ミヤコワスレ ドロップ   作:霜降

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「繋がったわよ、クソ提督」

「お? おう……」

 

 不機嫌そうな曙の言葉に我に返り、提督は慌ててモニターの前で曙の横に並ぶ。しばらくして、モニターの画面に電源が入り、画面に映像が映し出された。

 《お疲れ様です。モニターの設置が終わったのですね》と、事務的だが、どこか明るい声がモニターから聞こえてくる。画面に映し出された、ロングヘア―に白いヘアバンドを付けた少女。提督はその【艦娘】の事を知っている。士官学校時代に艦娘について習った時、教科書にその姿が写っていたのだ。

 軽巡洋艦娘【大淀(おおよど)】。高い戦闘力を誇るが、それ以上に艦隊指揮能力に秀でた艦娘である。その能力故に、実戦よりも任務の管理や各鎮守府への作戦指示の担当を任されている。工作艦の艦娘【明石(あかし)】と並び、提督達が最も多く関わる艦娘の一人だ。

 

「全部あたしがやりました」

《まぁ、そうなの? 提督、艦娘に仕事を丸投げとは感心しませんよ》

「その……すいません」

「本っ当、どうしようもないクソ提督ね!」

 

 大淀にまで責められ、返す言葉も無い提督だった。事実、資料を読み漁るのに没頭していたのだから自業自得である。

 隣の曙を見れば、自分が一人でやった事への自信からか、或いは提督が怒られているのが愉快なのか、胸を張って勢いづいていた……胸を張っている分、その胸が悲しいくらいに平坦なのが露になって居る事に曙は気付いていない。あまりそう言うものに関心が行かない提督でも、その平坦さは哀れに思えるのだった。

 

《曙、あまり提督を悪く言っちゃ駄目よ。まぁ、それはそれとして……提督、鎮守府への着任、おめでとうございます。大本営は、貴方の着任を心より歓迎いたします。私も、任務作戦の運営において、しっかりサポートさせて頂きますね》

 

恐らくは雛形ではあるが、心からの歓迎を込めて大淀が言う。だが、そんな言葉を払いのけ曙は「挨拶はいいから、出撃できる任務は無いんですか?」と続けた。

 

「こら曙! そう言う言い方は無いだろう」

「うっさいわね」

《ふふっ、曙はせっかちね。残念だけれど、出撃任務は用意されているものではないの。各地の警察機関の連絡や、監視用の艦載機が、深海棲艦を発見した場合に――》

 

 大淀が言い終わる前に、部屋の中にサイレンが響き渡る。提督も曙も、日頃からこのサイレンには訓練で聴きなれているつもりだったが唐突の、それも実戦で鳴り響いたそれには一瞬驚きを隠せなかった。

 二人がそうこうしている間にも、モニターの向こうの大淀が手元のパネルを叩き、詳細を確認した。

 

《――どうやら、出撃要請がかかったみたいですね。場所は、貴方達の鎮守府から見ての近海。艦載機が、敵駆逐級と思しき影を発見しました。直ちに出撃しこれの調査を、敵だと判明次第、交戦して下さい》

「ふん、そうこなくっちゃね。クソ提督はそこで、椅子にでも踏ん反り返って見ておきなさいよ。あんたの力なんか要らないんだから!」

 

 大淀の言葉を聴き我に返った曙は、不敵にそう叫んだ後にダッシュで部屋を飛び出していった。

 

「おい、どこ行くんだ!?」

「出撃に決まってるでしょ!」

 

 提督は慌てて曙の後を追うが、入口に出た時には、曙の姿は随分と先にあった。艦娘の身体能力は人間のそれを凌駕する。小柄な姿をした曙は、その瞬発力を用いて人間では在り得ない速度で鎮守府の正面を下った先にある、船橋へと向かって行った。

 既に小さくなっていくその姿を見て、提督は唖然とするしか無かった。

 

 

 

 

 走りながら曙が、右腕を横に掲げる。やがて艤装の主砲部分が、曙のかざした右腕に光となって現れ、曙はそれを力強く握る。続けて、両膝に魚雷を装填した艤装が、曙の膝にガッチリと固定され、続けて靴が光り艤装の靴へと変換される。

最後に曙の背中に、ひと際大きな艤装が出現し、バンドがしゅるりと伸びて彼女の体に固定された。

 

「曙、出撃よ。蹴散らしてやるわ!」

 

 そのまま船橋からジャンプ、海面に着水と同時に、水上スキーの如く海上を高速で進んで行った。

 

 

 

 

 暫く唖然と立ち竦んでいた提督だったが、我に返ったように急いで執務室に戻る。モニターの画面にはまだ通信が繋がっていたのか、大淀が映ったままになっていた。

 一連の出来事を見ていた大淀は、やや苦笑しながらも提督に微笑みかけた。

 

《上手くやれたみたいですね》

「あれが上手くいったように見えますか?」

《ええ、とっても》

「……そうですか」

 

 冗談なのか本気なのか分からない大淀の言葉に、提督はゲンナリするしか無く、ガックリと肩を落とした。

 

「……大淀さん」

《何です?》

「曙は、誰に対してもあんな感じなのですか?」

《…………》

 

 大淀は答えない、それが答えだった。一体何故? 何が曙に――あんな怒りの籠った眼差しを、初対面の提督にさえ向けるのか。提督はますます分からなかった。

 

「俺は一体、あいつにどうしてやれば――」

《提督は、曙の【史実】について、どこまでご存知ですか?》

「え? ……すみません。全く知らないです」

《……彼女は、いえ、【駆逐艦曙】は、かつてたった一艦で敵艦隊を主隊へと誘致する命令を受けた事があるんです。それは無謀な命令でしたが、弾も燃料も尽きかけた曙の乗員は死を覚悟し、誘致が無理でも刺し違えてでも相手を倒すつもりでいたそうです》

「そんな、事が」

《結論から言えば、寸での所で主隊が到着。曙は九死に一生を得たのです。ただ――》

「ただ?」

《――当時の軍の上層部は、曙のこの命を賭した死闘を『燃料切れの為に逃げ回っていた』とし、その戦果を闇に葬ったんです。彼女の活躍は、公の資料に載る事はありませんでした》

「!!」

 

 曙の持つ壮絶な史実を聴き、提督は驚きを隠せなかった。同時に、曙が先程言っていた言葉の意味も、提督は理解した。

 

『人間は皆そう。死ぬ気で頑張っても誰も評価なんかしない、酷い時には無かった事にさえする。あんただって、どうせそうなんでしょ!?』

 

「……あいつ」

《そう言った背景を持つからか、彼女は建造された時点で人間に対して強い不信感を持っていました。結果、彼女は先の提督達と上手く連携を取る事が出来なかった》

「じゃあ、複数の鎮守府を転々としたと言うのは」

《……一つだけ誤解を解いておきますと、先の提督達は決して艦娘に理不尽な命令や暴力を与える方々ではありませんでした。ただ彼らは、曙が持つその傷を理解出来なかったんです》

 

 人間への強い不信感を持つ曙。その心は既に、人間と……提督との連携を不可能にする所まで悪化してしまっていた。初対面の可香谷提督ですら、曙は握手を跳ね除けたのだ。そんな彼女を、自分の様な提督が向き合えるのだろうか?

 

《提督》

 

 見かねたのか、大淀が静かに口を開いた。

 

《――もし、あなたが望むのであれば、彼女を大本営に戻す事も可能です》

「え?」

《今回の曙の着任は、イレギュラーなものです。提督の意思次第では、正規の手順で改めて別の艦娘を派遣する事も出来ます……どうしますか?》

「…………」

 

 提督は考えた。自分には、曙の心を開く自信が無い。ならば、このまま大淀の言葉に甘え、曙には申し訳ないが、大本営に帰ってもらうと言うのも一つの選択肢なのではないか。半端な思いやりは、却って相手を傷つけるだけである。

 だが、本当にそれでいいのか。本当に、自分はそうしたいのか? 提督の脳裏に、これまでの人生が蘇る。かつて自分を絶望の淵から救い上げてくれた恩師、面倒を見てくれた艦娘、そして、手を掴み希望をくれた少女――。

 その時、突如モニターからピピピッとアラームの様な音が鳴り響く。

 

《……さて、お喋りはここまでの様ですね。提督、モニターを艦娘視点に変更して下さい。曙が現場へと到着したみたいです》

「分かりました……あの、大淀さん」

《はい?》

「……少し、考えさせてください」

《分かりました。ゆっくり考えて下さいね》

 

 大淀の言葉を聴き終えた後、提督はモニターの画面を艦娘視点へと変更する。画面は一面の大海原を映し出した。曙の艤装に内蔵されているカメラの映像だ。時々上下に揺れるのは、彼女の動きによるものだろう。

 

 

 

 

「曙、俺だ。今どこに居る?」

《ッ!? ……急に話しかけんな、クソ提督》

「驚かせたみたいだな、すまん。それで、深海棲艦は見つかったのか?」

《まだだけど……一々報告する必要ある?》

「あのな曙、俺は提督で、お前の指揮をする立場なんだ。ワンマンで行動するのは……」

《――話は後よ、クソ提督。お出ましみたい》

 

 曙の言う通り、モニターの前方から機械的な黒い魚の様な物体が近づいてくる。だが、それは決して魚などでは無い。人間を一呑み出来る程の体格を誇る巨大な金属めいた体に緑色に光る双眼を持つ怪物、人類を脅威に陥れる謎の存在、深海棲艦【駆逐イ級】である。

 「これが……深海棲艦」と提督が呟く。モニター越しとはいえ、鮮明な映像で初めて見る深海棲艦。提督は自然と震えていたが、それが初戦の恐怖なのか武者震いなのか、彼自身にも分からなかった。

 

 

 

 

 曙の存在を確認したイ級は、海面が震えるほどの咆哮を上げた。間髪いれず、イ級は彼女めがけて突進する。

 

「所詮獣型ね、いきなり突進だなんて!」

 

 猪突猛進に突っ込むイ級を、曙は闘牛士かくやの動きでひらりと回避。その姿勢から、イ級の横っ腹に砲撃を実行した。爆発音と共にイ級が悲鳴を上げる。が、致命傷には至らず直ぐに体制を立て直される。曙は、チッと舌打ちをするがすぐに切り替え、再びイ級と対峙。

 

「狙いが甘かった、けど次は絶対沈めてやるわ」

《曙、慢心は禁物だぞ。相手も同じ行動は学習される》

「うっさい! あたしに、指図すんな!」

《忠告しているんだ!》

 

 提督の言葉を無視して、曙は再び突進してくるイ級に砲を向ける。だがイ級は、中距離まで近づくと突如動きを止め口を大きく開いた。その口の中には主砲と思しきものが備わっており、それが連続で火を噴く。「やばっ……!」。曙は第二戦速でそれを避けようとするが最後の一撃が背中の艤装にヒットしてしまう。

 

「きゃあっ……こんのぉ!」

《だから言っただろ! 頼むから俺の言う事を聞いてくれ》

「さっきからうるさいのよ! こんな奴、あたしだけで…」

 

 そう言うとすぐさま体制を立て直し、主砲を構える。

 

「来なさいよ……次は沈める!」

 

 曙の挑発を理解したのか、イ級は咆哮を上げ、砲撃を開始。だが曙は、砲撃を右へ左へと冷静に回避していく。主砲による砲撃が効果薄いと判断したのか、イ級は口内に別の武装を展開した。駆逐艦が搭載する必殺の兵器、魚雷である。イ級の咆哮と共に、数発の魚雷が発射されて曙の元に向かって行く。しかし曙は、それを横に回避、間に合いそうにない一発を砲撃で破壊した。

 

「大したことないわね!」

 

 不敵に勝ち誇り、そのままイ級の懐に入り込む。自身の倍はあろう巨体を持ち上げ、そのままイ級を投げ飛ばした。海面に叩きつけられ、起き上がろうとするイ級だったが、曙はその隙を逃さない。「止めよ!」曙がそう言うと同時に膝に装填されていた魚雷が発射態勢になり、狙いを定める。狙うは、今まさに起き上がらんとする駆逐イ級。

 

「魚雷はこう撃つのよ、全弾持ってきなさい!」

 

 宣言通り、全武装の魚雷が発射される。それは吸い込まれるようにイ級に向かって行き、着弾。イ級は、断末魔の咆哮を上げた後に海中へと沈み、やがて大爆発を起こした。

 敵の撃沈に、思わず曙は「よしっ!」と叫びガッツポーズを取る。

そうして、背負っている艤装を外し、提督が見ているであろうカメラを見る。

 

「大勝利よ、あたしに十分感謝しなさいクソ提督! あんたの指示なんかなくったって、あたしはやれるんだから」

 

 

 

 

 まるで外国のホームビデオの様に、グラグラ揺れる画面をモニター越しに提督は呆れながら見つめる。提督に対して頑なであった曙が初めて彼に見せる笑み。それは自身の戦果を自画自賛する、空しい笑みだった。

 指揮官である提督の指示を無視したワンマンプレイは、当然褒められた事では無く、提督は曙のその身勝手な行動に一喝した。

 

「何が大勝利だ! 指示に従わずに勝手に行動して……艦隊の勝利は、1人で成し得るものじゃないんだぞ!」

《……何よそれ、あたしは勝ったんだから別にいいでしょ。あたしは、誰の力も借りなくったって強いんだから》

「そういう問題じゃない! お前の勝手な行動は、周囲を危険にさらす。自分だけで戦っていると思うな!」

《……ふん、あんたもそうやって、あたしの事を理解しようとしないのね》

 

 苛立たし気に曙が答える。恐らく、ここに来る以前の鎮守府でもこの様なやり取りが繰り返されていたのだろう。大抵の場合、提督達は彼女を見限って来た。

 現に、可香谷提督も先程の大淀とのやり取りから、自分には荷が重いのではと考え始めていた。だが、そんな提督の決断を何かが止めていた。彼は曙の言葉の奥に、何か引っかかるものを覚えていたのだ。

 

「いいか曙。俺は、お前の事を認めないとか、そう言う事を言ってるんじゃないんだ。ただお前の行動は危険を……」

《うっさい! あんたも他の奴らと一緒!!》

「話を履き違えるな! 曙、お前は……っ!?」

 

 曙に何かを言おうとした提督が息をのむ。カメラ映像の左端に、曙を狙う敵艦の姿が見えた。

 

「危ない!」

《え?きゃあっ!!》

 

 曙は振り向くが、完全に油断しきっていて、敵の不意打ちが直撃してしまう

 

 

 

 

 直撃を受けた曙の艤装は大破し、右足の艤装は完全に機能を停止。右側に傾く形で沈みかけてしまう。

 

「そんな……だって、今倒したのに」

《大丈夫か!? 曙!》

「へ……平気よ、このくらい……!!」

《無理をするな! 相手はさっきのとは別の奴だ、伏兵が潜んでいたんだ!!》

 

 提督の言うように、相手は先ほどのイ級では無い。姿はイ級とよく似ているが、イ級よりも頭部が鋭角になっており、より魚らしい姿をした深海棲艦……【駆逐ロ級】。遠方から曙の戦いを監視し、攻撃の隙を伺っていたのだ。

 弱り切った曙に狙いを付け、ロ級が咆哮を上げる。負傷した手負いである今の曙は完全な的だった。このままでは危ない!

 

「くそ、どうすれば……そう言えば!」

 

 何かを思い出したように提督は、机の上にある本を取る。そこから乱雑にページをめくり、あるページに目を向けた。

 それは艦娘の艤装の構造についてのページであり、その中に、艦娘の艤装には【煙幕】を展開する機構が備わって居る事が記されていた。提督が曙に叫ぶ。

 

《曙、何とか煙幕をまいて逃げ切れ。そのまま戦うのは無謀すぎる!》

「指図すんなって……言ってるでしょ……こう言う状況は……慣れっこ……なん、だから……こんな奴…今のあたしでも……やれる、わ……」

《曙、お前……》

 

 ロ級に向かって行く曙だが、艤装が片足をやられているため、アンバランスにしか進めない。ロ級がそれを見逃す道理などなく、フラフラの曙に容赦なく砲撃を加える。

 

「あぁっ!」

 

 直撃を受けて後ろに吹っ飛ぶ曙。ロ級はすかさず追撃として突進する。そして、曙が態勢を立て直す間も与えずに自身の口で呑み込む様にして口を大きく開いた。その口内の主砲は、曙を捉え無慈悲に鈍く光った。

 「ひっ…」曙がそれを視認し、小さな悲鳴を上げる。そこには先ほどまでの威勢は無かった。獲物に狙いを定めたロ級の主砲が発射の段階に入る。

 ――曙が、轟沈する。そんな最悪の光景が提督の脳裏に過る。確かに、提督は曙とは上手くやれていないかもしれない。だがそれでも、提督は彼女が沈む事を望んではいなかった。

 

《曙! 恐れるな、やられる前に撃てえぇっ!!》

 

 この状況を脱するには、攻めるしかない。力の限り提督が叫んだ。それにより、恐怖による硬直が一瞬解け、曙は主砲をロ級に向けた。

 

「っ……うわあああああっ!!」

 

 ロ級よりも早く発射される曙の主砲。結果、ロ級は自身の主砲の暴発も手伝い大ダメージを受ける。苦痛の叫びを上げてのた打ち回るロ級だが、撃沈までには至らず、大破の状態でフラフラと逃げていく。

 

《よ……よかった……》

 

 艤装内蔵の通信機から安堵の声が聞こえたが、曙は不服の表情を浮かべていた。

 

《曙、追撃はもういい。そんな状態で戦ったら間違いなく轟沈してしまう。だから、すぐに帰還を……》

「……嫌よ」

《お前……まだそんな意地を張っているのか! 自分の状態が分かっていないのか!?》

「平気……よ。あんな奴……あたしは……絶対に逃げない……絶対に……っ!!」

《曙……一体何がお前をそうさせるんだ》

「あんたには……分かんない……でしょう……ね……理不尽な命令に……命を懸けて戦っても、評価されないどころか……無かった事にされる辛さが……必死で護ったのに……理不尽な事まで、お前が悪いって……言われる苦しみが……!!」

《曙、お前……》

「あたしは、強いの……よ。だから……誰にも、何も言わせない……提督の力なんて、要らない……提督なんて、信じない……!!」

 

 それは、曙の本心だった。駆逐艦の記憶としての不信感や強くならなければと言う強迫概念は、彼女に孤高の強さを求めたのだ。

 本当は、曙はそんなに強くはない。それでも、彼女は強く在らなけらばならなかった。その不器用な強がりを、提督は見ていられなかった。

 

 

 

 

《……いい加減にしろ、この、大馬鹿野郎ーーーッ!!》

「ッ!?」

 

 無線越しでも響き渡る提督の怒声に気を削がれ、曙は竦みあがる。

 

《お前が辛いのは分かった……でもな、人の言う事を聞かずに一人で焦って、挙句に自分の命すら軽視して……そんな事を誇れると思ったら大間違いだ! いいからとっとと戻れえええッ!!》

「…………」

 

 曙は何も答えないが、そうこうしている内にロ級の姿は既に海の向こうに消えていた。それを理解しとうとう観念したか、曙は小さく「ちくしょう」とだけ呟いた後に方向転換し、帰路に就いた。

 後には静寂の海が、ただ空しく残るだけった。


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