たまたま出逢った俺たちは感動のあまり感傷に浸っていたが、三葉は仕事に行く途中、俺も面接をしに行かなくてはいけない事を思い出した。
私達はとりあえず連絡先の交換をしてお互いの仕事場に急いで向かうことにした。その間、連絡が繋がらなかったらどうしようなんてことも考えていたけど、瀧くんから「お互いの用事が終わったら、また会おう。」ってメールが送られてきた時は、安堵でまた泣きそうだった。
俺はこの出逢いの後、面接会場に向かった。
なんだろう、面接の間ずっと三葉のことが頭から離れなかった。
俺は、5年前に糸守町に墜落した隕石事件について必死になって調べていた時期があった。何かを知るために俺は調べていた。だが、それが一体なんだったのかよくわからなかったが、今日気付いたことがある。俺は、『三葉』の安否を知りたかったんだ。
ある日、俺が三葉の身体に乗り移り、必死になって俺(三葉)と誰か二人組と一緒に糸守町を隕石から守るためにずっと走っている夢を見た。しかも、夢にしてはかなり鮮明に覚えているからメモを残していた。
たしか、俺は何かを助けようとして、隕石が落ちるから逃げろと忠告をしていたが隕石墜落なんてことを信じてくれる人はもちろん誰もいない。話が飛躍しすぎているからだ。それならと、俺と二人組とで話を進めていった。結果、糸守変電所を爆破して、山火事になると騒いで町民を逃がそうということに決定した。
あいつらが着々と作業を進めている間に俺は町長、三葉の父親に会いに行き、この町に隕石が落ちることを告げたが当然...。
「何を言ってるんだ?お前は...。」
確か、俺はこの時に焦っていたんだろう。
俺は説得を続けたが...。少し黙れと言われ、町長は何かを考え始める。状況確認のために俺の言ったことを町長は、聞き返す。俺は、信じられないことだというのはわかるが、根拠もあると言おうとしたところで、「よくもそんな戯れ言を俺の前で!」と怒鳴られてしまった。俺は、この時点で見当違いなことをしているんじゃないかと不安が募った。だが、これは実際に起きる話。起こってしまった話。なぜ、俺の言うことを分かってくれないんだという怒りが三葉の身体に溢れてしまっていた。
それから、俺は道を歩いていた。すると前方に祭りに行く約束をする子供たちがいた。俺は必死にその子たちに、祭りに行かずに逃げろと言ったが、もちろん気味悪がれてしまった。そこにたまたま、「お姉ちゃんー!」と三葉の妹が心配そうな顔をして駆け下りてきた。その間に、声をかけた子供たちは逃げるようにその場を去った。...こんなんじゃ駄目だと、これじゃ不審者だ。そう思っていた。
「ちょっとお姉ちゃん、あの子らに何したん!?」と俺の腕を掴んでそう言った。
俺だから駄目だった。三葉だったら...。そんなことを思っていた俺はこの気持ちをぶつける。
「三葉なら...説得できたのか?俺じゃ駄目なのか?」
こんなことを呟いていた。もちろん妹は戸惑っただろうな。だが夢の中の俺はお構いなしに、婆ちゃんを連れて逃げろと言った。ここにいたら死んじゃうだよ!と言ったことも覚えている。すると、今にも泣きそうで怖がっている妹が、
「お姉ちゃん、しっかりしてよ!昨日は急に東京に行ってしまうし...お姉ちゃん、このところずっと変やよ!」
ん?東京?違和感を覚えた。
「おーい、三葉!」とあの二人組が俺を呼ぶ。町長とはどうだったと聞いてくるが、俺は混乱していた。
あの時、町長からお前は誰だと言われた。父親が娘に言った。
俺だから駄目なのか、身体が入れ替わっているんだから三葉は今どこにいるんだと考えた。もしかして...三葉は...。俺は気付いた。あいつは今御神体にいる。自転車を二人組の男の方から借り、山を登った。
途中、道から外れ、自転車を壊してしまった俺は三葉の足で山を駆け登った。
御神体に着いた俺はひたすら三葉を探した。三葉!三葉!と何回も叫んでいた。それから...俺の身体に乗り移ってから...駄目だ。ここから思い出せない。
やはり、三葉のことが心配だったんだと思う。三葉がああして、俺の前に再び戻ってきてくれたということは無事に生き残ることが出来たんだと思うと、涙が溢れそうになる。三葉が俺の前に現れて良かった。
あれから私は瀧くんと別れたあと、急いで会社へ向かった。
走っている時も、電車に乗っている時も、仕事中でも、私はずっと瀧くんのことしか考えていなかった。だって、8年ぶりの再会だよ?
誰だって嬉しさのあまりその人のことしか考えれないと思うけどなぁ...。しかもしかも!瀧くん、私に告白してくれたんよ...。いや、嬉しくないわけないじゃない!私も瀧くんのこと好きやし...。あの時手のひらに『すきだ』って瀧くんが書いてくれていたから今ここに私はいるんだろうな...。
私は1回、人生の幕を下ろしている、そんな気がする。『あの日見た彗星はまるで夢の景色のように美しい眺めだった』。その景色は鮮明に覚えてる。ただ、その彗星は私に絶望を齎した。死を覚悟して目を瞑ると、いつのまにか眠っていたみたい。そこから信じられないと思うけど、瀧くんの姿になってたんよね。でも、目覚めた場所が私がよく見る光景。瀧くん、私に会うために、宮水神社の御神体まで来てくれてたみたい。そこから外に出て、私の声で私を呼んでいる声がして、それがすぐ瀧くんだ!っていうのに気づいた時は私も一生懸命、瀧くんのこと呼んでいたなぁ。だって、不安だった。あの大きくて丸い糸守湖が瓢箪のような形をしてたんよ?その時に私は1度死んだんやなって思った。でも、私は生きていた。瀧くんが私を助けようと、信じられないけど口噛み酒を飲んで、私と入れ替わったみたい。瀧くん、口噛み酒飲むとか、ひくし、恥ずかしいわ...。でも、こうやって私のために頑張ってくれてたんやな。嬉しいなぁ。
あ、そうそうその時気づいたんやけど、私が東京に会いに行った時、瀧くんは中学3年生やったんやね。そんなタイムラグが存在していたなんて考えれるわけないよ!こうして、瀧くんよりも年上ってこと考えるとなんか複雑...。
...あれ?私なんでこんなにもあの時のことを思い出せたんや...。今までずっと夢でしか見れていなかったのに。朝目覚めたら、その夢は何事もなかったかのように消えてしまっていたのに。大切な人、忘れちゃダメな人、忘れたくなかった人。その人を私は今までわからなかった。あの麓で教えてくれた名前は、みんなを守るために走っている時は覚えていたよ。でも気づいたらわからんくなった。テッシーにあの人の名前がわからんのって言った時は呆れられて怒鳴られたけどね...。
途中派手に転んだ時、私はもうダメやと諦めたけど。手のひらを見て勇気を貰ったんよ。そのたった3文字に私は救われた。みんなが救われた。瀧くんは助けられなかった、何もできなかったって言ってるけど、私からしたらみんなを助けてくれた命の恩人だよ。
...いつのまにか私は嗚咽を漏らしていた。周りの人からすごい心配されたけど、今は泣かせてほしい。だって、大切で、忘れちゃダメで、忘れたくなくて、私が会いたかった人にこうして再会できたから...。
瀧くん、ありがとう。
俺は面接を終えた後、三葉の仕事が終わるまで時間を潰していた。三葉の仕事が終わるまでの時間がすごく長く感じてしまう。早くあいつに会いたい、そんな衝動を抑えようと必死だ。
三葉【今、仕事終わったよー。】
瀧【お疲れ様。】
三葉【ありがとー!これからどこで待ち合わせする?】
瀧【じゃあ、あの駅に待ち合わせしよう。それから晩御飯にしようか。】
三葉【わかった、じゃあ今から向かうね。】
瀧【うん、気をつけて。】
なんか新鮮だ。だって、あの三葉が!あの田舎者の三葉がこうして東京に慣れているんだ!誰だってこんな反応になるだろ!
さて、それから15分ぐらいが経った。駅で三葉を待っていると、辺りをキョロキョロする女性がいた。...ったく、あれじゃ不審者じゃないか。
「おーい、三葉ー。」
「あ、瀧くん。もう、おるんやったら声かけてくれてもええんじゃないの?」
「いや、三葉が面白くてつい...。」
「はぁ?なんやそれ!瀧くんなんてもう知らん!」
「拗ねるなよ。」
「拗ねてなんかない!」
「そうか。」
「「...ハハハ!」」
お互い笑い始めた。
「やっぱり瀧くんや。」
「その訛り方、三葉だ。」
「あのね瀧くん、ずっと私、君に会いたかった。」
「うん、俺も。」
多くの人が広場にいることを気にせず、俺たちは抱き合った。
少しでも、三葉の暖かさに触れたかった。
周りの人に見られているのは気づいてるけど、私は何も気にならなかった。少しでも瀧くんを感じたかった。
「瀧くん。」
「ん?どうした?」
「私も瀧くんのこと好きだよ。」
「!!...ありがとう。俺も改めて、三葉のことが好きだ。」
あぁ、俺は、私は、ようやく...。
君に出逢えたんだね。
うーん、2人を動かすのって難しいです。新海監督はやはりすごい。