本来ははたく攻撃を強化する話でしたがタイトル通りです。
ホウエンリーグ出場を目指し、旅を続けるサトシ達。
最初のジムのあるカナズミシティを目指し旅をしていたサトシ達だったが、今は一休みをしている所だった。
「うーん、やっぱり旅って楽しいね! こんなに空気のおいしい森でランチだなんて。僕旅に出て良かったよ!」
「だろ? 色んな所に行って色んなポケモンに出会って、そして腹いっぱい食う! 旅ってのはそういう所が良いからやめられないんだよな」
「チャ~」
マサトとサトシとピカチュウはソラトが作った昼食のカレーを食べながら森の空気を満喫していた。
ソラトは少し離れた場所でポケモン達にポケモンフーズを食べさせており、ハルカは既に食べ終わりアチャモを抱いてブラッシングで毛並みを整えていた。
「お前らしっかり食えよ。飯は体の資本だからな」
「ほーらアチャモ、気持ち良い?」
「チャモチャモ!」
それぞれがそれぞれやりたい事をしてのんびりとしている和やかな時間が過ぎていく。
だがそんな和やかなサトシ達を茂みの中から見つめる鋭い眼があった。
鋭い目は茂みの中をスルリと移動すると、狙いをハルカとアチャモに絞り音も無く近づいていく。
「はーい、綺麗になったわよ!」
「チャモー! チャモ!?」
「え?」
ブラッシングを終えたハルカとアチャモの近くの茂みが大きく揺れると、次の瞬間大きく長い影が飛び出してきた!
飛び出した影は鋭い牙をむき出しにしてハルカとアチャモへと襲い掛かる。
「ハッブー!」
「きゃあああああああっ!?」
「キャモ!? キャーモッ!」
「ハプッ!?」
ハルカの悲鳴をいち早く聞きつけ、近くの木の上でのんびりしていたキモリは木から飛び降りると同時に尻尾を振るって影を横からはたいた。
キモリがはたき飛ばした大きな影は、長い体に黒い体に傷のような紫の模様があり、鋭い刃のような尻尾が印象的なポケモン、ハブネークだった。
「何だ!?」
「お姉ちゃん大丈夫!?」
「えぇ、キモリが助けてくれたの」
ハブネークに襲われ、驚いて倒れてしまったハルカをソラトが抱き起こし、マサトもハルカが心配なのか傍に寄る。
その間にキモリとハブネークは向かい合ってにらみ合う。
キモリのトレーナーであるサトシはキモリの後ろにつくとポケモン図鑑を取り出してハブネークを検索した。
「あのポケモンは…」
『ハブネーク キバへびポケモン
先祖代々ザングースと戦ってきた。刀のような尻尾で敵を切り裂き猛毒を浴びせる。』
「ハブネークか…キモリ、気をつけろ!」
「キャモ!」
ハブネークは体を縮めてキモリの隙を伺っている。
その構えは隙が無く、また瞬時に攻撃に移れる姿だった。
「睨み合っていても仕方ない! キモリ、はたく攻撃!」
「キャモ! キャモー!」
「ハブッ! ハッブネーク!」
「キャモー!?」
「ああっ、キモリ!」
キモリがはたく攻撃を繰り出そうと体を捻りると、体を捻る一瞬の隙を突いてハブネークは折りたたんでいた体を一気に伸ばした。
長い体はバネのような瞬発力を発揮し、鋭い尻尾でポイズンテールを繰り出した。
ポイズンテールをまともに受けてしまったキモリは大きく吹き飛ばされて木に叩き付けられてしまう。
「今のはポイズンテールだ! こうかはばつぐんだぞ!」
「キモリ、大丈夫か!?」
「キャ…モ…」
「まずい、急所にも当たったんだ! サジン、ドラゴンクロー!」
「フーラッ!」
キモリは今のポイズンテールがきゅうしょにも当たり、こうかばつぐんで既に動けないほどのダメージを負っていた。
そんなキモリを見たソラトはすぐさま選手交代のためサジンをボールから出すと同時にドラゴンクローを放つ。
「ハプッ!? ハブブブッ!」
サジンのドラゴンクローを受けたハブネークはたまらずその場から逃げ出した。
「キモリ! しっかりするんだ! 大丈夫か!?」
「ピィカ…!」
ダメージを受けたキモリを見て、マサトはすぐにポケナビを使って近くにポケモンセンターが無いかを確認する。
「サトシ、この近くに森のポケモンセンターがあるよ! そこまで連れて行こうよ!」
「ああ、頑張れキモリ!」
「ピカ、ピカピカチュ!」
「キャモ…!」
こうしてキモリの治療をするため、サトシ達は近くのポケモンセンターへ急行する事になった。
そしてそんなサトシ達を見つめていた3つの影…
「ちょっとちょっと、あのハブネーク見た?」
「見た見た! ジャリボーイのキモリを一撃ノックアウトだったな!」
「しかも狡猾そうな顔をしていたニャ。ロケット団にピッタリのポケモンニャ」
またしてもロケット団のムサシ、コジロウ、ニャースの3人だった。
だが今日に限ってはサトシのピカチュウではなく先ほどのハブネークに目が行っているようだった。
「よーし、あのハブネークをゲットして私のポケモンにするのよ!」
「「おー!」」
ロケット団の3人組はハブネークを追いかけて捕獲作戦を開始する。
まずはお家芸の落とし穴作戦である。
落とし穴を仕掛け、餌として今日の晩御飯になる予定だった木の実の盛り合わせを用意した。
「これでOKニャ!」
「でもこれ俺達の晩御飯だぜ? もったいなくないか?」
「ゴチャゴチャ言わない! ほら、来たわよ」
ロケット団はハブネークが木の実の匂いに釣られてやってくるのを確認すると草むらに隠れて様子を伺う。
ハブネークは木の実の釣られ、どんどん落とし穴の近づいていく。
だが直前で何かに気がついたのか動きが止まってしまう。
「ハブ~? ハブッ」
「もしかして気づかれたのか?」
「そんなバカニャ」
だがハブネークは落とし穴に気がついたようで、尻尾を器用に動かして木の実が入ったバスケットを落とし穴越しに手に入れた。
「ハッププッププ~」
「「「あーっ!」」」
「こら! ニャー達の晩御飯を返すニャー!」
「それが無いと今夜からの食べる物が無くなっちゃうだろーが!」
「あれ、この場所ってもしかして―」
木の実が持っていかれたロケット団は慌てて草むらから飛び出してハブネークに向かって文句を言う。
だが飛び出した場所は落とし穴の上…
「「「どわーっ!?」」」
「えーい、あのハブネーク! 今度は直接捕獲作戦に変更よ!」
「おう、力ずくでゲットしてやろうぜ!」
まどろっこしい作戦は止めにしたのか、ロケット団は今度はハブネークが向かった方へ先回りして捕獲用ネットを容易してハブネークを待ち伏せる事になったようだ。
しばらく待ち続けていると、ハブネークがロケット団の所へとやって来る。
「今よ!」
「どりゃ!」
「とニャ!」
「ハプッ!?」
ムサシの合図でコジロウとニャースが同時に手に持っていた捕獲用ネットを投げてハブネークを捕まえる。
「フフ、ハブネーク。アンタは今日からロケット団の一員になるのよ。さぁ引っ張りなさい」
「フンッ! ぬぐぐ、動かないニャ~!」
「ハブッ!」
コジロウ、ニャースの2人がかりでネットを引っ張るが、ハブネークも抵抗しておりその場から動かない。
そもそも50kg以上の体重を誇るハブネークを引きずるのも難しいという話は置いておこう。
「何やってんの、気合が足りないのよ気合が!」
「ハッブネーク!」
そう言ってムサシも一緒に引っ張るが、やはり抵抗するハブネークの力は強く、全く動かなかった。
そうしている間にハブネークは鋭い牙をギラリと光らせてネットを食い破った。
ネットが破れた事でネットを引っ張っていた勢いにより、ロケット団は後ろに吹き飛んでしまい、後ろにあった木にぶつかってしまった。
「「「うぎゃー!?」」」
「ハッププ~」
ロケット団は木にぶつかりダウンしてしまい、その間にハブネークは森の方へと逃げていってしまった。
またしてもゲット失敗である。
「ニャニャ~、強いニャ~」
「こりゃ簡単にはゲットできないぞ…」
「でも益々気に入ったわ…絶対ゲットしてみせるわ!」
目をグルグル回してダウンしながらも、ムサシはハブネークゲットを改めて誓うのだった…。
一方キモリを森のポケモンセンターに運んだサトシ達は、キモリをジョーイさんに預けて治療をお願いしていた。
キモリは体に包帯を巻かれ、傷ついた様子で寝かされていた。
サトシは先ほどからガラス越しに治療室を見ながら項垂れている。
「キモリ…ごめんな俺のせいで…」
サトシはキモリが怪我を負ったのは自分のせいだと思っているようで、帽子で暗い表情を隠しながら呟いた。
そんなサトシの後姿を見て、ハルカとマサトは何と声をかけるべきか悩み、戸惑いながらも何も声をかけられずにいた。
だがソラトは、フゥーと息を吐くとサトシの隣までやってきて帽子の上からサトシの頭をポンポンと叩いた。
「そんな気落ちするなよ。今回ダメだったなら強くなってリベンジしてやろうぜ」
「ソラト…」
「キモリの傷が治ったら、俺が修行の相手してやるよ」
「…ありがとう、ソラト」
まるで兄と弟のようなやりとりを見て、マサトは羨ましそうな、ハルカは嫉妬しているようで少し嬉しそうな視線を2人に向けていた。
ハブネークのゲットに失敗したロケット団3人組はお昼ご飯のおにぎりを食べて作戦会議をする事にした。
しかし先ほど晩御飯の木の実を盗られたばかりだというのに惜しみも無くおにぎりを食べまくっている辺り、彼らの計画性の無さというか思い切りの良さが見て取れる。
「モグモグ…しかしあのハブネークをどうやってゲットする?」
「あのハブネークのとんでもないパワーと勘のよさを封じニャいとゲットは難しいニャモグモグ」
「だったらそれを封じ込めればいいんでしょ! モグモグ」
「それが簡単にできれば苦労はないニャ」
作戦会議をしながらおにぎりを食べ進めていると、最後の1個に3人が同時に手をかけた。
和やかなお昼ご飯兼作戦会議は一瞬にして戦場のようなピリピリとした張り詰めた空気に変化してしまった。
3人は鋭い目で睨み合いをしており、それぞれ一歩も譲る素振りは見せなかった。
「ちょっと、アタシが最初に掴んだのよ!」
「ムサシもニャースも俺より沢山食べてるだろ!」
「ニャーは昨日の晩御飯お代わりしてないのニャ!」
三者それぞれの主張をしながらおにぎりを奪い合うが、そんな事をしていればいずれ手の中から零れ落ちておむすびころりんとなるのは当然な訳で。
すぽーんと3人の手の中から飛び出していったおにぎりは近くの池の中へと消えていった。
「「あー! 最後の1個がー!」」
「どうして…どうして俺がこんな目に…」
「ニャーが一体何をしたというのニャ…」
池に落ちてしまったおにぎりを見てコジロウとニャースが涙を流しながら嘆いている。
だがムサシは2人ほど落ち込んでおらず、むしろ余裕の表情だった。
「ったく情けないわね。たがかおにぎり1個でガタガタ言うなんてさ」
と言いつつムサシが取り出したのはもう1個のおにぎり。
どうやら隠し持っていたようだ。
「そ、そのおにぎり…!?」
「どうしたのニャ!?」
「決まってんじゃない。あらかじめ取っておいたのよ」
「それってズルいぞ!」
「そうだニャ! 反則ニャ!」
自身達が普段からズルやら反則やらしている事は棚に上げておいて言う台詞には清清しさすらあるが、仲間内ではノーカウントなのだろう。
「何と言われようが、このおにぎりはアタシの物よ。いっただきまーす!」
ムサシが隠していたおにぎりにかぶりつこうとすると、スルリと横から伸びてきた黒い尻尾におにぎりを盗まれてしまい歯と歯がガチンとぶつかってしまう。
「あれ?」
「ハッププー」
黒い尻尾の持ち主は先ほどのハブネークである。
ハブネークは盗んだおにぎりを美味しそうに頬張ると、ムサシ達を馬鹿にしたように喉を鳴らす。
「ちょっとアンタ何すんのよ! そういうのをズルとか反則って言うのよ!」
「おいムサシ、チャンスだぞ!」
「ハブネークゲットだニャ」
「あ、そっか。行くのよソーナンス!」
「ソーナンス!」
ようやく訪れたハブネークゲットのチャンスにムサシは唯一の手持ちポケモンであるソーナンスを繰り出す。
ハブネークとソーナンスは睨み合い、どちらが先に仕掛けるかを伺って…
「なぁ、ソーナンスは相手が先に攻撃してこないと攻撃できないんじゃ…」
「あぁーもう! 肝心な時に役に立たないんだから! こうなったらアンタが行きなさい!」
「え、ニャーが!?」
ソーナンスはカウンターとミラーコートしか使えないため先に攻撃を仕掛けることができない。
そのためムサシは仕方なくソーナンスをボールに戻し、後ろにいたニャースを抱きかかえ、すぐさまハブネークに向けてブン投げた。
「ほらほらすてみタックル!」
「ニャーはそんな技使えニャいニャー!」
「ハッブネーク!」
「ニャー!?」
ハブネークは体を捻り、その尻尾で飛んできたニャースを見事に打ち返した。
打ち返したニャースはムサシとコジロウに見事ヒットし、ロケット団は3人とも揉みくちゃになって倒れてしまう。
そのドタバタにより、ムサシが隠し持っていたもう1個のおにぎりがポロリとこぼれてハブネークの方へ転がってしまう。
「ああっ! 最後のおにぎりが!」
「ま、まだ隠し持ってたのか…」
「アタシのおにぎりー!」
転がっていくおにぎりを追い、ムサシはおにぎりに跳びつくが、その先には口を開けておにぎりを待つハブネークの牙があった。
「ひっ!? 危ないっ!?」
咄嗟に身を逸らして頭からハブネークの口に飛び込むことは無かったが、ムサシの長い髪がハブネークの牙によってスッパリと切られてしまった。
「か、髪がぁあああああああああ!? 女優の命がぁあああああああああああああ!?」
自称女優のムサシにとって髪は言葉通り命に等しい…そうである。
ムサシは怒りの炎をその目に宿し、本来ポケモンの技であるこわいかおを発動してハブネークを睨み付ける。
「ゆ、許さない! こうなったら何としてでもアンタをゲットしてやるわ!」
「ハ、ハプッ!?」
「あ、あの顔は…!」
「ムサシのこわいかおだニャ…!」
こわいかおによってハブネークの素早さがぐーんと下がり、あまりの恐怖にその場から動けなくなってしまう。
コジロウとニャースもムサシの気迫に恐怖し、お互い抱き合って縮こまってしまった。
その隙にムサシは鋭い爪を光らせてハブネークの顔を引っかきまくる。
「どりゃりゃりゃりゃりゃりゃー!」
「ハブブブブブブーッ!?」
「あ、あれはみだれひっかきだニャ…」
「凄まじい威力だぜ…」
そしてトドメとばかりにハブネークのド頭にムサシ必殺のメガトンキックが炸裂した。
怒涛の連続攻撃を受けて戦闘不能になったハブネークは地面に倒れてピクリとも動かなくなってしまった。
「ハップ……」
「ひ、必殺のメガトンキック…!?」
「こうかはばつぐんだニャ…!」
「オラオラ! まだまだ勝負はこれからよ!」
倒れてどう見ても戦闘不能になったハブネークに対してムサシは胸倉を掴むように持ち上げて戦いを続けようとする。
無論ハブネークは完全敗北しており最早動けない。
「ム、ムサシ! ハブネークはもうゲットできるニャ!」
「え、ゲット? あ、そっか」
「やっぱり忘れてたか…」
髪の恨みによりゲットの事など頭から消えていたムサシにニャースとコジロウが声をかけるとようやく思い出したようだ。
ムサシは懐から空のモンスターボールを取り出して投げつける。
「行くのよモンスターボール!」
モンスターボールはハブネークに当たり、ハブネークを吸い込むと最早全く抵抗することも無くゲットは成功した。
「ヤッホー! ハブネーク、ゲットよ!」
「「やったーやったー!」」
こうしてムサシの大活躍?によってハブネークのゲットに成功したロケット団は新たな戦力を手に入れた。
できるなら初めからしておけばとも思われるが…髪の恨みは恐ろしいものである……
「はい、キモリの治療は終わりましたよ」
「ありがとうございます、ジョーイさん。良かったなキモリ」
「キャモ…」
キモリの治療が終わり、サトシの元へキモリが帰ってくるが、キモリは先ほどのサトシと同じように元気が無かった。
「やっぱりキモリも元気ないかも」
「きっとキモリもハブネークにやられたのが悔しいんだよ」
「キャモ…!」
ハルカとマサトがキモリの暗い様子に心配するが、サトシはキモリの傍にしゃがみ込みその肩に手を置いた。
「キモリ、特訓して強くなろうぜ! 強くなってあのハブネークにリベンジだ!」
「キャモ…キャモキャモ!」
サトシの言葉に元気付けられたキモリはやる気を出した様子を見せる。
そして用事があり少し離れていたソラトが、サトシ達の後ろ側から帰ってくる。
「待たせた、こっちの準備はOKだ」
「よしキモリ、ソラトと一緒に特訓だ!」
「キャモモ!」
サトシとソラトはポケモンセンターの外にあるバトルフィールドに移動して特訓の準備に入る。
ピカチュウとハルカとマサトもバトルフィールドの横にあるベンチに座って特訓の様子を見ていた。
そして勿論サトシが使うポケモンはキモリだが、ソラトは今まで手持ちには無かったモンスターボールを持っていた。
「それじゃ行くぜ! キノコ、バトルの時間だ!」
ソラトが投げたボールから出てきたのは茸のような傘を頭に付け、特徴的な尻尾が記憶に残りやすいポケモン、キノガッサだった。
「ガッサ!」
「あのポケモンは…!」
『キノガッサ きのこポケモン
軽やかなフットワークで敵に近づき、伸び縮みする腕でパンチを繰り出す。ボクサー顔負けのテクニックの持ち主。』
先ほどの用事とは、手持ちのポケモンを転送装置を使って入れ替える事だったのだ。
ソラトはフウジンとキノガッサのキノコを入れ替えたようだった。
「凄いや、ソラトはキノガッサも持ってたんだ!」
「流石お兄ちゃん、色んなポケモンを持っているのね」
「ピカー! ピカピカチュウ!」
「キノガッサのキノコだ。よろしくな」
「ガッサガッサ!」
キノコは挨拶をすっ飛ばし、既にバトルをしたそうに腕を構えていた。
どうやら相当なバトル好きらしい。
だがソラトはキノコを手で制して堪えさせる。
「サトシ、さっきキモリは何でハブネークにやられたと思う?」
「え…? うーん、やっぱり気合が足りなかったのかな」
「「ありゃりゃ…」」
ソラトの質問に対してあまりにも予想外な返事に、横で見ていたハルカとマサトはズルッとずっこけてしまい、ソラトも目を点にして呆れ驚いている。
「…えっとだな、今キモリが覚えている技ははたく/でんこうせっかだろ? どっちもノーマルタイプの技で、接近して使う物理攻撃だ」
「うーん、確かにそうだな」
「キャモ」
「単純な接近戦は、リーチとパワー、タイプで勝るハブネークが有利だ。だがハブネークは遠くから攻撃できる技をほとんど持っていない。中距離以上の間合いから牽制してカウンターを狙うんだ」
どくタイプであるハブネークはくさタイプであるキモリに対して相性が良い。ポイズンテールのパワーもあり接近してしまえばハブネークが有利になるだろう。
だが中距離以上のバトルなら勝機はあった。
「なるほど! あ…でもキモリは遠距離じゃ戦えないし…」
「大丈夫だ、これからある技を教える。キノコ、エナジーボール!」
「ガッサ! ガーサッ!」
キノコが両腕に力を集中させると緑色のボールが生成され、それをフィールドの中央に放った。
くさタイプの特殊技、エナジーボールである。
「おお、スッゲェ!」
「キャモ…」
「エナジーボールを覚えれば遠くから攻撃できる。くさタイプの技だからキモリともマッチしてる筈だ」
「おう! キモリ、絶対にエナジーボールを覚えようぜ!」
「キャモ!」
「まずは両腕にエネルギーを集中させるんだ。次はボールの形を保ち、最後に発射するんだ」
「よーし、行くぞキモリ! エナジーボール!」
「キャモ…キャモモッ!?」
エナジーボールを発動しようと両腕にエネルギーを集中させるが、多少のエネルギーが集まった段階でエネルギーが四散してしまった。
まだ覚えていない技を繰り出そうとするのだから最初は上手くいかないものである。
だが…
「今のは…」
「頑張れキモリ! 諦めるな!」
「キャモ! キャーモー…キャモッ!」
再びエネルギーを集中させるキモリ。
今度は先ほどよりエネルギーが効率よく集まり、小さいがボールの形を形成し、それを発射した。
小さなエナジーボールは空中で消えてしまったが、僅かにだが既に形になっていた
「いいぞキモリ!」
「凄い! 少しだけどもう形になってきてるよ!」
「サトシのキモリってもしかして天才かも!?」
マサトとハルカの言う通り、キモリは2回目にして既にボールの形を形成し発射する所まで成功していた。
その様子を見たソラトは驚きに目を見開いていた。
(そんなバカな…たった2回目で既に形にした…!? このキモリ、とんでもないヤツかもしれない…いや、サトシとのコンビネーションや絆の賜物か)
キモリの才能と、この短期間でだが形成されたサトシとの絆を垣間見たソラトは不敵な笑みを浮かべると、未来のライバルの才能に内心のワクワクが止まらなかった。
「よしキモリ、もう1度エナジーボールだ!」
「キャモ…キャーモーッ!」
(戦いたい…このキモリが強くなったら、最高の舞台で。俺が導いてやるか…サトシとキモリを、その舞台まで!)
サトシとキモリを見てソラトは内心そう決意した。
ソラトにはイメージが見えていた…最高のポケモンリーグで、最高のポケモンバトルを行うイメージが。
「一度ぶつけ合うぞサトシ! キノコ、エナジーボールだ!」
「おう! キモリ、エナジーボール!」
そうして、キモリのエナジーボール習得のための訓練は何時間も続いた。
そして日も傾いてきた頃には、キモリは既に実戦で使用できるほどではないが、かなりのところまでエナジーボールを身に着けていた。
「キャモ…キャモ…」
「キモリ、お疲れ様。すっげーな、もうほとんど覚えちゃったんじゃないか?」
「キャモキャモ!」
「明日にはもう覚えられるだろうな。流石だ」
「キモリってばやっぱり凄いかも」
「お姉ちゃん、キモリだけじゃないよ。サトシとのコンビネーションがあったから、きっとここまで早く覚えられたんだよ」
「へぇ~、やっぱりこういう特訓ってトレーナーも大切なのね」
「ピッピカチュウ! ピカッ!?」
それぞれがキモリの頑張りと才能、そしてサトシとのコンビネーションを見て感心していると、サトシ達の傍の草むらがガサガサと揺れる。
そして突然長~い虫取り網のようなネットによってピカチュウが連れ去られてしまう。
「ピカチュウ!?」
「何だありゃ!?」
「何だありゃ!? と聞かれたら」
「答えてあげるが世の情け」
「世界の破壊を防ぐため」
「世界の平和を守るため」
「愛と真実の悪を貫く!」
「ラブリーチャーミーな敵役!」
「ムサシ!」
「コジロウ!」
「銀河を駆けるロケット団の2人には」
「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ」
「ニャーんてニャ!」
「ソーナンス!」
伸び縮み自在の虫取り網を使ってピカチュウを連れ去ったのは、ご存知悪の3人組のムサシ、コジロウ、ニャースのロケット団だった。
「ピカピ! ピーカチュゥウウウウウ!」
ピカチュウは抵抗として10万ボルトを放つが、電撃は網から漏れる事はなく弾かれてしまった。
「何時も通り電撃対策はバッチリなのニャ」
「あの伸び縮みする虫取り網…中々いいな…いでででで!?」
「はいはい、そんな事は後にしようねー」
何となく恒例になりつつあるソラトの妙な方向への感心を見せるが、此方も恒例になりつつあるマサトがソラトの耳を引っ張って収めさせる。
「ロケット団! ピカチュウを離せ!」
「やなこった!」
「取り返せるものなら取り返してみなさい! 行くのよロケット団のニューフェイス!」
「ハッププー!」
ムサシが新しいモンスターボールを投げると、そこから出てきたのは昼間にキモリを倒したハブネークだった。
「あのハブネーク、昼間のヤツじゃない!?」
「何!?」
「キャモ…!」
ハブネークを見たキモリは闘志を宿しながら前へ出た。
どうやらここでリベンジをする気のようである。
「キモリ、やるのか?」
「キャモ!」
「俺も手伝うぜ、準備はいいかキノコ!」
「ガッサ!」
「ならヒーローボーイは俺が引き受けるぜ! サボネア!」
「サボサボ! サボネー!」
「いでででで、こっちじゃない! 向こうだサボネアー!」
サトシをキモリを、ソラトはキノコと共に戦闘態勢に入り、コジロウもサボネアを繰り出して前と同じように抱きつかれてトゲが刺さってしまい悶えていた。
「サトシ、リベンジするならハブネークは任せるぜ」
「ああ、任せてくれ!」
「よし、キノコ! サボネアにマッハパンチ!」
「ガッサ!」
「サーボネー!?」
キモリはハブネークと、キノコはサボネアと戦うことになり、ソラトはキノコの指示を出す。
でんこうせっか等と同じように先制攻撃を仕掛けれるマッハパンチを繰り出したキノコは、一瞬の内にサボネアに接近して腕を伸ばしてサボネアを殴り飛ばした。
「サボネア! ミサイルばりだ!」
「エナジーボール!」
「サボサボネー!」
「ガーッサ!」
サボネアは空中で体勢を立て直してミサイルばりを放つが、キノコもエナジーボールで迎撃をする。
ぶつかり合ったエナジーボールとミサイルばりは爆発して相殺された。
「ハブネーク、かみつく攻撃よ!」
「かわすんだ!」
そしてサトシ達の方は、噛み付いてきたハブネークの牙を軽やかに回避して距離を取る。
「ほらほら、逃げてばっかしじゃ勝てないわよ! ハブネーク、ポイズンテール!」
「キモリ、避けて距離を取るんだ!」
「ハッブネーク!」
「キャモ!」
ハブネークの鋭い尻尾の攻撃を、キモリはピョンピョンとジャンプしてかわすと更に距離を取った。
そして尻尾を大振りして隙ができたハブネークを、サトシ達は見逃さなかった。
「今だキモリ! エナジーボール!」
「キャーモッ!」
両手にエネルギーを集中させてボールの形に保ち、それをハブネークに向けて放った!
キノコが放っているエナジーボールより一回り小さなエナジーボールだが、見事ハブネークに直撃して爆発を起こした。
「やった!」
「キャモ!」
だが爆発の煙を切り裂き、ピンピンしているハブネークがキモリに向かって飛び掛ってきた!
「何!?」
「ハブネーク、しめつける攻撃!」
「ハッブネーク!」
「キャモ!? キャ…モ…!」
「キモリ!」
不意を突かれたキモリはハブネークの長い体に巻かれてしめつける攻撃を受けてしまう。
強い力で締め付けられ、じわじわと体力を奪われてしまう。
「エナジーボールが効いてないのか!?」
「こうかはいまひとつだけど…全く効かないって事はないと思うよ!」
「やっぱりまだ実戦で使えるほど使いこなせてないのかも…! 行くのよアチャモ! キモリを助けるのよ!」
「チャモチャモー! アチャチャチャチャ!」
「ハブ? ハッブネーク!!」
「チャモ!?」
ハブネークに捕まったキモリを助ける為にハルカはアチャモを繰り出す。
アチャモはキモリを助けようとつつく攻撃を繰り出しながらハブネークに接近していくが、ハブネークはギロリと鋭い目で睨みつけると、臆病なアチャモは動きが止まってしまう。
「今よハブネーク! かみつく攻撃!」
「ハブッ!」
「チャモー!」
「ああっ! アチャモ!」
動きが止まってしまったアチャモの隙を突いてハブネークのかみつくが決まり、アチャモはハブネークの口の中に納まってしまう。
「向こうがピンチか…! キノコ、マッハパンチ!」
「サボネア、ニードルアームだ!」
「ガーッサッ!」
「サーボネッ!」
キノコのマッハパンチとサボネアのニードルアームがぶつかり合い、お互いに弾かれて向かい合う。
「みだれひっかきニャー!」
「かわせキノコ!」
「ガッサ!」
ソラトはキモリ達を助けに行きたいが、サボネアが予想以上にしぶとく、更にはニャースの相手もしているため手間取っていた。
その間にもキモリとアチャモはどんどんダメージを受けていく。
「オーッホッホッホ! 今回はアタシの完全勝利ね!」
「負けるなキモリ! お前ならやれる!」
「キャモ…!」
「ムダよ! キモリ程度の力じゃ、ハブネークからは抜け出せないわ!」
キモリは必死に抵抗してハブネークから逃げ出そうとするがうまくいかなかった。
「キモリ!」
「フン、まずはアチャモからやっちゃいなさい! そのまま更にかみつく攻撃!」
「チャモー! チャモチャモー!」
「アチャモー!」
「キャモ!?」
ムサシとハブネークは体で締め付けているキモリより先に、噛み付いているアチャモを標的にしたようだ。
ハブネークの鋭い牙が、アチャモに突き刺さろうとしている。
「キモリ! お前ならやれる! エナジーボールだ!」
「キャモ…! キャーモーッ!」
キモリは再び両手にエネルギーを集中させる。
今までよりも大きく形成されたエナジーボールを、キモリは締め付けているハブネークの体へとぶつける。
ぶつかったエナジーボールは今までに無い爆発を巻き起こした。
「ハププッ!?」
「キャモ!」
「チャモチャモー!」
エナジーボールによってハブネークを吹き飛ばしたキモリはしめつけるから抜け出し、同時にハブネークの口から放り出されたアチャモをキャッチして着地した。
「よくやったぞキモリ!」
「キャモ」
「アチャモ! ありがとうキモリ!」
「チャモチャモ!」
「えーい、忌々しい! コジロウ、同時攻撃でいくわよ!」
「おう!」
無事にキモリとアチャモはピンチを脱すると、ムサシはコジロウの横まで移動して同時攻撃を指示する。
「ハブネーク、ポイズンテールよ!」
「サボネア、ニードルアーム!」
「キモリ!」
「キノコ!」
「「ダブルエナジーボール!!」」
「「「ええっ!? うぎゃーっ!?」」」
ハブネークとサボネアが向かってくるが、キモリとキノコが並び、今度は2体で同時にエナジーボールを放った。
2つのエナジーボールは、放たれると合体してより巨大なエナジーボールになり、ハブネークとサボネアを飲み込んで吹き飛ばした。
吹き飛んだハブネークとサボネアはムサシとコジロウ、ニャースを巻き込んで倒れ、ロケット団は揉みくちゃになってダウンした。
その衝撃でピカチュウを捕獲していた虫取り網が吹き飛んで網が破れ、ピカチュウが脱出する。
「ああっ、ピカチュウが逃げちゃったニャ!」
「「げげっ!?」」
「よーしピカチュウ! トドメの10万ボルトだ!」
「ピィカ…チュゥウウウウウウウ!」
ピカチュウの渾身の10万ボルトが放たれ、ロケット団に直撃する。
「「「あばばばばばばばば」」」
電撃を受けたロケット団はドカン!と吹き飛んで空の上まで吹き飛んでいった。
「「「ヤなカンジー!!」」」
キラーン☆とまたも空の彼方のお星様の仲間入りを果たしたロケット団は、いつものように消えていった。
「やったなキモリ! 今度こそエナジーボールを覚えたぜ!」
「ピカピカ!」
「キャモ、キャモキャモ」
キモリとピカチュウは喜びの合図なのか、尻尾と尻尾をポンと合わせて喜んでいる。
「チャモチャモ」
「キモリ、アチャモを助けてくれてありがとう!」
「キャモキャモ」
「キモリも新しい技、エナジーボールを覚えたし! これでカナズミジムでも大活躍間違いなしだね!」
「ああ、この勢いで1つ目のバッヂもゲットだぜ!」
敗北を通じ、新たな力を身につけて見事リベンジを果たしたキモリ。
カナズミジムを目指すサトシ達の冒険は、まだまだ続く!
最後ちょっと雑になっちゃってスイマセン。
もしかしたらその内修正入れるかもしれません。