ティアマト彗星が糸守町に落下してもう8年が経った。
俺は、時々不思議な夢を見る。それはとても楽しく、悲しく、怖しい夢だった。何故だろう、俺はこの5年間、何かを、だれかを探し続けている。それは果てしなく遠くて、見つけ出すことは不可能に近いとわかっているのに...身体が妙に反応しているのがわかる。1日1日、就活で忙しい俺なのに、何故こんな気持ちに駆られるのだろう。
今日もまた不思議な夢を見た。彗星...。そう、あの時見たその景色はまるで夢のように、美しい眺めだった。
1度何かを失った俺は同じことを繰り返さないために、何かを守るために、ただひたすら一生懸命に走り続けている夢だった。
見たこともない街のはずなのに、出会ったこともない人たちのはずなのに、何故俺はこんなにも一生懸命だったんだ...。思い出せない。
起床した俺は、何故か枕が涙で濡れていることに気づいた。
いつもこの夢を見てしまうと涙を流している。
俺は...一体何を探しているんだ...。
今日も、入社試験で面接を受けることになっている。もうこれで何社目なんだろうかと考えるが、数え切れない。また同じ日をこうして繰り返していくのかと考えていると、憂鬱になってしまう。
重い足取りで電車の中に入る。通勤ラッシュだからか、電車の中は満員だ。どうにか、人と人との間をすり抜け、ドアの側に立てた。ふと、窓の外の景色を見る。
1度俺は、司と奥寺先輩とで何かを求めて糸守町を目指したことがあった。ただ、今思うとあの時俺は何をしたかったんだろうか。...気づけば山の上で一晩過ごしていた俺は何か手がかりを見つけたんだろうが思い出せなかった。
電車が動き始めた。これから面接だというのにこんなことばかり考えてしまう。車内は通勤のために電車を利用する人ばかりだ。俺はその光景を見てため息を吐く。
あの不思議な夢の正体が何かもわからない。心に大きな穴が空いてしまっている感覚に陥っている。
ふいに電車がすれ違う。どの電車も満員だなと思っていると...俺は目を見開いた。今まで見つけ出せなかったものを俺は...
...俺は遂に見つけてしまった...
駅に到着すると、急いで電車から降りてあの人に会うためにがむしゃらに走った。出逢えるかもわからないのに、何故こんなにも俺は走っているんだろうか。
ここじゃない...。どこだ。どこなんだ。どこにいるんだ。
そんなことをずっと考えて走っている。呼吸ができていないことも気付かないままひたすら走り続けている。
見つからない、やはりこの東京で人を見つけ出すのは無理だったのか...。息を切らしている俺は諦めて、神社の階段を登ろうと見上げた。すると、階段の上で俺と同じく息を切らしている女性がいた。
まさか...。
俺は階段を登る。
夢じゃないんだよな...。
彼女も階段を降りる。
そして、俺たちはすれ違ったが....俺は声をかけることができなかった。本当に俺が探していたのは『彼女』だったのか。勇気の持てない弱いは俺は俺自身を恨んだが、この機会を逃すことはできない。俺は勇気を振り絞って声をかけた。
「...あの!俺たち、どこかで会った事ありませんか?」
すると、彼女から...
「私も...どこかで貴方のことを...。」
彼女は涙を零している。あぁ、俺はこの人を探していたんだ...。
初対面のはずなのに、初対面じゃないような...何故か彼女の声が懐かしく感じる。その声が俺に安らぎを与えてくれる。あぁ、涙が止まらない...。俺と彼女は口を開き、
「「君の名前は...?」」
2人同じ事を聞き出した。
「俺は、瀧。立花瀧!」
「私は、三葉。宮水三葉!」
「そうだ、三葉だ...。そうだった...。」
「瀧くん...。私ずっと何かを探していた気がするんよ。でも、今こうやって瀧くんと出逢えて、私、ようやくわかったよ。私はずっと不安やったんよ。なんでかな、彗星が糸守に堕ちそうになった時、私は糸守の人達を守ろうと必死になって走っとたんよ。きっと、それは瀧くんのおかげなんよね。」
「そんなことない。そんなことない...。」
「そんなことあるんよ。ありがとう、瀧くん。」
俺は我慢できず、三葉を抱きしめた。すると、三葉も応えてくれた。
あぁ、なんだろう。とても安心する。俺が今まで何かわからずに、ただひたすらに追い求めてきたのは、『三葉』のことだったんだ。
嬉しい、こうしてまた再び三葉に出逢えて。
「...そういえば瀧くん、私思い出したけど、手に名前を書くとか言っといて、『すきだ』はどうなんよ?」
「あぁ、あれは...。」
そうだ、少し思い出した。確か、お互い忘れないように手に名前を書こうとして、俺は三葉の手に...。今思えば恥ずかしい。
「でも、三葉も俺と同じ言葉を書こうとしてたんじゃないか?三葉のみを書くにはどうも不自然だと思うんだが...?」
「そ、そんなことない!気のせいだよ、きっと!」
図星だな。
「でも、私嬉しかったんよ?あの言葉があったからこそ、あの後頑張れたし。そりゃ、もちろん焦ったけどね。」
そうやって微笑む三葉は、美しく思えた。
「そうか...。なぁ、三葉。俺はこうしてお前と再会して、改めて確信したことがある。」
「うん?」
不思議そうな顔をする三葉。
俺は大きく深呼吸した。もうあんな気持ちになりたくない。後悔したくない。...三葉と別れたくない。だから...。
「三葉、お前のことが好きだ。」
思い切って三葉に5年間貯めていた気持ちを告げた。
三葉は目を見開いたと思ったら、また涙を流し、俺に抱きついてきた。
「......たよ。」
「え?」
「私も同じこと思っとったよ。」
三葉は俺より3年長い8年間、ずっと俺を探し続けてくれていたんだよな。
...嬉しかった。三葉がこう言ってくれて俺は、安心してしまった。俺も三葉の涙を貰ってしまったようだ。身体の水分が涙が原因で空っぽになりそうなぐらい俺と三葉は泣き続けた。
このことがきっかけで俺たちは付き合うことになった。
いつか誰かが言っていた『ムスビ』という言葉が思い出される。
俺と三葉を強く結んでいた組紐が1度は切れかかったが、こうして今日出逢うことができて、また強く結ばれることができた。
俺は一生、いや、何章でも三葉を愛し続けようと神に誓った。
君の名は。の影響が強くて、書いてみました。少し、キャラ崩壊してしまってるかな?すごい心配です...。
ずっとスパークルを聴いて書いた作品ですので、歌詞の一部の単語が入ってるかもしれませんね。