ミヤコワスレ ドロップ   作:霜降

8 / 8
いつ海、終わってしまいましたね。名作とは言えずとも、雰囲気は凄く良いしぼのちゃん出たし各キャラが満遍なく登場し意外な一面が見れたりぼのちゃん出たしBGMは評価されたりぼのちゃん出たしで良いアニメでした。

ところで、アニメ終了までに2話を完成させると豪語していた奴がどこかにいましたね。(すっとぼけ)


2-3

 早朝の海原。そこに浮かぶ一隻の漁船があった。今や海は危険な場所となってしまったが、漁業を生業とする者達にとってそれは死活問題であり、彼らは艦娘によりある程度の安全が確保された海域でのみ船を出すことが出来た。

 この日は珍しく大量で、漁師達は満面の笑みを見せながら帰還している所のようであった。

 

「いやぁ、今日は気味が悪いくらいの大漁だな! 安全海域の魚は数が少なくなってきたって言うのに、一体どうしちまったんだろう」

「クジラか何かに追い立てられたんじゃあないか」

「ははは、ならそのクジラには感謝しねえとな!」

 

 まるで酒にでも酔ったかのような陽気さで語り合う漁師二人。と、その後ろでもう一人の漁師がおもむろに釣竿を取り出し、船の側面に設置し始めた。

 

「あん? おめぇ何やってんだ」

「へへ、こんなに上手くいく日は滅多にねえ。竿一つでも垂らして、一匹でも多く捕って帰ろうと思ってな」

「かーっ、ガメつい野郎だ! 欲張るとバチが当たるぜ」

「ちぇっ、そんな事あるもんかい」

 

 悪態をつきながら取り付けられた竿を眺める漁師。とは言え、高速で進む船から垂らした釣り糸に魚が食いつくほど世の中甘くはない。彼らもそんな事は誰よりも分かっており、これはあくまで暇つぶしのつもりであった。

 

「うおっ!?」

 

 ガコンと言う音と共に、突如として激しく揺れる船体。何事かと思い一同が周囲を見渡す。見れば、今しがた漁師の一人が設置した釣り竿が、物凄い力で海中に引っ張られているではないか。

 

「な、なんだぁ!? 本当にクジラでもかかったか」

「馬鹿言え、釣り餌に喰い付くクジラが居るもんかい!」

「じゃ、じゃあこいつは一体……」

 

 未知の状況に漁師達の中に不安が広がる。釣り糸はまるで、巨大な岩に引っ掛かったかのようにピンと張っている。だがここは水深の深い海のど真ん中、岩などあるはずがない。ならばこれは――。

 

 張り詰めていた釣り糸が、竿ごと(・・・)船体から引き千切られ海中へと引込まれる。同時に揺れから開放される漁船。

 

「…………」

 

 沈黙したまま、恐る恐る辺りを見渡す漁師一同。やがて船の前方の海が激しく泡立ち盛り上がる。そして、水中からは鋼鉄の怪魚が姿を表した。

 先の戦いでの傷が再生しきっていないグロテスクな姿のロ級は、全身が姿を見せると同時に咆哮。それに呼応するかのように、漁船の四方から2つの怪魚が姿を表した。

 

 孤立した海に、漁師達の絶叫が響き渡る。

 

 

 

 

 食事中の可香谷鎮守府に警報が鳴り響く。深海棲艦出現の合図だ。「総員、司令室に集合!」瞬時に状況を理解した可香谷提督が号令をかける。その掛け声と共に艦娘達は立ち上がり、後片付けを枕崎に託し一斉に食堂から駆けていった。

 

「っとと」

 

 ……と思えば漣がバック走で戻ってきて、朧から貰った目玉焼きをペロリと口に頬張り今度こそ走り去っていく。枕崎はその光景に苦笑しつつも、笑顔で行ってらっしゃいと見送るのだった。

 

 

 

 

 司令室へと入った一同は、画面越しに待機していた大淀と向かい合う。既に彼女達は、戦う者の顔になっていた……漣は口をモキュモキュさせていたが。

 

「大淀さん、状況は?」

「港へ帰還中の漁船から、複数の深海棲艦による襲撃をうけていると救難信号を受信しました。座標をそちらにおくります」

「また安全海域での襲撃か、くそっ!」

 

 拳を握り締め可香谷提督が唸る。護るべき人々にここは安全だと公表しておきながら、立て続けにそれを裏切る形となってしまった事による無力感から来る怒りであった。

 「それから」淡々とした口調で大淀が続ける。

 

「付近を巡回中だった偵察機妖精によると、敵勢力の中に左眼を大きく損傷したロ級が居る様です」

「!! それって……」

「恐らく、一週間前に貴方が交戦したロ級と同一個体だと思われます」

 

 大淀のその言葉に、曙の中で先の記憶が蘇る。

 

 

『曙! 諦めるな!!』

『あああ"ぁっ!!』

 

 

 戦いの記憶を思い出した彼女の目には炎が宿り、自然とその手には握り拳を作っていた。仕留め損ねた挙げ句、消息不明となっていた敵が漸く姿を表したのだ、無理もない。やがてその両拳を胸の前でパシんと叩き、闘志を顕にする。

 

「クソ提督、ロ級はあたしに任せなさいよ。今度こそ沈めてやるわ!!」

 

 やる気満々に宣言する曙。だが提督から帰ってきた言葉は、彼女の予想を裏切るものだった。

 

「いや。曙は要救助者の確認及び、その確保に回ってくれ。敵艦隊の殲滅は潮達に任せる」

「は!? 何でよ!」

「これまでの戦いを見て、お前は戦闘中に冷静さを見失う傾向がある。ましてや、相手はあのロ級だ。頭に血が上り、チームワークを乱しかねない」

「っ……!」

「それに、お前は要救助者を軽視する節がある。その戒めも含めて、今回お前には救助を任せたい……頼めるか?」

 

 可香谷提督の言葉に、曙はただ黙り込むしかない。提督の指摘を誰よりも分かっていたのは、他ならぬ曙自身だったからだ。それでも唸る曙だったが、頬をつんつんして訴えかける曙妖精に諭され、渋々と後ろへ引き下がった。

 

「チッ……分かったわよ」

「ほらほら、ぼのちゃんも今回は漣達に出番を譲って。パソコンの前の皆も、新キャラの活躍が見たいでしょ?」

 

 どこに向かって話しかけているのと言う朧のツッコミを余所に漣が茶化す。やはり彼女は掴み所のない艦娘である。

 改めて、可香谷提督が艦娘達へと向き直り、号令の声を上げた。

 

「艦隊、抜錨!!」

 

 可香谷提督の言葉に従い、艦娘達が駆ける。廊下に出て、その小さくなっていく後ろ姿を見送りながら、頼んだぞと頷く可香谷提督であった。

 

 

 

 

 浜辺へと向う坂を駆けながら、四人の艦娘は同時に虚空へと手を伸ばした。その先に電子的なエフェクトと共に出現した主砲部分の艤装を、四人とも力強くキャッチする……つもりが、潮だけキャッチしきれず落っことしそうになり主砲を慌てて両腕で抱え込んだ。

 潮が体制を立て直した所で、改めて彼女達の背中に本体部分の艤装が出現。ゴム紐が斜めに伸びてきて、身体にしっかりと固定される。続けて太腿に魚雷発射管の艤装、脚には靴が変化した船底部分の艤装が装着され、最後に*1凛とした表情が映し出され艤装展開は完了した。

 

 艤装の展開と同時に四人はジャンプして着水。救助者の待つ海原へと、アイススケートの様な動きで疾走していった。

 

 

 

 

 海上にて。襲撃されている漁船は辛うじて無事だった。船の周囲を、まるで獲物を定めるサメの如くぐるぐると旋回する3体の深海棲艦。ロ級の他、新たに呼び寄せられた2体の姿が確認できる。

 共に単眼で、魚雷めいた楕円形の姿をした【駆逐ハ級】と鮟鱇の様な平べったい姿をした【駆逐二級】は、じりじりと船へと近付いていく。

 

 船内では漁師達が、入り口の鍵を締めて籠城しながら恐怖に震え身を寄せ合っていた。やがてロ級の咆哮に続き海中に潜ったハ級が船底目掛けて突撃。漁船は大きく揺れ、その衝撃で扉が破損。漁師の中で最も若い一人が外へと放り出される。顔を上げれば、口を大きく開けたロ級の姿。若い漁師が恐怖の叫びを上げた。

 

「やらせはしません!」

 

 惨劇が起きようとする海に、可憐な声が響く。直後に爆発が起き、横に数メートル吹っ飛ばされるロ級。数秒ポカンとした若い漁師が我に返って顔を上げると、彼方の方より近付く少女達の姿があった。可香谷鎮守府の艦娘達だ。

 

「鉄の艤装に燃料乗せて、鳴らせ希望のモールス信号! 第7駆逐隊四人組、定刻通りにただいま到着♪」

 

 突然の襲撃に狼狽えるハ級と二級に砲を向け牽制する漣と潮。その合間に朧がゆっくりと、船上で腰を抜かしている漁師の元へと向かっていく。

 

「大丈夫ですか?」

 

 朧が無事を確認すると、若い漁師が首を何度も縦に振り、船内の様子を伺っていた残りの漁師達も同様に頷いた。

 

「提督、報告にあった船員を発見。全員無事です」

"良かった……! 曙は漁船の先導及び護衛に、朧、漣、潮は敵艦隊を頼む"

 

 可香谷提督の言葉に、それぞれが「了解!」「わ、分かりました!」「徹底的にやっちまうのね!」と返事を返し、駆逐級達へと向かって行く。深海棲艦側も、態勢を立て直したロ級が怒りの咆哮をあげたのに続いてハ級と二級が艦娘達へとぶつかりあった。

 

"曙、今のうちに漁師さん達を"

「…………」

"曙"

「チッ……了解!」

 

 交戦する潮達を羨まし気に見つめていた曙だったが、可香谷提督に急かされて渋々と海域を離脱。彼女のハンドサインを合図に、漁船もその後へと続くのだった。

 

 

 

 

 ハ級が放った砲撃を、朧が真っ直ぐに見据えながら右に大きく動き回避。先程まで立っていた場所に自身の背丈の倍はある水柱が発生した。だが朧はそれに臆することもなく、反撃と言わんばかりに砲撃を口を開いたままのハ級に放つ。砲弾は見事命中し、ハ級は苦悶の唸り声をあげた。

 

「負けませんから!」

 

 怯んだハ級の隙を逃さずに朧は速度を上げて接近。一撃、二撃とハ級へと打撃を叩き込む。一連のその動きには全くと言っていい程に無駄がなく、真っ直ぐな彼女の意志が見て取れた。

 

"ハ級が手も足も出ていない、やるな朧!"

「提督、朧を褒めてくれるの? 有難う。でも、朧はまだこんなものじゃないから!」

 

 提督へ感謝を述べつつも、朧はそこで止まらない。彼女には、目指すべきものがあるのだ。

 

 

 

 

 二級の連続砲撃を、スケートのショーの様な動きで次々と漣は回避していく。中々優雅な動きではあるが、戦闘中にすべき動きではない。何ならトリプルアクセルまで決め始め、着地失敗でよろめいたりまでしている。

 真面目にやれと言いたい可香谷提督だったが、それでいて敵の攻撃はしっかりと避けているのだから始末が悪い。宛ら、大道芸でも見ている気分だ。やがて回避を続けていた漣が、反撃の砲撃を放つ。見事二級の頭部に命中した。

 

「見たか!漣の超ファインプレー……はにゃーっ!?」

 

 立ち止まり余裕を見せた漣を衝撃が襲う。迂闊にも二級の砲撃を食らったのだ。「大丈夫か!? 漣!」啞然としていた可香谷提督も我に返り叫んだ。漣は服の一部を焦がし、涙目になっていた。

 

「うう。ピンチだぁ、デンジャラスだぁ。ご主人様ぁ、漣ちんスーパーピンチっ……なんてね♪」

 

 漣が急に余裕のウインクを見せたと同時に、二級を水柱と爆炎が襲う。砲撃に包まれた際に、漣は魚雷を二本放っていたのだ。よくみれば、受けているダメージも服だけで、艤装には傷ひとつない。計算された被弾であった。

 

 

 

 

「な、なぁ。俺達、無事に帰れるんだよな?」

「俺に聴くなよ……艦娘の姉ちゃんも、何か無愛想だし」

 

 朧達が深海棲艦と戦っている一方、漁師達が不安に襲われている前方で曙はそんな事を気にもかけず、通信端末から聴こえてくる声に耳を傾けていた。僚艦達の活躍が聴こえる度に、その顔には不満が募っていく。

 

「何であたしがこんな事。あたしだって……!」

 

 通信端末が拾わない程度の小さな声を、曙はぽそりと零した。肩に乗った曙妖精がちゃんと先導しろと彼女の頬をぺしぺし叩くが、曙は向きを変えずうっとおしいと言わんばかりに手の甲で妖精をはたき、曙妖精は払われた後に煙となってフェードアウトした。

 

 

 

 

 朧、漣の連撃により満身創痍のハ級と二級は、最後の悪足掻きと言わんばかりに咆哮の後突撃した。朧と漣はお互いに、力強く顔を見合わせる。

 

「やるよ、漣」

「ほいさっさ〜派手にいくよ! 3番から4番、発射!」

 

 頷き合った両者は同時に膝を屈ませ、魚雷発射管が下を向き発射体制となった。そうして2本ずつ、計4本の魚雷が放たれる。

 魚雷は、2体の深海棲艦に吸い寄せられる様に命中! 2体は大爆発を起こし沈んでいった。

 

「……よし」

 

 敵の撃沈を確認した朧が警戒態勢を解く。終始真面目な彼女とは対照的に、朧妖精は肩の上でぴょんぴょん跳ねながら大喜びしていた。

 

「ほらほらぼーろちゃん、堅いよ? 肩の妖精さんを見習って、あぁ^~艤装がぴょんぴょんするんじゃぁ^~くらいやらないと」

「何なのそれ……と言うか、漣こそ妖精を見習いなよ」

「あーだめだめ、こいつは堅すぎます」

 

 漣が指差す彼女の妖精は、おちゃらけた彼女とは反対に、ウサギ妖精の横で力強く頷いている。何というか、それぞれ性格が正反対な妖精達である。

 

 

 

 

 朧と漣の戦いを司令室で見守っていた可香谷提督は、二人の奮戦ぶりに驚きと称賛の声を上げていた。

 

「朧も漣もやるな。二人共戦い方は全く違うが、殆ど被弾せずに深海棲艦を倒せたじゃないか」

「……いえ、これは」

「うん? どうかしましたか、枕崎さん」

「提督さん、潮が」

「えっ?」

 

 枕崎の言葉に、可香谷提督はモニターの左下の画面を見る。そこでは潮が、駆逐ロ級に苦戦している姿が映し出されていた。

*1
漣のみカメラ目線でてへペロのポーズ




アニメの出撃シーン。妖精さんを使っての巨大に魅せる演出とか、艦娘の艦としての側面を前面に出していたのは良かったですね。ただ、多くの人の指摘通りもっさりし過ぎと言うか、人型の存在が棒立ちのまま移動していくのに違和感はあったな〜とは思う。
個人的には、1期の出撃シーンくらいが丁度良いかなと思いました。

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