元一般人の英雄譚   作:モッピー(国内産)

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原作の舞台であるIS学園に入学するまでしばらくかかります。10月なる前には主人公をIS学園に軟きn……もとい入学させる予定です。


第2話 前世と友人

目を開ける。誰かに抱きかかえられている様だが、視界がボヤけているし、耳には真綿が詰まっているのかと思うほどハッキリと聞こえない。ぼーっと、何を考えるでもなく、自分の体に違和感を覚えた。

曇りガラス越しの様な視界の中には、全体的に白を基調とした清潔そうな部屋と、数人の大人。それを意識したあたりで自分が何故こんな状況になっているのか疑問に思った。

 

俺は……確か……

 

迫り来る車に気付き避けようとした時にはぶつかった。暗転した視界の後にはまさに血の海と呼ぶに相応しい場所に横たわる自分。

徐々に体の熱が、感覚が、意識が消えていく。冷たい海の底に沈んでいく様な、そんなイメージ。

あぁ、そうか。あれが……‘‘死”か。

 

「おぎゃぁああぁあぁぁあああ!!!」

 

思い出した瞬間恐ろしくなった。

誰もが恐れる死。だけども誰もが体験した事の無いものだ。昔ふと何故体験した事も無いものをこんなにも恐れるのだろう、と思った事もあったが今漸く分かった。

コレは、味わってはいけないものだ。体験なんぞした事が無くても、遺伝子にも刻まれそうなこの恐怖は誰もが恐れてしかるべきものだ。概念しか理解していなかった今まででさえあれほど怖かった‘‘死”を、感覚的に理解してしまった。

今の彼には、生き残っていた、いや、《生まれ直した》事に対する喜びよりも、死に直面した恐怖が勝っていた。圧倒的に。

だから

 

「はいはい、元気な赤ちゃんですねぇ。しっかり泣くんですよ〜」

 

周りが微笑ましくこう言っている事にも気付かなかった。

《転生》という奇跡を彼は体験したのである。

 

 

 

1年。

この数字は彼が‘‘死”の恐怖を克服するのにかかった時間である。自分が転生したと気付き喜びもしたが、それでもその恐怖は薄まらなかった。

この1年、事ある毎に思い出して大泣きした。迫り来る車を夢に見て目を覚まし、泣き喚いた。おかげで赤ん坊らしい振る舞いが出来ていたのは僥倖というべきか。

 

そして1年経ち、あの事を思い出しても泣く事も無くなった。当然恐怖は覚えるがそれを抑え込める様にはなった。成長したのだろうか。

 

新しく生まれ直したこの命は《守崎(もりさき) 康介(こうすけ)》というらしい。

父母共にごくごく普通のまさに一般人というほか無い家庭だが、自分の事を大切に思っていてくれているし、幸せそのものであった。

だが康介はそんな2人の事を、親とは思えずにいた。

前世の家族。その存在は大きかった。彼が成人しても支えられ、支えた前世の父母は、どうなったのだろうか。自分と同じ様にもう一度人生をやり直しているのか。それとも、天に召されているのだろうか。

できれは、後者が良い。自分の様な恐ろしい死の記憶など持たず、安らかに眠ってくれていると嬉しい。親しい友人もいなかったが、お世話になった知人達は幸せになってくれているとなお良い。

 

どんなに思っても答えなど分からない。それでも考えずにはいられず、忘れる事などできず。彼は今の自分ではなく、過去の思い出にばかり気を取られていた。

 

 

 

それから更に3年経ち、彼は幼稚園に通う事になった。過去(前世)に思いを馳せていた彼は思い出した。

 

俺も《特別》になりたい

 

平凡な人生で死んでも何1つ残らなかった前世では死ぬ間際に後悔しか生まれなかった。

きっと前世で何か成し遂げていれば、あんなにも後悔はしなかったのではないか。あんなにも恐怖を覚える事は無かったのではないか。ならばやる事はただ1つ。俺にしか出来ない《特別》を手に入れる。中途半端なままでは、今世の死に際もまた同じ様な事になるだろう。そんなものは真っ平御免だ。

 

「でもなにをすればいいんだろう?」

 

それでも彼は未だに目標が見えず、とりあえず手当たり次第、目に見えるもの全てに手をつけていった。

だがどうしても1つだけ、成し遂げられない事があった。

 

友達が、出来ない。

 

前世でも特別親しい友人はいなかった。学校では当たり障りなく目立ちはしなかったものの、所謂‘‘ぼっち”というヤツだろう。

 

「どうする……このままじゃきっと……」

 

そうして頼ったのは本だった。父が持っていた『コミュニケーション上達!〜これを猿でも読めば一匹狼(ぼっち)君とも対話ができる〜』というタイトルのhow-to本だ。タイトルは一匹狼のところに《ぼっち》と振られているあたり何ともケンカを売ってきているが背に腹は変えられない。必死に熟読し、内容を暗唱できるまで覚えた。やはり幼少期は物覚えが良い。

あ、これなら今の内に英語とか、海外の言語覚えれば後々楽かも?

そう思い康介は様々な言語を勉強し始める。

 

ちなみにその姿を見た他の園児達が

 

「こーすけくんていっつも難しそうなそうなほんよんでる……」

「かーちゃんいってた!だれかが、がんばってるときはジャマしちゃダメなんだって!」

「んー……あそんでみたいけど、またこんどにしよっか!」

 

という想いで康介と仲良くなれなかった事は言うまでもない。本末転倒とはまさにこの事である。

 

 

 

「え〜お母さん、お父さん方は息子さんが成長する事で今までとは違う苦労がこの先あるかもしれません。ですので〜」

 

多くの子供達がとある小学校の体育館に並んでいる。長くなってきた話に飽き、殆どの子供が隣の子とちょっかいを掛け合っている中、真新しい綺麗な服装で一際姿勢良く話を聞いている子供が1人。言うまでもなく守崎 康介その人である。

 

ちゃんと聞いてなかったけど以外と良い事言ってんだな……

 

それが康介の感想だ。とはいえそれを子供側の立場でもう一度聞くハメになった事に対して、気恥ずかしさを感じない訳もなく、何処かぎこちなくなっていた。

 

それを見た康介の母・守崎(もりさき) (ゆい)には

「緊張しちゃって…うふふ」

と見え、後で弄られるハメになる。

 

入学式が終わり教室に案内され、席に座る。苗字が守崎である彼は最後尾の窓側という素晴らしい席だったが、そんな事より康介にとって大きな、とても大きな問題が1つ。

 

「ヤバい。ヤバいぞ。結局幼稚園じゃ友達出来なかった……!」

 

あのhow-to本を読んでいざ実践しよう!と思っても、そもそも実践するには話かけないといけないのだ。

そして対話だ。あのタイトルには対話とあったのに気付けなかった。そう、アレは仕事関係にある人間に対してのコミュニケーション術を示した本であると気付いた。気付くのが遅過ぎたとも言うが。

そして仕事関係などと言うある程度精神が発達した大人に対するコミュニケーション術が幼稚園児に通ずる訳もなく、勇気を振り絞って実践した時には相手の頭上に?マークが乱立していた。

 

「ちっくしょうどうすれば……」

「ねぇ、きみがもりさきくん?」

 

頭を抱え、机を凝視していると不意に声をかけられた。顔を上げると男子が3人目の前にいた。

 

「え?あ、、うん。そうだけど」

「あのさあのさ!いっつも本よんでるってホント?」

「あー……ホント、かな?」

「へー!すっげぇな!オレほんよんでたらねむくなっちゃうんだ!どうしたらよめるようになるの?」

「ど、どうしたら、かー……うーん。眠くなっちゃうってことは興味が無いんじゃないかな?だったら興味ある物から読んでいけば良いんじゃない?」

「きょうみ?ってなに?」

 

しまった!これは幼稚園と同じパターンだ!

そう思い慌てて軌道修正。

 

「えっと!楽しそうな本から読めば良いんだよ!君はどんな事が好きなの?」

「オレはサッカーがすきなんだ!」

「ぼくはやきゅう!」

「オレはボクシングがやってみたい!」

「ならそういうマンガとかから読んでみたらどうかな?」

 

おー!と歓声が上がる。どうやら上手くいったらしく、ホッと胸を撫で下ろした。

 

「ねぇ!いっしょにあそびにいこうよ!」

「え?……いい、の?」

「うん!やきゅうしよーぜ!」

「いやサッカーだよ!」

「ボクシング!」

「いたいからヤダ!」

「そんなんじゃツヨイオトコになれねーぞ!」

「なんだよ!チュウシャでないてたくせに!」

 

何をして遊ぶかで若干喧嘩になりつつも、ワイワイと賑やかだ。そしてその中に自分がいる事が、康介にとって堪らなく嬉しかった。

 

「んじゃもりさきくんにきめてもらおーよ!」

「しゃーねぇな、しんいりにきめさせてやんよ」

「しんいりってなに?」

「え?……いや、その、‘‘しん” で 、‘‘いり”なんだよ」

「わけわかんない!で、もりさきくん?なにしてあそぶ?」

 

こうして康介にとって、今世初めての友人が出来た。




いきなり入学させるより過程を書いた方が主人公のキャラ性を把握しやすいかな、という自己満足による垂れ流しですので、正直流し読み程度で大丈夫です。
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