懐かしい夢を見た。
まだ田舎で暮らしていた時の夢。
僕には昔幼なじみの女の子がいた。
名前はきみちゃん。
ずっとそう呼んでいた。
きみちゃんは活発な子で、夏休みは毎日近所の山に連れていかれて、虫取りをしていたのを覚えている。
僕は今も昔も外で遊ぶのは好きではなかったのでほぼきみちゃんが木にのぼって虫を捕まえるのを見ていただけだった。
でもきみちゃんといるときの時間はとても楽しかった。
でもきみちゃんは…もう……
「_さん__たさん!_彼方さん!」
「あ…?きみちゃん…?」
「どうしたんですか、私は紀美子ですよ」
「あぁ…紀美子さんか…どうかした?」
「それはこちらの台詞です…彼方さんうなされてたから…それにすごい汗」
「ほんとだ…ちょっと昔の夢を見てただけだよ。心配してくれてありがと、すぐ朝御飯作るから」
今日は土曜日。
学校が休みなのはいいけど、3時から夜まで結局バイトが入っているので1日はあっという間に終わるだろう。
少なくともこの時間はゆったり出来る。
朝、かならずと言っていいほど食べるのは納豆。
これはかかせない、とりあえず鮭を焼き、少し残っていた豆腐で味噌汁を作った。
朝食の王道である。
「出来たよ、少なくてごめんね、朝はあまり食べられないんだ」
「いいですよそんな…いただきます。」
こうして誰かとご飯を食べるのはいつ以来だろう。
なんだか懐かしい感じがした。
「紀美子さんはどこから来たか覚えてないんだよね?どこから来たのかも…」
「ごめんなさい…」
彼女は箸をとめてそう言った。
「いや、ごめん急に聞いちゃって…もし何か思い出したら言ってね」
「…紀美子でいいよ。」
「え?」
「名前、紀美子さんって言いにくそうだから」
「紀美子って呼び捨てはハードル高いな…紀美子ちゃんでいい?」
「いいよ。私は彼方くんって呼ぶね」
「うん、あっそうだこれから買い物に行くんだけど紀美子ちゃんも一緒に行こうよ。この近辺の事も覚えられるし」
「そうだね!私も出たい!」
「決まりだね。そうと決まれば外に行く準備してね」
「うん!」
よかった。
元気になっている、僕にも少しは心を開いてくれているようだ。
今日は冷蔵庫の中が空になったのでおよそ一週間分の食品を買いにきた。
といってもゆっくり買い物をしている場合ではない。
この後バイトが控えている、一人暮らしの為とはいえ少し入りすぎかと思う事が多々あるがそれは仕方がない。
彼女はあの時と同じように周りを見渡している。
自分が初めて東京に来た時を見ているようでなんだか微笑ましい。
「彼方くん!私あれ食べたい!」
アイスクリームの屋台だ。
こんな寒い時期にアイスクリームが食べたいというのもなかなかの変わり者である。
彼女はチョコアイスがいいと言ったので、僕も同じ物を買って食べた。
その後買うものを買って、家に帰って今日の晩御飯の献立を……しまった、バイトの事を忘れていた。
買い物を彼女といて楽しみすぎたのだ。
後時間まで30分を切っている。
僕は彼女に早口で
「ごめん、今日バイトなんだ。夜遅くなるから冷蔵庫に入れたもので食べて、僕の部屋のベッドで寝ていいから」
「うん…分かった、いってらっしゃい」
僕は走って駅に向かった。
幸い駅から2分のバイト先なので間に合わないこともない。
僕は頭を仕事モードに切り替えバイト先に向かった__