またきみちゃんとの夢を見た。
でも今回は楽しい思い出の夢ではなかった。
僕が地元から離れる理由となったとある事故の夢。
__あれは僕が中学校時代の頃だった。
学校が終わった後、周りに友達がいないか確認し、幼なじみであるきみちゃんと密かに会っていた。
お互い思春期なので、友達に会っている事がバレるのは恥ずかしかったのだ。
「久しぶりだね…」
中学校に上がってからきみちゃんとは滅多に会わなくなっていた。
今回はきみちゃんが久しぶりに会いたいと声をかけてきたのだ。
「どうしたの急に…」
「なんだか彼方くんの顔が見たくなっちゃたから…って理由じゃ駄目かな?」
きみちゃんはそう言ってクスッと笑った。
それからはきみちゃんと、駄菓子屋さんで買ったお菓子を食べ懐かしみながら、帰り道を歩いていた。
そして話題が小さいころに山へ行ったときに作った隠れアジトの話になったとき、僕は一つの提案をした。
「今から隠れアジトの場所まで行ってみない?」
この発言が、きみちゃんを意識不明の状態にしてしまうきっかけとなってしまった。
山に登った時足場の状態が悪く、きみちゃんは足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
僕はきみちゃんを抱きかかえて、泣きながら病院に走った。
それから中学卒業まで経っても、きみちゃんが目を覚ますことはなかった。
僕は自分を責めた。
「僕が山に行こうなんて言わなければ…」
時間が経つにつれ、僕はその町にいるのが嫌になっていった。
そうして僕は、志望校を都会に変更し、きみちゃんがいる町から出て行った。
あれから二年。
今きみちゃんがどうなっているのか、まったく知らない。
最初は学校のお金を払ってくれていたお母さんとも、連絡を取っていたが、貯金がある程度貯まって自分で学費や光熱費を払えるようになってからは、連絡を取っていない。
今思えば、きみちゃんを見守ることだってできたはずなのにと後悔している。
でも今更戻ることなんてできない。
それが僕が一人暮らしをしている理由。
今でも思い出すと涙が出る。
「今も…眠ってるのかな…」
僕は紀美子ちゃんに朝御飯を作って学校へ向かった。
学校は一駅も行けば着くぐらい近いので、特別朝早く出なければいけないということもない。
朝が苦手な人間からすればとてもありがたい。
僕の教室は三階。
すれ違う先生と挨拶を交わしながら、教室に入る。
「おはよう鈴木」
僕は自分の席の前の奴に声をかけた。
「あっ、おはよう彼方ナイスタイミング!二日前に数学の課題出されてただろ?俺出来てなくてさー写させてくれよ」
こいつは友達の鈴木。
僕が高校に入って最初に出来た親友のような存在。
時々こうやって課題を写すのを俺に頼んで…ん?
「課題?」
「えっ…まさか彼方もやってねぇのか?出されてただろ今日提出のヤツ」
すっかり忘れていた。
ここのところ紀美子ちゃんのこともあって課題など頭になかった。
ていうか提出日まで覚えてるならちゃんとやれよ…というのは口に出さないでおく。
提出は明日先生にするとして、授業を受けて昼休みに入る。
うちの高校は学食があるのでそこで食べることも出来るのだが、僕はあまり学食が好きではない。
学食の味にケチをつける訳ではないが、自分で作る弁当の方がおいしいのだ。
そして人が多い場所で食べるということも嫌う僕は、弁当を持って屋上へと足を運ぶ。
「よっ!待ってたぜ」
そこには片手にカレーパンを持った鈴木がいた。
こうしていつも、屋上で昼御飯を食べている。
「ほれ」
急に何かを放り投げてきたので、キャッチし物を確認する。
僕が好きなお茶だった。
「弁当の時はそのお茶がいいんだろ?お前」
普段はお菓子さえも分けてくれない鈴木が僕にお茶を渡してきた。
「どうしたんだよ鈴木…なんか企んでるのか?変わったことあったか?」
「失礼なやつだな…それはこっちの台詞だぜ。珍しいじゃねーかお前が課題を忘れるなんて、何かあったのか?」
「色々あったんだよ…」
「何だよその色々って…言えないのか?」
女の子と住んでるとこいつに言うのか、正直悩みどころである。
しかし、こんなことをしてくるということは、鈴木も僕の事を気にかけてくれているということだろう。
話してみるか…
「みんなには言うなよ?絶対に」
「わかってるよそれくらい…いいから早く教えてくれよ」
「今同じ年くらいの女の子と一緒に生活してるんだけど…」
それを聞いた鈴木は口を開けたまましばらく動かなくなったあとこう言った。
「お前…付き合ってからすぐ一緒に暮らすってのはちと積極的過ぎねぇか…」
本当に話してよかったのだろうか。
それから僕は鈴木に、どうしてそうなったのかを疑われぬよう事細かく説明した。
「なるほどなぁ…でもよぉ記憶がいつまでたっても戻らなかったらどうすんだ?」
「それは…記憶が戻らない限り、紀美子ちゃんに帰る場所がないだろ?記憶が戻るまではちゃんと責任をもって一緒にいるよ。」
記憶喪失の人を放っておくほど、冷たい人間ではない。
「そこまで考えてる何て…お前そいつの事好きなんじゃねぇのか?」
「…」
好き…なのかもしれない。
僕はあの日以来、恋というものが出来なくなっている。
なのに何故だろうか、紀美子ちゃんといるとなんだか落ち着くのだ。
どうしてそんな感情になるのか自分でも分からない。
「まぁでも、話が聞けて良かったぜ。何かあったら協力してやるから、いつでも連絡してこいよ」
「あぁ…ありがと鈴木」
その時鈴木とまた絆が深まったのを感じた。
学校が終わり、寄り道はせず、まっすぐ家に帰る。
紀美子ちゃんの待つ家に____