Gate/Grand Order   作:高木家三男

2 / 7
設定の確認めっちゃ大変やん……
でもやっぱり聖杯戦争って面白いですわ


もしもケイネス・エルメロイ・アーチボルトが第四次聖杯戦争で勝者となったら

「すまない、セイバー。危険がなさそうだったら長くなりそうだし、少し眠ってからでもいいか? 昨日は月曜から長期休暇取るために仕事で久々に残業長かったし、体力的にそろそろ厳しい」

 

 当然のことながら、聖杯戦争は命に関わる危険がある。原作の半人前以下の魔術師である士郎でさえ死ぬパターンがとんでもなく多いことからも明らかだ。一般人の自分なら危険はさらに多い。アヴァロンだって持っていないのだから。

 

 田中は現実感のない状況ながら、疲れた頭を働かせる。

 

 少なくとも、今は本拠地といっていい場所にいて、セイバーも横に控えている。召喚の際の光が部屋の外に漏れていたとしても、既に一時間ほど時間は経過している。襲われるのであればとっくに襲われているはずだ。

 だとすれば、ひとまず自分の体力回復とセイバーの経験をZeroアニメと比較させた方が効率は良いだろう。そう判断した。

 

 

 元々、田中という人間はこと自分のことに関しては感情と合理性を切り分けて動くことのできる人間である。

 

 今回も例に漏れずそのように対処した。人によってその性質に好き嫌いはある。が、少なくともそれは一方的な判断ではなくアルトリアに確認は取っているし、ある意味で信頼しているという態度の表明でもあったことから彼女を不快にさせるようなことはなかった。

 

 

 一方で田中は自分のことを知識で知っていても、どうやら本当にただの一般人なのだなとアルトリアは感じ取った。

 

 切嗣やケイネス、遠坂時臣のような戦に臨むものの気配はまったくしない。まだライダーのマスターだった少年の方が、なんだかんだと言いながら魔力に対して敏感に反応していたり前線に出てきていたこともあって魔術師らしい。

 

 

「そうですね、問題ありません。今回はどうやら普通の聖杯戦争とは異なるようですし、通常のものであったとしてもサーヴァントを召喚して即戦闘になりうるのは7騎目を準備のない状態で引いた場合くらいですので」

 

 

 それを聞いて、そう考えると士郎は幸運低いよなあ、と田中は呟いた。

 まあ、物語の導入としてはある程度のご都合主義は避けられない。伏線として描かれる遠坂の宝石のこともある。

 

 どうやらセイバーは原作Zeroとは異なる結果を辿った世界から来たらしいが、例えばstay night本編開始以前に切嗣がアインツベルンに顛末の報告をして和解していたり、あるいは久宇舞弥だけが生き残って時計塔に大聖杯の汚染についてリークした世界があったり、あるいは正義の味方を受け継ぐと士郎が言った後も切嗣がしばらく生き延びてきちんと魔術を学んだ可能性だってあったかもしれない。

 

 ある意味で、何が起こってもおかしくはないのだ。神様転生とか憑依に比べればただの平行世界の方がよっぽどありふれた話だろう。

 

 

「? 何かおかしな点でもありましたか?」

 

 

 魔術師であるとは考えられない。それなのに魔力だけは十全に供給されている――。

 そのことだけが腑に落ちず、神妙な顔をしていたセイバーがじっと田中を見つめる。

 

 田中の趣味の一つがフィギュア作成ということもあり、二次元のキャラクターが三次元に出てくるとどうなるのだろうと考えたことはあった。

 

 どんなにクオリティが高くても人種の違いなどからイマイチこれじゃない感の拭えないコスプレと異なり、Fateを知っている人間ならまず目の前にいる人物がアルトリアだと初見で理解できる。

 

 例えば、ハンターハンターのゴレイヌをリアルの人物で表すならガ○ッジセールのゴ○になったとしてもそれほど違和感はないだろうが、それよりもずっとリアルに馴染んでいる(その上美人)。そんな感じであった。

 

 

「いや、何でもない。じゃあ、さっきの続きを見れるようにしておくからそれで時間を潰しておいてくれ」

 

 

 録画した番組を連続再生の設定にし、そしてテーブルの上に喉が渇いたら自由に飲んでいいからとウーロン茶を置く。すると田中は机の引き出しからアイマスクを取り出して身につけ、さっさとベッドに横になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ター、マスター」

 

 セイバーに揺すられて田中が目を覚ましたとき、時刻はすでに昼の十二時過ぎになっていた。どうやら、彼女はアニメが全て終わったのを見計らって自分を起こしたようだと田中は理解した。

 

「ああ、おはようセイバー。……十時半には起きるつもりだったんだけどな」

 

 ベッドから身体を起こし、ぐっと伸びをする田中に彼女は微笑んだ。

 

「召喚で魔力が使われたのであれば、その疲労があったのかもしれませんね」

 

 なるほどなあ、と頷きながら、田中はテレビのチャンネルを地上波に変え身支度を整える。そしてパンとベーコンエッグ、簡単なサラダの朝食を用意した。

 田中が固く焼いた卵の黄身を口に運ぼうとすると、じっとセイバーがそれを見つめているのに気づく。

 

「サーヴァントって食事とか睡眠はいらないんじゃなかったっけ。あれ、セイバーは契約が特殊だから霊体化できないとか、マスターが未熟だからラインがきちんと繋がってないとかそういうののせい?」

 

 何気なくした質問に、彼女はどこか慌てたように居住まいを正した。

 頬をほんのりと赤く染め、目を閉じて両手を握って膝に置く。

 

「いえ、魔力は問題なく提供されています。切嗣よりも供給量は多いくらいです」

 

 その言葉に田中は疑問を抱いた。

 

 魔術師としては異端だったとしても切嗣は父から魔術刻印の一部を受け継いでいる。詳しくは不明だが、マスターとしての基本性能は士郎<<切嗣<遠坂くらいの関係なはずだ。素人である田中は士郎(初代としては破格の魔術回路27本)を超えるかどうかすらかなり怪しい。FGOの召喚システム的な何らかのバックアップを受けていると考えたほうが良いのかもしれない。

 

 そして、次の彼女の言葉に田中は今度こそ耳を疑った。

 

「信じがたいことですが、マスター。どうやら私は英霊の身でありながら受肉している――」

 

 Fateの設定は複雑な上、アルトリア・ペンドラゴンの英霊となる経緯は特殊なものである。田中は本来のセイバーがどうあるのかが正しいと言い切れる自信はなかった。しかし、少なくとも本来睡眠は不要で、魔力供給が不足している例外にあたる本編士郎がマスターのとき、睡眠で消費を抑え食事によって多少は補えるという記述があったことは知っている。

 

「セイバーが特殊な英霊ってことを差し引いても異常な事態なのか?」

 

「ええ、今確認した限りでは。英霊としての力を持ちながら生前の肉体を持っている状態です。前回の聖杯戦争とはまるで違う」

 

 やや間があってからセイバーは言葉を続ける。

 

「……その、実はマスターが眠っている間に一度小用を済ませているのです」

 

 トイレ? 確かに普通のサーヴァントなら行かないだろうが、セイバーは特殊だから別? 選定の剣を抜いて年を取らなくなったときから関係なかったとか? いや、ホロウではウォシュレットの話があったような。あれは夢みたいな話だからノーカウントなのか? それともそもそもホロウの中でも本筋の話じゃない、別のライターが書いてて監修が甘いお祭り話で設定適当な部分だったとか。

 

「アイリスフィールと紅茶を飲んだときにはこのようなことはありませんでした。それに何より、私の感覚がそう言っている」

 

 ですが、特に害はないことは確かです。そのように、あまり深く考える必要はありません。田中に見つめられた彼女は恥ずかしさをごまかすようにどこか早口でそう言った。

 

 

 

 それから十分ほど後。

 田中とセイバーは食事をしながら情報のすり合わせを行っていた。

 

 

「私の経験した第四次聖杯戦争はあなたの知る物語とは幾分異なっている」

 

 

 目を閉じて少し前に実際に体験した記憶と先ほどまでテレビで確認していた『お話』の違いを噛みしめるようにセイバーはそう言った。

 

 

「最初こそ違いは少なかったが、キャスター登場以後はほとんど別物でした」

 

 

 田中は机からノートとボールペンを取り出し、メモの準備をした後で話を促す。

 

 

「まず、前提として私と切嗣の陣営には久宇舞弥なる人物はいませんでした」

 

「なるほど、それは確かに戦略が変わってきそうだ」

 

 可能性としては十分にありえる話だと田中は考えた。そもそもギルガメッシュや切嗣と異なり、ウェイバーやケイネスなどの詳しい設定はstay night発売時点では考えられていなかっただろう。久宇舞弥もおそらくその内の一人だ。

 

 

「ええ。初期の些細な違いとしては、バーサーカーが私に攻撃を仕掛けてきた時点で切嗣が撤退を進言。それに加えて私がランサー相手に手傷を追わなかったこと」

 

 

 まあ、セイバーは基礎能力値が高いせいで物語補正をマイナスに受けて色々割を食っているところはあると田中は以前から感じていた。それほど驚くべきことではない。

 

 

「より慎重に行動した結果、って感じかな?」

 

「そう取ってもらってかまいません。切嗣はビルの爆破などという手段は取りませんでした。間桐か遠坂の工房を襲うのであればともかく、目立ちすぎれば他のマスターに目をつけられる可能性が高いから、と」

 

 

 ビル爆破や海魔出現時の自衛隊出動などは物語的な派手さを重視したためだろう。魔術師をより少ない犠牲で倒すため飛行機爆破などはやっているが、切嗣が取りうる選択肢としては他のマスターに警戒されることと天秤にかけたのならどれも取りうるし、場合によっては選ばないのではないかと思えた。

 

「確かに、一番楽なのは最後の1騎になるまでずっと隠れて、しかもサーヴァントじゃなく消耗したマスターを倒すことだろうからね」

 

「それも考えましたが、逆に警戒されるだろうということで採用はされませんでした。私達の陣営の大まかな戦略としては、初期は各サーヴァントの情報を集め、戦力を見極めた後、3騎、できれば2騎の打倒で消耗を抑えて勝ち抜くというものでした」

 

 

 有名な切嗣とセイバーの不仲。Zero時には3回しか口を利かなかったというものがあるが、本当に勝つためであればわざわざそんな縛りを設ける必要はない。

 

 

「その言い方だと切嗣との関係は悪くなかったように聞こえるけど?」

 

「……どうでしょうか。物語ほどは悪くなかったように思えますが、信頼し合っていたとはとても言えなかった。ただ、勝ち抜くために意見交換は必要な手段として行ったという方が正しいように思います。遠坂かケイネスのどちらかと私達だけが最後まで残れば妻子を人質に取るくらいのことはしていたというのが私見です」

 

 Zeroアニメの衝撃的な展開もあってセイバーは切嗣の冷酷さを理解しているようではあった。おそらく元々王という仕事柄、大勢のために少数を切り捨ててきたという同族嫌悪もあるし、直感スキルなども働いているのだろう。

 

 

「そして、バーサーカーが……ランスロットだったのですよね。……驚きました。いえ、大丈夫です。すみません。バーサーカーが攻撃を仕掛ける前にアーチャーが名乗り、真名を明らかにしました。アーチャー、ライダー、バーサーカー、ランサーと見えた時点で我々は今回の聖杯戦争が尋常な英霊の集いではないことを実感したといっていいでしょう」

 

 

 セイバーにとって原作のランサー戦、聖杯問答、バーサーカー戦、聖杯破壊は重要な要因だった。どれかがなくなればおそらくstay night時のようにはなっていない。

 

 

「第五次と比較しても第四次の面子はちょっと信じがたいものがあるからなあ」

 

 

 田中の言葉にセイバーは少しだけ目を見開き、もしかしたらアイリスフィールのその後なども知っているのではないかと多少の興味を抱いたようであった。

 

 

「あの次の回も知っているのですか?」

 

「まあ、セイバーの体験した未来じゃなくて見てもらったアニメの続きだから全然ちがうと思うんだけど……。そのことはまた後で。続きを」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 故に、この場では現状の情報共有を優先した。

 

 

「そうですね。私には関係のないことでしょうし。物語との差異といえば、ケイネスがランサーに令呪を使う前に切嗣がバーサーカーのマスターを攻撃し、バーサーカーは令呪を使われて手傷を負ったマスターと撤退しました」

 

 

 このセイバーが第五次に呼ばれるとは少し考えにくい。そもそも、第五次が行われるかどうかも不明である。

 

 

「その後はライダーが私とランサーを臣下に誘いましたが聞くわけもなく。ランサーのマスターもキャスターだけが現れていないことを気にしたのか戦闘の継続を諦め緒戦が終わりました」

 

 

 ここまでの情報では、特に変化は少ないように思えた。大きな違いと言えば、ランサーとセイバーの敵対度が低いことくらいだろうか。

 

 

「その後、キャスターと最初に接敵したのが私達であったのは物語と同じです」

 

 

 若干仏頂面になるセイバー。ジル・ド・レェの非道と発狂した態度は彼女を持ってしても受け入れがたいのだろう。ホロウか何かでタコが苦手なのも確かそのせいだった、と田中はぼんやり思った。

 

 

「教会からキャスター討伐指令が出るに至り、マスターとしてその場にいたアイリスフィールは切嗣の方針でランサーのマスターと同盟を提案しました」

 

 

 他のマスターと同盟関係を結ぶ切嗣。ありえなくはない。その上での裏切りも含めて。

 それを前提とすればFGOのイベントでの対応もある。アドバンテージを持つ御三家に比べればケイネスが一番性格的に組みやすい感じはあった。

 

「協力してキャスターを討ち果たすこと。報酬の令呪はケイネスが受け取ること。その代わり、ランサー陣営がライダーを、私達がアーチャーを打倒する。これが果たされるまでの同盟関係を結んだのです」

 

「知名度が抜群に高く、強力な宝具を持つだろうライダーとアーチャーを危険視、マスター同士の因縁がある相手にぶつけることで消耗を避けたわけね」

 

 

 ウェイバーはともかく、ライダーは利害だけを求めた同盟は難しそうなイメージが有る。一方、ランサーは大局をケイネスに任せていたし、利益を中心に動くことは想像に難くない。

 

 

「そうです。私とランサーはキャスターを打倒し、その際、切嗣はアイリスフィールとケイネスを奇襲してきた言峰神父をケイネスと協力して退けました。そして自身が本来のマスターであることを明かし、翌日にケイネスと自己強制証明(セルフギアス・スクロール)で同盟を結びました」

 

 

 舞弥がいなければ原作での裏切りもしにくかったはずである。まあ、切嗣なら契約の穴を見つける可能性は高いのではという謎の信頼感はあったが。

 

 

「……ケイネスとランサーがキャスター討伐報酬の令呪を協会に受け取りに行っている間、ライダー言うところの聖杯問答が行われ、そしてその場に現れたアサシンの大半をライダーが宝具にて打倒したのです」

 

「大半ってことは全員ではなかったということ?」

 

「ええ。手傷を負った言峰神父の護衛はいたはずですし、後は教会を訪れていたケイネスを狙っていた」

 

 

 聖杯問答とライダーの宝具。それはセイバーにとって大きな意味を持つ。その上で原作とは違ったルートを辿ったセイバーがどんな精神状態であるかを探る必要があると田中は思った。

 

 一方、アサシンが全員脱落しないという展開は比較的分かりやすいし受け入れやすいものだ。運用としては原作の方が失敗といっていい。マスターを倒される危険がないのならアサシンは小出しにして暗殺に徹した方が勝率は高いだろう。

 

 

「幸い、ケイネスはアサシンの奇襲を礼装によって防いだとのことでした」

 

 

 マスター同士には絶対的な能力の差の他に相性もある。サーヴァントによる力の差を除いたら切嗣、時臣、ケイネス、綺礼の四人は条件によって勝敗は変化するだろう。

 切嗣がアヴァロンを持っていた場合やケイネスと時臣が工房にいた場合など、基本的に戦闘者としては実績のある綺礼が強いと思われるが絶対ではない。

 

 

「そしてランサーたちは新たに得た令呪を使ったのかライダーと決着を着けました。彼らから結果が届いた後、私たちは遠坂邸を急襲し、アーチャーを打倒しました」

 

「ギルガメッシュを!?」

 

 

 これには田中も驚きを隠せなかった。アーチャー、ギルガメッシュは実力も高いがそれ以上に宝具の強力さから真正面から負けるイメージがあまりしないサーヴァントである。

 

 

「ええ。アイリスフィールから受け取ったアヴァロンの絶対守護で宝具を無効化し、私はアーチャーをエクスカリバーで遠坂邸もろともに吹き飛ばした」

 

 

 どこか誇らしげに胸を張るセイバー。確かに、アヴァロンはある意味で最強の宝具である。ギルガメッシュを倒せたのも納得である。

 

 

「事態が急変したのはその直後でした」

 

 

 流れ的にはセイバーが最後まで残ってもおかしくない感じである。

 ここからどう状況が変化するのかすぐには見当がつかなかった。

 

 

「その場から魔術で逃げおおせた遠坂時臣を追う最中、動けなくなったアイリスフィールがバーサーカーのマスターの関係者と思われる老人によって人質に取られました」

 

 

 なるほど、と思わず唸る。第五次聖杯戦争に三つのイレギュラーがあるとしたらそれは聖杯の汚染、第四次アーチャーの生存、間桐臓硯の存在だと言っても過言ではない。キャスターによるアサシンの召喚やエミヤ召喚はそれに比べればまだルールの範疇であるとすら言える。

 

 そして聖杯の汚染と間桐臓硯の存在は第四次でも変わらない。どう転んでもおかしくない。

 

 

「しかし、バーサーカーは彼のマスターの命で老人を滅ぼし、私に襲いかかるのではなく遠坂時臣を倒せと令呪で命じられてその場を後にしました」

 

 

 この時点では桜の体内に聖杯の欠片は埋め込まれていない。サーヴァントという戦力があることを鑑みるに、臓硯の存在を知っていれば滅ぼすチャンスであると言えるだろう。

 

 

「――危機を脱したその一瞬の隙を突かれました」

 

 

 悔しそうな顔。難敵を打倒したあとのゴタゴタだ。アニメを見て聖杯が汚染されていることを知っていたとしても、勝ち残れないこと自体が受け入れがたいのだろう。元来悔しがりなところがあるセイバーの性質がよく見て取れる。

 

 

「切嗣は残ったアサシンの攻撃で致命傷を負ってしまったのです」

 

 

 このあたりは責めがたい。切嗣がもっと冷酷であっても防げたかどうかは五分五分なように思えた。舞弥がいれば身代わりになるという展開があったかもしれない。

 

 

「その場に言峰神父が現れた瞬間、倒れ伏した切嗣はアサシンに斬りかかる私に令呪三画を使ってアイリスフィールを即座にアインツベルンまで運ぶように命じたのです」

 

 

 助からない自分の命、動けなくなったアイリスフィール。聖杯はもう手に入らない。その条件が揃って初めて切嗣はその選択肢を取ることができたのだろう。

 

 そのとき、彼が何を思っていたのかは他の誰にも理解することはできないのではないか――。

 

 

「一瞬でドイツまで転移し、動けなくなったアイリスフィールをベッドに横たえた後は、騒ぎを聞きつけたメイドに詳しい事情を説明する暇もありませんでした。切嗣との契約が切れたのを感じ取り、ただ私たちは敗れたと言い残しました。そして私はあの丘に戻り、ここに呼び出されたのです――」

 

 

 これが私の知る第四次聖杯戦争です。そう言い終えると、遠い世界を思い、セイバーは窓の外を見つめ、部屋の中には沈黙が訪れた。




セイバーが体験しなかったことも含めた第四次の顛末詳細(見なくてもおK)


セイバー 
アインツベルンにアイリスフィールを届けた直後、切嗣が死亡し消滅。
勝ち残ることはできなかったが最優のサーヴァントに相応しい戦果を示した。
ランサーとの戦闘では無傷、バーサーカーは軽くあしらい、キャスターはランサーと協力して海魔召喚前に打倒、アーチャーはアヴァロンで宝具を無効化してエクスカリバーで瞬殺。
遅れを取ることはなかった(事実)
ケイネスからは切嗣自身が魔術師として侮られていることと、セイバーが女性であることから若干の油断を誘い同盟成立の一助となった。
聖杯問答での精神的ダメージは有るが、アーチャーを正面から倒したことで多少の自信を取り戻す。
また、最後にアイリスフィールを守れたことと切嗣による非道な行いはほぼなくランスロットを倒したり聖杯破壊などがないこともあり、願いは「選定をやり直す」ではなく「選定をやり直すことも含めたブリテンの救済」のままで多少の余裕がある。
第四次の記憶を持ちながらstay night本編より甘さがあるZero時のセイバーとして田中の元に召喚される。


切嗣
言峰の問いに答えることなく死亡。舞弥がいなかったことから戦略の幅はやや狭く、覚悟も若干弱く過激な動きは謹むことに。むしろ戦略としては正しかったのだが、綺礼に目をつけられたのと臓硯の存在など知り得ない外部要素が重なって敗北した。
原作よりも慎重に動き、御三家以外でマスター・サーヴァントともに性格上動かしやすいケイネスを同盟相手に選んだ。
アインツベルンに聖杯をもたらした者への感謝として、回収された切嗣の遺体は丁寧に埋葬され、後にアイリスフィールもそこに葬られ、起源弾等の遺品は厳重に保管されることになった。



アーチャー 
セイバーのエクスカリバーで消滅。綺礼を唆すには時間が足りなかった。


遠坂時臣 
アーチャー消滅を受け工房の仕掛けで脱出。追ってきた雁夜に多少のダメージを負わせるもののバーサーカーにより死亡。


遠坂葵 
夫の死により聖杯戦争後、一時期抜け殻となる。ボロボロとなった桜を凛が連れ帰ったことで母としての自覚に目覚め、生きる気力を取り戻す。

遠坂凛 
キャスターの討伐が早かったため、クラスメイトなどは失っていない。聖杯戦争後、時臣の葬儀のため臓硯が消えた間桐から桜を連れ帰り、遠坂家当主となる。
璃正の支援・父の生前の伝手と独学で魔術を修め、成人した頃に桜の後遺症を取り除くことに成功する(桜の魔術適性のため、外に依頼することができず自分で治療するしか選択肢がなかった)。
魔術師としての遠坂家を立て直すことに苦心した(家が吹き飛んだため、魔導書や宝石が大量に失われた。璃正の手助けで遠坂邸以外の不動産などは残り金銭的には余裕があったが先代までの研究が失われたため原作より苦労して時計塔への留学が大学卒業後になった)。



バーサーカー 
時臣殺害後、雁夜の最後の命を果たした後消滅。


間桐雁夜 
時臣殺害後、魔力を使い果たし自分が助からないことを悟り、最後の令呪でバーサーカーに臓硯の本体を倒すよう命じた後、死亡。


間桐臓硯 
バーサーカーにより消滅する。聖杯の欠片が手に入る前だったので桜の体内からではなく蟲蔵にある本体から復活しようとするが、バーサーカーと鶴野によってとどめを刺されて完全に消滅する。


間桐鶴野 
使い魔(虫)で監視していた雁夜の造反に衝撃を受ける。
バーサーカーの手によって弱った臓硯の本体を殺すことに成功した直後、バーサーカーの消滅を目の当たりにして雁夜の死を知る。本懐を遂げたものの弟の最後の顔は痛みで苦痛に満ちていた。これ以上魔術に関わっていいことはないと考える。
後始末の最中に凛によって桜が連れ去られるがこれを後押しし、魔術師としての間桐は廃業した。戦争終了後は冬木を引き払い、慎二と海外で暮らす。
アインツベルンとケイネスの連名で手紙が来たが、桜の才能のことだけを隠して自分の知る戦争の結末を告げ、これ以降は魔術と関わらなくなった。


間桐慎二 
日本には戻らず留学先で父と暮らす。魔術から離れて実業家としてそれなりに活躍する父を見て皮肉屋だがまともに育つ。


間桐桜 
聖杯戦争後、臓硯の死亡により間桐から開放され凛に連れられて遠坂に戻る。鶴野は彼女を元に戻すことはできず、後遺症が残ったものの母の看病もあり何とか日常に復帰する。
数年後、一度だけ鶴野・慎二とともに雁夜の墓参りをした。その際、父を殺したのが彼だったことを知るが、助けてくれたのもまた彼であることから母や姉には伝えず胸にしまいこむ。
後に成長した凛の手で後遺症が完治する。魔術師にはならず一般人として暮らす。



ライダー 
令呪を使って強化されたランサーと互角の勝負を繰り広げる最中、ウェイバーが殺害され直後に宝具の直撃を受け消滅。


ウェイバー 
魔術では歯が立たずケイネスによって殺害。



キャスター 
海魔を呼び出すこともなくセイバーとランサーにより消滅。

雨生龍之介 
キャスター消滅後、聖杯問答前にウェイバーに見つけられたところをライダーにより殺害。



アサシン 
聖杯問答直後、ライダーによって9割が消滅。綺礼の護衛についていた数人が最後まで残ったがランサーによって消滅。


言峰綺礼 
序盤に起源弾で大ダメージを負い、中盤まで動けなくなる。聖杯問答直後に戦力の大部分を失ったことも合わせて警戒度を下げ、これが逆に切嗣への奇襲成功をもたらした。
アーチャーの早期離脱により愉悦に目覚めることなく悩んだまま切嗣に答えを見出そうとするも無駄に終わる。時臣の突然の死で聖杯を手に入れるという決意が固まっておらずケイネスに多少のダメージを負わせるもののランサーにより死亡。
切嗣の死からケイネスに発見されるまでの数日は自分の人生を見直そうと手記を書いていた。


言峰璃正 
生き残る。ケイネスへの追加令呪配布の際、アサシンによる奇襲を強く責められ戦争終了まで教会から出られないよう魔術的措置を受ける。出られるようになった後は既に綺礼が死に戦争終了後だった。勝者のケイネスから聖杯について質問を受け、ドイツのアインツベルンに確かめるよう伝える。
後始末の最中、綺礼の手記を発見。我が子の苦しみと実は孫娘がいたことを知る。凛の援助をした後は現役を引退し片田舎で孫娘を引き取って暮らす。



ランサー 勝者となる。ケイネスとはそこそこの関係を築き、護衛として現界を続ける。
令呪四画の内三画を使用(キャスター討伐報酬を含む):ライダーとの戦いにおいて能力を強化、言峰とアサシンの打倒に際し能力を強化、ソラウに対し黒子の呪いを封印


ケイネス 
初期は切嗣とセイバーを侮っていたため同盟を受け入れる。ギアスの効果消滅により切嗣のアーチャー打倒を知って彼を強敵と認め、ランサーとセイバーによる決勝戦をしようと考えていた(もし切嗣が生き残っていたらソラウを人質に取られて負けていた)。
セイバーとバーサーカーの消滅など事態の把握に数日かかるが言峰とアサシンを倒し勝者となる。
聖杯が現れないのを受け璃正に事情を説明、残った御三家であるアインツベルンを訪れる。元々叶えたい願いは無かったため、アイリスフィールの形を保ったままの汚染された聖杯はアインツベルンに任せた。
英霊を従えたことで鉱石科の君主として以上に、行使を勤めていた降霊の分野と聖杯について研究を進め第一人者となる。
汚染を理由にアインツベルンと凛を含めて周囲(協会上層部)を説得した上で能力誇示のため第五次聖杯戦争が起こる前に大聖杯を解体することに成功する。
鉱石科のトップの目から時計塔に来た凛の才能を認め(原作より遅く大学卒業後)、縁もあったことからそれなりに可愛がる。子供が生まれてからは大変な子煩悩となった。


ソラウ 
日本に来ていたがホテルでじっとしていて出番なし。生き残る。ディルムッドの呪いが解かれ、聖杯戦争の勝者となったことでケイネスを多少見直す。
お世辞にも仲が良いとは言えないが子供もでき、普段は夫を尻に敷いているが時々本気で怒らせた場合には逆らえないという関係でそれなりの夫婦生活を送る。



アイリスフィール 
キャスター・ライダー・アーチャーが消えた段階でセイバーに令呪が使用されアインツベルンへ。直後、セイバーが、数時間後バーサーカーがマスターの死によって消滅。アーチャーが消滅した時点で器は満たされたが霊地にいなかったため聖杯の降臨もなされず、動けないが死亡もしなかった。
ユーブスタクハイトによって様子がおかしいことが見抜かれ、戦争終結後、アインツベルンを訪れたケイネスとの協力により完全な解析がされた。聖杯が汚染されていることが判明する。
大聖杯解体後、さらに後にイリヤスフィールにより分離に成功(解呪はできていない。汚れた聖杯とアイリスフィールに分離しただけ)。一時だけ親子の再開をし、直後に死亡した。


久宇舞弥 
切嗣と出会うことが出来ずに少年兵のまま死亡。


イリヤスフィール 
アイリスフィールと聖杯の分離研究のため長生きが出来るように調整される。また、戦わなくても既に汚染された聖杯が手元にあるためアインツベルンの魔術師は地下に身を隠し聖杯の浄化を目的としていくことになる。
事情が判明していることもあり切嗣のことは恨んでもいるが感謝もしている。アイリスフィールを切嗣と同じ墓に埋葬した。



○○士郎 
大火災とアヴァロンの埋め込みがないため起源が剣になっておらず、魔術回路自体はあるが本編の27本よりもはるかに少なく魔術を知らない普通の少年として過ごす。
聖杯戦争直後のある日、両親が家族を龍之介に殺された女の子(美遊)を養子として家に迎えた。
以来シスコンとなり兄として彼女を守るために市内の道場に通うなどして鍛え始める。道場で出会った美綴綾子にボコボコにされるものの何度も立ち上がった結果気に入られ幼馴染と認められ色々と振り回される。
身長は原作時の士郎とアーチャーの間の177cmくらいで、料理が得意なのは変わらず、魔術の鍛錬をしていないため弓は高校から始めるが多少上手い程度。
普段はシスコンで特に自分から人助けもせず目立たないが、時折見せる某弓兵のような笑顔のためごく一部からモテることが文化祭の執事喫茶で発覚。綾子と妹をやきもきさせる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。