ミヤコワスレ ドロップ   作:霜降

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プロローグ

【原作:艦隊これくしょん】

 

 

 

 

 雲一つ無い静寂の海原、辺りには海鳥すら飛ばず、その様子は穏やかと言うより、どこか不気味な静けさを持っていた。

やがてその静寂を切り裂くかのように、遠くの方から何かが全速力で疾走してくる。見ればそれは漁船で、どう言う訳か彼方此方に何かに撃たれたような穴が開いている。その甲板には、負傷した船員と思しき者たちが呻き声を上げていた。まだ息がある様だが、危険な状態だ。

 船長と思われる人物が必死の形相で舵を取るが、やがて無理が来たのか、漁船は突如として減速し出した。

 

「くそっ! いかれちまったか!?」

 

 忌々し気にそう呟く船長だったが、背後から聞こえる音に振り返り、顔が青ざめる。漁船の後方に見える黒く巨大な影。それが獣の咆哮の様な音を響かせ、物凄いスピードで此方に向かってくる。徐々に鮮明になるその姿は、魚の様な黒い怪物!!

 

「ひぃっ…!」

 

 

 

 

『――今より五十年ほど前、突如として世界各地に正体不明の怪物たちが出現した。それらは、明確に客船やタンカーを次々に襲撃し、更には迎撃に向かった各国の軍艦をも轟沈させていった』

 

 

 

 

【脚本:霜降】

 

 

 

 

「畜生! まさかこっちの海域にまで出現しやがるなんて……うわっ!?」

 

 怪物が口を開いたと思うと、その口からドンと言う大きな音が鳴り響き、黒い塊が漁船に向けて発射される。咄嗟の判断で舵を切る船長。船はギリギリの所で塊を回避し、塊が落下した場所には数十メートルもの水柱が上がった。

 

 

 

 

『やがて人類は、怪物たちの事を【深海棲艦(しんかいせいかん)】と呼ぶようになる。深海棲艦には、人類が保有するあらゆる兵器の効き目が無く、人類は一方的に制海権を奪われていったのだった』

 

 

 

 

【キャラクター参考資料:駆逐艦曙便り他】

 

 

 

 

 次々と塊を吐き出す魚の怪物。次々と巨大な水柱が上がり、漁船の姿が見えない。辛うじて直撃はしないものの、その砲撃は着々と漁船へと狙いが定められていく。

 やがて、怪物が何度目かの塊を吐き出した。

 

「う……うわあああ!!」

 

 思わず顔を覆う船長。万事休すか。やがて、轟音が辺りに鳴り響いた。

 

「……?」

 

 だがどうした事だろう。一向に爆炎が船長を襲う気配が無い。恐る恐る船長は眼を開けた。

 

「あ……あぁ……!」

 

 塊は、漁船に届く前に爆発していた。何者かによって撃ち落とされたのだ。一体誰が? 船長はそれが何者達の仕業なのか知っていた。

 船長が目を向けたその先――そこにはうら若き乙女達が、勇ましい眼差しを以て海面に立っていた。

 

 

 

 

『だが、絶望に暮れる人々の叫びに呼応するかのように、深海棲艦に立ち向かう者達が現れた』

 

 

 

 

【制作:可香谷鎮守府】

 

 

 

 

「ここは私達に任せて、早く逃げて下さい!」

 

 ショートヘアーの女性が叫ぶ。彼女は奇妙な装置を背中に付け、水上に直立していた。否、よく見れば足にも同様の装置が存在し、これにより浮いているのだ。

 

「そうしたいのはやまやまなんですが、エンジンがやられてしまったみたいです!」

 

「……! 仕方ありません。【足柄】と【羽黒】は漁船の護衛を。敵は私達で仕留めます!」

「んもう! 私だって戦いたいのに」

「足柄、悪いが今回は護衛に徹してくれ。それもまた戦いだ」

「分かってるわよ。私と羽黒の分まで頑張りなさいな、【妙高】、【那智】」

「言われるまでも無い」

「二人とも、気を付けて……」

「那智、来ますよ!」

「よし! 大本営主力艦隊第三部隊、これより戦闘態勢に入る!!」

 

 那智と呼ばれたサイドテールの女性が構えると同時に怪物が吼えた。彼女達に向けて砲撃を放つ。が、那智はそれを少し右に避けるだけで回避し、お返しとばかりに怪物へと主砲を放つ。初弾命中! 怪物は大爆発を起こして海底へと没していく。

 

「まだです!」

 

 妙高が叫ぶ。遠くの方から複数の影が接近、怪物は仲間を呼んでいたのだ。那智達は望むところと砲を構える。

 

 

 

 

『在りし日の艦の舟魂(ふなだま)が転生した【彼女たち】は艤装(ぎそう)と呼ばれる、かつての艦の武装をその身に纏い深海棲艦に立ち向かう』

 

 

 

 

 再び主砲を放つ那智。砲撃は外れたが、それでも怪物の真横に着弾し、水柱が上がった。続けて砲撃、今度は反対側に着弾!「夾叉(きょうさ)か、次は直撃させる!!」那智は慎重に狙いを定める。狙うは先程の連続砲撃の中間――。

 

「そこだッ!!」

 

 砲撃を行う那智。いよいよ砲弾は怪物へと命中し大爆発を起こした。

 

「……戦闘終了。これより、漁船を護衛しつつ帰還する」

「終わりましたね」

 

 那智が腕に付けられた通信端末に語り掛けると共に妙高が近づく。彼女の方でも、敵の増援を仕留めた所だった。

 

「ああ。今回は駆逐級のみだったから、【瑞鶴】と【翔鶴】の力を借りる必要は無かったな」

「私としては、不測の事態に備えて同行して欲しかったのだけれどもね」

「そう言うな。必要以上の戦力を投入していれば、それこそ本当の不測が起きた時にどうしようも無くなるんだ」

 

《全員、ご苦労だった》

 

「提督!」

 

 突如として端末から聞こえてきた、淡々とした声に妙高が緊張の声を上げる。那智の方はと言えば、特にかしこまる様子も無く変わらぬ声で答える。

 

「うむ、船員も無事、敵は駆逐級のみで構成された小規模の艦隊なので、すぐに片が付いた」

 

《了解。護衛終了後、速やかに帰還しろ》

 

「了解です、【提督】……もう、那智は緊張感が無さすぎよ」

「奴は別にかしこまったものを望んではいない。いつも通りでいいだろう」

「そうかしら……」

 

 

 

 

 どこかの一室、様々な機械が並ぶその部屋で、一人の男が前方の巨大モニターを眺めている。複数の画面には、那智や妙高の姿が映し出されており、先の会話を聴いていた男は小さく溜息を付いた。

 

 

 

 

『――彼女たちの名は【艦娘(かんむす)】。そして、艦娘を率いて深海棲艦に挑む者を、人々は【提督】と呼んだ』

 

 

 

 

「さて、では帰るとしよう」

「ええ、そうね」

 

 互いに頷き、那智と妙高は先に退避した足柄と羽黒の元へと向かって行った。後に残ったのは、再び静寂を取り戻した海と、青い青い空のみであった。

 

 

 

 

『これから始まるのは、数奇な運命の元に新しく提督となった者と、心を閉ざしてしまった艦娘を中心に展開される、成長の物語である』

 

 

 

 

【艦隊これくしょん二次創作 ミヤコワスレ ドロップ】

 

 

第一話【運命の出会い】

 

 

駆逐級深海棲艦

 

  イ級

  ロ級

 

  登場


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