引かれ会う   作:しめさば

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第6話

朝。

 

窓の外を見ると雨が降っていた。

 

これから寒くなっていく季節の雨は、あまり好きではない。

 

「おはよう。彼方くん」

 

洗濯機の前に紀美子ちゃんが立っていた。

 

紀美子ちゃんも最近になって、この家の暮らしにも馴染んできたようだ。

 

「おはよう紀美子ちゃん、悪いんだけど食器を洗うのも頼んでいいかな?ちょっと時間が無くて…」

 

「ごめんなさい…今日はこれから私も用があるから…」

 

「そっか…こっちこそごめんね頼ってばっかで」

 

「いいの…私も悪いから…」

 

「じゃあ食器類もそのままでいいよ。帰ってやっておくから」

 

そう言って僕は学校へ向かった。

 

最近紀美子ちゃんが外に出ることが多くなった。

 

何をしてるのか聞きたいところだが、そこまで探ろうとするとなんだか気持ち悪がられそうなので聞けないでいる。

 

だが家に泊めてる側としてはやっぱり聞いた方が良いのだろうか。

 

そんなことを考えていたらいつの間にか校門にいた。

 

いつものように教室に向かい、席につく。

 

「おはよう彼方」

 

いつものように僕に声をかけてくれる鈴木。

 

僕は挨拶するなり、鈴木にこう言った。

 

「おはよう鈴木。お前すこし前になんかあったら言ってくれって言ってたよな?」

 

「あぁ言ったけど、相談か?」

 

「ちょっと聞いて欲しいことがあるんだ。昼休みに屋上に行こう」

 

そう言うと鈴木は快く返事を返してくれた。

 

やはり持つべきは信用できる友である、心からそう思った。

 

退屈な授業を受け、昼休みになったので、屋上へ行く。

 

今日は弁当を作る時間は無かったのでコンビニで買ったおにぎりを食べる。

 

鈴木はお気に入りのカレーパンを片手に話してきた。

 

「で?なんだよ聞いて欲しいことって」

 

僕は鈴木に最近紀美子ちゃんがよく出かけるようになったことを話した。

 

「それでなにか隠し事してるんじゃないかって思ったわけか」

 

そう言われて頷く。

 

「俺は彼女とかできたことねぇからわかんねぇけどよ、そんなの直接聞けば教えてくれるんじゃねぇのか?」

 

それが聞ければ相談などしない。

 

今回ばかりは鈴木には難しい問題のようだ。

 

しかし、鈴木の言うとおりだと思う。

 

思うのだが、それを行動に移すのは僕の性格上なかなか難しいことなのだ。

 

そこで僕は、自然な雰囲気で聞けるような状況を考え、晩御飯中の会話に混ぜてみるのはどうだろうかと考えた。

 

晩御飯中の会話なら普段からしているし、自然に話すだろう。

 

「ありがとう鈴木!やっぱりお前に相談してよかったよ」

 

「あ、あぁ。今回はあんまりそれらしいことは言ってない気がするけどな…」

 

そうして僕は家に帰り、晩御飯を作り始める。

 

「ただいまー」

 

紀美子ちゃんが帰って来た。

 

「おかえり。もうすぐご飯出来るから」

 

「わかった。じゃあ食器類準備しとくね」

 

そういって紀美子ちゃんは机の上を綺麗に拭き始めた。

 

こうして手伝ってくれると、とても良い気分になる。

 

今日はオムライスを作った。

 

「いただきまーす」

 

紀美子ちゃんと同じタイミングで手を合わせる。

 

さて、ここからが本題である。

 

「美味しい?」

 

「うん?美味しいよ!こんなにたまごがふわふわなオムライス初めて食べたよ」

 

「そっか…よかった」

 

「……」

 

せっかくのチャンスだったのに会話が終わってしまった。

 

いや、ここしかない。

 

あまり強ばっているのを表に出さないように紀美子ちゃんに声をかける。

 

「ねぇ紀美子ちゃん」

 

紀美子ちゃんが食べる手を止めてこちらを見る。

 

「最近よく出かけてるけど、なにか隠してない?」

 

「…言わなきゃ駄目?」

 

紀美子ちゃんは言いたくなさそうな雰囲気だった。

 

「はぁ……まさか当日に怪しまれちゃうなんて」

 

「え?」

 

紀美子ちゃんは残念そうな顔で席を立ち、なにやら袋を持ってきた。

 

「こそこそしててごめんね。実は彼方くんに内緒でこれを作ってたの」

 

袋を渡され、中を覗くと

 

「マフラー…?」

 

黒一色のごくごく普通のマフラーが入っていた。

 

「最近商店街で買い物するようになったんだけど、手芸屋さんのおばさんとよく話してて、彼方くんの話をしたらおばさんがマフラーを作ってあげたらどう?って。彼方くんがマフラーとか着けてるところ見たことなかったし…」

 

確かに防寒具を紀美子ちゃんの前で着けたことはない。

 

紀美子ちゃんは普段から僕のことを見てくれていたのだ。

 

なんだか疑っていた自分が情けない。

 

「ありがとう。ごめんね疑ったりなんかして…」

 

「謝ることないよ。私こそ不安にさせちゃってごめんね」

 

「マフラー、大切に使うよ」

 

この出来事が僕が紀美子ちゃんの記憶を取り戻すまで守らなければいけないという気持ちを、守りたいという気持ちに変えた瞬間だった___

 

 

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