数分ほど前━━。
朧と漣が交戦を始めた頃、潮は残る一体──駆逐ロ級──と対峙していた。司令室で聞いた話では、この個体は先の戦闘で曙と交戦し、仕留め損ねた相手だという。潮は胸の奥で決意を固め、我先にとロ級の下へと進撃した。
「やっと、やっとまた会えたんです。今度こそ、潮は曙ちゃんの力になって見せる。その為にもここで仕留めます」
おっとりとした潮の声に、鋭い闘志が混じっていた。普段の彼女なら、決して口にしない種類の気迫が、その眼に宿っている。対するロ級は、他の二体の深海棲艦のような獰猛さを見せず、潮の動きを冷静に見定めているかのように佇んでいた。
──以前、曙と対峙したときには見せなかった貫禄だ。あの頃とは別個体か、あるいは何かが変わったのか。潮は一瞬、頭をかすめる疑問を振り払った。
「━━潮、参ります!」
先に動いたのは潮だった。波を蹴立て、エンジンを全開にして突撃する。海面を切り裂く水しぶきと潮の覚悟が、戦場に冷たい光を反射させる。遅れて咆哮を上げるロ級は、之字運動で潮に迫る。互いに砲撃を打ち合うも、回避の応酬で距離はみるみる詰まっていった。
肉薄する二体。潮が射程内にロ級を捉えると、腰を低く構えて砲を撃ち放つ。砲弾は水柱を上げ、ロ級を包み込む。しかし──当たりどころが甘かったのか、爆炎の中から無傷のロ級が飛び出し、そのまま潮へと襲いかかる。顎が開き、潮の身体を喰らわんとする。
「くうぅ……」
腕に全ての力を込め、間一髪でロ級の顎を受け止める潮。華奢な身体からは想像もできない怪力だが、それは艦娘である潮の力。だが、それでも押され始める。心臓が跳ね、息が乱れる──このままでは危ない。
「潮は……あの時、曙ちゃんの足手まといにならないよう強くなると誓ったんです。だから……こんな所で、沈む、わけには!!」
後ろへ一度引いた腕に、全身の力を込める。弾かれたロ級がバランスを崩す。隙を見逃さず、腰を落として魚雷を展開。狙うは、立て直そうとするロ級の姿。
「当たって下さい!」
数本の魚雷が真っ直ぐにロ級を襲う。だが、ロ級は動じず、冷静に見据える。魚雷が目前に迫ると、その瞳がオレンジ色に妖しく光り──水柱に包まれ消えた。暫しの静寂の後──。
「やりました! これで潮は曙ちゃんを━━きゃあぁっ!」
喜びが油断を呼び、潮は一瞬攻撃態勢を解いた。その隙に、海面から突き上げられ、身体は悲鳴と共に宙を舞う。
「い、一体何が」
着水と同時に両脚と右腕で体勢を立て直す潮。しかし、すぐ側の海中からロ級が再び出現し、巨大な口に呑み込まれそうになる。尻もちをつくように後ろへ回避するも、次の攻撃が迫る。
ロ級は水中に潜み、潮を真下から突き上げる。着水の衝撃で再び追撃──。その戦闘技術は、以前とは明らかに別物だった。オレンジ色の炎を宿した瞳が、潮を狙う獲物を見据えている。
「ううっ、まだ航行出来ます。潮は、まだ……!」
蹌踉めきながらも主砲を構える潮。しかし、ロ級はその隙を逃さず、正確に砲撃を命中させる。
「きゃぁっ!」
直撃で艤装に中破レベルの損傷。額から髪にかけて血が滴り、片目を閉じた表情は苦悶に満ちていた。
「潮!?」
司令室の可香谷提督がモニターに目をやり、叫ぶ。優勢に思えた戦況が一転し、傷ついた潮の姿がそこにあった。もし、目の前の深海棲艦が他の二体と同じであれば、今頃勝利の余韻に浸っていただろう。しかし──今、潮の前に立つロ級は、少なくとも現状では全く無傷だった。
潮は決して弱くはない。臆病な一面はあるものの、艦娘としての練度は高い。だが、目の前のロ級はそれ以上だった。ハ級や二級、そして潮達をも凌駕する──その圧倒的な力が、戦場を支配していた。
「このままだと潮が危ない。朧、漣、救援に回れるか!」
"今向いま……うわっ!?"
"はにゃーっ! こいつら一体どこから!?"
突如襲う二体のイ級に、朧と漣は思わず防戦一方になる。可香谷提督がモニターを見ると、そこには新たな敵影が映っていた。
"イ級が2体出現! 交戦中につき、潮の救援は困難です!"
「くそ! 一体どこに潜んでいたんだ!」
予想外の襲撃に身動きが取れない朧と漣。その間も潮は噛みつき、突撃、舌による投げ飛ばし、そして砲撃を受け、窮地に追い込まれていく。戦場は完全に、ロ級達のペースに呑まれていた。
「このままでは潮が……どうすれば、俺はどうすれば良い……?」
提督はただ、歯を食いしばりながらモニターを見つめるしかなかった。危険な戦場を少女達に任せ、自身は安全圏から指示を出すだけ──その無力さに、胸の奥が痛む。
ふと、左下の画面に目をやる。曙の艤装視点で広がる海原。救援を向かわせれば、状況を打破できるかもしれない。しかし、曙は護衛中。人命の関わる任務を放棄させるわけにはいかない。可香谷提督は、成す術もなくモニターを見つめ続けた。
*
一方、曙は潮の様子を通信機越しにただ黙って聞き続けていた。口を開くことはなく、顔には先の鎮守府で見せたのと同じ怒りの色が浮かぶ。だが、その奥底にどこか焦りめいたものが混じっているように見える──気のせいかもしれないが、曙の胸はわずかにざわめいた。
「別に、あいつがどうなろうとあたしには関係ないわ」
自分に言い聞かせるように小さく呟き、通信機のスイッチに手を伸ばす。曙妖精が必死に髪を引っ張って「それでいいの?」と訴えるのを、眉をひそめ鬱陶しそうに押しやる。
雑念を振り払うかのように顔を背ける曙。しかし、結局スイッチを切ることはせず、潮の痛々しい声が耳に響き続けた。
「…………」
漁船を先導しながらも、曙はふと前進を止める。息を荒く吐き、ぎゅっと拳を握りしめたまま立ちすくむ。
「な、なぁ。もう少し速く先導してくれねえか。いつまたあいつらが出てくるか……」
「うっさい!」
船員に急かされ悪態をつきつつも、曙は船速を上げる。だが通信機からは、弱々しい潮の声が絶えず届き、曙は耳を離せなかった。
"曙、ちゃん……"
『わたし、なんの為に艦娘になったのかな……』
『艦娘が命を賭けて戦うのは、貴方の野心のためでは断じてありません』
「……!」
不意に響いた、何時かの誰かの声。──また、自分は失ってしまうのか。この焦燥感が曙の心を激しく掻き乱す。
「ああもう!」
意を決した曙は通信機の蓋を閉じた。だがスイッチは切らず、眼からは迷いが消えた。
「あんた達!」
「うおっ!? 急に大声出すなよ」
「そんな事どうでもいい! もうすぐ陸地が見えてくる。後はあんた達だけでも帰れるわよね」
「は、はぁ!? そんな無責任な……」
「とにかく、あたし行くから」
曙は向きを変え、もと来た航路を引き返す。要救助者を放置すれば命令違反で処罰されるだろうが、今の曙は、自らの心に従う覚悟を決めていた。
"駄目だ、曙。今お前が離れたらその人達はどうなる!"
反転しようとした瞬間、通信機から提督の声が飛び込む。予期していたかのように曙は眉をひそめ、一瞬動きを止めた。
「……ここまでこれば大丈夫でしょ」
"そういう問題じゃあない。俺達の使命は、力無き人々を護る事だ"
「っ……! じゃああんたは、潮を見殺しにしろって言うの!?」
"それは……"
声を荒げ、曙は可香谷提督に抗議する。その言葉には、僅かに失望が混じっていた。潮に対する理由なき敵意があっても、見捨てるほど曙は腐ってはいなかった。
「処罰なら後でいくらでも受ける! あたし、行くから!」
"お、おい曙! ……全くあいつは。漁船の人達をどうすれば"
"……提督さん、近くに他の鎮守府の子達がいたりしない?"
"っ! 成る程。近隣の鎮守府に問い合わせてみます!"
可香谷提督と枕崎のやり取りなど、曙には届いているのか届いていないのか。曙はただ、前を見据え、最大船速で引き返した。
*
「はぁ……はぁ……!」
満身創痍でも、潮は海上に立ち続けていた。通信機は損傷しており、仲間の状況は不明瞭。しかし、朧と漣が大声で「曙がすぐ救援に来る」と知らせてくれたことが、意識を支えていた。イ級の襲撃により朧達の救援は望めず、それでも潮は戦うことを止めない。朦朧とする意識の中、なお主砲を構える。
"ザッ……ザザッ……"
通信機から複数の声が混ざり、ノイズで何を言っているかは分からない。おそらく「逃げろ」と告げているのだろう。だが潮は逃げず、焦燥と意地を背負い、肩に乗った潮妖精も直立して敵を睨み続ける。
「潮は、逃げません……刺し違えてでも……倒し、ます」
潮は最後の力を振り絞り砲弾を発射する。だが、満身創痍の砲撃は当たらず、ロ級は左へ少し身を翻すだけで避けた。態勢を立て直すロ級は、魚雷発射管を展開。数本の魚雷が白い雷跡を描きながら潮に迫る。しかし、潮にはもはや避ける力は残っていなかった。
「あぁ……!」
雷跡に気づいた時には既に遅く、潮は未練と絶望を抱えながらも──強大な力で横に弾き飛ばされ、直撃を免れた。
「ぎゃっ!?」
海面を滑る潮。その影がゆっくり立ち上がる。
「曙、ちゃん……!」
「こいつはあたしの獲物よ! ……邪魔しないで」
潮を背に、曙は低く、冷たい声で告げる。表情は見えないが、その瞳には復讐心と怒りが鮮明に宿っていた。
"……要救助者は、付近を巡回中の艦隊に護衛の引き継ぎを頼んでおいた。ここまで来てしまった以上、もう戦うなとは言わない。だが自分を見失う事だけはするなよ!"
「ふん……言われるまでも無いわ」
提督の声に答え、曙は迷いを捨て、ロ級に砲を向けた。
「今度こそ、確実に仕留める!」
曙は叫び声と共に連続砲撃を放つ。しかしデタラメに撃たれた砲弾は、ロ級には一つも当たらない。その様子を見て、ロ級はまるで嘲笑うかのように唸り声を上げた。
「この……!」
"曙、冷静になれ。取り乱せば相手の思うツボだ!"
「うっさい!」
可香谷提督の忠告を振り切り、曙は怒りと焦燥を力に変え、攻撃を躱しながらロ級へ突撃した。ぶつかると同時にパワーの押し合いが始まる。数秒の拮抗の末、曙は一気に力を込めてロ級を空中へ投げ飛ばした。
「もらったわ」
勝ち誇る曙は、ロ級を狙い砲を構える。しかしロ級は宙空で器用に上半身を曙の方へ曲げ、副砲で反撃した。
「ぐぁっ!?」
想定外の攻撃に曙はよろめく。着水した直後、ロ級は口を大きく開き、舌を伸ばして右脚に絡みつけると、物凄い勢いで引き戻す。曙の身体は海面を転がるように引きずられた。
「しまっ━━きゃあああっ!」
引き摺られながら、曙は必死にロープをちぎろうと抵抗する。だが高速で動くため視界はブレ、狙いは定まらない。
"曙、ロープを撃つんだ!"
「分かってるわよ、こんの……!」
曙の身体は大口を開けたロ級の下まで運ばれ、咀嚼されんとする寸前で両手両足を使い口を押さえ踏ん張る。必死の抵抗。だが、このままでは力尽きるのも時間の問題だった。
「曙ちゃん!!」
潮の声が響く。潮は静かに主砲を構え、狙うはロ級の未だ健在な左眼。
「…………」
兵学校時代、曙に教わった主砲の撃ち方を思い描く。二人がまだ仲の良かった頃の記憶──
「曙ちゃん、今助けます!」
発射された砲弾は、世界がスローモーションに変わったかのように真っ直ぐ飛び、顎に力を込めるロ級の左眼に命中。大爆発が起こり、もう片方の目を潰されたロ級は悶絶する。
曙は一瞬戸惑うが、すぐにロ級の口内を蹴り上げ、転がるようにその場から離脱。脚の艤装から蒸気を噴射し、体勢を立て直した。
「曙ちゃん、大丈夫ですか?」
「潮……? っ、余計な事しないで」
駆け寄る潮に曙は困惑しつつも顔を逸らす。肩の上の曙妖精がお辞儀して状況を伝える。
一方、両眼を潰され激昂するロ級は主砲を展開するも、左右からの爆発に追撃されてよろめく。
「ごめん、遅くなった!」
「悪いネ、道が混んでた」
増援として駆けつけた漣と朧が合流。全員が無事に集結した。残るは眼前のロ級のみ。
"曙、お前にも色々思う所があるのかもしれないし、それが何なのか俺には分からない。だが今だけは、皆で力を合わせて欲しい。全員が無事に帰ってくる為にも"
通信機越しの提督の声に、曙は周囲の仲間──潮も含め──を見渡す。朧と漣は笑顔で頷き、潮も力強く応えた。
「チッ……仕方無い、やるよ!」
曙は一度目を閉じ、冷静さを取り戻すと、ロ級へ砲撃を放つ。砲弾はロ級を外し、斜め前に着弾した。
「外しましたヨ!?」
「ううん、あれでいい」
威嚇射撃で相手の攻撃を誘い、主砲を受けたロ級はその方向に向けて反撃。読み通り、飛んできた砲弾を曙は躱し、カウンターとして本命の一撃を放つ──命中。
「一気に決めてやる!」
勢いに乗った曙は漣に合図し、突撃。肉薄する。ロ級は魚雷発射態勢を取るが……。
「やらせはしません!」
朧が援護射撃を行い、ロ級は大きくよろめく。
「そこなのね!」
漣が反対側から攻撃。二人の砲撃により、放たれようとしていた魚雷が誘爆。悲鳴のような咆哮を上げるロ級は破れかぶれの主砲を展開する。
「━━潮、主砲撃ちます!」
身構えていた潮の必中砲撃が、口内の主砲すら破壊。全ての武装を失い、よろめく。もはやロ級は虫の息だった。
「今度こそトドメよ!」
曙は両膝を曲げ魚雷を発射。白い雷跡を描く六本の魚雷が進み、ロ級の下で大爆発。
断末魔の唸り声を低くあげたロ級は、わずかに原型を留めた眼からオレンジ色の光が消え、ゆっくりと海底へ沈んでいった。
「いやったぁ!!」
漣が歓喜の声を上げると、朧もにっこり頷いた。初陣を終えた二人にとって、戦果は目に見えて喜ばしいものだった。朧妖精はもちろん、普段は真面目な漣妖精さえも、手を取り合い互いに喜びを分かち合う。
「ふふん。ふざけていると思われがちな漣ですが、ちょっと本気は……まぁ、凄いでしょ?」
「戦闘中までふざけるのってどうなの? ……まぁでも、凄かった。朧も、次も頑張る」
互いを称え合う二人の笑顔は、緊張の残る戦場の空気を一瞬和ませた。その雰囲気のまま漣は潮に駆け寄る。
「うっしーも。中々良かったかも!」
「…………」
「って、無視かよ!」
「は、はえっ!? もしかして、潮の事ですか……?」
「そそ。潮ちゃんだからうっしー。凄かったヨ」
「うん。主砲の命中精度が正確だった。よほど訓練したんだね」
「あ、いえ。潮はそんな」
しかし潮は、どこか上の空だった。内気な性格もあったが、今の彼女の視線はある一点──曙──に向けられていた。
曙は、沈んだロ級の地点を見つめながら左腕を右手で掴み、不満げな表情を浮かべる。因縁の獲物を、自分一人で仕留めたかったのだろう。漣と朧もその視線に気づき、声をかけるタイミングを悩んでいる様子だった。
"皆、よく無事だった。一先ずは帰還してくれ……曙は、後で執務室に来るように"
「ほいさっさ。皆、お疲れさんだろうし早く帰ろ」
可香谷提督の通信を合図に、一同は微妙な空気を押し流すように帰路についた。
*
執務室──
「漁師の方々は、無事に近隣鎮守府の艦娘達により帰還出来たとの報告があった……救助を必要としている人を放置し、私情で行動するなんて言語道断だ。無事で済んだから良かったものの、曙の今回の行いは、決して許される事じゃあない!」
帰還後、執務室で曙は提督から叱責を受けていた。自身で「処罰は後で受ける」と豪語したためか、珍しく黙って俯き、提督の言葉を受け止めている。
心配で付き添った潮たちも、張り詰めた空気に耐えながら傍観していた。
「あ、あの、提督。曙ちゃんは潮を助けようとして命令違反をしたんです。だからその……」
「だからといって許される事じゃない!」
「ひっ」
声を荒げる提督に、潮は小さな悲鳴を上げ竦む。しまった、と後悔の表情を浮かべる提督は、間を置いて落ち着き、静かな声で続けた。
「……すまないが、他の皆は部屋から出ていてくれないか」
三人は執務室を後にする。潮だけは振り返り、何度も様子を窺った。やがて部屋には提督と曙の二人だけ。静かな緊張が支配する中、曙の肩の妖精が、サイドテールの隙間から怯えた視線で様子を伺う。
やがてため息と咳払いを置き、提督は静かに口を開いた。
「……ここまでが、
「……?」
「あの時、お前が救援に向かわなかったら潮は恐らく轟沈していただろう……正直な事を言うと、お前が動いてくれて良かったと思っている自分が居るんだ。だが提督と言う立場上、それを認める訳にはいかない。だからこれは、お前達と共に歩む一人の男としての気持ちだ━━仲間を助けてくれて、ありがとう」
曙は顔を上げる。自分が叱責される立場だと理解している。だが自らの意思で動いたことに悔いはなく、仕置き棒による制裁でも構わない──それくらいの覚悟でいた。
「な、何よそれ。あたしは」
「但し! 要救助者の放置及び命令違反を行ったのは事実だ。始末書は疲れが癒えた後で、きっちり書いてもらうからな?」
曙は混乱した頭で、かろうじて小さく頷いた。
「……分かった、ごめん」
そう呟き、執務室を後にした。
扉越しに様子を伺う潮、朧、漣。混乱した曙が乱雑にドアを開けると、開いた側に居た漣が鼻をぶつけ悶絶。朧が呆れつつ漣を気遣う間、潮は曙の下へ駆け出す。
「曙ちゃん!」
曙は歩みを止めず、潮は声を続ける。
「あの、助けてくれてありがと━━」
「関わらないでって言ったわよね」
「あ、あう……」
「次は助けないから」
冷たく言い放つ曙。潮は追えず、ただ立ち尽くすしかなかった。
「それから」
会話が途切れようとしたその時、曙が立ち止まり、振り向かずに口を開く。
「……ロ級に喰われそうになった時に助けてくれた事は感謝してる。お礼は言っておくわ」
そう言い、曙は再び歩き出す。背後で潮が「あっ……はいっ!!」と嬉しそうに叫ぶが、曙の険しい表情は崩れない。一度だけ立ち止まり、口を動かすも言葉は音にならず、再び歩みを進めた。
to be continued...次回【集結―ディスティニー―】