメズは食事が終わると研究の続きをするために研究室に戻ろうとする。

だがそれを聞くとサトシもハルカも興味あり気に瞳を輝かせる。

 

「おぉ、何だか凄そうだぜ」

 

「私たちも研究室見てもいいですか!?」

 

「ああ、構わないよ」

 

「「やったー!」」

 

そうしてサトシとハルカがウメズの研究室へ向かう頃、それをポケモンセンターの外にある草むらの陰から中の様子を伺う怪しい集団がいた。

全員正体を隠すように大きなサングラスをし、赤いフード付きの服を着ている男女混合の5人の人物達だ。

 

「ウメズ博士を確認」

 

「よし、作戦を実行するぞ」

 

「「「はっ!」」」

 

サトシとハルカは研究室に案内された。

様々な写真や資料や模型が置いてあり考古学者の研究室という雰囲気のある研究室だった。

 

「へぇー、これ全部遺跡の資料なんですか?」

 

「そうだよ。コトキ遺跡を始め、様々な場所と時代の古代資料さ。僕は古代の人間とポケモンの関係を調べて、奥深いポケモンの謎を解明したいと思っているんだ」

 

「ウメズさんってとっても凄いかも!」

 

「ははは、ありがとう。…おや?」

 

サトシ達が話をしていると突然ポケモンセンター全体の電気が消えてしまう。

 

「停電かしら?」

 

「それならすぐに非常電源に切り替わる筈なんだけど…」

 

突然乱暴に研究室の扉が開けられると赤いフードを被った5人組が部屋に入り込んできた。

5人組はかみつきポケモンのグラエナとダークポケモンのヘルガー数匹を連れており、サトシ達はあっという間に包囲されてしまった。

 

「な、何者だ君たちは!?」

 

「ウメズ博士、私達と一緒に来て頂きます」

 

「突然現れて何だ! 断る!」

 

「「「グルルルルル…!」」」

 

赤服の5人組の要求をウメズが断ると、グラエナとヘルガーが低い声で唸り鋭い牙を見せる。

 

「我々は力ずくでも構いませんがね。それにポケモンセンターにいる人々やポケモンにも手出しをしないとは限りませんよ?」

 

「お前たち卑怯だぞ!」

 

「ピカピ!」

 

ピカチュウも頬から電気を発生させて威嚇するがグラエナとヘルガーは全く怯まずにピカチュウを睨みつけて牽制する。

数の上では赤服達が有利なのは火を見るより明らかだった。

 

「さぁ、どうしますか?」

 

「くっ……仕方ないか…」

 

ポケモンセンターの人々とポケモンを人質に取られてしまったウメズは仕方なしといった風に赤服達の要求を呑んだ。

 

「だが、もう1人人質を連れていくとしましょうか。グラエナ!」

 

「グラッ!!」

 

「きゃあっ! ちょっと何!?」

 

グラエナの1匹がハルカの後ろに回りこみ牙を剥き出しにして脅かす。

怯えたハルカは思わずその場から動いて赤服達の近くに移動してしまい、赤服達に捕まってしまう。

 

「ハルカ!」

 

「ではウメズ博士、来て頂きましょう」

 

「ぐっ……分かった…」

 

赤服達はサトシを倉庫に閉じ込め、ウメズとハルカを連れてコトキ遺跡へと向かった。

サトシはこのポケモンセンターのジョーイさんと一緒の倉庫に閉じ込められてしまい、何とか脱出しようとしていた。

 

「クソッ! ここを開けろ!」

 

「どうしましょう、まだ回復中のポケモンがいるのに…非常電源に切り替えないと」

 

「でもここから出られないんじゃ…」

 

「ピカ!」

 

「どうしたピカチュウ?」

 

「ピカピカ!」

 

ピカチュウが見つけたのは通風孔だった。

大人は通れる大きさではないが、サトシやピカチュウなら十分通ることができる大きさだ。

 

「よし、ここなら通れる! ジョーイさん、俺達がここを抜けて非常電源をつけて扉を開けます!」

 

「分かったわ! 気をつけてね」

 

こうしてサトシとピカチュウは脱出のために行動を始めた。

そして赤服の5人組にコトキ遺跡に連れてこられたウメズとハルカ。

ハルカは逃げられないように手を後ろで縛られており身動きが取れないようにされていた。

 

「ちょっと、離しなさいよ~!」

 

「フッ、ではウメズ博士。この遺跡の扉を開けて頂きたい」

 

「それは無理だ! 無理に開けようとすれば遺跡全体が壊れてしまう! それに鍵となる4つの宝玉が無ければ…!」

 

「その宝玉とはこれですね?」

 

赤服の1人がケースを持ってきてそれを開けると、中には赤青黄緑の4色の宝玉があった。

 

「こ、これをどこで!?」

 

「我々の情報網は完璧なのですよ。後はどの宝玉をどの穴にはめ込めばいいか…それは貴方がご存知ですね?」

 

「だが…お前らのような者たちに協力する真似など…!」

 

「人質がどうなってもよろしいと?」

 

赤服の男がそう言うとグラエナとヘルガーが唸りながらハルカを取り囲む。

 

「な、何!? やめてー!」

 

「やっ、やめろ! 分かった、扉を開けるから彼女には手を出すな!」

 

「では宝玉を」

 

ウメズは宝玉を扉のくぼみにはめ込んでいき、4つ全てはめ込むと扉の模様が輝き始め扉が開いた。

 

「これで開いたぞ、彼女を放せ!」

 

「いいでしょう」

 

「きゃあっ」

 

赤服の男は他の赤服に指示を出すとハルカをウメズの方へ突き飛ばした。

ハルカは転びながらウメズの方へ倒れる。

そしてヘルガーとグラエナはハルカとウメズを囲い込むように位置取り威嚇する。

 

「なっ、どういう事だ! 扉は開けたんだぞ!?」

 

「残念ですが我々の情報を漏らされるのは困りますのでね。後始末というヤツですよ」

 

「そんなの卑怯かも!」

 

「何とでも言うがいい…ヘルガー、かえんほうしゃ! グラエナ、はかいこうせん!」

 

ヘルガーの口からは灼熱の火炎が放たれ、グラエナの口からは全てを砕く光線が放たれ、ハルカとウメズに迫る。

 

「きゃあああああああっ!」

 

「うわあああああああっ!」

 

だがかえんほうしゃとはかいこうせんが2人当たる直前、2人を庇うように2つの影が割り込んだ。

 

「サジン、りゅうのいぶき!」

 

「フ~ラッ!!」

 

緑色の息吹が放たれると、かえんほうしゃとはかいこうせんとぶつかり合い爆発して相殺された。

煙が晴れるとそこにいたのはソラトとフライゴンのサジンだった。

 

「貴様、何者だ?」

 

「お兄ちゃん!」

 

「君は昼間の…」

 

「お前らは、最近ホウエンの各地で活動してる赤の集団…マグマ団だな」

 

ソラトのその言葉を聞くと、赤服の5人組は驚いたような反応をして警戒姿勢に入る。

そしてグラエナとヘルガーも赤服達の前に出てバトルの姿勢に入った。

この隙にウメズはハルカを縛っている縄を解いてハルカを自由にした。

 

「我々の事を知っているとは…どこでそれを知った?」

 

「裏の事情には詳しいんでな」

 

「ならば尚更貴様らは放っておけんな。ヘルガー、かえんほうしゃ!」

 

「サジン、りゅうのいぶき!」

 

「ヘルァ!!」

 

「フラアッ!!」

 

放たれたかえんほうしゃとりゅうのいぶきはぶつかり合うと、りゅうのいぶきがかえんほうしゃを突き破りヘルガーに直撃する。

そのカバーに入るようにはかいこうせんの反動から回復したグラエナがサジンに向かって跳びかかる。

 

「グラエナ、アイアンテール!」

 

「ドラゴンクローで弾き飛ばせ!」

 

「グラッ!」

 

「フーラーッ!」

 

尻尾を輝かせて上から振り下ろして攻撃するグラエナに、サジンは両手から緑色の大きな爪で迎撃する。

ドラゴンクローでアイアンテールを防御して弾き飛ばすとそのまま反撃してグラエナをドラゴンクローで吹き飛ばした。

 

「ギャウン!」

 

「くっ、なんて力だ…! ヘルガー、かみつく攻撃!」

 

「グルァ!」

 

「すなあらし!」

 

サジンの周囲を砂が竜巻のように舞い上がると、砂の竜巻はヘルガーを吹き飛ばした。

 

「ヘル…!」

 

「くそっ、役立たずどもめ! こうなったら全ポケモンで攻撃だ!」

 

「「「ヘルガー、かえんほうしゃ!」」」

 

「「グラエナ、はかいこうせん!」」

 

「チュウウウウウウウウ!!」

 

「「「ヘルァアアアア!?」」」

 

「「グラアアアアアッ!?」」

 

3つのかえんほうしゃと2つのはかいこうせんが放たれようとした時、ヘルガーとグラエナに向かって閃光が奔った。

電撃がヘルガーとグラエナに当たり、ヘルガーとグラエナは攻撃を中断してしまう。

その閃光の正体は10万ボルトだ。サトシがピカチュウを連れて遺跡にやってきたのだ。

 

「サトシ!」

 

「サトシ君!」

 

「ハルカ、ウメズさん大丈夫ですか!? ってソラト、戻ってきてたのか!」

 

「サトシ! ダブル攻撃で一気に決めるぞ!」

 

「OK! ピカチュウ、10万ボルト!」

 

「サジン、りゅうのいぶきだ!」

 

「ピーカー…チュウウウウウウウウ!」

 

「フラァアアアアアアアアアアア!」

 

「「「「「ぐあぁあああああああああああああ!?」」」」」

 

重なり合った10万ボルトとりゅうのいぶきはヘルガーとグラエナ、そしてマグマ団の5人組に見事直撃した。

煙が晴れると戦闘不能になったヘルガーとグラエナ達と、ボロボロになったマグマ団達が倒れていた。

 

「くっ、仕方が無い…引き上げるぞ!」

 

「「「「はっ!」」」」

 

ヘルガーとグラエナをボールに戻してマグマ団は撤収していった。

 

「待て!」

 

「サトシ、深追いするな。奴等にはまだ仲間がいる筈だ」

 

「で、でも…」

 

ソラトがサトシを引き止めているとマグマ団が撤退していった方向から大型のヘリコプターが飛び立っていった。

ヘリにはマグマ団達のマークがあり、恐らく先ほどのマグマ団が逃げていったのだろう。

 

「あれは…!」

 

「さっきの人達のヘリコプターかも!」

 

「逃げたか…」

 

同時に夜が明けて朝の日差しが大地に降り注ぐ。

そしてマグマ団のヘリコプターは朝日の光の中へと消えていった。

 

「お兄ちゃんは、さっきの人達の事知ってるの?」

 

「少しだけな。ホウエン地方で活動してる悪の組織らしい。詳しい目的は分からないが、色々な遺跡や研究所を襲ったって話も聞いてる」

 

「とにかく、皆が無事で良かった。サトシ君、ソラト君、助けてくれてありがとう」

 

「さっすがお兄ちゃん! まるでヒーローかも!」

 

「おわっと、無事で良かったよハルカ」

 

ハルカは嬉しそうにソラトの腕に抱きつくとソラトも安心させるためにハルカの頭を撫でてやる。

 

「やっぱホントの兄妹みたいに仲がいいよな、2人って」

 

「ピィカ…」

 

「ん? どうしたんだピカチュウ?」

 

サトシの発言に、ハルカの態度から気持ちを察したピカチュウはやれやれといった風に首を振る。

そうしていると開いた遺跡の扉の奥から何かの光が漏れていた。

 

「ピ? ピカピカ!」

 

「あれ? あの光は…?」

 

「遺跡の奥からだ!」

 

「俺達も行ってみようぜ!

 

ウメズは光を見ると大急ぎで遺跡の中へ駆け込んでいく。

サトシ達も後を追って遺跡の中へ入っていくと、中には1つのオブジェのような物と壁いっぱいに描かれた壁画があった。

壁画には古代のポケモンや人々と、古代の文字で何かが書いてあった。

 

「これは…!」

 

「凄い! これは古代のポケモン達との関係を描いた物なんだ!」

 

「このオブジェみたいなのが光ってるのね。あっ、何か動いたかも!?」

 

ハルカの言うとおり、部屋の中央にあるオブジェに朝日が当たりオブジェの模様が光り輝いていた。

そして模様が全て輝いた時、オブジェが後ろに動いて更に下に続く階段が現れた。

 

「おお! 更に地下に繋がる階段だ!」

 

「行ってみましょう」

 

地下への階段を下りると、そこには大きな地下水脈があった。

 

「こんな所に地下水脈があったなんて!」

 

「潮の香り…ここはきっと海に繋がっているのね」

 

「あっ、あれを見ろ!」

 

サトシの声に反応して全員水面に写った黒い影を発見すると、影は水から勢いよく飛び出して宙を舞った。

それは全体的に茶色い色合いをした魚のようなポケモンだった。

 

「あれは! 古代ポケモン、ジーランス!」

 

「ジーランス!?」

 

「やっぱり、コトキ遺跡は古代と現代を繋ぐ扉だったんだ!」

 

 

 

「はい、お預かりしたポケモンはすっかり元気になりましたよ」

 

ポケモンセンターに戻ったサトシ達は、まずは預けていたハルカのアチャモを受け取っていた。

 

「ありがとうございます。出てきて、アチャモ!」

 

「チャモー!」

 

「元気になったみたいで良かったかも!」

 

「良かったな、ハルカ」

 

「うん! あ、ウメズさん」

 

ポケモンを受け取っていたサトシ達の元へウメズがやってきた。

 

「やぁ。もう行くのかい?」

 

「はい、お世話になりました」

 

「あぁ、そうだ。あの遺跡は昔の人々が古代のポケモン達と交流するためにあったようなんだ」

 

「すっごーい、もうそこまで分かっちゃったんですね!」

 

「あぁ、でも分からない事がまだ沢山あるんだ。やっぱりポケモンの世界は奥が深いよ。では皆、道中気をつけて」

 

「「「はい!」」」

 

こうしてサトシ達3人はコトキタウンのポケモンセンターを出発し、最初のジムがあるトウカシティに向けて歩き出した。

しかし、街を出てすぐの所でハルカがアチャモを見ながら立ち止まってしまう。

 

「…」

 

「どうした、ハルカ?」

 

「昨日のマグマ団って人達のポケモン達、私達を襲うのに何の戸惑いも無かったように見えたから…やっぱりポケモンって怖いのかなって思っちゃって」

 

「それは…」

 

ハルカの言葉を聞いて口ごもってしまうサトシ。

だがソラトはそんな2人を見て軽く笑うとハルカの肩に手を置いた。

 

「確かに、ポケモンの技は強力だ。悪用されれば怖いかもな。でもそれはポケモンを扱うトレーナー次第なんだ」

 

「トレーナー次第?」

 

「ああ、ポケモンってのは何色にも染まるんだ。悪いトレーナーが使えばポケモンだって悪事に躊躇はしなくなるんだ。でも良いトレーナーと一緒にいればとてもいいポケモンになるんだ。何色にも染まる…まるでキャンバスだな」

 

「キャンバス…」

 

「ソラトの言うとおりだぜ! だから俺達はいいトレーナーを目指さないとな!」

 

「うん、そうかも! アチャモ、私トレーナーとしてまだまだだと思うけど、アナタと一緒に成長したいって思ってる! だからこれからもよろしくね!」

 

「チャモチャモ!」

 

かくしてポケモンの奥深さ、そしてポケモンとトレーナーの絆の関係を知ったサトシとハルカ。

さぁ、最初のジムがあるトウカシティはもう目の前だ!

 

 

 

to be continued...

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