Gate/Grand Order   作:高木家三男

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これで下準備は終わりかな?
調査の間にスキルとかもいろいろ考えられたから本編始まっても一安心。


手塚治虫の消失(あるいはロボットアニメとしてのゾイドの大ヒット)

 王は人(社畜)の心(働かないと生きていけない)が分からない――。

 

 

 

 セイバーから第四次聖杯戦争の顛末を聞いた田中は、さらに情報を交換してそれをノートにまとめる。

 分かったことは、

 

 

 ・これは聖杯戦争であって聖杯戦争ではない。魔術師とサーヴァントが敵ではない(召喚された際に与えられた知識)。

 

 ・召喚された理由や目的は不明。

 

 ・このセイバーの体験した第四次聖杯戦争で返還されたアヴァロンは彼女の中に存在していない。それどころかエクスカリバーも持っていない。もちろんカリバーンもない。

 

 ・魔力によって鎧を編むこと、インビジブルエアを使うことは可能(包丁で試した)。

 ・ラインは繋がっており、魔力は問題なく供給されている。

 ・令呪は三画あることが付与知識と実感両方から確認できているが、使い方が分からない。

 

 ・ステータスの確認はできない。弱体化しているが各能力値のランクが下がっているとは感じないらしい(FGOのレベル1召喚?)。

 

 

 田中とセイバーは情報をまとめたノートを見返しながらこれからのことを考えていた。

 セイバーの書いた文字は現代の英語よりもはるかに昔のもので田中にとって見たこともないものだったが理解できたし、田中の書いた日本語もセイバーは理解できている。召喚に際しセイバーに知識が付与されているというのは本当のようだったが、どうやら田中も何らかの恩恵を受けているらしいことがノートに加えられる。

 

 

「ふう、こんなところか」

「ええ、しかし困りました。魔獣や凡百の魔術師に負ける気はしませんが、サーヴァント相手では満足に打ち合うこともできないでしょう」

 

 

 セイバーの言葉に、しばらく考えた後で田中が答える。

 

「んー、出来る限り準備はするけれども。それほど難しく考える必要はないんじゃないかな」

「どういうことでしょうか?」

 

 田中は本棚から高校時代に使用していた地図帳を取り出して索引を広げてみせた。

 

 

「セイバーのいた世界とこの世界は多分違うんだよね。ほら、冬木市って存在してない。同じ世界観にあることがわかっている三咲町も地名としては存在してるけど、美咲市美咲町というのは存在してない。別の市の一部でしかなくて別物。……らっきょ(空の境界)の地名は覚えてないな。後で確認しよう」

 

「つまり?」

 

「僕が知る限り、魔術はこの世界に存在していない」

 

「まあ、一般人に知られないように秘匿されている可能性はあるんだけれども。でも、それならここまで詳細な設定を創作物だとしても出せているのは理屈に合わない」

 

「神秘は一切存在しないということですか?」

「いや、そこまで言うつもりはないよ。現代の科学はそこまで万能じゃないし。説明できないことに神秘が関わっててもおかしくはない」

 

「与えられた知識からも、すぐに聖杯戦争が始まらないということが保証されているようですし、起きたとしても別の形。現状の危険性は低いということですね」

 

「ああ。油断は禁物だと思うけど。それにさ、この()()()()()()()の基準で()()()()()がきちんとされているとしたら、他のサーヴァントも同じくらい弱体化しているのが合理的な解釈だと思う」

 

「なるほど、一理あります」

 

 ですが、いずれにせよ。

 

「私のすべきことは変わらない。あなたの剣として、敵を打ち倒すだけです――」

 

 

 

「いや、格好つけても駄目だから」

「えっ」

 

「どれくらい長くなるか分かんないんでしょ。受肉してるんなら食費だってかかるんだし、セイバーにもお金稼いでもらわないと」

「い、いえ。私はサーヴァントで……」

 

「何がいいかな。戸籍もない外国人か……。アルバイトも無理だな。職質食らったらその時点で詰むんじゃないか? 霊体化できないなら一度外国に連れて行って身分証明作るとかも難しそうだ。アサシンなら役所に忍び込ませて書類改竄させたり、キャスターか魔眼とか暗示技能持ちなら色々方法は思いつくんだけど」

「あの、あのっ」

 

「そうじゃなくても黄金律持ちならなあ。芸術系スキルならヤフオクとかで僕のフィギュアと並べて出品もワンチャンあったかも?」

「マスターっ!」

 

「ん? なに?」

「あなたは切嗣とは別の意味で意地悪です……」

 

「ふふ。冗談だよ。家事とかは手伝ってもらうけど。あと、ステータスとスキルに問題なければ戦闘力以外でセイバーに出来る仕事の目処はついてる」

「本当ですか?」

「ああ。まあ、そのドレスで外に出るわけにも行かないし、色々調べたり準備もあるから早くて一週間ほどかかるけどね」

 

 

 

 

 

 セイバーにはメイン使用していないノートPCを渡し、服のサイトを見てもらう(四次ライダーが通販をすぐに使いこなしたように、セイバーも多少の説明でブラウジングを出来るようになっていた)。

 液晶のひび割れたスマホを操作し、FGOを立ち上げるがサーバーエラーで繋がらない。

 

 APがッ……。溢れるッ……。

 

 まあ、仕事でたまにあるからそんなに気にしないけれども。

 そう田中は思い直してサーバーエラーの原因を探るため、攻略Wikiのページを開いていたタブを更新する。

 

「ん?」

 

 404 Not Found

 

 FGOの攻略ページが存在しないことになっている。

 

 FGOで検索をかけてみるが、トップに出てきたのはAmazonのガーデニング用品のページだった。他のページもいくつか確認するが、田中の知っているFate/Grand Orderの存在は影も形も無かった。

 

「どういうことだ――?」

 

 異世界転移。そんな単語が脳裏に浮かぶ。

 身の回りのものだけがそのままで型月世界に飛ばされていたとしたら?

 それなら今置かれている状況にもすべて説明がつく。

 

 ヤバイ。

 

 それが偽りのない感想である。

 

 型月世界は田中の知る現実世界と比べてもそれほど危険性は高くない。

 現実に近い創作物中の危険性ならゾンビ系がおそらく一番である。

 ただし、型月の場合、物語の中心に関わらなければ、という条件がつく。

 

 空の境界、月姫、Fate。

 

 どれも一般人がメインで関わったら生き残れる可能性は低い。

 そして、その中でも一般人を含めて圧倒的に危険なのが世界規模の危機があるFGOだ。

 というか、作中でカルデア以外は滅んでいる。

 

 しかし、あくまで田中は冷静に情報収集を続ける。慌てても別に良いことはないし、最善を尽くすのが生存率を高める助けになることを知っているからだ。セイバーもいる。

 

 数分後、Fateという創作物の痕跡こそ見つけることはできなかったが、重要な事実を発見する。

 

 奈須きのこ

 奈須 きのこ(なす きのこ、男性、1973年11月28日 - )は日本の小説家。

 

 Fate原作者のウィキペディア記述である。

 しかし、その内容は驚くべきものであった。

 

「……1995年に小説家デビュー?」

 

 奈須きのこという作家は存在している。しかし、デビューの時期も書いている作品も全く別物だった。

 というか、基本的にノベルゲーム制作には関わっておらず、小説家とアニメの脚本家しかしていない。

 Amazonの試し読みで確認する限りでは文体は変わらない。というか、むしろ洗練されている。らっきょや月姫、Fateに比べてDDDが格段に読みやすくなっているように、さらにそれの進化系を見せられた気分である。

 

 小説だけに打ち込み、作品数で言えばかまちーも超えている。文章力だってそれは伸びていてもおかしくない。

 

 

 

 その後、二時間ほどかけてそれ以外も調べてみたが、戦後の歴史の流れは近年の政治家の名前はともかくとして、冷戦構造の崩壊やアメリカへのテロ、中東出兵や震災まで変化がないことが確認できた。

 一方で漫画やアニメ、ゲームといった創作物の歴史が軒並み変わっていることが判明した。

 

 まず、大きな変化としては、手塚治虫がアニメ制作に取り組まなかったということが大きいようだった。

 それを起点としてアニメ制作はアメリカからの外国資本で進められ、賃金や労働環境は田中の知るものに比べて格段に良い。SHIROBAKOの絵麻ちゃんがいたら両親からの仕送りはいらなかっただろうなあ、と田中はぼんやり思った。

 

 そして、石ノ森章太郎のサイボーグ009が東西冷戦のプロパガンダとして使われ、紆余曲折を経て完結まで至っている。

 純国産のアニメは、ドラえもんと宇宙戦艦ヤマトから本格化し、時を前後してTDLがこちらも外国資本で開業している(バブル崩壊と合わせて日本法人に経営母体が変更)。

 

 そして、ガンダムが存在していない。

 

 代わりにゾイドが富野監督でアニメ化、一大ブームとなり、以後何度もTVシリーズ化している。

 この世界では人型ロボットというものは人気がなく、ロボットは基本的に動物型が中心のようである。

 

 大友克洋と宮﨑駿は変わらず存在し、どちらも高い評価を受けて似たような立ち位置にいるようだ。

 任天堂やセガなどのゲーム会社は存在するが、エニックスとドラクエが存在しない、FFが難しすぎたのか一作で終わってスクウェアが潰れている。若干マイナーなところだとアトラスがない。一方で、ソリダスワークスというゲーム会社から出たソードクロニクルというゲームが国民的RPGとして認知されている。

 

 そして、ターニングポイントが1995年。

 

 この年、阪神淡路大震災と田中の知る現実とは違う宗教団体によってだが都内でテロ事件が起きていることは変わりない。

 一方で、創作ではエヴァンゲリオンが放映されておらず、奈須きのこがこの年に型月世界観とは違う作品でデビュー。

 クリスマス商戦に間に合ったポケモンと合わせてしばらく後にアニメ化。社会現象としてブームを巻き起こしている(庵野秀明は特撮方面で活躍しているのが確認された)。

 これ以前と以後でオタク文化の認知が一気に変化し、コミケの参加者も激増している。

 

 近年ではDMMがオンラインゲームに参入しておらず、艦これなどがない。

 ワンピースや幽遊白書はあるが、BLEACHやハンターハンターは存在しない。

 作家が別の雑誌に移動していたり、他の作品を書いているのは多すぎて二時間ではすべて把握できなかった。

 

 

「つまり、マスターの知る世界とも違うことが判明したということですか?」

「うん。そうみたい」

 

「……大丈夫なのですか?」

「? 何が?」

 

「いえ、あなたはもしかしたらこの世界にたった一人になってしまったのかもしれないのですよ……?」

「元々、大学出てしばらくしてからは恋人もいないし。ちょっと前に母親が死んでからは血縁関係者もいないから」

 

「だからと言って――」

「戻れる可能性もあるかもしれない。それにこの世界はこの世界で暮らしていくには困らなさそうだし」

 

 仕事で使ってたメールアドレスは繋がって、サーバーからダウンロードもできたし、社員専用のページにも入れて仕事が変わってないことは確認出来たからねえ、と田中は頭をかく。

 

 

「世界が変わってしまうということは。そんなに簡単なことなのですか――?」

 

 

 自分の望みは今も変わらずブリテンの救済である。

 

 しかし、それが本当にどういう意味を持つのか、深く考えたことはなかったのではないか。

 

 これは、ライダーにもアーチャーにも分からない、聖杯問答のその先の続き。

 

 戦いが目の前にあるものでないというのであれば、今の私には考える時間が必要だ。

 

 そうセイバーは、傍らに座る何でもない顔のマスターを横に、ひとり自問自答するのであった。




次話よりGATEが開きます。
銀座事件は3~5話くらいで終わる予定。
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